19世紀末から20世紀初めにかけては、アインシュタインの相対性理論の発表とミンコフスキーの4次元時空の定式化に先立って、デカルト・ベーコン的事象理解の限界点の超出を意識した様々な実在論や本体論が提示されようとしていたのであった。ジェイムズ・クラーク・マクスウェルは、ニュートンが仮定した真空の3次元空間というモデルとは異なる場の概念を導入して、電磁気現象を解明する新規の物理理論を構築しようと企てていた。エルンスト・マッハは、局所的な作用の連鎖という事象の標準モデルに基づいて存在と現象のあり方を記述するニュートンの力学的描像を俯瞰するする視点から、全体性の世界との関連として熱的・電磁的・磁気的・化学的過程として物理現象を把握しようと試みていた。このようなマッハの思想と研究は、アインシュタインに多大な影響を及ぼしたことが分かっている。[i]さらにウィリアム・ジェイムズは、従来の局所的作用の機械的連鎖を行う力学的単位としての“物質”という概念に拘束されることのない観点から、心理的経験そのものを事象の本質として捉えることにより、ある種の“心霊的”原形質存在を仮定して事象発現に対する主観意識の関与を重視した現象把握を達成しようと目論んでいた。またアルフレッド・ノース・ホワイトヘッドは、力学的作用を行う基礎単位である物質粒子に代替して、生起するできごとそのものを世界の基本的実在として考えようとする、現象学的本体論の構築を模索したのである。これらの科学者と哲学者達の関心に通底すると思われる心理学的な宇宙解式が、Peter and Wendyの様々の場面と記述に投影されていることを指摘することができたのである。[ii]
[i] アインシュタインの相対性理論に及ぼした先行する科学者/哲学者達の影響とファンタシーに代表される仮構記述の思弁的問題性については、筆者の『アンチファンタシーというファンタシー2 最後のユニコーン論』(牧歌舎、2009年)に所収の「量子論理とパラドクスと不可能世界─アクチュアリズムとアンチ・ファンタシー」を参照されたい。
[ii] Peter and Wendyに関する量子論理的世界解式と心霊的存在記述についての考察は、筆者の『アンチファンタシーというファンタシー』(近代文藝社、2005年)において様々の角度から行われている。
Identity and Individuality of Alternative Fictions
https://folio.wayo.ac.jp/ct/link_cushion?url=https%3A%2F%2Fwww.academia.edu%2F7786902%2FIdentity_and_Individuality_of_Alternative_Fictions
Identity and Individuality of Alternative Fictions
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Identity and Individuality of Alternative Fictions
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Supernatural System Theory and Antifantasy
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Translation and Commentary on Sue Matheson's Study on The Last Unicorn: "Psychic Transformation and Regeneration of Language in Peter S. Beagle's The Last Unicorn"
https://folio.wayo.ac.jp/ct/link_cushion?url=https%3A%2F%2Fwww.academia.edu%2F7911103%2FTranslation_and_Commentary_on_Sue_Mathesons_Study_on_The_Last_Unicorn_Psychic_Transformation_and_Regeneration_of_Language_in_Peter_S._Beagles_The_Last_Unicorn_
共感覚 - Wikipedia
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The Principle of Quantum Physics and Depth Psychology
Derived out of Gambling Scenes in Anime:
Understand Divination, Synesthesia and Synchronicity through the Concept of Archetype
Is it possible to rearrange the disposition of playing cards and marjong tiles?
What is “the flow of game”?
Can some cards or tiles be friendly with the player?
Today, I am getting along with Hearts nice.
Does one’s own mind control lead to luck control?
Game playing is occurring present, but consciousness is aware of the past and the future
Undetermined pasts and Bergsonian time
As innumerable world lines are branched from now, there may be innumerable pasts that come to now
Consciousness perceives a world line as a meaningful story
Reason grasps the world as cause and effect chain, but the unconscious perceives the wholenesss not as a line
『闇のバイブル』の曖昧性と多義性の表現
視覚芸術における多義性と曖昧性―『闇のバイブル』の原形質反映記述
現象世界的リアリズムとは全く異なる構造原理に基づいた映像芸術作品 Valerie and Her Week of Wonders においては、生成する事象の位相を決定すべき観測者の視点を構築する位置情報が周到に撹乱され、さらに意識の裡における空間認識と肉体感覚の双方が個体あるいは現象として発現する以前の未分化の状態に還元された結果、経験された出来事の内実を記述すべき因果関係性の概念そのものもまた解体して、これらを反映すべき映像が相反する場面のそれぞれを平行に分岐させた多義的な描像として時間軸上に再配列されて、点描的に画面上に現出することになっていたのであった。
本講座において映像表現の鑑賞と主題の考察を行った映画『闇のバイブル』(Valerie and her Week of Wonders)について、「原型」あるいは「心霊」という心理学上の概念と映像表現において具現化された内実との関連を指摘せよ。
あるいは本講座で導入された発想と諸概念を他の仮構作品の主題理解に適用して、応用的論考を図ることも可とする。もしくは独特の映像表現を活用した『闇のバイブル』と比較対照することにより、任意の映像表現に関する論考を試みても構わない。さらにこれらの趣旨を総合して、原型概念と量子力学的世界観そのものについて、自らの理解と意見を述べる試みも認めるものとする。