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アンチ・ファンタシーコミュの2017英語圏文化研究a

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シラバス

【テーマ】
 The Last Unicorn(1968)を対象に、全一的世界観における特有の存在/現象解釈を反映すべく作品世界記述に導入された、神話的存在の一本の角に秘められた象徴性を読み解いていく。
【授業概要】
 講座題目として“ユニコーンとバイコーン―分極生成の構造 原理と一角獣”を掲げ、論文テキスト“ユニバーサル、ユニコーン―『最後のユニコーン』におけるユニコーンの存在論的指標”を読み進めながら時間性を跳躍する永遠性の存在原理を暗示する思想的発想を指摘し、原作の詩的表現を活かした独特の記述と形而上的主題の相関を検証していく。
【到達目標】
 文学的論考に必要となる哲学的語彙と形而上的発想の基本パ ターンを把握し、自らの考察を適切な述語を選択して効果的に語る表現力を身に着ける。
【学位授与方針】
 英語圏の言語・文学・文化の専門的知識を学び、人間・ 社会・文化を深く考察できる。
【授業計画】
1 回 テキストと講座運営システムと環境設定についての解説
 関連コミュニティへのアクセスとポートフォリオの利用
2 回 ネット上の外部データベースの紹介とテキストの配布
  “ユニバーサル、ユニコーン”:頭韻とエピセットと “普遍性”
3 回 観念性と現象性の位相交換に示される交替原理
 唯我主義と客観主義、唯心論と唯物論、精神主義と物質主義
4 回 モータル(mortal)な人間性、イモータル(immortal)な神性
 時間性(temporal)と永遠性(eternal)の相克
5 回 科学思想の受容と共に世界から失われた “崇高性”
 多義性の豊穣から一意性の枯渇への収束と人間理性の限界
6 回 “オールド”という語の示す両義性、憧憬と絶望の相関
 寓喩性の示唆する全一的世界観と万物照応の原理、意味のある世界
7 回 キリスト教伝説とギリシア神話におけるユニコーン像
 反転記述による意味性消失が実現する多元的意味次元軸の賦与
8 回 魔法の原理と科学思想―相補的なシステム機構を見出す
 本体と影の示す反転的位相と共変性の原理、世界を統べる法則性
9 回 呪いと宿命、呪いからの解放を告げる預言
 ロゴス的秩序の背後に潜むカオスの滲出、全方位的 “普遍性”
10 回 直観とグノーシス、論理とパラドクス、現象世界ディレムマ
 直観と観照と意識の保持する心霊的位相、世界把握と個人意識
11 回 悲哀(sorrow)と慚愧(regret)、永遠的存在と時間的存在
 錬金術的世界:概念と含蓄において形成された意味の組織構造体
12 回 ウロボロスと巴と宇宙の原理機構、エナンティオドロミー
 対称的対立要素の循環的連関、時間性からの解放と無限ループ
13 回 ストイシズムとニヒリズムの終局、世界を受け入れる一瞬
 ユニコーン達の解放と失われた恩寵の回復、楽園のイメージ
14 回 “王の苦悩”―普遍的な痛苦、サウルとダビデ
 憂鬱は自然的局相においては疾病・災厄・超常現象に反映される
15 回 レポート課題提示と質疑応答
 受講生個々のレポート作成計画を確認し、指示を与える

【教科書名】
 『アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ピーター・ S・ビーグル「最後のユニコーン」論』(牧歌舎、2009)
【参考図書】
 『Annotated Last Unicorn』(近代文芸社、2004)、『研究 アニメーション The Last Unicorn』(牧歌舎、2012)
【評価方法】
 提示されたレポート課題に対して自らの理解に基づいた講義内容を正しく反映したレポート作成計画を構想し、題目を申告する。評 価はこのレポート作成指導の過程も含めるものとする。
【履修について】
 ネット上の参照資料を確認し、応用課題に応えること。
【事前・事後学習等】
 論文テキストの内容把握に努め、公開された参考資料との照合を行い、語彙と表現に対する理解を深めること。
【備考】コンピュータ室にて開講される。manaba folio にて参考資料の配布、課題提示、質疑応答並びにレポート提出を行う。

コメント(7)

