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日本政治思想史談話室コミュの日本(政治)思想史参考文献15撰[現代編]

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 「古典編」に引き続き、より簡潔に「現代編」について記しておきます。紹介する本の大部分は手元にありますが、線を引きながら自分なりに精読した本もあれば「単純所持」(?)に留まる本もあります。いずれにせよ以下に挙げる本はこれから再読した上で、改めて感想をここで述べたいと思っています。あえて、2000年以降に書かれたものを中心に置き、それ以外のものは最小限に留めましたが、割愛した書物の中にも今日なお価値を持つものが少なくないことは言うまでもありません。

※なお、「はじめまして」トピックで話題になったような「戦後思想・ポストモダン・ゼロ年代」的な「最現代」の思想史についての文献に関してはこのトピックの対象外としますが、以下の文献の一部ではその片鱗が触れられていることはあります。

[入門的テキスト]
1.苅部直・片岡龍『日本思想史ハンドブック』(新書館、2008年)

 丸山・渡辺の学統を継ぐ苅部氏と「早稲田出身→東北大学着任」という村岡典嗣と同じパターンのキャリア・パスの片岡氏の共編で、主として1960年代、70年代生まれの若手の論者が自分の専門領域に関して研究案内的な論考を寄せています。通史的な構成を取りつつ、各時代における主要テーマをそれぞれの論者がモノグラフを書く、という体裁が取られています。ブックガイドも目配りも面白く充実しており、記述も新鮮で、「最初の一冊」として推すことができます。但し、コンパクトな冊子に30名以上の論者による短い論考が載せられているために、やや遠心的というか食い足りないというか散漫な印象も残りますが、これはやむをえないことか。

2.佐藤弘夫編委員代表『概説 日本思想史』(ミネルヴァ書房、2005年)

 上掲ハンドブックの「まえがき」で編者の苅部氏が「姉妹編」として(勝手に?)推している本で、分量から考えても1.の「次の一冊」と考えて良いでしょう。編集委員は一人(近年福澤論で鋭い問題提起を行った平山洋氏)を除いて全員東北大学大学院出で、東北学派系の本と言って良いでしょう。概説書としての体裁は整っており、現時点での「標準的テキスト」と呼べるのではないかと思います。9人の編集委員によって、全25章で古代から現代までを網羅した通史です。モノクロながら写真も豊富に掲載されています。

3.清水正之『日本の思想』(放送大学教育振興会、2008年)

 清水氏は東京大学の倫理学科出身なので、1.が丸山系、2.が村岡系であるのに対して、強いて言えば和辻系? 全体に関する参考文献も、和辻哲郎、相良亨、菅野覚明、佐藤正英、という倫理学科の新旧スタッフの書物がまず挙げられています。いわゆる放送大学テキストで、古代から現代に至る日本思想史のオーソドックスな通史になっています。徳川時代あたりをぱらぱら見てもちょっと観点が古臭い匂いがしますが、一人の著者による古代から現代までの通史としては貴重な存在です。 

4.遠山淳、中村生雄、佐藤弘夫編『日本文化論キーワード』(有斐閣・有斐閣双書、2009年)

 前3著が思想史プロパーのテキスト、という体裁を取っているのに対して、本書は日本文化論の基本的なキーワードと代表的な古典を紹介する文化論のテキストであり、「一国思想史」的な思想史理解そのものを問題にするような「歴史的・相対的視点」から日本文化にアプローチしようとするもので、編者には2.の編者佐藤氏のような日本思想プロパーの専門家に加えて、遠山氏のような「異文化コミュニケーション研究」の専門家も含まれています。第1章で、日本文化のキーワード(たとえば「時間と空間」「紅白と白黒」など)が主題的に論じられ、第2章では代表的古典が紹介され、第3章では日本人による日本文化論が紹介され、第4章ではそのような「日本文化論」批判の系譜(戸坂潤『日本イデオロギー論』など)の内容が検討され、第5章「外から見た「日本」では外国人による「日本文化論」が取り上げられています。いわば、メタ「日本文化論」の視点を含んだ「日本文化論」のテキストで、読み物としても気軽に読める興味深いテキストだと思います。特に「日本思想」に予備知識のない向きは、1.よりもこちらから入る方が面白いかもしれません。

コメント(4)

続けます。

[本格的概説書]
5.渡辺浩『日本政治思想史 十七〜十九世紀』(東京大学出版会、2010年)

以下で書いたばかりの新刊案内に譲ります。
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=50743474&comment_count=0&comm_id=4811145

