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コメント(37)
盤双六のルールが現代のバックギャモンのルールと異なるのは、重要な順に次の五点です。
１．あがり(ベアリングオフ)
２．ギャモン勝ち
３．ぞろ目
４．オープニングロール(先手)
５．ダブリングキューブ
現代のバックギャモン(これを○とする)は
１．あがり(ベアリングオフ)までプレーする。
２．(バック)ギャモン勝ちがある。
３．ぞろ目は４回動かす。
４．オープニングロールは二人同時に振る。(ある意味「先手」がない。)
５．ダブリングキューブを使う。
これに対して、古代・中世、近世、近代、現代の盤双六のルールは次のようになっていると推定されます。なおここで「近代」というのは、宝鏡寺などに伝承されたルール、「現代」というのは、現在福島県白河の「まほろん」で行っているルールを指し、必ずしも一般的な時代区分には対応しません。またキューブは20世紀に考案されたので省きます。
１ ２ ３ ４
ギャモン ○ ○ ○ ○
古代中世 ○ ○ × ×
江戸時代 × ○ × ×
近代現代 × × × ×
１．あがり(ベアリングオフ)
２．ギャモン勝ち
３．ぞろ目
４．オープニングロール(先手)
５．ダブリングキューブ
現代のバックギャモン(これを○とする)は
１．あがり(ベアリングオフ)までプレーする。
２．(バック)ギャモン勝ちがある。
３．ぞろ目は４回動かす。
４．オープニングロールは二人同時に振る。(ある意味「先手」がない。)
５．ダブリングキューブを使う。
これに対して、古代・中世、近世、近代、現代の盤双六のルールは次のようになっていると推定されます。なおここで「近代」というのは、宝鏡寺などに伝承されたルール、「現代」というのは、現在福島県白河の「まほろん」で行っているルールを指し、必ずしも一般的な時代区分には対応しません。またキューブは20世紀に考案されたので省きます。
１ ２ ３ ４
ギャモン ○ ○ ○ ○
古代中世 ○ ○ × ×
江戸時代 × ○ × ×
近代現代 × × × ×
盤双六文献資料集成 (○は手に入っているもの)
○ 970？ 双六盤歌（源順）
○1170？ 譜双
○1583 双六書
×1633 双六教
○1650？ 双六手引書
×1679 双六手引抄
×1700？ 双六之手引
○1800？ 双六口授
○1810 双六盤歌（小澤蘆庵）
○1811 双六独稽古
○1827 双六錦嚢抄
×1910 双六稽古の栞
○1914 双六
○1927 古玩双六
○1932 雲泉荘山誌別冊 すごろく
×1933 雲泉荘山誌３巻
○1955 双六考
○1968 双六の遊び方
○1969 遊戯具（日本の美術12）
○1988 双六遊美
○1995 双六��
○2003 古書目録にみる「すごろく」
○ 970？ 双六盤歌（源順）
○1170？ 譜双
○1583 双六書
×1633 双六教
○1650？ 双六手引書
×1679 双六手引抄
×1700？ 双六之手引
○1800？ 双六口授
○1810 双六盤歌（小澤蘆庵）
○1811 双六独稽古
○1827 双六錦嚢抄
×1910 双六稽古の栞
○1914 双六
○1927 古玩双六
○1932 雲泉荘山誌別冊 すごろく
×1933 雲泉荘山誌３巻
○1955 双六考
○1968 双六の遊び方
○1969 遊戯具（日本の美術12）
○1988 双六遊美
○1995 双六��
○2003 古書目録にみる「すごろく」
真武内伝(1731年)に、
「双六の 初重五の重と信濃衆は 引くとは見へて 居られざりけり」
とあるそうである。 「初重五」は「はつでっく」と読んで、初手５５ということであろう。次の「重」は少し分かりにくいが、今までの用例(「ちう」と振る)から見て、２駒を一緒に進めることと思われる。「引く」はミッドポイント(あるいは相手のアウター)から、自分のアウターへ持ってくることを言う一般的な表現だ。「居られざり」とはブロットになっていないということではないか？ 「オープニングロールの５ゾロは、ミッドポイントから二つ持ってくると、敵からの攻めどころがない。(実際はハイスタックなので、悪い形ではあるが。) 信濃衆には攻めどころがないという意味に感じられる。