1回目 ユニバーサル、ユニコーン

(2)ユニバーサル、ユニコーン
─『最後のユニコーン』におけるユニコーンの存在論的指標

 不思議な力を秘めた魔女マミー・フォルチュナの無気味なサーカス、ミッドナイト・カーニバルに捕らえられたユニコーンは、他の怪獣達と共に檻の中に閉じ込められ、いよいよ見世物に供されることになる。多くは魔法の力で擬装された他の伝説上の怪物達の後を受けて、見物人達の前にお披露目されることになったユニコーンは、逆に自分の姿を認めた人々の顔に浮かんだ表情に、世界の堕落の果ての変化と、今を生きる人々の悲しい心の有り様を知るのである。

She heard hearts bounce, tears brewing, and breath going backward, but nobody said a word. By the sorrow and loss and sweetness in their faces she knew that they recognized her, and she accepted their hunger as her homage. She thought of the hunter’s great-grandmother, and wondered what it must be like to grow old, and to cry.
p. 33

ユニコーンは人々が胸を弾ませ、涙を滲ませて、息を呑みこむのを聞きました。けれども一言も口をきく者はいませんでした。彼等の顔に浮かんだ悲哀と喪失感と和んだ表情から、ユニコーンは彼等が自分の姿を認めたことが分かりました。そして彼女は、彼等の飢餓感を自分に対する敬意として受け入れたのです。彼女は狩人のひいおばあさんのことを思い浮かべました。そして年をとり、涙を流して泣くなどとはいったいどういうことなのだろう、と不思議に思いました。

ユニコーンの姿を目にした人々がここで示す反応は、この物語におけるユニコーンの存在属性を定義づけるべく設けられた、本作品特有のキーワードを際立たせるものとなっている。ユニコーンという神話的な存在自身も、その中の一頭である本編の名の無い主人公に関する特徴を語るものとして描写の中に用いられている語句も、一般の言語の前提とする含意を離れて、本作品世界の中の独特の定義に基づいて選択されている固有のものなのだ。人々の目にあらわれたという“loss”(喪失感)は、かつて人間達が等しく抱いていた筈の何物かが取り返しのつかない変化を被り、世界の大切な一部が破壊されてしまったことを暗示している。ユニコーンとはこのような世界の基軸と人間存在との間に介在する、倫理的な原理とでもいうべきものを表す、象徴的な記号でもあるのだろう。だからこそ、ここに語られている見物人達の表情に浮かんだ“hunger”(飢餓感)とは、生きとし生けるもの達総てがユニコーンの姿を目にした時に覚えるという、一種普遍的な感情なのである。生の営みを続けていく裡に取り返しもなく失ってしまったものを、あるいは生まれる遠い以前に誰もが失ってしまっていた共通のあるものを、彼女の姿が全ての人々の目に思い起こさせるからだ。そしてユニコーンの後を受けて見世物の大団円を務める真打ちとして登場することになる、もう一頭の印象的な怪物の姿を紹介する際にこの無気味なサーカスの案内人のルークが語る口上の文句は、上で確認したユニコーンの象徴的な特質を、さらに深く裏付けるものとなっているのである。

“Most shows,” said Rukh after a time, “would end here, for what could they possibly present after a genuine unicorn? But Mommy Fortuna’s Midnight Carnival holds one more mystery yet─a demon more destructive than the dragon, more monstrous than the manticore, more hideous than the harpy, and certainly more universal than the unicorn.”
                                        p. 33

「大概の見世」物はここでおしまいになることでしょう。」暫くしてルークは言いました。「本物のユニコーンの後を受けて、どんなものを次にお見せすることができるでしょう。けれどもマミー・フォルチュナのミッドナイト・カーニバルは、さらにもう一つの神秘を開示する用意があるのです。ドラゴンよりも破壊的な怪物であり、マンティコアよりも無気味で、ハーピーよりもさらにおぞましい、そして実際、ユニコーンよりもユニバーサルなものなのであります。」