6.平石直昭『近世日本政治思想―近世を中心に―』(放送大学教育振興会、1997年/2001年改訂)

 渡辺氏と並ぶ丸山門下で、特に丸山眞男の徂徠学研究を批判的に継承した著者による主として近世政治思想史の通史で、上記渡辺新刊の紹介で触れた通り「大学院レヴェル」の高度な内容が盛られています。なお、放送大学での放送講義は、特にラジオ放送の場合は教科書の補足解説、悪く言えば事実上の「棒読み」であることが多いのですが、平石氏のラジオ放送では印刷教材を前提としつつこれとは独立した内容の講義がなされ、「放送講義と印刷教材で一体」、という形になっていました。章立てはキリシタン思想、「天道」思想、朱子学思想、仁斎学、徂徠学、石門心学、経世思想、国学、蘭学・洋学、開国・幕末、という通時的かつ標準的なものですが、この著者ならではの鋭い記述が随所にちりばめられています。5.とそれぞれの思想家に関する記述を読み比べてみるのも一興でしょう。

7.佐藤正英『日本倫理思想史』(東京大学出版会、2003年)

 和辻哲郎の弟子である相良亨氏の弟子で、つまりは和辻の孫弟子に当たり、親鸞、『歎異抄』など宗教思想を中心に研究してきた研究者の概説講義がまとめらたもの。目次は次の通りで、オーソドックスな通史というよりは独自の「神」研究に基づいた個性的な内容になっています。宗教に視点を置いた日本人の心性の歴史、とでも言うべきか。分量はそう多くないので、入門書として読むことも可能であろうと思います。

序論 対象と方法
第一章 神をめぐる思想
〈もの〉神の顕現―第一次神話/〈たま〉神の発生―神代神話/天皇をめぐる物語と和歌
第二章 仏法をめぐる思想
 仏法の伝来/仏法の土着/仏法の成熟/原郷世界と栄華
第三章 天をめぐる思想
 武士の思想/儒学の思想/国学の思想/庶民の思想/幕末の思想
第四章 文明をめぐる思想
 文明開化/国家の核としての天皇の創出/キリスト教の解禁/さまざまな潮流/回折する理知/『善の研究』の成立/大正デモクラシー/和辻倫理学

8.宮村治雄『日本政治思想史―「自由」の観念を軸にして―』(放送大学教育振興会、2005年)

 6.と同じ放送大学の日本政治思想史のテキストとして刊行されたものです。宮村氏は渡辺、平石両氏と同世代の丸山門下の政治思想史家で、長らく東京都立大学で教鞭を取り、中江兆民に関する在外研究も踏まえた緻密な論考で知られています。本書は「日本における『自由』の語義と観念の歴史」、いわば「自由」の「概念史」とも言える本格的な個別論考であり、各時代の思想史的状況は浮かび上がっては来るものの、いわゆる入門書、概説書とは一線を画する書物であり前掲平石著よりもさらに一般向けの教科書としては難解なものであるという印象があります。但し、「自由」という政治思想における最も基本的な概念の一つの、アジアの一隅の日本における展開を比較思想的な観点も踏まえてトレースしてゆく、という野心的な試みは、例えば3.のような典型的な教科書よりも、入門教材として面白いと感じる向きもあるかもしれません。
[近世思想史概説]
渡辺、平石ら丸山学派以外による徳川思想の概説として以下の2著を紹介しておきます。

9.子安宣邦『江戸思想史講義』(岩波現代文庫、2010年。親本は1998年刊行。)

 子安氏は出身は東大倫理学科ですから和辻学派の圏域内にある研究者ですが、大阪大学で教鞭を取りながら、仁斎、徂徠、宣長、篤胤、福澤等の日本近世、近代思想の重要思想家に関して多くの著作を早くから世に問うて来ました。ミシェル・フーコーの「言説」理論に衝撃を受け、ハリー・ハルトゥニアン、酒井直樹氏らのポスト・モダン的な論調と親和関係にあるように思われる(特に)近年の子安氏の論調には賛否ありうると思いますが、我が国における代表的な徳川思想研究者による概説として挙げておきます。また、子安氏の『日本近代思想批判』(岩波現代文庫、2003年)などのような日本やアジアについての「語り方」そのものについての批判的論考も参照に値するものでしょう。

10.源了圓『徳川思想小史』(中公新書、1977年)
 
