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あまりに格好いい告白を考える会コミュのScene3 サッカーW杯のスタジアムにて

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それはサッカーワールドカップのとある試合で起きた出来事だった。
相手国での試合だったせいか、日本は完全にホームの空気に飲まれてしまっていた。
1対1のまま向かえた後半戦、時間も残りわずかの緊迫した状況でそれは起きた。

突然場内がざわつきだし、フィールド上にユニフォームをまとっていない一人の男が走り込んできた。
「おーっと、グラウンドに何者かが乱入してきました!」
異変を察知した実況の声がスタジアム内に響き渡る。
警備員の制止を振り切りボールに向かいおもむろに走り出す男に選手までもが試合を忘れ釘付けになった。
皆気付いていた、彼がフーリガンとは何かが違うということに…

男が声を張り上げる。
「裕美!オレはお前が好きだ!」
彼の視線の先にはゴールが、そしてその奥の観客席に座る一人の女性がいた。

いつしか場内のざわめきが止み、男は再び口を開く。
「このゴールを決めたらオレ達も…オレ達もゴールインしよう!」
その言葉に皆耳を疑った。
「なんとここで突然の告白です!」
動揺しているのか、実況もそのまま男を実況し続けた。
時が止まった様に音の消えたスタジアム。
すると、静まり返ったスタジアムの何処からか拍手が鳴り始めた。
少しずつ、だが確実にでかくなる拍手の音がスタジアムを包む。
その音に負けたのか、先程彼を制止していた警備員達すらも足を止め彼を見守った。
そう、スタジアム全体が彼と、彼の『告白と云う名の試合』の続行を認めたのだ。

ホイッスルが鳴り、時計が止められた。
「これは試合です。但し、ゲームではない、言うなれば人生を賭した彼の挑戦です。」
実況は静かに、だが誰よりも熱い気持ちで彼を応援した。

男の足が動きだし、ゆっくり走り出す。
彼はボールに一直線に向かっていった。

ドッ

ボールを蹴る音がスタジアムに響く。
彼の気持ちを乗せたボールはまるで羽を得たかの様に高く舞い上がった。
全ての人が息を飲んだ。

しかし、試合の神様はこの試合を認めなかったようだ。
ボトッという音と共にボールはゴールの手前に落ちる。
皆深い溜め息と共に落胆し下をうつむいた、ただ二人を残して。

「…残念です、残念としか言…」
実況がそう喋り出した瞬間、場内にかすかにどよめきが起きた。
そのどよめきの中心には彼女がいた。
彼女の手の上には先程まではなかったはずの小さな箱があった。
そう、彼はボールと共にこの箱を彼女目掛けて蹴ったのだった。
「開けてくれよ。」
男が言う。
小箱をそっと開けると中で小さな指輪が輝いていた。

「オレ達結婚しよう。」

終わったと思っていた試合の延長戦に皆驚き、そして言葉を失った。
静まり返るスタジアムに今度は彼女の声が響く。

「ごめんなさい、指輪は確かに私の胸にゴールしたけど、私あなたとはゴールイン出来ないの。だって二人がゴールするにはまだ早すぎるから…」

やはり無理だったのだろうか。
さすがにこれ以上の望みはないと皆思った。
そして彼女は言葉を続ける。

「あなたの願いはまだ聞けないけど、代わりに私からもお願いがあるの。

私とスタートしてくれませんか、第二の人生のスタートを。」


「ゴーーーールッッッッ!!!!」
実況の声と割れんばかりの歓声と拍手がスタジアムを包み込んだ。
どうやら恋の神様はこの試合を認めてくれたらしい。
スタジアム中に響く拍手はいつまでも鳴りやまなかった。


ズキューーーーン!!!!!!!

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