真田幸村は、双六を打ったようである。というより、当時の武士は双六を普通に遊んだのであろう。
「双六の 初重五の重と信濃衆は 引くとは見へて 居られざりけり」
とあるそうである。 「初重五」は「はつでっく」と読んで、初手５５ということであろう。次の「重」は少し分かりにくいが、今までの用例(「ちう」と振る)から見て、２駒を一緒に進めることと思われる。「引く」はミッドポイント(あるいは相手のアウター)から、自分のアウターへ持ってくることを言う一般的な表現だ。「居られざり」とはブロットになっていないということではないか？ 「オープニングロールの５ゾロは、ミッドポイントから二つ持ってくると、敵からの攻めどころがない。(実際はハイスタックなので、悪い形ではあるが。) 信濃衆には攻めどころがないという意味に感じられる。
真田幸村は、双六を打ったようである。というより、当時の武士は双六を普通に遊んだのであろう。
井原西鶴 著 『好色一代男』 池田屋・奈良屋 刊 1682 の巻の四の、世之介入牢の条りに、以下の文がある。
[以下引用＞
暮れての物うさ、明けての淋しさ、塵紙にて細工に双六の盤をこしらへ、「二六(にろく)」「五三(ぐさん)」と乞目(こひめ)をうつ内にも、「そこをきれ」といふ、切るの字こころに懸けるも笑(をか)し。「戸口をしめて出さぬ」といふはなお嫌う事なり。
＜以上引用]
ここには二六、五三のほかにも、乞目、切る、しめ出し、などの双六用語が出てきて、それが入牢の境遇と重なって面白い表現になっている。
ここから分かるのは、17世紀後半の江戸や大坂で、盤双六が当たり前に遊ばれていたと言う事実である。牢屋に入れられても代用品で遊ぶぐらいだから、その普及ぶりはなかなかのものだ。また当時の読者は例えば「乞い目」(欲しいダイスの目)とか、切る(ヒットする)と言われても、すぐ何のことか理解できたということである。
[以下引用＞
暮れての物うさ、明けての淋しさ、塵紙にて細工に双六の盤をこしらへ、「二六(にろく)」「五三(ぐさん)」と乞目(こひめ)をうつ内にも、「そこをきれ」といふ、切るの字こころに懸けるも笑(をか)し。「戸口をしめて出さぬ」といふはなお嫌う事なり。
＜以上引用]
ここには二六、五三のほかにも、乞目、切る、しめ出し、などの双六用語が出てきて、それが入牢の境遇と重なって面白い表現になっている。
ここから分かるのは、17世紀後半の江戸や大坂で、盤双六が当たり前に遊ばれていたと言う事実である。牢屋に入れられても代用品で遊ぶぐらいだから、その普及ぶりはなかなかのものだ。また当時の読者は例えば「乞い目」(欲しいダイスの目)とか、切る(ヒットする)と言われても、すぐ何のことか理解できたということである。
この五月にあった、昭和館での「双六でたどる戦中・戦後」展のカタログの47頁に、山本正勝氏所蔵の鈴木晴信 画 「童子けんか図」 が載っている。絵双六のカタログなので当然だが、これに載っている唯一の盤双六の絵である。
画面は、あけっぴろげの畳の部屋で５人の十歳前後の男の子が、双六盤を囲んで掴み合いの喧嘩をしている。肝心の盤面は喧嘩のため目茶目茶に乱れていて、果たして本双六をやっていたのかも不明だ。(少なくとも黒石７個、白石10個は見える。賽は見えない。) 恐らく柳や、おりは、追廻などであろう。それでも盤面はきちんと24格だし、盤の取っ手の形や、筒は一つしか見えないなど参考になるところはある。
画面は、あけっぴろげの畳の部屋で５人の十歳前後の男の子が、双六盤を囲んで掴み合いの喧嘩をしている。肝心の盤面は喧嘩のため目茶目茶に乱れていて、果たして本双六をやっていたのかも不明だ。(少なくとも黒石７個、白石10個は見える。賽は見えない。) 恐らく柳や、おりは、追廻などであろう。それでも盤面はきちんと24格だし、盤の取っ手の形や、筒は一つしか見えないなど参考になるところはある。
ニセ黄門さんより、金伶鎮「雙六の歴史と遊び方」が手に入り、Ｙさんに頼んで翻訳していただいた。
