史跡コミュの針塚古墳

　長野県松本市里山辺3173

　1997年02月20日、長野県が史跡に指定。

　松本市里山辺地区は、美ヶ原高原から流れ出る薄川(ｽｽｷｶﾞﾜ)が形成した扇状地で、針塚古墳は扇央部の河岸段丘上に位置し、段丘上に同様な古墳が数基ありました。この地は『倭名類聚鈔』(ﾜﾐｮｳﾙｲｼﾞｭｳｼｮｳ)に登場する筑摩郡山家郷(ﾔﾏﾝﾍﾞﾉｺﾞｳ)の故地で、多くの遺跡・文化財が遺されていましたが、昭和時代の農業基盤整備事業で河岸段丘も古墳ごと消滅してしまい、水田と葡萄園に囲まれてた針塚古墳が残るのみです。
　針塚古墳は、以前から方形三段積みの積石塚古墳と見做されて来ました。積石塚古墳とは土の代わりに石を以って封じ、墳丘を造った古墳で、高句麗に多い墓制です。５世紀頃、大和朝廷は科野(ｼﾅﾉ)国へ騎馬に長けた高句麗からの渡来人を多く送り込んで、騎兵養成のための牧を多数造成しましたので、これとの関連が指摘されています。
　平成元(1989)年度から三次に亙って発掘調査が行われ、針塚古墳は幅約２ｍの周溝を巡らした円墳である事が判明、直径は約20ｍ、高さは約２ｍだと確認されました。
　埋葬施設としては、墳頂部に長さ約２ｍ・幅約１ｍの竪穴式石室、東側の周溝内に長さ約２ｍ・幅35㎝・深さ33㎝の竪穴式石室、東南側周溝内に木棺墓(ﾓｯｶﾝﾎﾞ)が発見されています。このうち墳頂部の竪穴式石室内からは内行花文鏡(ﾅｲｺｳｶﾓﾝｷｮｳ)・鉄斧(ﾃｯﾌﾟ)・鉄鏃(ﾃﾂｿﾞｸ)・刀子(ﾄｳｽ；小刀)・ガラス小玉・滑石製紡錘車(ｶｯｾｷｾｲﾎﾞｳｽｲｼｬ)・鉸具(ｶｺ；騎馬用固定金具)が発見されました。その外に南西部の周溝内から埋葬時儀礼に使用された土師器(ﾊｼﾞｷ)・須恵器(ｽｴｷ)が纏まって見つかっています。
この土器から古墳の築造年代は５世紀後半である事も判明、古墳の墳丘は周溝の土を盛り上げその上に薄川の石を積み上げて造った積石塚古墳である事が確認されました。松本市内では唯一の積石塚古墳です。
　こうして、針塚古墳は貴重な史跡である事が明らかになったため、平成５(1993)年度に保存整備が行われました。発掘調査された古墳の遺構を土で覆って保存した上で、その上に石積みをし、墳頂部には石室の複製を設置して発掘調査されたままの状況が再現されています。

＊弘法山古墳
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・中山古墳群
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