意外な類似
「The Last Unicorn」 も「風の谷のナウシカ」もトップクラフト社の制作でしたが、意外なところに類似があるというか、前作の「The Last Unicorn」 で用いた効果的な手法を適用した部分が「風の谷のナウシカ」にも見受けられるのです。オープニングで印象的だったタペストリーを活かした表現がそれですが、ただの使い回しではなくそれぞれがこだわりの演出になっています。
もう一つは群衆シーンです。手書きのアニメで表現するには最も手間のかかる大変な作業を必要とするのですが、それぞれの作品に見事な群衆シーンが導入されていました。「The Last Unicorn」 の場合はラスト近くで海の中から波のしぶきと共に無数のユニコーンたちが現れて、浜辺を駆け上がってくる場面が大変印象的でした。一方「風の谷のナウシカ」では王蟲の群れのシーンが大変効果的に主題を語ると共に説得力のある映像を形成していました。実はどちらも同じプロダクションの一人の方が担当して成し遂げた成果であることが分かっています。
このような群衆シーンは「モブシーン」と呼ばれる映画の特有の表現ですが、このモブシーンに注目してアニメに表された全一主義的主題を考察したのが、以下の講義データです。もちろん締めはユニコーンとナウシカになっています。
2011 art study mob.docx
https://www.academia.edu/36355932/2011_art_study_mob.docx
女性のユニコーン
1回目に頂いたリアクションペーパーで、冒頭のシーンで目にしたユニコーンの姿が女性的な感じがする、という感想を頂きました。原作の最初の文でも、さりげなくこのことが語られています。神話や伝説で語り伝えられてきたユニコーンは、厳しくて荒々しいいかにも男性的な印象の存在でした。美術館に保存されているユニコーンのタペストリーが、その存在特性を伝えています。The Last Unicorn に描かれているユニコーンは、この常識を意図的に覆えすような、挑戦的な意図を背景に含むものだったのです。アニメでは、原作のこの感覚を、見事な代替記述を工夫して達成しています。