ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

経済読書会−東京経済政策研究会コミュの東京経済政策研究会(第18回)活動報告

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
東京経済政策研究会(第18回)2011年7月9日開催の活動報告です。


テーマ:日本の農業の実態
参加人数:32人
主な参加者属性:国家公務員、ウェブ会社経営、会社役員、会社員、医師、FP、秘書、フリーランサー、学生など


流れ:
・発表担当のAryu(山田)から課題図書のポイントを解説
・その後、参加者を3チームに分け、それぞれで事前に用意した論点に沿って議論。
・名刺交換
・各チームのファシリテーターから議論の概要を相互に発表。


全体:
・『日本は世界5位の農業大国』(浅川芳裕氏)を課題図書に、日本の農業政策のあるべき姿について議論。
・全体的な印象として、農水省が推進する食料自給率向上については、何らかの見直しが必要であるとの意見が大方をしめた。
・また、農業のポテンシャルを生かすための戦略について、多面的な議論が展開された。
・なお、今回は、課題図書の著者である浅川氏も参加。浅川氏自身から、本に書いていない農家の実態などについて解説もあり、内容は興味深いものとなった。


議論:

論点1 食料自給率をカロリーベースで計算することに妥当性はあるのか?また、正しい自給率の計算は存在するか?
(チームA ファシリテーター:三四郎)
・カロリーベースの食糧自給率の計算には無理があるとの意見が太宗。
・対案として、「生産工程別の自給率」、「種の自給率」などのアイデアが示された。
・日本人は食糧自給率が好き。国民を満足させるためにカロリーベースの自給率を公表し続けることも重要ではないか。

(チームB ファシリテーター:f_world21)
・カロリーベースの自給率はまったく無意味とは言わないが、政策目標にするほど意味のある数値かは疑問。
・カロリーベースの自給率は諸外国もあまり関心が高くなく、何%を満たせば『食の安全保証』が保てるのかといったベンチマークがなく、日本が何%を目指せば良いかもわかりにくい。
・現在の日本の食生活は、日本が豊かな国であるため外国産の嗜好品も多く、自給率が低いのは当たり前。
・『食の安全保証』という観点から、次のような指標(自給率)があるのではないか。まず、日本人1個人が生きて行くのに必要な日々のエネルギー量を元に、必要な食料の量を計算し、さらにクラス分けする(例:1.最低限生きていくのに必要な量、2.生きていく上では十分である程度満足度を覚える量、3.多くの人が不満なく食生活を送れる量、など)。その重量値に対してどれだけ国内でまかなえるか、あるいは備蓄が存在するかと言った指標。

(チームC ファシリテーター:Kwithcy)
・カロリーベースの食料自給率は、戦後を中心とした時代には歴史的役割はあったものの、現在はその意義は少なく、それと同時に農水省が第一に掲げる目標としては不適切ではないかという意見が多くを占めた。
・ただGDPが経済成長の指標として使われているように、何らかの指標を使うことによって、食料の安全保障を確保していくことは必要であると指摘された。


論点2 筆者の言うとおり、食料自給率が食の安全保障の基準として不的確であるのというのであれば、食の安全保障を考える上で本当に必要な指標というのは一体何なのか?(国家間のリスクマネジメントという複雑な概念を共通的な数値などに落とし込めるのか?)
(チームA)
・食糧安全保障の議論は、戦争などによって食糧輸入が完全にストップするという、ほぼあり得ない事態を想定しているので、現実味がない。
・ロシアの穀物メジャーが小麦の輸出をストップするなど、民間企業による食糧リスクも勘案しなければならない。
・輸入国を分散させても、世界的な干ばつが起きるとリスクヘッジにならないため、各地域のリスクの相関がどの程度なのかを定量的に把握する必要があるのでは。

