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経済読書会−東京経済政策研究会コミュの東京経済政策研究会(合同勉強会)活動報告

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東京経済政策研究会(合同勉強会)2011年6月18日開催の活動報告です。



テーマ:動学マクロ経済学
参加人数:29人
主な参加者属性、職業:国家公務員、金融機関、ウェブ会社経営、会社役員、IT会社、医師、フリーランサー、学生etc


流れ:
・発表担当者のTSEP三四郎とFED村上から、課題図書のポイントを解説。(1時間)
・名刺交換(10分)
・その後、参加者を3チームに分け、自己紹介を行うとともに、それぞれで事前に用意した論点に沿って議論。(1時間)
・各チームのファシリテーターから議論の概要を相互に発表。(10分)


全体:
・『成長信仰の桎梏』(斎藤誠著)を課題図書に、日本の消費と投資のバランスの在り方や金融政策・金融システムの在り方などについて議論。
・参加者の多くは、生産性の低い投資を止めて消費にお金を回していくべきとの著者の主張には同意するものの、その具体的な処方箋については、なかなか決定打がないと認識。
・また、日銀の超低金利政策については否定的な意見が太宗。インフレターゲットについては、実体経済を無視して物価をコントロールしようとするのは適切ではないとの意見が太宗を占めた。
・格差問題については、若年・高齢者間の資産格差の是正を支持する声が大きい一方、それを具体的に実現するための資産課税の強化は実効性を確保するのが難しいとの意見もあった。
・全体として、各チームとも大いに議論が盛り上がり、参加者のマクロ経済政策への関心の高さが伺えた。



議論:

論点1 家計貯蓄率が下がっている中でも、日本は本当に過少消費(過剰投資)といえるのか?

【村上(茂)チーム】
・企業からみた場合、働く立場としては必ずしも過剰投資ではない。
・企業はお金を使っているが、以前よりは渋っている(経費の削減など)
・過剰投資になっているのではなく、むしろ投資先がないのではないだろうか。
・将来不安により消費が抑制されていると感じる。

【村上(由)チーム】
・高齢化により消費層が推移していっているため、必ずしも過少消費と言えないと思う。
・将来不安から過少消費に陥っているのではないか。
・新規事業への投資含め、企業の投資意欲は旺盛だと思う。

【三四郎チーム】
・家計貯蓄率が下がっているのは、消費が増えたためではなく、家計所得が減ったため。
・社会保険料をゼロにして税に一本化すれば可処分所得を増やせるとの指摘もある。
・貯蓄率の動向は、年齢階層別に丁寧にみるべき。
・昔に比べると消費したいものがなくなりつつある。無理に消費を押し上げなくてもよい。



論点2 日本経済が、消費と投資のバランスを保ちながら成長していくためには、具体的にどのような経済政策が必要か。

【村上(茂)チーム】
・生産性を挙げるためには、チャレンジする風土が必要。日本は評価に対して減点方式なので、チャレンジするマインドが育ちにくい。
・「お金を稼ぐ」ことに対して日本はネガティブなイメージあるのではないか。そもそもその考えを払拭し、積極的にビジネスでお金を稼ぐことを正当化する必要がある。
・語学や勉強といった自分への投資をすることで、特に若者は消費を促進するという方法もあるのではないか。

【村上(由)チーム】
・本著には雇用の話がない。著者は後から雇用はついてくるという考えか。本論点を考える上では雇用の問題は避けられないのでは。
・政策として政府が先導的に行なわなくてもよい、むしろ行わない方がうまくいくと思う。

【三四郎チーム】
・消費を押し上げるためには可処分所得+可処分時間の増加が必要で、投資を抑制するためには生産性の低い投資を削る必要がある。
・可処分時間の増加は、労働時間の削減を伴うため、所得も減ってしまうおそれがある。
 (→これに対し、労働生産性を上げれば所得は減らないとの意見あり)
・生産性の低い投資や企業を市場から退出させるためには、終身雇用制を改め人材の流動化を進めることが不可欠。



論点3 著者は、事前格差を解消する手段として資本所得課税と資本課税の強化を主張するが、この考え方は正しいか。

【村上(茂)チーム】
・格差や金融を考えるにあたって、そもそも資本主義がこのまま続くことを前提として議論していいのか。資本主義が続くとは限らないのではないか。
・資本主義はこれまでも何度も形を変えてきている。これからも資本主義の形は修正されていき、その中で格差も是正されていくのではないか。

【村上(由)チーム】
・資産課税により、むしろ労働インセンティブが上がると思う。
・特に相続税を上げる点に賛成。資産を有するのは消費をしない高齢者が多いため。
・資産課税により高所得者、つまり優秀な人材の海外流出を助長させる危険性がある。
・資産課税か類する国の政策により、もと起業家や新規産業への投資を促進させるべき。新しい市場、企業が増え、既存の大企業が脅威を感じ、より活性な競争に通じることとなると思う。

【三四郎チーム】
・(数%の貯蓄税を導入してはとのアイデアに対し、)貯蓄税の導入することは技術的には可能かもしれないが、課税対象外の資産への逃避を誘発し、実効性が確保できないのではないか。
・世代を問わず一律に資産課税を強化すると、子育てのための積立など必要な資産形成をも阻害することになり、弊害が大きいのではないか。
・資本所得税は現在税率がフラットだが、所得格差を是正する観点からは、所得税と同じように累進をかけてもよいのではないか。