 卒業は京都大学文学部哲学科ですが、長く東北大学文学部の教授として近世日本政治思想史の教授を務めた研究者による簡便な通史で、長らくこの分野のスタンダードな入門書として位置づけられていました。刊行年からも窺えるように内容はやや古く第一線の入門書とはもはや言えないように思いますが、新古書市場で比較的安価で手に入りますので、一読の価値はあり、ということであえて入れておきます。「京大文学部→東北大学文学部着任」というパターンは、石田一良と同じです。東北学派には早稲田からの流れと京大からの流れとがあるようです。
[近代思想史概説]
11.米原謙『日本政治思想』(ミネルヴァ書房、2007年)

 大阪大学法学部出身で主として中江兆民、徳富蘇峰、植木枝盛などの思想家を研究してきた著者による、幕末から戦後に至る近代日本政治思想史の通史的概説。内容はオーソドックスかつ網羅的で、入門書としては好適か。コラム「日本政治思想史への誘い」は自伝的エッセイとして面白く読めます。

12.坂本多加雄『知識人―大正・昭和精神史断章―』(読売新聞社、1996年)

 90年代後半の著作で、表題の通り日本近代の知識人論で通史ではありませんが、大正・昭和思想史の概説として読むことができます。筆者は丸山眞男の直接的な講座後継者であった松本三之介氏に師事し、西洋思想史の学殖を基礎に日本近代思想史、特に山路愛山論、福沢諭吉論などに新機軸を打ち出すと共に、いわゆる「保守派論客」的な立場からいわゆる「つくる会」等の現実の政治運動にもコミットした実践的かつ「異端」の研究者でしたが、不幸にして病を得て亡くなりました。刊行当時まだマジョリティであった「戦後啓蒙」的な視点とは一線を画したその知識人論には今なおイデオロギー超えた定評があり、今日でも一読に値すると思われます。

13.松沢弘陽『日本政治思想』(放送大学教育振興会、1989年)

 80年代後半の著作で、現在は絶版ですが、コンパクトな日本近代政治思想の教科書として今なおよく参照、言及されます。筆者は丸山眞男の弟子で1930年生まれですから、いわゆる団塊の世代である上記渡辺、平石氏よりも一回り以上上の世代に属します。日本社会主義や福沢諭吉に関して重厚な研究を残している研究者で、大学で行っていたであろう講義のテキスト化が望まれますが、今年で80歳という御高齢ですからちょっと難しいでしょうか。ともあれ、図書館、古書店市場で本書に触れることは可能です。オーソドックスな明治・大正政治思想史のテキストです。

14.松本三之介『明治思想史―近代国家の成立から個の覚醒まで―』(新曜社、1996年)

 前掲坂本氏の師匠である松本氏が編集した『明治思想集』1、2、3(近代日本思想大系30・31・32、筑摩書房)の巻末に付けた解説に加筆したもので、きわめて穏当かつ堅実な明治思想史概説になっています。『明治思想集』を傍らに置いて読めば、明治思想原典案内にもなるでしょう。著者には他に『近代日本の知的状況』(中央公論社、1974年)、『日本政治思想史概論』(勁草書房、1975年)『明治精神の構造』(日本放送出版協会、1981年)などの概説書もあり、この3冊と本書を合わせると江戸初期から昭和期に至る「三之介通史」の輪郭が一応掴めるように思います。

15.西田毅『概説日本政治思想史』(ミネルヴァ書房、2009年)

 唯一、手元になく未読(さきほど古書店から「発送しました」メールが来ました。)ですが、2.と同じシリーズで「政治」が付いていますので、一応挙げておきます。内容は幕末から戦後まで、ということですから古代からの通史ではなく近代政治思想史ということになります。正直、ちょっと苦手な編者(同志社学派!)なのですが、目次をざっと参照する限り一読の価値…はともかく必要はあるように思います。目次は以下からDLできます。http://www.minervashobo.co.jp/book/b49762.html
 以上の15冊(+α)をとりあえず「現代編」とします。標準的な入門プロセスとしては、「1.→2.」あるいは「4.→(1.→)2.」で入門コース、そこから徳川思想に行く場合には好みに応じて5.か6.(初学者に比較的優しいと思われるのは分厚いけど5.の方だと思います。)に体当たり、近代に行く場合には5.または6.ほどの決定版はありませんが、11.〜15.に行く、ということになるでしょうか。或いはいっそ、1.または2.の参考文献案内に沿って原典や関連書にそのまま進んでしまった方が良いかもしれません。ていうか、私自身がこんな感じでこれからここで「再入門」したいと思います。この稿はとりあえずここまで。

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