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コメント(348)
「映画・ミッドウェー（２０１９）」
うつ病の家系なのか？「何もしたくない、何もできない時期」が何ヶ月おきにやってくる。
去年の春と秋に手術・入院 経過は良好でしたが、精神的には結構負担だったみたいです。
この３ヶ月ほど「ボケ老人」になってました。やっと歳相応の爺いにもどりました。
書き込みもほとんど出来ずじまいでした。
ネットフリックスだったか？無料で見ましたが字幕なしではするがにしんどい。
基本的に米海軍の視点で、日本側のそれは「おまけ」程度の扱い。真珠湾からミッドウェー
までの「お勉強映画」です。２時間半にレイトン駐日武官の離任の山本海軍次官へ挨拶ーー米
国が対日政策を過てば、戦争になると警告されるーーから始まり、真珠湾攻撃、米空母部隊の
ギルバート諸島攻撃、ドゥーリットル空襲、珊瑚海海戦、にミッドウェー海戦ですから、説明
不足は当然。
そこそこの興業収益を挙げているみたいですが、ドゥーリットル空襲の報復に日本軍が中国
に報復攻撃を仕掛ける様子を入れたりして、余計な尺を費やしています。（中共資本が入って
いるからでしょう。
戦闘シーンはＰＣゲームです。登場する機体や艦船などはわりと忠実なんですが、動きが
話になりません。「スターウォーズ」を見て育った世代の制作ですから、こんなものでしょう。
史実を知らない観客に「楽しみながら、お勉強していただく娯楽もの」です。米国の戦史家
やマニアには「つっこみどころ満載凡作」ですが、一般にこの海戦に注目してもらいさらなる
大作ーーテレビのミニシリーズで数回から十回程度ーーが制作されるきっかけになれば良しと
するものでしょう。
一回は見る価値はありますが、それだけのものだと思います。ＤＶＤに特典がつくことを
期待します。じっくりと「突っ込み所」を捜すつもり（になれるのかな？）です。
字幕がないと会話の内容が半分程度も分かりませんから、その補修に劇場で公開されたら
見に行きます。たぶん、一、二週間で打ち切りになるでしょう。
うつ病の家系なのか？「何もしたくない、何もできない時期」が何ヶ月おきにやってくる。
去年の春と秋に手術・入院 経過は良好でしたが、精神的には結構負担だったみたいです。
この３ヶ月ほど「ボケ老人」になってました。やっと歳相応の爺いにもどりました。
書き込みもほとんど出来ずじまいでした。
ネットフリックスだったか？無料で見ましたが字幕なしではするがにしんどい。
基本的に米海軍の視点で、日本側のそれは「おまけ」程度の扱い。真珠湾からミッドウェー
までの「お勉強映画」です。２時間半にレイトン駐日武官の離任の山本海軍次官へ挨拶ーー米
国が対日政策を過てば、戦争になると警告されるーーから始まり、真珠湾攻撃、米空母部隊の
ギルバート諸島攻撃、ドゥーリットル空襲、珊瑚海海戦、にミッドウェー海戦ですから、説明
不足は当然。
そこそこの興業収益を挙げているみたいですが、ドゥーリットル空襲の報復に日本軍が中国
に報復攻撃を仕掛ける様子を入れたりして、余計な尺を費やしています。（中共資本が入って
いるからでしょう。
戦闘シーンはＰＣゲームです。登場する機体や艦船などはわりと忠実なんですが、動きが
話になりません。「スターウォーズ」を見て育った世代の制作ですから、こんなものでしょう。
史実を知らない観客に「楽しみながら、お勉強していただく娯楽もの」です。米国の戦史家
やマニアには「つっこみどころ満載凡作」ですが、一般にこの海戦に注目してもらいさらなる
大作ーーテレビのミニシリーズで数回から十回程度ーーが制作されるきっかけになれば良しと
するものでしょう。
一回は見る価値はありますが、それだけのものだと思います。ＤＶＤに特典がつくことを
期待します。じっくりと「突っ込み所」を捜すつもり（になれるのかな？）です。
字幕がないと会話の内容が半分程度も分かりませんから、その補修に劇場で公開されたら
見に行きます。たぶん、一、二週間で打ち切りになるでしょう。