(チームB)
・まずは安全保障のシナリオを考える必要があるのでは。どういうシナリオで危機が訪れるかにより、求められる指標が変わってくるはず。例えば(国内外の)食品生産地に災害が起き、その地域からの調達が困難な場合、『調達先の多様化』を表すような指標や、あるいは『備蓄』を表す指標が必要。その他にも、中東情勢の影響で石油などのエネルギー源の調達が困難に陥った場合は、『エネルギーの安全保障』を表す指標が求められる。
・エネルギー問題と深くかかわってくるが、エネルギー問題と並列問題なのか、従属問題なのかは意見が別れた。
・消費者側の指標も必要では?たとえば、消費者がどれだけ安心して食品を購入し、消費できているかといった指標。スーパーなどにアンケートを設置し、消費者が食品の安全性や質、価格に満足しているかといったようなアンケートをとってみるのはどうか。
・上記のような指標は、調査会社などがマーケティングなどのためにとっているだろうが、それを政策目標にするほど信憑性のある数値が取れるかは疑問。また、消費者が(食品の質的な内容などを)判断するのは難しいのでは。ただ、『消費者からみた指標』というのは必要。

(チームC)
・カロリーベースの食料自給率を使うにしても、一つの指標で食の安全保障を測るというのは、困難。
・食の安全保障に関しては、資源が重要な位置付けを占めるので、外務省や経産省との連携が必要。歴史的には、農水省と経産省は密接に関連していたという事実もある。
・時代の変化に合わせて、食の安全保障及び農水省の位置付けを変化させていくべき。


論点3 農産品の貿易自由化を促すことは、本当に農業の発展を促すことになるのか?主要な産業が、結果的に駆逐されることにはならないのか?(米の大半が海外からの輸入になるなど)
(チームA)
・中野さんのTPPの本にも書いてあったとおり、農産品の関税率引き下げは、デフレにさらに拍車をかけるおそれがある。
・高関税がかけられている穀物、砂糖、バターなどはいわば「原材料」。原材料に高関税をかけると、食品加工などのビジネスにとって大きな障害となるので、撤廃したほうがよい。
・震災後、福島の食品加工工場の稼働率が下がってしまっている。福島の復興のために、福島限定で、農産品の関税を撤廃してもよいのではないか。

(チームB)
・工業製品の貿易自由化の時に起きたことと同じ結果が起こると予想される。マーケットメカニズムにより、(世界の)消費者に認められた農産物が残っていく。
・日本の農産物は質は高いのだろうが、世界のマーケットではそれだけでは生き残れない。農家に総合的な経営能力の強化をはかってから貿易自由化をすべき。
・食文化があるから自由化してもあまりかわらないのでは。納豆などのような独特の日本食が世界で売れるか(受け入れられるか)はわからない。
・貿易自由化の弊害としては、1.外国産の食品が増えると消費者の不安が増す、2.農家、およびその農家が雇用している労働者が失業する、3.デフレが加速する、などが指摘された。

(チームC)
・貿易を自由化すると、努力を惜しまない農家と努力を行わない農家との差がはっきりする。このことによって、農業産業全体が潤うかについては未知数であるとの意見があった。
・工業製品によって育まれた技術に裏付けられた日本の農業製品は、富裕層に対しては魅力的なのではないか。
・そもそも論として、農業自体の魅力は複雑な物流や莫大な在庫、安い価格の点から儲からないのではという意見もあった。


論点4 日本の輸出競争力がある品目は何か。また、輸出先としてどの国・地域をターゲットとすべきか。
(チームA)
・ある特定の品目の輸出を強化しようとするよりも、日本の食文化自体を海外に広めようとするほうが効果的ではないか(インフラ輸出のようなイメージ)。
・にんじん、玉ねぎ、じゃがいもなどの野菜は、どの国でも使われる。日本の野菜は品質が良いため、海外でも十分売れる可能性はあると思う。
・輸出先国としてはオーストラリアが良い。オーストラリアでは、スーパーが独占状態にあるので、価格が値崩れしにくい。

(チームB)
・日本酒など、日本としてわかりやすいものが受け入れられる可能性は高い。また「日本酒だけ」輸出するのではなく、日本酒を取り巻く文化や関連商品と絡めて世界にアピールしていけば良い。
・日本としてわかりやすいものとしては他に、『健康的な食生活』があげられる。実際にアジア向けに健康食キャンペーンとともに様々な日本食を輸出していく事業も各企業で進められている(最近は米国の他に中国などでのダイエットブームも盛んである)。
・日本市場はすでに大きく、国内の市場を満たすので飽和状態なので輸出しなくてもいいのでは。

(チームC)
・物流や文化の違いを克服するためには、加工食品などの付加価値が高い商品を輸出のターゲットとすべきではないか。過去の例として、日本製の粉ミルクが中国で人気を得たという話もある。
・生鮮食品は冷凍技術などのコスト増によって国際的な競争に勝てる商品ではない。


