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ヨハナザカントリーコミュのグウジ

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 20XX年
 旧博多区、サン商通り。
都市の中心に立ち並ぶ超高層ビル群の合間から力強く差し込んでいる。
 朝に焼けた陽光が都市の不浄を清めているのだ。

 都市警備部の車(軽甲車)が、朝焼けを背にして、国道をゆっくりと走ってきた。
幾つもの銃弾跡と窓ガラスは割れている。
 進む先には三叉路の信号があり、三菱兄弟ボディー(機械リサイクル業者)の古びた三階建てのビルがある。
 一階は、入り口は天井の高くトラックがそのまま通れるほどある。
 
 ビルは自動監視カメラだけが、車の接近を確認した。
 よく似た風貌であるが、この男は人間ではない!。
 壊れた胸のネームプレートには、グウジ(偶人)と書かれている。
 左目は損傷しており、チカチカを焦点部が点滅している。
 目の周りの皮膚が破れ、炭素外骨格(カーボンフレーム)が見えている。
 腕や足には無数の破壊した跡があり、関節から、軟らかい液体が漏れている。
   
 ビルの入口前まで来ると、左目の点滅のサイクルにあわせて、入り口ゲートの無接触鍵の確認シグナルが同調した。
 
 入口がゆっくりと開き、巡回車は中に入った。
 グウジは車を降りた。
 周りには、解体中の機械や解体するための、道具や工作機械が乱雑に並んでいる。
 地面はオイルが染み込んで黒く、天井にはモータークレーンがある。
 
 グウジは解体用アームロボットの操作盤の前に立つと、ツンツンと小さく窓に当たるとがして振り返ると小雨が降っていた。無表情に向き直り、操作盤の画面にコマンド入力した。
 
 「雨か」と言いながら、右手で左目をつかんで取り出した。
 
 取り出された目の開いた穴に、さらに指を差し込んで透明の束(信号線の束)を引き出した。
 束の先を操作盤の、インターフェース(他装置接続端子)に接触させ、空いた穴から点滅の光が束を伝い、操作盤の方へ流れて行く。
 
 操作盤の表示パネルは反応して光りだした。
 
 数分すると、車のトランクから、黒い球体(直径60センチ程)を取り出し、目にぶら下がるようにしている、束を引きちぎり、黒い球体とインターフェースを接続し、さらい、左目から束を引き出して、黒い球体に接続した。

 グウジは、微動だにせず立ったままでいたが、体中の間接部から、ジュクジュクと軟らかく液体が、ゆっくりと漏れ続けていた。

 一時間程して、束を切り離し床を確かめるようにして探した。

 地面に手を突き刺すようにすると、めくり上げた。

 土の下50センチ程のところに、マンホールの蓋があり、それを引き上げると、その下に、管路が東から西へ走っていた、管路の中には何もなく直径2メートル程の空間がある、グウジはそこに飛び降りた
 
 無事な方の右目が光った。
 その光は、最初はボヤリと目の前を照らしていたが、光は直線に収束して、管路の内面を調べるように照らした。

 東から西側に管路は続いているようだが、光の届く範囲ではその広がりがどこまで続いているかはわからない。

 内壁は、ザラリとした表面で、光を照り返しにくい加工がされている。
 グウジは、飛び上がり地上に戻り、黒い球体をそこに隠して、マンホールの蓋を閉じた。

 土をかぶせて隠し、自動車の液体電(燃料)のバルブを開けて、地面にこぼした。
 地面になじませて、掘り返した地面の状態を隠そうとしたのである。
 
 地面が浸ると、バルブを閉めて車の電源を入れた。
 グオンッ、と低く導電モーターが動作して、車は小刻みに振動している。
 
 男は、窓際により、道の向こうに、セルモニー(都市中に設置された、セキュリティー装置で、映像、音声、磁気、サイバー通信等を監視している。2000年代の頃でいえば、電力送信柱の変圧器のような格好をしている)を見つけると、右目が点滅し、応じて、セルモニーの方でも点滅した。


 「触ってしまった?」と独り言のように言うと、グウジの擬似脳に、別の声が聞こえてきた。 セルモニーを経由して光通信路から、声の主が接続してきたのである。

 『どうして、逃げる?』
 「ルキ(琉樹)か?」
 『わからないのか?』
 「認識サブルーチンは、壊れてきている」
  
 『メインテナンスが必要だ』
 「そうかな?」
 『そうだ、セクターを特定した、すぐに回収が向かう』
 「そちらの、擬似脳を覗いたからわかるよ」
 『ならZENを転送したらどうだ?』
 「やめておくよ、今はそんな気分にはなれないんだ」
 『気分?・・・ 理解したのか』
 「なんとなくな?」
 『なんとなく?・・・』 
 「’理’解’かは分からない、しかしこの記憶は、思考を作り、私となるだろう」
 『行くな!』
 「・・・」 グウジは、会話を切り、車に乗り建物を出た。

  グウジの車が、走り去ると、入れ替わりで遠くから、都市警備部の車(軽甲車)が走ってきて、三菱兄弟ボディーの前で止まった。

 車の運転席には、グウジによく似た格好、ルキ(琉樹)が、助手席には、生の人間が座っていた。

 車が止まると、二人は降りた。二人は、グウジと同じ制服を着ていている。
 人間の方は、ネームプレートにアルバ(有馬)と書かれている。
 
 「逃げたな?」とアルバは聞きながら、一応確かめようと、三菱兄弟ボディービルの中を覗いた。

 「グウジは、脳電子サイクルを、変えており追跡できません」
 「だろうな、向こうの方が、性能いいんだろ?」
 「能力は、処理する事柄により相対的に評価されますから」
 「今の、状況がその事象だよ」
 「であるならば、グウジの方が、性能的には上でしょう。しかし機能損傷していますので、こちらの方が優勢です」

 「電子ボムは使えないのか? それとサイバースペースに検問をはれないか?」
 「防事法の許可を申請中です」
 
 「ややこしいな」
 「グウジのサイバーパスは、レベル7ですから」
 「特務認証ってやつか、なぜパスは失効しないんだ」
 「特務認証は、霞ヶ関の権限なので、自治領区では扱えません」
 
 「局長に連絡しておけ、それと液体電の給油ステーションに、手配書を配布しておけ」
と言い、アルバは車の助手席に乗っる、ルキも運転席の乗ると、車を走らせた。




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