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サフリトモノカイコミュのPTSS鏨編・XX

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コメント(9)



 ──起きるか、今は日は出ている時間か?
 一切光の入らない部屋で、徐に起き上がり、夜着のまま窓を開けると、日が射し小鳥の囀りが聞こえた。
 今日は何処へ出るか……、取り敢えずはギルド、クエストオフィスに出向かなければだな。
 依頼かあいつらからの用があればそれに乗るのも悪くはないな。
 今日の方針を大体決め、身仕度を整える、所々妙な違和感を覚えたが、支障はないだろう。



 根城を出て、オフィスに向かう途中……。
「タガネさまー」
 いつもの気配を察し、横へ体一つ分動くと、その元いた場所に娘が一人倒れ込む。
 この、金糸の髪と各所に薔薇をあしらった服を着た娘は俺を見つけるといつもこの様に飛んでくる。
 よくもまあ毎回飽きもせずに続けられるものだ。
 しかしこいつには借りもある分、無碍にするのも悪いと……は思っていないな。
 気にせずにまた歩き出すと、起き上がったのか追い付いてきて腕を組んでくる。
「タガネ様、本日はどちらへ行かれるの……あら?」
 語句が止まるのを妙に思い、顔を向けるとまじまじと見詰められ。
「タガネ様……、ですの?」
 ──何を急に言い出すかと思えば訳の解らない事を。
「どう言う事だ? 俺は……っ!?」
 そこにワイヤーダガーが飛来し、後ろ手に捕り侭来た方へ投げ返す。
「小僧、毎度毎度……貴様も飽きないな」
「よお、相変わらず侍らせてんな……ん?」
 鋼線を束ねながら近付いて来る小僧の言葉が途中で止まり、訝しげな表情に変わる。


「ん−? あ−? わり、人違いだわ」
 一頻り俺の顔を眺めると、踵を返し離れていく……、どう言う事だ? こいつまで何を言い出す。
 苛立ちが募り、小僧の後ろ襟を掴んで。
「人違いでは無い筈だろう? 今のは反応出来なければ死ぬぞ」
 先程のダガーの軌道を詰問する。
「速っ、結構離れてたろ、今」
 ──俺の瞬発力は知っているだろうに、しかし……間合いを見誤りかけた、……くっ。
 まあいい、この二人の余所余所しさは何だ。
「人違いだっつ−の、オレにあんたみて−な知り合いはいね−よ」
「ほう……、これを見てもか」
 俺は鈍を抜き、刃をゆっくりと首になぞらせる。
「ばっ、危ねっ! ……? 斬れてねえな、そいつは……、なんであんたが持ってんだ」
「これは元々俺の物だ、それにこんな只薄いだけの斬れない刀を創ろうと思う奴もそうそういないだろうに」
 何かが引っ掛かる。
「何故お前達は人違いと言う結論に到った」
 回りくどい事は言わず、直接的な問いをする。
「あ−何かな、背格好雰囲気は変わんねーんだけど、ニュアンスがな……」
「そうですわね、タガネ様に変わりは無いんでしょうけれど、何かが違うと言うか……」
 余り要領は得んが、思い当たる節はある。
「……そうか、確かに今日身仕度の際に多少なりとも違和感を覚えたのはその為か」
 ──しかし、何だ? 何が違う……。
「クサビ−、タガネは見つかったの? ん、そちらの方はどなたですか」
 こいつも、俺と認識していないのか。
「ソウ、あなた今……、なんて?」
「ん? タガネは見つかったのかって、言ったけど?」
「タガネ様はこの人よ」
 俺を指差し返答する楔、これも失礼に値しないのか。
「何言ってるのさクサビ、この人雰囲気や諸々は似てるけど、違うと思うよ」
 この三人の中では比較的まともなこの女がこんな事を言い出す始末だ、何がどうなっている。
 ……鑑にでも頼るしかないか、あいつに迄指摘されるのなら、何かあるとしか思えん。
「……、まあいい、俺は鑑の所へ行く、またな」
「待ってタガネ様、私も行きますわ」





 ──鑑は今なら治療院に居るか。
 早速イカス治療院のある六剣亭へ向かう。
「鑑、居るか?」
 中に入り鑑を呼ぶ、数分待ったところで返事が聞こえてきた。
「はい、どなたです? ああ、鏨さんですか、今日はどういった用で? 楔さんも怪我は無いようですし」
 何時もの様に落ち着いた風な表情で鑑が出てくる、こいつは迷わなかったな……。
 三人の一連の反応を説明し、鑑の反応が普通な事を問うと。
「いや、遠目からでは印象は変わらないのですが、近くで見ると何か線が細くなったような印象がありますよ、
 ……それに、背も多少低くなってませんか?」
 顎に手を添え、繁繁と観察する様に見る鑑、不意にその手が顔前に伸びてくるが掌で受ける、
間髪を容れず右膝に足刀を振って来たのに対し、脛で受け。
「何だこれは?」
「いえ、反応は落ちてな痛ててて」
 受けた手を握り込む。
「それで、どう言う訳だ」
 鑑は最初は痛がったが、間も無く平静を取り戻した一言目が。
「……握力、落ちてません?」
 的を射なかった。
「解らんな……」
 握り込み続けても骨の軋む感触などは変わらない、それでも鑑は平然と話を続ける。
「何があったんですかね……、一寸向こうで診てみますか、センセー、診察室借りますよー」
 鑑に連れ立ち診察室へと向かう。




