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ウラジミールの文章置き場コミュの戯曲「いのちのトランスフォーム」前編

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 「いのちのトランスフォーム」

登場人物
みゆき
陽太・キジムナー
リングアナ
ハブ
珍獣ハンター寺本
ツタヤ店員(声のみ)
-----------------------------------------------------------1

みゆき  季節は移ろう。
     夏が過ぎ、間近にあった太陽は私から離れていく。
     また、秋が来た。
     そして私は、思い出している。
     真夏の強い日差しのような、弟の事を。

     ♪太陽が、もしも、なかったら 地球は、たちまち、凍りつく

★ みゆき、歌い出す(曲は太陽戦隊サンバルカン、ただしスローなオルゴール曲で)
それに呼応して陽太登場

陽太   ♪花は枯れ、鳥は、空を捨て

★二人で歌う

二人   ♪人は微笑み、なくすだろう

★オルゴール終了

二人   イエーイ

★ 普通のカラオケ入る

二人   ♪太陽はオオ命の星だ 幸せをオオ守る炎だ
     イーグル、シャ−ク、パンサー
     イーグル、シャーク、パンサー
     俺達の魂も燃えている
     フォローザサン サ〜ン
     キャッチザサン サ〜ン

★歌い終わる前に陽太退場。

みゆき  ♪タ・イ・ヨ・ウ

★音楽終了、ここから曲がオリジナルの節でオケなし

みゆき  ♪のような、人よ〜

     これは弟が好きだった歌。 二人で時々歌ったっけ。
     弟は海が好きだった。
     青い海。その上に続く青い空。
     弟が求めるものは、沖縄にあった。

★陽太登場

陽太   姉さん、やっぱ沖縄すげえよ。海がどこまでも澄んでいて、白いさんご礁が続いてて。
     特に西表島なんてさ、人跡未踏のジャングルが続いてて自然がいっぱいなんだ。
     俺決めた。沖縄住むわ。
     でさ、俺せっかく沖縄来たんだから、沖縄にしかないような仕事したいんだ。

みゆき  そういって弟は、沖縄スネークセンターでアルバイトをしていた。

陽太   よしよしマン吉。グス子。うまいか。そうかうまいか。
     よーしちゃんと食っとけ。
     そして今日のショーも頼んだぞ。

みゆき  沖縄スネークセンターの名物といえば、ハブ対マングースショー。
     弟はそのショーに登場するマングースの飼育係だった。

陽太   よーしよしよし。
     マン吉。かわいい奴め。
     お前もかわいいよ、グス子。
     お前たちはウチのスネークセンターのスターだからなー。
     …しかしマン吉、お前がオスで本当に良かったな。もしもお前がメスだったらマン子…。
     いやいやいやいや、そんな名前つけないよな〜。

みゆき  しかし、ある秋の日。

陽太   やべ!やっちまった。
     マン吉、グス子…どこいっちまったんだよ〜!
     …完っ璧俺の不注意だよ。
     檻の鍵を掛け忘れるなんて。
     俺最低。あーちゃー。
     今日のハブ対マングースショー、どーすっかー。
     マジやべーよ。
     あ〜…どうすっかー。はんぱねー。

★陽太、頭を抱えて退場

みゆき  その日、運命の日。
     弟は、不注意でマングースを逃がしてしまった。
     これでは今日のハブ対マングースショーが出来ない。
     ドジで、ちゃらちゃらしているようで、でも意外と責任感が強かった弟。
     弟がとった行動は…。

★群衆の声の後、リングアナの声

アナ   只今より当スネークセンターのメインイベント、ハブ対マングースショーの開幕です。
     それでは選手の入場です。
     赤コーナー、体長2メートル体重3キロ、ハブの〜ニョロ吉〜。

★ハブ入場

ハブ   シャー。シャー。

アナ   青コーナー、身長75センチ体重約3キロ、マングースの〜マン吉〜。

★着ぐるみの陽太入場

陽太   俺これ着てたらバレなくね?
     よっしゃマジいけんじゃん。

★ゴング鳴る

アナ   ファイト!