論点5 米国や英国の農業政策は、本当に日本が参考にするほど優れたものなのか?
(チームA)
・日、EU、米の3地域の合計で30兆円の補助金が農業に投入されている。これらの補助金が先進国の農産品の価格競争力を不当に高め、途上国の農業の発展を阻害しているため、3地域同時に補助金を撤廃していくべき。
・農家の人たちは、決して余裕があるわけではなく、自転車操業の状況であり、補助金をなくしたら生活が厳しくなるのは必至。セーフティーネットの観点からは、ある程度の補助金は必要と考える。
・農家2世帯で農協の職員1人を雇っていると言われる。農協の搾取により農家が苦しいというのもあると思うので、補助金の改革と農協の改革とは一体で進めていくべきではないか。

(チームB)
・アメリカは作物ごとに利権団体があり、ロビー活動などがさかん。日本もやっても良いでは。
・各国の農業政策はどこも一長一短であり、米国や英国のすべてが優れているとは言えない。また発展途上国でもこれは同様(特に発展途上国では農家人口が多いため政治家の票のターゲットになり易く、その結果利権構造ができやすい)。
・諸外国の政策を比較する前に、各国では誰がどういう目的を持って農政を決定し、実行しているかを考える必要がある。
・この論点においては、全体的に情報不足だったため、あとで著者に諸外国(主に米国、英国)の農政の問題点を伺いたいという意見も出た。

(チームC)
・日本の農水省がどうあるべきかという議論から始まり、日本政治がどのようにこの問題に取り組んでいくべきかについて幅広い意見が出された。
・現在の農水省は、一票の力が強い農家や設置法などを背景として、予算や仕事を維持するだけの省庁になっているのではないか。
・上記の問題を解決するために、一票の格差の是正や政治ガバナンスの強化、一定のロビイスト活動の集中回避などの提案がなされた。

・これからの農水省の役割は、自由化を進め、ブランド農家による輸出を増やすために、検疫体制や外交的サポートを行うと同時に、地方の大きな産業である農業に対して、社会保障の代替機能をもつものとして一定の配慮を行うことであるという意見が太宗を占めた。



講評:
 今回は、課題図書の著者である浅川芳弘様にも一般参加者としてご参加いただき、勉強会、懇親会ともに大いに盛り上がりました。課題図書の内容を踏まえつつ、「食糧安全保障にどこまでこだわる必要があるのか」、「貿易自由化は進めるべきか」、「農業への補助金は削減すべきか」といった論点について、かなり踏み込んだ議論ができたと思います。私自身、今回の課題図書と勉強会を通じて、日本の農業の潜在能力がかなり高いことを認識できました。今後は、その高い潜在能力をフルで行かせるような農業政策が必要だと感じました。
(三四郎)

 著者の浅川様が参加してくださったこともあり、全体的に奥深く、面白い議論ができたと思いました。『カロリーベースの自給率をあげる』という政策目標がどれほど意味のないことなのかわかっただけでも有意義でしたが、日本の農業の技術力の高さなどもわかり、日本の農畜産品や加工食品は世界でも売れる可能性は大いにあるなと思いました。また私自身、『農業は地球最大のグローバル産業である』という考えも持つようになりました。
 このように日本の農業の可能性はおおいにあるのですが、今の日本はそれを活かしきれていないと感じました。今回の勉強会では農政の考案者側である農水省に関する議論はあまりなされませんでしたが、農水省をどのような体制にし、どういった農政が必要かも今後考えていきたいと感じました。
(f_world21)

 農水省についてあまり知識を持っていなかったので、今回の課題図書と勉強会は非常に刺激的なものでした。言葉の定義や統計の扱い方によって、認識のズレが生じることや「日本の農業は衰退している」というラベリングをすることによって、日本の農業の様々な面が見えなくなっていたということを改めて肌で感じました。「食料自給率向上という政策は農水省としては”うまい”政策であった」という参加いただいた著者の浅川さんの皮肉交じりの言葉を真摯に受け止めて、これからの日本、あるいは世界の食事情が安全で豊かになるための、時代に適合した農水省の姿を追い求めたいと思いました。
(Kwitchy)

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

経済読書会−東京経済政策研究会 更新情報

経済読書会−東京経済政策研究会のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング