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栗本慎一郎コミュの栗本&吉本『相対幻論』

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吉本隆明&栗本慎一郎『相対幻論』角川文庫1985(83)

■全体の要点■
●マルクス以後の思想をどう超え、何を生かすか
●市場社会化の必然力に対して経済人類学はいかなる意義を持つか
●DNA、遺伝子、無意識など、文化といったパンツを拒んで、意識と市場社会は生まれる
●硬い倫理性を越えたラディカルさ、自己解体が文学に要求された
●人攫いに遭いやすい心性への共感

このレジュメより詳細な内容は、僕の日記に張ってあります
Wordで8000字程度ありますので、ここのはそれを再び圧縮しました

■要旨■
第一部 あえて根源へ
? 存在=歴史 遡行する視線(pp12-43)
 吉本:歴史が非市場社会から市場社会へ到達する〈必然力〉(マルクス)
     ⇒ 市場社会批判は無理難題ではないか
 栗本:日本と西ヨーロッパだけが市場社会化した
    ・ 意識は、無意識的な情報システムによる拘束を拒絶しようとする
     ⇒ 文化という名のパンツを脱ぐことのできる近代社会が築かれる
 吉本:非市場社会の考察から市場社会にそもそもアプローチできるのか
    ・ 経済人類学の考察…〈アジア的〉社会とそれに近い社会にだけ有効
    ・ 近代社会にはこれとは別のモデルが必要
     ⇒ マルクスの、未開⇒原始⇒アジア的⇒古代という概念を普遍化したい
 栗本:非市場社会から市場社会へ、という発展段階説自体に問題
    ・ かといってポランニーのように非市場社会への回帰を意図するのは単純
? 浮遊する〈現在〉の岸辺(pp43-85)
 栗本:人間の意識は、DNA、遺伝子の支配を拒んで生まれる
    ・ 非市場社会から市場社会が生まれ出るのと同様
     ⇒ 『共同幻想論』のなかに同様の問題
    ・ 先進的工業社会でも吉本氏のいう内と外の対立問題は存在する
 吉本:『共同幻想論』を書いた際の自身の経済決定論を越えたい
    ・ 市場社会の浸透は悪いことか
    ・ 社会主義国に互酬性の存在余地がなくなっているという栗本氏の指摘に興味
 栗本:非市場社会がユートピアであるという幻想
    ・ 非市場社会に嫌気 ⇒ 市場社会へ
    ・ 社会主義国は市場交換のみならず、共同体的な互酬と再分配を破壊
    ・ 社会主義国には都市を農村化すればいいという発想も存在
     ⇒ ルーマニアのように近代以前の社会へ退行
? 深層から表層へ至る回路(pp86-135)
 吉本:ソ連は一時期〈アジア的〉社会の貢納的ユートピアだった
     ⇒ 当時まだ農業に産業が介入していなかったからにすぎない
 栗本:原始的でも古代的でもない共同体はスケープゴートとして貨幣を必要とする
     ⇒ このことを社会主義は理解していなかったために破綻した面も
 吉本:奈良時代の政府による貨幣の部分的流通についての栗本氏の分析に興味
    ・ 共同幻想間の交換⇒交易   対幻想間の交換⇒結婚
    ・ 共同体が強く閉じているほど神隠し、人攫い、略奪婚の物語が普及
     ⇒ 神隠しに遭いやすいという〈心性〉に共鳴
 栗本:自分も共鳴した
    ・ 『遠野物語』は身体の不自由性と呪縛を暗示している
    ・ 近代社会の中にも類似の揺らぎ ⇒ サブカルに表出
    ・ サブカルの面白みは身体の呪縛を非言語的に演ずるところ
 吉本:文学の面白さは倫理主義を転倒させるラジカリズムにある
第二部 開かれた〈知〉の閉域
? コスモロジカルなパフォーマー(pp138-72)
 吉本:「〜のため」という考え方や〈現在性〉の自己否定が面白い
 栗本:「ため」のない馬鹿騒ぎ漫才もだめだが、人生訓になるとつまらない
 吉本:サブカル⇒文学の主流   カルチャーのテーマ⇒自己解体
? 無限装置としての思想(pp172-203)
 栗本:ドゥルーズの〈器官なき身体〉
    …有機体から外れたところにある身体、パンツを脱いだ状態、自己解体した状態
 吉本:ドゥルーズの「カフカ論」は動物への変身を重要視して見える
     ⇒ パンツを脱いだ状態を第一義と考えているかは分からないところあり
 栗本:バタイユもドゥルーズも共同体の外を問題化していない
? 未明へ飛び交う言葉たち(pp203-25)
 栗本:ボードリヤールのいう記号論的消費は、近代に限った問題ではないのでは
 吉本:近代が記号の時代であるとすれば、あとは記号の革命だけが残るかもしれない
    ・ 倫理性を排して徹底的に記号とコードを語るボードリヤールはラディカル
 栗本:マルクスを越えて疾走するボードリヤール
    ・ 上部構造と下部構造で捉えたマルクス
     ⇔ ボードリヤール:一切はコードの支配下に置かれる
    ・ ただ、ボードリヤールは記号の革命について具体性に欠け、どこか楽観的
 吉本:そうではなく、彼は資本主義社会の到達点を見ているのでは
    ・ 資本主義的に豊かな社会では、倫理性、したがってマルクス主義が無意味
? 揺動しつつあるトポス(pp225-43)
 吉本:問題はマルクス主義ではなく、マルクスである
    ・ ボードリヤールは『象徴交換と死』でマルクス主義を超えた
    ・ ドゥルーズや構造主義者はマルクス主義の枠内ではないか
 栗本:経済人類学の今後の問題点
    ・ 『心的現象論序説』における原生的疎外を解消しようとする人間存在の解明
? メッセージなきメディア(pp243-69)
 吉本:欽ちゃんをラディカルにするとビートたけし、たけしとタモリはインテリ寄り
    ・ ビートたけしが技能賞 ⇒ 欽ちゃんは大衆芸能賞
 栗本:吉本氏は松田聖子より、口が大きく太い眉の柏原芳恵の方が好みらしい
 吉本&栗本:『戦場のメリークリスマス』はつまらなかった