★闘い始まる
ハブ、蛇拳の動きで闘う。しばらく陽太有利だが、ハブに咬まれる

陽太   うわ〜咬まれた〜!

みゆき  おお、陽太。
     真夏の太陽のようだった私の弟。
     突然帰らぬ人となったその短い生涯。
     弟の命を奪ったハブが憎い。
     …陽太の遺骨は、海にまいた。
     弟は、大好きだった沖縄の海に溶けていったのだ。
     そして、それから今日で丸二年が経った。
     私は弟に、弟が愛した海に会いに、沖縄は西表島へやって来たのだ。

-----------------------------------------------------------2

★突然寺本登場

寺本   どこだー、どこ行きやがったー、ちくしょー。
     どこだー、ばしゃばしゃばしゃばしゃ。

★寺本、ばしゃばしゃばしゃばしゃ言いながら浅瀬に入っていく

寺本   あぇっ…でけえアメフラシ。メガ・アメフラシ。
     捕まえたっ、捕ったどー!
     いやー、さすが西表島は違うな。
     珍獣、ゲットだぜ〜!
     …いや違う。こんなもん珍獣なんて呼べねえ。
     俺が追いかけていたのはアメフラシじゃねえ。
     こんなもんじゃねえ!

★寺本、アメフラシを投げ捨てる

寺本   キジムナー、キジムナー、
     どこだー、どこ行きやがったー、キジムナー、どこだー。

みゆき  何、あれ。かかわりたくない。

寺本   どこだー。あ、なんだ、人がいたのか。
     おいあんた、いつからいた。

みゆき  え?

寺本   いつからいたって聞いてるんだ。

みゆき  あ、いや、さっきからず…。

寺本   あんたキジムナー見なかったか。

みゆき  あ、え?

寺本   キジムナー見なかったかって聞いてるんだ。

みゆき  キジムナー…って何ですか?

寺本   珍獣だよ。未確認生物だよ。

みゆき  珍、獣、ですか。

寺本   そうだ。珍獣だ。
     まあゆうなれば、沖縄のカッパみたいなもんだな。

みゆき  沖縄の…カッパ。

寺本   カッパドキアじゃねえぞ。く、く、く。(笑う)

みゆき  …はい?

寺本   ガジュマルって木の妖精だと言われている。

みゆき  じゃあ妖怪…。

寺本   ひいいい、妖怪なんていねえ!…珍獣だよ!
     赤ら顔で、みすぼらしい格好した子供の姿で現れる。
     時々歌も歌うが人間の言葉は通じねえ。言葉を教えりゃ話すようになるそうだ。

みゆき  それってみすぼらしい格好した外人の子供なのでは…。

寺本   人間じゃねえんだよ。

みゆき  でも歌を歌うって。

寺本   九官鳥は人間か?オウムは人間か?初音ミクは人間か?
     そうじゃねえだろ。
     珍獣なんだよ。未確認生物なんだよ。

みゆき  あの、そろそろ私、かえら…。

★みゆき去りたそう

寺本   なんだ俺か。俺が気になるのかお嬢さん。

みゆき  なりませ…。

寺本   寺本。寺本だよ。

みゆき  え…。

寺本   珍獣ハンターだよ。

みゆき  あの…。

寺本   東に珍しい珍獣の噂聞けば、行って探して捕まえる。
     西に未確認生物の目撃あれば、行って探して捕まえる。
     人は俺を指さしてこう呼ぶ。珍獣ハンター。珍獣ハンター寺本。

みゆき  指さしますか。

寺本   キジムナーはさっきこのへんに居た。
     腕つかんだら逃げやがった。
     あんたもぼーっとしてねえでキジムナー見かけたら俺に言うんだぞ。いいな。