「ミッドウェー（1976年）」特撮術版の感想
「シネフィルＷＯＷＯＷ」の番組表を見ていたら、「ミッドウェー」について副音声でコ
メンタリー、軍事評論家・岡部いさく、映画監督・押井守、声優・上坂すみれの３人がしゃ
べるというのあったので、録画して見た。
意外なことに、押井はともかく、岡部の方が若かかった。「ガールズ＆パンツァー」や
「艦隊コレクション」などの声を当てている上坂ーーソ連・ロシア軍のミリオタだそうだー
ーは若いので聞き役ので、頓珍漢なことを言っているのはご愛嬌だ。
岡部も押井も事前のリサーチというか、準備を余りしておらず自分たちの記憶を頼りに
語っているのが見え見えだ。
冒頭の「ドゥ十リトル空襲」の映像について戦時中に制作された「東京上空３０秒」から
の引用というのは正しい。その背景や結果などについては間違いというか、記憶違いが目立
つ。空襲に関与したＢ２５の搭乗員について、「軽く扱われた」というのは間違い。「冒険
的な作戦」なので「成功して無事帰還することは難しい」として志願兵を募ったことを言っ
ていない。隊員８０人中、３人が溺死、墜落死、８人が捕虜となり、うち３人が処刑された。
機体１６機はすべて失われた。１機はソ連に不時着し、拘留された。
岡部（押井も）のコメントは少し「勉強不足（というか、確認のダメ押しが足りない）」。
劇中に盛んに使用された別の映画の画像（と、冒頭の字幕に「実写フィルム」を多く使用
したとある）についてのコメントでも、ダメ押しが足りないことが見える。
【続く（予定）】
「シネフィルＷＯＷＯＷ」の番組表を見ていたら、「ミッドウェー」について副音声でコ
メンタリー、軍事評論家・岡部いさく、映画監督・押井守、声優・上坂すみれの３人がしゃ
べるというのあったので、録画して見た。
意外なことに、押井はともかく、岡部の方が若かかった。「ガールズ＆パンツァー」や
「艦隊コレクション」などの声を当てている上坂ーーソ連・ロシア軍のミリオタだそうだー
ーは若いので聞き役ので、頓珍漢なことを言っているのはご愛嬌だ。
岡部も押井も事前のリサーチというか、準備を余りしておらず自分たちの記憶を頼りに
語っているのが見え見えだ。
冒頭の「ドゥ十リトル空襲」の映像について戦時中に制作された「東京上空３０秒」から
の引用というのは正しい。その背景や結果などについては間違いというか、記憶違いが目立
つ。空襲に関与したＢ２５の搭乗員について、「軽く扱われた」というのは間違い。「冒険
的な作戦」なので「成功して無事帰還することは難しい」として志願兵を募ったことを言っ
ていない。隊員８０人中、３人が溺死、墜落死、８人が捕虜となり、うち３人が処刑された。
機体１６機はすべて失われた。１機はソ連に不時着し、拘留された。
岡部（押井も）のコメントは少し「勉強不足（というか、確認のダメ押しが足りない）」。
劇中に盛んに使用された別の映画の画像（と、冒頭の字幕に「実写フィルム」を多く使用
したとある）についてのコメントでも、ダメ押しが足りないことが見える。
【続く（予定）】
「ミッドウェー（１９７６）」続き
空襲直後に「広島」の庭園風の屋敷にいる山本長官に、なぜかロールスロイスの
高級車で乘りつけた渡辺参謀が急報を告げる。「１０分前に東京が空襲されました。
陛下はご無事です。本官が確認しました。」と言っている。司令部から庭園までそ
んなに早くいけたのか？と思うが、映画的な表現として見逃す。山本は持論である
「米空母機動部隊の撃滅」を確信する。
日本本土初空襲に成功した米側は、日本側の反撃を予想する。ハワイの通信基地
で暗号の解読にあたる部署に本作の主人公ガース大佐（航空参謀長）が訪れる。ジー
プで基地郊外と思われる場所となっているが、実際には司令部の建物の地下にあっ
た。
機密の部署で班長ロシュフォート中佐は制服の上にナイトガウンを羽織った奇妙
な格好でガースを迎える。コメントで「太平洋艦隊の情報将校」と紹介しているが、
実際には、海軍省直属の部署だった。日本側の反撃の予想として当面は珊瑚海方面
と思われるが、更なる攻勢も予想されるという。ここは正しい。