コメント(12)

栗本経済人類学のベースコンセプトの1つ、日本と西ヨーロッパだけが市場社会化した、をめぐっての吉本隆明との戦いは読みごたえありますね。
> 『遠野物語』は身体の不自由性と呪縛を暗示している


『遠野物語』と身体。興味深い問題ですね。『遠野物語』を読みなおしてみよう。
こんにちわ。

> たかしさん
それにしてもどうして、日本と西ヨーロッパだったのかが、少し気になっています。
日本と西ヨーロッパというと、冷戦前でいえば資本主義圏ということになりますが、
この時すでに栗本氏は、社会主義圏に対する期待など持っていなかったのでしょうか。
社青同時代の栗本氏についても、知りたくなってきてしまいました。

> まにさん
このとき、吉本氏も栗本氏も、村落共同体をなにか束縛的なものと見ているのですね。
しかもそれを身体と結びつけるという・・・。
「越境する身体」という考え方には、むしろ無意識的な抑圧に対して、
抵抗せざるをえないような身体性を見る立場もあったのですが、
両氏の見解は新鮮なものでした。

該当個所の少し詳細な要旨です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■吉本:共同幻想間の交換が交易で、対幻想間の交換が結婚ではないか。共同体が互いに強く閉じていると近親婚になる。そこで神隠し、人攫い、略奪婚などの物語が現れる(pp94-97)
■栗本:『遠野物語』や『無縁・公界・楽』、『ハーメルンの笛吹き』の話を思い出す(pp97-103)
■吉本:神隠しや人攫いに遭い易い人がいた、という心性の部分に重要性があると思う。どうしても共同体の存続が望ましいと考えるならともかく、共同体はなくなってしまった方がいいのではないかという考えから『共同幻想論』のモチーフが出てきた。『遠野物語』の、山中に攫われた床屋の娘と偶然出遭った猟師の話に、自分でもおかしいのではと思う程心に訴えるものを感じた(pp104-11)
■栗本:実は自分も。マルクス主義者は身体性に戻れというが、身体自体が他者であって、身体性の復権を容易に論ずるのはおかしい。「われわれは、いま自らの身体や生理をセルフ・コントロールできずにいるんだということを痛切に感じざるを得ない」状況にある。『遠野物語』の民話や「信太の森のキツネの話」は、身体の不自由性と呪縛を暗示している。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
当時の「日本と西ヨーロッパだけが市場社会化した」という主張は、梅棹忠夫『文明の生態史観』を彷彿させました(小浜逸郎もそんな感想を書いていましたが…)。
川勝平太『文明の海洋史観』やジャレド・ ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄〈上下〉』と読み比べてみると、どうでしょう?

互いの発想の類似点や相違点が、はっきりしてくるかもしれませんねわーい(嬉しい顔)

私はまだ、『銃・病原菌・鉄〈上下〉』は、積ん読状態ですが…(>_<)
すいません。最近多少バタバタしてます。
10月一杯はインドに短期調査に行きますので、年末になれば若干落ち着くかと。

「第二回読書会」スレッドで真悠さんが述べられてますが、
栗本氏は互酬と再分配の具体的なことについては滅多に言及されないようですね。
ポランニー『経済と文明』の第二部辺りにあったと思いますので、
ポランニーのいう互酬と再分配がどういったものだったのか、
概観を摑んでまとめてみます。
遅ればせながらマルクスの思想も概要を把握しないと・・・。