「じゃあ、そこに座って、上開けてて下さい」
 何か支度をしている様だが、尋ねてきたのはこちらの方なので言われた通りにする。
「あれ? 貴方サラシいつもその位置で巻いてましたっけ?」
 振り向いた鑑の一声は他愛ない質問だった。
「ああ、今日はこの方が落ち着くんでな」
「そですか、じゃ、ま、後ろ向いてください」
 後は任せることにする。






 鑑は触診を始め、偶に何か呟きを零している。
「サラシ解きますけど、いいですよね」
「ああ構わん」
 粗方診終った辺りで、話し掛けて来た。
「大体診ましたけど、やっぱり体格や腕周りとか細くなってる気がしますね、それに肉質も多少変化が見られます」
「そうか、実感は湧かないものだが」
 しかし、どうにも腑に落ちない、何が理由かが解らないのだから……。
「で、鑑、お前はどう言う結論に到った? ……どうした」
 椅子を回し振り返ると、鑑が硬直していた。
 椅子から立ち上がり鑑を揺すると、間もなく反応が起こる。
「ちょ、ちょっ、ま、まっ、たたたたた、鏨、さん」
 ひどい慌て様で鑑が距離を取り、呂律の回らない羅列を紡ぐ。
「鑑、何が言いたい?」
「あばばばばば、すっ、スゥさん! スゥさーん!」
 ──スゥ? ああ、あの童か、呼んで何をする気……っ!?





「呼ばれて−、飛び出てー、グワゴラガキーン」
「ぶべらっ」
 声が聞こえたと思ったら、鑑が吹き飛ばされて来た。
 ──なっ、躱せん、仕方ない。
 鑑を受け止め、諸共に倒れ込む。
「カガミくーん? 私と言う物がありながら、一体誰としけこもうとしているのかしら?」
 しけこむ? 男相手にか、こいつにそんな趣味があるとは知らなかったな。
 抱き抱えた鑑を見遣る。
「痛いですよスゥさん、急に何す……」
 起き上がろうとした鑑がまた硬直する、どうしたんだ本当に。
「さあ、このどろぼ−ねこさん、カガミ君を還してもらおうかしら」
 得物を持ち、躙り寄ってくる童、泥棒猫……か。
 固まったままの鑑を退かし、立ち上がって柄に左手を掛ける。
 ──ほう、構えに隙が無いな、面白い、付き合ってやるか。
「覚悟して下さいね、や−」
 飛び掛かってきた童は、得物を大上段に振り被り……。






「ごはっ」
 鑑に振り下ろした。
「もう、いつまで固まってるのよカガミ君、タガネさんこんにちは」
 童は先程の毒気が抜け切った風で話し出す、真逆最初から解っていたのか?。
「お前は鑑が急に血相を変えた理由が解るのか」
「え−! 解るでしょ普通、だって」
 そう言うと童は大きめの手鏡を持ち出し俺を写し、変わらぬ自分の顔が写る。
「何だ?」
「え−と、じゃあもっと全身が写るように……」
 段々と後ろに下がっていく。
 む、肩当ての結び目の余りが長いな……。
「鑑、結論を聞いてなかったな、起きろ」
 途中で取り乱し、話が止まった事を思い出し、鑑を起こす。
「起きてますよ、ただ……あのですね、……スゥさん!?」
 顔を逸らす鑑の頭を無理矢理こちらへ向ける童の小競り合いを制止する為、頭を掴み。
「話せ」
 強引に促す。
「解らない方がおかしいですよ、ちゃんと自分の体を観て下さい、特にサラシを胸の位置まで巻いていた理由をですよ」
 サラシの理由……か、改めて自分の体を見回してみる。






「────何だ?」
「解んねえのかよ!!」
 鑑のこういった反応は始めて見るな、いや、童共が嬉々としてこいつに付いてくるのはそれもあるのか。
「ああ、四肢が動くのなら構わない」
「大雑把ですね、普通気付くでしょう」
「ちょっとちょっと、お待ち下さる」
 全く要領を得ない話が続く中。
「む、居たのか」「おや、居たんですね」「あら、居たの」
 楔が割って入ってくる、まだ帰ってなかったんだな。
「わたく……私にも説明をお願いしますわ、タガネ様の体が女性の体になってしまった事を」
「ほう、そう言う事か、案外気付かない物だな、で、何故だ?」
 漸く納得出来る理由が聞けた、鑑からではないが。
 しかし、どう言う経緯でこうなったかは結局の所……。

 ──「解んないですけど、今の状態は理解できましたね、それなりに気を付けて下さいよ、体格が変わってるんですから」
「いいじゃない、楽しそうだし」
「そう言う問題じゃ無いでしょう」──

 解らず仕舞いだったな。
 それに鑑はああは言ったが、何に気を付けろ、と言うのか。
 まあ考えても詮無い事だ、実戦で確かめる他無いな。


【一時閉】



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