このルークの口上は中々見事だ。見世物に供された超自然の存在物達が、各々の持つ特有の属性とその名前の間に頭韻(alliteration)を踏むことによって、存在論的意義性の念入りな関連づけを行って紹介されているのである。言葉の持つ魔術的喚起力を十分に意識した口上であると言って良いだろう。ちなみに頭韻によって巧みに連関されたエピセット(1)とそれぞれの怪物の名を対比して表にすれば以下のようになる。アンダーラインを施した部分が頭韻(アリタレーション)を形成して対応している箇所である。

destructive─dragon, monstrous─manticore,
hideous─harpy, universal─unicorn

ユニコーンに冠したエピセットとして“ユニバーサル”(普遍的)という形容詞が用いられているのは、本作品の根幹的主題と関わる重大な手掛りとなるものなのである。そして異質のアンチ・ファンタシーである本作品の独特の主題を際立たせるばかりでなく、ファンタシー文学一般の思想的特質をも端的に表していると思われるのが、実はこの言葉の秘める内実なのである。この指摘の妥当性を確認するための最初の手順として、まずは『最後のユニコーン』においてユニコーンの属性について語られていた独特の形容語のいくつかを取り上げて、これらとこの“ユニバーサル”という概念との関連に関する検証の手を加えていくことにしよう。
神話の中の牡牛の多義的特質

 2本の角をその象徴とする牡牛(バイコーン)は、強大な権力を振るって人民を支配する王の象徴でもあり、暴力的に破壊と殺戮をもたらす魔物でもありました。「1」と「2」の数が秘める象徴性をそれぞれに体現したのが、ユニコーンとブルであった訳です。『最後のユニコーン』における主人公のユニコーンが担わされた独特の意味性について、来週改めて解説する予定です。
2回目 普遍性

 物語の冒頭、最初にユニコーンの特質について語られていたのは、“old”という、美しいユニコーンについて述べるにはいささか意外な趣のある形容詞を用いてであった。

She was very old, though she did not know it, and she was no longer the careless color of sea foam but rather the color of snow falling on a moonlit night.
                                          p. 7

彼女は、自分では知らなかったけれど、とても年とっていました。そして彼女はもう海の泡のような無邪気な白い色ではなく、月の照らす晩に降る雪のような白い色をしていました。

ユニコーンは単に生まれてから長い年月を重ね、“年をとっている”だけではない。実は、一般の生き物達に見られる成長の果ての老化、非可逆的な無慈悲な喪失と減退を示す「老い」とはむしろ対照的な、例外的に生得的な特別な属性を示す概念として、この作品のなかでは“old”という言葉が独特な意味性を主張して語られていくことになっているのである。物語の冒頭でユニコーンの性を、“she”という代名詞の挿入によって一般に知られた猛々しいユニコーン像とは異なる女性として改めて紹介した後、さらにさりげなくここではもう一つ“old”という背反的な形容詞を用いて、このお話のユニコーンの保持する極めて選別的な存在属性が巧妙に語られているのである。
 ユニコーンのエピセットたる存在属性の“普遍性”という語の担う、秘匿された意義を確かめる手掛かりは、例えば以下のような部分においても求めることができる。ユニコーンを不思議な魔法の力を駆使して捕らえた魔女マミー・フォルチュナに卑しい召し使いのように使われてはいながら、彼女に対しては異常な敵愾心を示す頼りない魔法使いのシュメンドリックは、マミー・フォルチュナの魔法の能力について次のようにユニコーンに語りかけるのである。

“...She can’t turn cream into butter, but she can give a lion the semblance of a manticore to eyes that want to see a manticore there─eyes that would take a real manticore for a lion, a dragon for a lizard, and the Midgard Serpent for an earthquake. And a unicorn for a white mare.”
                                         p. 30

「…あの魔女は、クリームをバターに変える力さえ持ってはいません。あいつにできることは、マンチコアの姿をそこに見たがっているものたちの目に、ライオンがマンチコアの姿に見えるようにしてやることだけです。そんな連中は本物のマンチコアを見てライオンだと思い、ドラゴンがとかげにしか見えず、ミッドガルト・サーペントの存在を地震としか理解できないのです。だからユニコーンを見ても只の白い雌馬だと思うのです。」