政治思想についても最近はちょこちょこ勉強していますので、
年末には『パンツを脱いだサル』か、
これ以外の自民党について記した2冊ほどの本を、
またレジュメにして載せたいと思います。



栗本慎一郎氏もそうですが、梅棹忠夫氏もジャレドも、
人類学というより、人間存在自体に対するこういう関心の持ち方が好きです。
一部の地域研究ではどうしても収まらない、というのでしょうか。

僕も『銃、病原菌、鉄』をまだ読んでいません。
狩猟採集/農耕定住の区分は色んな意味で興味がありますね。
『狩猟と供犠の民族誌』のなかで、
中村生雄氏がどういうことを記しているのかも知りたいのですが、
文化人類学系の学会では、
狩猟採集/農耕定住という区分には、
非宗教/宗教の区分が凡そ一致していると言われています。
平等的/ヒエラルカルという区分も、概して見られるそうですが。

とくに供犠の宗教というと、
狩猟採集型社会と農耕定住型社会の間には断絶が引かれています。
狩猟採集社会自体に、宗教は極めて少ないそうですが、
僕が今まで読んだ限り、狩猟採集社会に、
血の供犠を行なう宗教は、ありません。

アフリカのピグミー系の社会の民族誌を読むと、
ポランニーのような懐古主義者が生まれることもやむを得ないのではないか、
と思わせるような生活世界が描かれています。
栗本慎一郎氏は1983年の段階では、狩猟採集民は理想的に語られても、
苦しい表情をしているに違いない、信じておられましたが。
とはいえいずれにしても狩猟採集社会に生きることはもう僕には無理でしょうね。
十年以上先になると思いますが、狩猟採集社会も調査してみたいと思っています。
安定するまでフィールドはインドに絞らざるをえないですが、インド以外では、
現代的な産業都市社会と、
アフリカの狩猟社会とメラネシアの民族を長期調査するつもりでいます。

僕自身は、農耕定住型を始めたことによる、
自然に対する「畏怖」の増大、また自然や祖先に対する「負債」(obligation)、「不安」が、
供犠を伴う宗教の展開に決定的な影響を与えたのではないかと仮説しています。
「畏怖」、「負債」、「不安」などの心性は、一見宗教と無縁の現代社会でも、
社会にとって決定的な項目になっているんじゃないかと、僕はほとんど信じてます。
人類史の軸の中で、「畏怖」、「負債」、「不安」に関わる社会的行為の変遷を描いてみたいですね。

途中から自分のことに外れてしまいましたが、
また今度まとめて投稿したいと思います。
「心的現象論序説」角川文庫でもっていたけれど、どこかにいってしまいました。とりあえず図書館で読むことにします。


『遠野物語』を、まず口語訳で読みはじめています。『遠野物語』に親しんでいる女性に訳の感想を聞くと、面白くない、という答え。つまりこの物語は、その語り口が重要だ、ということだと思います。『遠野物語』を語る身体表現。『遠野物語』はまず、そんな身体に拘束されている。事実や意味を知るだけなら標準語でもいいはずです。
>狩猟採集社会のほうが恒常的に自然に対する「畏怖」を感じる機会が多そうですが、そうでもないんですねー。

そうなのです。狩猟採集社会が農耕定住社会より信仰がとても薄いと聞いた時、
だから僕も、一体どうしてなのか疑問だったのです。

もちろん、狩猟採集民が住むような仮住まいから、
一気に僕らが住んでいるような頑丈な家になると想像すれば話は別だと思うのですが。

遊牧民ならまだしも、農耕定住型は生計の維持にも、
土地や天候への依存度が強いんだろうと思います。



遠野物語の、神隠しの心性というのはとても気になります。
この当時、吉本氏も栗本氏も、それは「村的な束縛を嫌がる」ような情動として、
共感を示していたように思います。それは村だけではなくて、
それこそ栗本氏が仰るガクシャセンセーの世界でも、
年功序列的なカイシャの世界でも、似たようなところがあると思うのです。

これは僕の場合にも当然共感できる領域なのですが、
神隠しの心性について、それ以外の動機や切欠がないものかも気になりました。
つまり、ムラを離れるという結果に、ムラを毛嫌いして、
という僕らにも共感できる以外の動機や切欠もあるかもしれないと思うのです。
>まにさん

「心的現象論序説」と「心的現象論」は、別の著作と考えたほうがいいみたいです。

吉本氏自身が語っていました。
そして「心的現象論序説」は、確か自ら絶版にしたんじゃなかったかな?

それにしても、9万円という価格は、どうなんでしょう?(^_^;)
「大衆」が気軽に買える価格じゃない(笑)
上のコメント、「記憶違いかも」と思ってネットで調べてみたんですが、確認できませんでした。

私の間違いだったら、すみませんあせあせ(飛び散る汗)

ちなみに、9万円という価格は愛蔵版で、amazonを見ると、普及版は8400円で買えるみたいですよ(でも高い)。

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