原題: BROKEN BLOSSOMS OR THE YELLOW MAN AND THE GIRL 製作: D・W・グリフィス(D.W. Griffith) 監督: D・W・グリフィス 脚本: D・W・グリフィス 原作: トーマス・パーク(Thomas Burke) 撮影: G・W・ビッツァー(G.W. Bitzer) 編集: ジェームズ・スミス(James Smith ) セット: ジョセフ・ストリンガー(Joseph Stringer)
背景に絵が描かれていない字幕画面へは、全てD. W. Griffith を略した“DG”のロゴ・マークが入っていました。このロゴ・マークの存在によって、厳粛な雰囲気や格調のようなものが生じていたように思います。単に動く映像を補足する為のものとしてではなく、文学への敬意として動く映像と同格に扱われていたような印象です。とかく物語ばかりに求められる文学性も、活字その物への尊重によって、何か面白い効果は得られそうです。例えば、北野武監督の『アキレスと亀』(2008)では書家の柿沼康二の書体を、そのまま字幕画面として活かしていました…。
主人公と僧侶のツーショットや、各々を捉えたミディアムショットの背後には、本尊と祈祷する僧侶の姿が小さく映り込んでいました。本尊はやや離れた位置にありましたが、その箇所へ画面を移行させる為に、あえて鐘を鳴らすカット(コメント13)を一つ挟んでいます。これは見事でした。直後のツーショット画面からは、鐘の音が聞こえて来るような演出で、その音に誘われるまま本尊のカットへと導かれて行きます。鐘を鳴らすカットは、これ以降のシークエンスでもアクセントとして効果的に使用されていました。主人公の青年の純粋な志、仏教の教え、郷愁を表現したカットです。以下は、冒頭の字幕画面に記されていた言葉です。
It is a tale of temple bells, sounding at sunset before the image of Buddha; it is a tale of love and lovers; it is a tale of tears. (夕暮れ時になると 仏教寺院の鐘が鳴る これはそれを映した 愛と涙の物語である)