 彼の語る通り、これまで長い間自分の守って来た森を離れて久方ぶりに外の世界に出たユニコーンが出会ったのは、ユニコーンの姿を目にしても、それがあの全ての人々の憧憬の具現化であるユニコーンであると気付くことは決してなく、常に美しい高価な値で売れる雌馬だと思い込んでしまう、不可解な視覚と判断を備えた人間達なのであった。この魔法使いシュメンドリックはここでは、「他の連中とは違って、自分にはあなたがユニコーンだと分かる。」と告げようとしている訳なのだが、実は彼の言葉が意味しているものは、それだけではない。彼の主張に従えば、長い年月を生き続けているユニコーンの知らないうちにいつの間にか、「愚かな幻想にのみ心を奪われ、神話に語られた真実の存在を目にしても、日常性に埋没した陳腐な生き物としてしか受け取らない」ことが当然であるような世界に、全てが変質してしまっているのである。この事実は『最後のユニコーン』のあちこちで繰り返し語られている、本作品の根幹的主題を支える喪失感覚の基調となっているものなのである。そしてこのようにして失われた崇高の奪還あるいは再生を求める切実な感覚とは、実はファンタシー文学一般に共通する心理学的、思想的傾向を如実に示すものでもある。
講義内容メモ

 1回目課題の本論の部分の解説を行いました。「universal」という単語の背後にある立体的な意味について考察を行いました。惰性で「英語」を学ぼうとすると、考えて理解することを放棄することになりますね。講義メモを下に記します。

universe: 宇宙(全てを含む全体)  space: 宇宙空間
universal: 普遍的、宇宙の   普くあまねく、遍くあまねく
⇔local:局所的

ケレーニーの神話学 妖精は堕落した古代の神々の末裔

神、聖霊、妖精、怪異、化物
言葉のニュアンスは異なるが、すべて同じものを指すと考えてよい

ユニコーン uni=「1」、統一とまとまり
バイコーン bi=「2」分離とぶれ

お茶を淹れる  brew
brew tears: 涙を滲ませる

breath going backward
息を呑む

lose: 失う、喪失する
loss: 喪失感

hungry: 餓えた
hunger: 飢餓感
喪失感

現代人が等しく抱く喪失感について語った別のデータを紹介します。「佐倉セミナー」で行われた講義内容を忠実にシナリオ化したテキストです。以下のリンクを参照して下さい。

Modernism, Realism, Vulgarism
https://www.academia.edu/8344031/Modernism_Realism_Vulgarism


もう一つの佐倉セミナー講義録シナリオと比較してみると、この主題性がより明確になるでしょう。

Snob, Vulgar, Gentility
https://www.academia.edu/8343962/Snob_Vulgar_Gentility
人と神と魔物

 この関係を、「美少女」の存在をからめて見事に語ってみせたのが西尾維新の『化物語』シリーズでしたが、新房昭之監督のアニメ版においても映像表現を駆使して美少女の中の怪異が存分に描ききられていました。
 またプロダクション manglobe のオリジナルアニメ作品『Ergo Proxy』では、独特の背景設定を工夫してそれぞれが位相を交換し得るものとして、神と人と魔物の関係を描いていました。The Last Unicorn の主題である、人とは根本的に異なる神存在と、これに対する人間存在の本質的あり方の対比をより明確に理解して頂けるよう、以下にアニメ『Ergo Proxy』論のリンクをあげておきます。


Science, Science Fiction and Speculation: God, Man and Self in Ergo Proxy 1
https://www.academia.edu/7892277/Science_Science_Fiction_and_Speculation_God_Man_and_Self_in_Ergo_Proxy_1

Science, Science Fiction and Speculation: God, Man and Self in Ergo Proxy 2
https://www.academia.edu/7892210/Science_Science_Fiction_and_Speculation_God_Man_and_Self_in_Ergo_Proxy_2

Science, Science Fiction and Speculation: God, Man and Self in Ergo Proxy 3
https://www.academia.edu/7881969/Science_Science_Fiction_and_Speculation_God_Man_and_Self_in_Ergo_Proxy_3


これらの論文を書き上げるきっかけとなったのが、和洋で開設された講座「アニメ芸術論」の講義メモです。このデータも参考にしてみて下さい。

2014 anime study Ergo Proxy
https://www.academia.edu/32419446/2014_anime_study_Ergo_Proxy.docx

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