いろいろ新しい情報があって一読三嘆であったが、中に古い朝鮮の16枚駒のルールの初期配置があって、考えもしなかったような形でこれには本当に驚いた。
朝鮮の双六に16枚ルーネがあるのはキューリンも書いているので、知ってはいたが、初期配置は「バックマンを１枚増やす程度だろう」と考えていた。ところが上記論文によれば、何と下記のようなものなのである！ ルールは入れれば勝ちと上がりまでやるの二通りがあったらしい。またぞろ目は４回でなく、２回のようだ。
●
○＿＿＿○＿x●●＿＿＿●
○＿＿＿○＿x●●＿＿＿●
＿＿＿＿○＿x●●＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿x●＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿x●＿＿＿＿＿
１ ２ ３ ４ ５ ６ ６ ５ ４ ３ ２ １
＿＿＿＿＿＿x○＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿x○＿＿＿＿＿
＿＿＿＿●＿x○○＿＿＿＿
●＿＿＿●＿x○○＿＿＿○
●＿＿＿●＿x○○＿＿＿○
内 ○ 外
外六地には六個ある。
いろいろ新しい情報があって一読三嘆であったが、中に古い朝鮮の16枚駒のルールの初期配置があって、考えもしなかったような形でこれには本当に驚いた。
朝鮮の双六に16枚ルーネがあるのはキューリンも書いているので、知ってはいたが、初期配置は「バックマンを１枚増やす程度だろう」と考えていた。ところが上記論文によれば、何と下記のようなものなのである！ ルールは入れれば勝ちと上がりまでやるの二通りがあったらしい。またぞろ目は４回でなく、２回のようだ。
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○＿＿＿○＿x●●＿＿＿●
○＿＿＿○＿x●●＿＿＿●
＿＿＿＿○＿x●●＿＿＿＿
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１ ２ ３ ４ ５ ６ ６ ５ ４ ３ ２ １
＿＿＿＿＿＿x○＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿x○＿＿＿＿＿
＿＿＿＿●＿x○○＿＿＿＿
●＿＿＿●＿x○○＿＿＿○
●＿＿＿●＿x○○＿＿＿○
内 ○ 外
外六地には六個ある。
金伶鎮先生の「雙六の歴史と遊び方」から、重要な部分について検討していきたい。
「雙六に適用されるルールは地方ごとに若干の差異があるが、共通するルールを整理すると以下のようになる。」
と前書きがあって、以下の９点が述べられている。
�〜蠎蠡Δ龍陲�二つ以上ある区画には自分の駒は置けない。
��一つの区画には五つ以上の駒は置けない。
�Ｆ韻舷�字が出れば二つの駒を一度に動かせる。
�ざ陲鬟粥璽襪気使彝阿肪�出する際は、移動に必要な数よりもサイコロの目が大きくてもよい。
�ゥ汽ぅ灰蹐鮨兇蕕困傍戮鵑任發茲ぁ�
�Ω紊蹐惷陲鯊爐韻襪海箸呂任�ない。
�Ф陲�二つある区画も通り抜けはできる。
��相手に取られた駒があるときは、別の駒を動かすことはできない。
��取られた駒は必ず振出から始めねばならない。
�，賄�然で、これはこのゲームの本質の一つと言ってよいだろう。
�△和腓い傍震笋里△襪箸海蹐任△襦�
��は当然のことなので、なぜこの記述があるのか、怪訝な思いにかられる。
�い呂箸討眤膸�な記述で、当然ではあるが大変ありがたい。
�イ和腓い傍震笋�あるところだ。休まねばならない状況があるという意なのか。
�Δ賄�然だ。
�Г眦�然だ。
�┐睇當未離襦璽襪世�、はっきり書いてあるのはありがたい。
��も普通のルールだが、はっきり書いてあるのはありがたい。
「雙六に適用されるルールは地方ごとに若干の差異があるが、共通するルールを整理すると以下のようになる。」
と前書きがあって、以下の９点が述べられている。
�〜蠎蠡Δ龍陲�二つ以上ある区画には自分の駒は置けない。