みゆき  な…

寺本   ほら、これやるから頼んだぞ。

★さっきのアメフラシをつかみみゆきに渡そうとする

みゆき  い、いらないです。

寺本   大きな声で俺を呼ぶんだ。わーったな。

★寺本、無理やり握らせる

みゆき  ひぃぃ

寺本   わかってねえのか。寺本サ〜ン。言ってみろ。

みゆき  い…て…。

寺本   寺本さあああん。リピートアフタミー。

みゆき  て、寺本さーん。

寺本   遊びじゃねえんだぞ。闘いなんだ、珍獣との。寺本さあああん。
     リピートアフタミー。

みゆき  寺本さーーーん。

寺本   まあいいだろう。
     いいかお嬢さん。この西表島にゃあ、
     まだ確認されてない未確認生物、珍しい珍獣がいるにちげーねえんだ。
     キジムナー、イリオモテヤマネコ、イリオモテ大トカゲ、イリオモテ手長猿、
     イリオモテたらばがに。後ろの3つは俺が今考えた珍獣だが、
     きっとそんなのがゴロゴロいる。居てほしい。俺は信じてる。俺は、俺は…
     …あ、でけえ赤トンボ。まてぇ!

みゆき  一体なんなのよあの野蛮人…。

★みゆき、手の中のアメフラシに気付き

みゆき  ひぃぃ!

★アメフラシを投げ捨てる。

-----------------------------------------------------------3

キジ   アチョプ…マウマウ。アチョプアチョプ…マウマウ。

★声と共にキジムナー登場。
寺本が去った後を心配そうに見ている。

みゆき  あ、なんか来た。

キジム  アチョ!

★キジムナー引っ込む

みゆき  逃げた。

キジ声  マウマウマウマウマウマウ…

みゆき  まだ居る。

★その声にキジムナー沈黙 みゆき、前を向いて知らんぷり
しばらくして、枝を持って隠れたつもりのキジムナー登場、徐々に距離を縮める
みゆき振り向く

キジ   アチョプ!

★キジムナー逃げる。みゆき、こそっと食べ物を置く。

キジ   マウマウマウマウ、アチョプ。

★キジムナー食べ物を持ち去る

キジ   ……アチョプ。

★みゆき、更に食べ物を置く

キジ   マウ、マウマウ

★ キジムナー、食べ物を持ち去り、それから魚(かまぼこ)をくわえて登場
魚じゃなかったらタコのフィギュアとかでもいい

みゆき  わ、これ…。私に?

キジ   マウマウ。

みゆき  ムリ。ムリ。

★キジムナーにうながされてみゆき喰う、もしくは喰えない

みゆき  ねえ、もしかしてアナタがキジムナー?

キジ   アチョピ。

★キジムナーその問いには答えず引っ込み、ゴーヤをくわえて登場

みゆき  ゴーヤ…これも…私に?

キジ   アチョプ。

★キジムナー、一口かじり嬉しそうにみゆきに渡す

みゆき  あんまり私は…

★キジムナー、笑顔で勧める
仕方なくみゆき喰う

みゆき  あはははは

キジ   マウマウマウマウマウ

★二人笑う

みゆき  ねえ、あなた、キジムナーでしょ。

★問いには答えず、キジムナー不意に足か腕が痛む

キジ   アチョ…

みゆき  あ…怪我してるの?

キジ   アチョッチュネー。

みゆき  可哀想に。さっきの珍獣ハンターにやられたのね。

キジ   アチョッチュネー。

みゆき  ちょっと待っててね。…応急手当だけど。

★手当てする

寺本   どこだ〜

★寺本の声が響き、キジムナー逃げる

寺本   キジムナー、どこだー、どこなんだー

★寺本入ってくる

寺本   今ここに、キジムナーいただろ

みゆき  いません。

寺本   そうか、いないのか。どこだー、どこなんだー

★寺本退場

キジ   アチョプ。

★キジムナー出てくる

寺本   どこだー

★寺本横切り、キジムナー慌てて隠れる

みゆき  もういいよ。

★キジムナー出ようとするとフェイント的に寺本

寺本   どこなんだー。

★数回そんなやり取りを繰り返し、やがて暗転

寺本の声 どこだー、どこなんだー
     …あ、アメフラシ踏んじゃった。
     くっそお〜、今日はもう帰る!

