いりこ姫のいりこ劇場コミュの【妄想】若鷹VS若竜IN長崎ビッグN編

ナレーション：今宮健太


ここは長崎ビッグN。今日は2011年9月10日。ウエスタンリーグのホークスVSドラゴンズがここで開催される。

岡田君「健太〜」

今宮君「おう、久しぶりだな。」

岡田君「健太、逢いたかったよ〜僕、淋しくて淋しくて泣きたかったけど、先輩達がかわいがってくれたからどうにか今日までやってこれたよ！！」

今宮君「そうかお互いなかなか会えんけど、これからも頑張ろうな」

岡田君「あっ、そういえばたけるんも健太に逢いたがっていたよというか、今日来るらしいよ。」

今宮君「…えっ…？あいつ今、たしか東京だろ！？」

岡田君「皆で逢えるの楽しみだね〜」

今宮君「…そうだな…。」

俺は今までのことを思い起こしていた…。

まさに、因縁と言うほかなかった。今村とは高２のときに秋季九州大会で準決勝で初めて出会った。

あれ以来、佐賀から別府まで追い掛け回されるわ、何かにつけては網で捕獲されるわ、落とし穴にはめられるわ、寮に忍び込まれて朝まで付き合わされるわ、思い出すだけでも涙が滲み出てくる…。

今回、ヤツは東京にいるはず。なのに寒気がするのは、やはり今回もヤツは登場するのだ。

どこから！？まさかこんな皆がいる前で、上空からファルシオンに乗って現れるわけはないだろうし…。てか、今回も網か！？落とし穴か！？

岡田君「健太〜」

不安に思っていると、俊哉と目が合い、手を振ってくれた。

今宮君「俊哉…」

もう、考えるのはやめよう。ヤツも俺の大事な友人だから、久しぶりの再会を素直に喜ぼう。

不安になったが、時折俊哉が俺に手を振ってくれ、俺は癒された。

そうこうするうちに、試合の時間になった。


ウグイス嬢「只今より、始球式を始めます。始球式を務めるのは、今村猛投手です。」


今宮君「えええ」


あいつ、今は試合中では！？あ、そうか、同姓同名の小学生かも。


俺の不安をよそに、あいつは現れた！！




マウンドの盛り土の中から…！！




今宮君「えええええ」



ヤツは盛り土の中から這い上がってきた。



そして、いつものポーカーフェイスでユニについた土をポンポンと叩き落とした。

今村君「いきます！！」


ヤツはゆっくり振りかぶり、そして渾身の球を放った。


スピードガンは153kmを計測した！！


打者は空振りするどころか、あまりの速球で動けず、見逃しストライク。


球場はどよめいた！！


そして、拍手に包まれた。


ウグイス嬢「ありがとうございました〜。」


今村は、仏頂面で観客に手を振りながら足早にマウンドから去るのかと思いきや、突然上空に向かって指笛を吹いた。


すると、上空から鳥でも飛行機でもない何かが徐々に近づいてきた。

そして今村の前に舞い降りた。


そう、ファルシオンに乗った堂林だった。


今村はサッとファルシオンに乗り込み、そのまま上空を飛び去っていった。



今宮君「…」



試合は始まった。



鷹１―５竜の劣勢から、何とか同点まで追いついた。

しかし、逆転することはなく、同点で試合は終了した。


俺は５打数無安打に終わってしまった…。


ヤツの登場で動揺してしまったのか…。


こんなことで動揺して打てないようじゃ、俺はまだまだだ。

山下君「今日は残念っしたね！！」

山下は、今年のドラフトルーキー。俺の後輩にあたる。

今宮君「ああ。俺もお前もここからだ。お互い精進しような。」

山下君「俺、負けないっすよ」


岡田君「健太、今日は久しぶりに逢えてよかったこれからも頑張ろうね！！」

今宮君「おう、また逢おうな」



その日、今村たちは結局それ以来現れなかった。



俺は少しホッとした。



そして翌日になった。


山下が慌てて俺の部屋に入ってきた。


山下君「大変っすよ！！今宮さん」

今宮君「…なんだよ、こんな朝っぱらから慌てて…。」

山下君「始球式でカープの今村さんが盛り土の中から現れて、白馬に乗って上空を飛び去っていきましたよ！！！」



今宮君「反応遅すぎだろ」




―完―