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おしおのくにからのてがみコミュの階段の踊り場

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 潮風にまぶされながらKは燈台の階段を駆け上る。女の手を引いているものだから、見方によればまだるっこい上がり方だともいえるのだが。それにしてもどこまで上り詰めるつもりだろうか。そこで待ち受けるのは巨大なランプ。しかし白昼ともあれば微動だにしていることはない。さては遠くを指さし、異国の船舶についてなにがしらを語るのだろうか。あるいはただ海の彼方へと視線をさまよわせることによって、差し迫りつつあるいっさいの杞憂から解き放たれようと望んでいるのか。もしくは終末的な閉塞感:もっとも聳えているところから転落を試みる、ということ。

 町には階段なるものがあり得なかった。小中学校でさえすべて平屋。近隣の大きな町のみにありえた。とはいうものの、あるお医者さんの建物は町で唯一、二階建てだった。陰気な色をした石材で積み上げられたその建物を子どもたちはヨーカンと呼んでいた。ヨーカンは二階建てで、外からも上がれるような階段がこしらえてあって、子どもたちはひっそりと駆け上がっては階段なるものを愉しんでいた。屋上で足をばたばたさせると中の人に気づかれて叱られ、もちろん追い出されることになるのであった。

 人は階段なるものが苦手だ。疲れるだけだ。あしは水平に動くためにある。なぜ上へと進まなければならないのか。わたしたちは地上に縛られている。駆け上がるのは、どう見ても徒労でしかない。高い建物を築くことはまともな人たちの仕業には思えない。
 それでも上へと上り詰めることを願ったひとびとはいたのだ。上に何があるというのだろうか。

コメント(1)

跳ぶのが好き。階段を跳び上がるのが病みつきになる。宙に留まっていられるから。そのあいだ、時も停まっていると思うだろうが、じつは別物の時が流れている。宙にいることも忘れてしまうほど。気がつくと地上に激突してしまう。でも少しぐらいの生傷はいいのだ。別物の時に身をまかせるなんてことは当たり前のひとにはできることではないのだから。でももし停まった時がお好きなら積もった雪のようにじっとしているだけでやり過ごすことも可能。宙に留まっていることを思い出すまで。そう、階段の上には知られざる時と空間とが潜んでいる。

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