みゆきN その場はなんとか切り抜けたけれど、私はこの子の事が心配だった。
     さっきのハンターはまだこの子を狙っている。
     …そして次の日。
-----------------------------------------------------------4

キジ   ウマウマウマウマ。アチョプ。

★明かりつくと、キジムナー何か食べている
後ろから近付くハブ

ハブ   シーー…。

★ハブが近付き咬もうとしたところでキジムナーが柔軟体操を始め、かわされる

キジ   フンム、フムフム。アチョプ。チョプ。

ハブ   シャー…。

★ハブが後ろから近付いたところでキジムナー蟹を見つけたりしてかわす
キジムナーはハブに気付いていない
そこへみゆき登場

みゆき  キジムナー、いる?

キジ   アチョプ!

みゆき  いた。

キジ   マウラマウラ〜。

★キジムナー、まあここに座れよ的ジェスチャー

みゆき  ありがとう。あれから大丈夫だった?

キジ   チョプ、チョプ。

みゆき  そう。よかった。私ね…なんか心配だったからまた来ちゃった。

キジ   チョペー!

★キジムナー咬まれる、尻に走ったチクッとした痛みに驚きの声

みゆき  嬉しいんだ。そんなに?あ、そうそう、食料持って来たよ。ええとねえ、パンとか食べる?

★などとみゆきが言いつつ荷物を確認してる間に、キジムナーは尻を確認、咬まれたと気付く

キジ   チョルパー、チャプチェ…

みゆき  サーターアンダギーも売っててね、美味しそうだったんだけど…。

★みゆきのどうでもいい話はしばし続くが…

みゆき  キジムナー?

★見るとキジムナー、痙攣している。

みゆき  キジムナー?!キジムナー!

★キジムナー、白目だ
みゆき見るとキジムナーはハブに咬まれているのを気付く

みゆき  あ、ハブ!ぎええええい!

★みゆき(圧倒的に強い)、ハブと闘い最後は投げ捨てる
そして、尻にくちづけし、毒を吸い出す

キジ   マウ、マウマウマウ…。

★キジムナー苦しそう 吸い出し続けるみゆきをバックに、音声(録音)流れる

みゆきN 勇気なんてものじゃない。勇気とは、決意する時に生まれる気持ちだと思うからだ。
     考えるより早く、私の体は動いていた。頭の中は真っ白だった。
     ペッ!
     だからこの時の事は断片的にしか覚えていない。
     気が付けば、ただそうしていたのだ。
     ペッ!
     もしかしたら、いやきっと、
     同じくハブに咬まれて死んでしまった弟の姿をダブらせていたのかもしれない。

みゆき  ペッ!…毒は吸い出したが、キジムナーはその後高熱で数日間、うなされていた。
     うわ言が続いていた。悪い夢でも見ているのだろうか、それとも何か伝えたい事があるのだろうか。
     ある日は、

キジ   アチョ、アチョ、アチョチョチョチョ…。マウー。

みゆき  そのあくる日は、

キジ   チョップ。アーーー、チョップ。

みゆき  さっぱり意味がわからない!
     そうだ、この子が元気になったら言葉を教えてあげよう。
     きっともっと、分かりあえるはずだ。
     そのあくる日の事だった。

キジ   ムーー…マウマウ。

みゆき  また寝言かな。

★みゆき、キジムナーの汗を拭いたりする
 突然、うなされているようにキジムナー歌い始める

キジ   タ…太陽が…もしも…無かったら

みゆき  え?!

★サンバルカンのオルゴール曲

キジ   ♪…地球は…たちまち、凍りつく
     花は枯れ、鳥は、空を捨て…人は微笑み、なくすだろう

★オルゴール曲終了

みゆき  この歌は…。

キジ   イエーイ…。

★キジムナー、眠る

みゆき  ぐっすり眠ったみたい。
     でもなぜキジムナーがこの歌を。

★暗転

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