��一つの区画には五つ以上の駒は置けない。
�Ｆ韻舷�字が出れば二つの駒を一度に動かせる。
�ざ陲鬟粥璽襪気使彝阿肪�出する際は、移動に必要な数よりもサイコロの目が大きくてもよい。
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�Ω紊蹐惷陲鯊爐韻襪海箸呂任�ない。
�Ф陲�二つある区画も通り抜けはできる。
��相手に取られた駒があるときは、別の駒を動かすことはできない。
��取られた駒は必ず振出から始めねばならない。
�，賄�然で、これはこのゲームの本質の一つと言ってよいだろう。
�△和腓い傍震笋里△襪箸海蹐任△襦�
��は当然のことなので、なぜこの記述があるのか、怪訝な思いにかられる。
�い呂箸討眤膸�な記述で、当然ではあるが大変ありがたい。
�イ和腓い傍震笋�あるところだ。休まねばならない状況があるという意なのか。
�Δ賄�然だ。
�Г眦�然だ。
�┐睇當未離襦璽襪世�、はっきり書いてあるのはありがたい。
��も普通のルールだが、はっきり書いてあるのはありがたい。
>22 ��一つの区画には五つ以上の駒は置けない。
まず第一の問題としてここに述べられ入る「五つ以上」は「五つを越えて」の意味であろう。つまり現在の普通の定義に依れば、「��一つの区画には六つ以上の駒は置けない。」と書かれるところであり、その意味だと考えられる。
このようなルールは、ローカルルールやフェアリールールで時々耳にするが、意図したものでない限り、盤の形状からくる誤解なのではないかと私は考えている。つまり一つの区画にはいくつでも入れるのだが、マスの大きさが丁度五個分ぐらいであるところから生まれた後世の解釈なのではないか。
>21 に示したように、実際に６枚の駒が入っている例が、同書そのものにある。それとも、そちられは16枚ルールに限ったこと、なのだろうか。しかし、「雙六金錦嚢抄」の��49には、６個入っている実例もある。従って、少なくとも幕末の日本では６個(以上)入ってよいことが、文献的に確かめられる。
ではこれが誤りかと言うとそうとも限らない。というのは朝鮮の駒はボーリングのピンのような形をしていて、これは重ねられない。従って物理的に７つ以上を１つのマスに入れることは難しい。だから６つあるいは５つを上限とするルールは、このような駒の形状の地域では合理的とも言える。と同時に、中世以来の日本の駒の形状から見て、日本の雙六にはこのような個数制限はなかったろうと推察する次第だ。
まず第一の問題としてここに述べられ入る「五つ以上」は「五つを越えて」の意味であろう。つまり現在の普通の定義に依れば、「��一つの区画には六つ以上の駒は置けない。」と書かれるところであり、その意味だと考えられる。
このようなルールは、ローカルルールやフェアリールールで時々耳にするが、意図したものでない限り、盤の形状からくる誤解なのではないかと私は考えている。つまり一つの区画にはいくつでも入れるのだが、マスの大きさが丁度五個分ぐらいであるところから生まれた後世の解釈なのではないか。
>21 に示したように、実際に６枚の駒が入っている例が、同書そのものにある。それとも、そちられは16枚ルールに限ったこと、なのだろうか。しかし、「雙六金錦嚢抄」の��49には、６個入っている実例もある。従って、少なくとも幕末の日本では６個(以上)入ってよいことが、文献的に確かめられる。
ではこれが誤りかと言うとそうとも限らない。というのは朝鮮の駒はボーリングのピンのような形をしていて、これは重ねられない。従って物理的に７つ以上を１つのマスに入れることは難しい。だから６つあるいは５つを上限とするルールは、このような駒の形状の地域では合理的とも言える。と同時に、中世以来の日本の駒の形状から見て、日本の雙六にはこのような個数制限はなかったろうと推察する次第だ。
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元・遊戯史学会 更新情報
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