論点4 著者は直接型間接金融(投資のファンダメンタルを機軸とする融資形態)を評価するが、リーマンショック後もその主張は妥当か。リーマンショックを経た今の日本に必要な金融のスキームはどのようなものか。(※本書が出版されたのは、サブプライム問題やリーマンショックが起こる前)

【村上(茂)チーム】
・直接金融(直接型間接金融)に向かう方向性には賛成する。株式を例にすると、株価があるおかげで資源の最適な配分がマーケットで決まることとなる。銀行主体の貸付が中心では必ずしも最適な資源配分が起こるとは限らない。
・投資主体の質が低い。金融教育により個人の金融知識をまずはあげる必要がある。
・アメリカはそもそも欲が強すぎる。リーマンショックを経て、むしろ日本人は賢明だったということが再認識できた。⇔他方、日本人も1980年代には欲に目がくらみ株や土地への投資へ積極的だったのではないか。
・個々人が金融の知識水準をあげて、今後どのような金融システムを構築していくのかを考える必要がある。これからの金融システムのグランドデザインはまだ描けていない。政府に任せっきりにするのではなく、民間側でも金融の知識を挙げて、積極的に金融システムのあり方について考えを発信していく必要があるのではないか。

【村上(由)チーム】
・リーマンショックは銀行(金融機関)がリスクを一方的に押し付けたいという考えからおきたのではないか。→
その先に金融商品を買う投資家がいる、需給関係があったためと思う。
・格付会社による情報が市場に誤った信頼性を与えてしまったのではないか。
・(格付会社の情報について見抜けるといったことも含め)そもそもの金融教育が必要。
・ソーシャルレンディングのように個人間で直接金融を行える仕組みも登場していることは興味深い。

【三四郎チーム】
・直接型間接金融(証券化等)が引き続き重要であることには、概ね賛成。
・ただし、リスクが適正に評価される仕組みが整備されることが前提。格付けが適正化されなければまたいつかサブプライムローン問題と同じことが起こるだろう。
・リスクを銀行に集中させるのではなく分散させることが重要。


論点5 不況においても積極的にこれからも金融政策を行うべきか。また非伝統的金融政策をどう評価すべきか。

【村上(茂)チーム】
・金利を上げてでも生産性が高い投資を実現するべき。
・ただし公的機関が大きすぎると、民業が圧迫され、公平な立場で十分な利益を稼げない⇒金利の上昇は民間企業にとっては不利。
・金利を上げるにあたっては、競争がまっとうに行われる状況が必要。
(スポーツクラブの例。区営のスポーツクラブの料金では民間スポーツクラブは太刀打ちできない。)

【村上(由)チーム】
※ 時間により議論できず。

【三四郎チーム】
・インフレターゲットの導入には、ほとんどの参加者が反対。実体経済を無視して物価だけをコントロールしようとすれば歪みが生じる。
・日銀も「物価の安定の理解」という形で、暗に1%程度のインフレターゲットを設定している。これをインフレターゲットと名付けるかどうかは本質的な問題ではない。



講評:

 今回は初の試みとしてFEDさんと合同で勉強会を開催しました。課題図書の「成長信仰の桎梏」は、一般向けに書かれた本とはいえ、暗にマクロ経済の初歩を理解していることを前提に書かれた比較的高度な内容のものであり、参加者の中には「本が難しかった」との声も聞かれました。
 ただ、消費と投資のバランスを取りながら経済成長することが重要であるとか、超低金利政策は生産性の低い設備投資を誘発してしまうためよろしくないといったこの本のコアな主張については、概ね理解いただくことができた印象です。
 今回の勉強会が、参加者の皆様にとって、マクロ経済政策に興味をもっていただくきっかけとなったならば、主催者としてこの上ない喜びです。マクロ経済学の初級〜中級の教科書を読んでいただければ、今回の課題図書の内容をより深く理解できると思いますので、ぜひこれをきっかけにさらなる勉強に進んでいただきたいと思います。
 今後も、FEDさんとテーマが合致すれば、合同で勉強会を開催したいと思います。FEDさん共々、今後ともよろしくお願いいたします。
(TSEP代表 三四郎)


 初の合同開催の中、私が担当したチーム9名の中でFEDから参加した人は1名だったため、ややアウェイ感はありましたが、その分議論はとても新鮮で刺激的でした。FEDの読書会では通常、課題図書を読んできた感想を一人づつ回しながら述べてもらい、そこから議論を展開していくスタイルをとっています。今回は事前に議題と仮説が用意されていたので、議題を元に、FEDスタイルで議論を進めて行きました。いきなり話を振られることで戸惑う方もいらっしゃいましたが、徐々に慣れていき、後半は非常に活発な議論となりました。
 一方で、課題図書の内容が難しかったせいか、課題図書に沿った議論というよりは、個々人の知識によった議論になってしまった感は否めませんでした。もう少し皆様が課題図書を引用しながら、課題図書の持ち味を存分に発揮するような議論を展開できるようファシリテートする力量が必要だと痛感した次第です。
 議論においては日本特有の制度についての内容が多かったです。具体的には終身雇用、チャレンジにしにくい制度、お金を稼ぐことに否定的、キャッチアップは得意だけどフロンティア精神にかけるといったようにです。実はこれらの議論はマクロ経済学のモデルではあまり考慮に入れられていません。このような肌で感じている感覚と課題図書の理論を上手く結びつけるような思考をすれば、今後の政策や理論にも貢献できるのではないかと感じております。
 今回の経験をFEDの読書会でも活かし、またの合同勉強会の時にはより有意義な議論が出来る場を提供できるよう、これからも尽力する所存です。
(FED事務局長 村上)

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