『true tears』は、2008年1月から3月にかけて放映された、西村純二監督、P. A. Works 制作のアニメ作品である。本作はゲーム制作会社 La’cryma の同名の恋愛アドベンチャーゲームを原作とするテレビ放映番組として発表されたが、ストーリーはゲーム作品にあったものとは全く異なったオリジナルのものとなっている。シリーズ構成として岡田麿里がプロデュースに参加し、脚本[i]も手掛けていて、独特の作品世界のプレゼンテーションが達成された、仮構世界の本体論を考える上で様々な意味で興味深いアニメ作品となっている。一見したところ、高校生達の日常生活を舞台とした、現実的な恋愛模様を描いた群像劇の体裁を取った映像作品のように見えるのだが、ストーリーの展開ときめ細かな演出の手法は、類型的な仮構作品世界の提示の手法を反射的に意識した挑戦的なものになっており、描き出される仮構世界の可能世界としての実質そのものの位相を改めて考え直すことを要求する、斬新な創作戦略に基づく仮構となっている。理念的把握が可能な、主題性を備えた明確な外形を備えた仮構作品として鑑賞者の想念の中で確証され、意味のある可能世界として認証されるための概念的枠組みが様々に脱臼されるという、メタフィクション的な操作が巧みに加えられた、妙味ある作品世界が展開されているからである。