岡部は「私の父は空襲を体験したそうだ」と言ってる。これは余談だが、近所の
焼き鳥屋の親父さんは低空で東から西へ飛ぶＢ２５を目撃していた。方向からする
とドゥリットル本人が乗っていた機体のようだ。この親父さんも鬼籍に入って数年
になる。
連合艦隊の作戦室での会議。山本大将以下、説明はないが会話の中で、南雲、近
藤、細萱中将、山口少将。参謀に渡辺中佐の他に黒島大佐がいる。無言の少佐は誰
か判らない。近藤中将が作戦に疑問を呈して、渡辺参謀とやり合うが、これは史実
かどうかはわからない。山口少将を演じるジョン・フジオカは近藤・細萱より年長
に見えるのはご愛嬌かw。
南雲（ジェームス・繁田）、近藤（コンラッド・ヤマ）、細萱（デール・イシモ
ト）、渡辺（クロイ土・クサツ）、黒島（セス・サカイ）
この作戦会議はちゃんとしている。「トラX３」から流用した「長門」と広島湾
の眺望（ここは「太平洋の嵐」からだろう。）艦内ということが判る。「パールハー
バー」のような屋外で子供がたこあげをしている傍らで、戦国時代のような幟をは
ためかした陣中での会議などという噴飯ものではない。「三船の英語は癖がある」
とか言っているが、そもそもポール・フリースによる吹き替えだ。
珊瑚海での作戦後に見当し直すとして、会議は終わる。
続いて珊瑚海海戦直後の真珠湾。ニミッツ大将がＰＢＹで到着する。
【続く】
空襲直後に「広島」の庭園風の屋敷にいる山本長官に、なぜかロールスロイスの
高級車で乘りつけた渡辺参謀が急報を告げる。「１０分前に東京が空襲されました。
陛下はご無事です。本官が確認しました。」と言っている。司令部から庭園までそ
んなに早くいけたのか？と思うが、映画的な表現として見逃す。山本は持論である
「米空母機動部隊の撃滅」を確信する。
日本本土初空襲に成功した米側は、日本側の反撃を予想する。ハワイの通信基地
で暗号の解読にあたる部署に本作の主人公ガース大佐（航空参謀長）が訪れる。ジー
プで基地郊外と思われる場所となっているが、実際には司令部の建物の地下にあっ
た。
機密の部署で班長ロシュフォート中佐は制服の上にナイトガウンを羽織った奇妙
な格好でガースを迎える。コメントで「太平洋艦隊の情報将校」と紹介しているが、
実際には、海軍省直属の部署だった。日本側の反撃の予想として当面は珊瑚海方面
と思われるが、更なる攻勢も予想されるという。ここは正しい。
岡部は「私の父は空襲を体験したそうだ」と言ってる。これは余談だが、近所の
焼き鳥屋の親父さんは低空で東から西へ飛ぶＢ２５を目撃していた。方向からする
とドゥリットル本人が乗っていた機体のようだ。この親父さんも鬼籍に入って数年
になる。
連合艦隊の作戦室での会議。山本大将以下、説明はないが会話の中で、南雲、近
藤、細萱中将、山口少将。参謀に渡辺中佐の他に黒島大佐がいる。無言の少佐は誰
か判らない。近藤中将が作戦に疑問を呈して、渡辺参謀とやり合うが、これは史実
かどうかはわからない。山口少将を演じるジョン・フジオカは近藤・細萱より年長
に見えるのはご愛嬌かw。
南雲（ジェームス・繁田）、近藤（コンラッド・ヤマ）、細萱（デール・イシモ
ト）、渡辺（クロイ土・クサツ）、黒島（セス・サカイ）
この作戦会議はちゃんとしている。「トラX３」から流用した「長門」と広島湾
の眺望（ここは「太平洋の嵐」からだろう。）艦内ということが判る。「パールハー
バー」のような屋外で子供がたこあげをしている傍らで、戦国時代のような幟をは
ためかした陣中での会議などという噴飯ものではない。「三船の英語は癖がある」
とか言っているが、そもそもポール・フリースによる吹き替えだ。
珊瑚海での作戦後に見当し直すとして、会議は終わる。
続いて珊瑚海海戦直後の真珠湾。ニミッツ大将がＰＢＹで到着する。
【続く】
７８年前の今日（５月２７日）、瀬戸内海から連合艦隊の主力が柱島やその周辺から
ミッドウェー島攻略作戦のために出動した。予定では前日に南雲忠一中将麾下の空母機
動が襲撃するはずだったが準備が間に合わず一日遅れとなった。すでに北方のアリュー
シャン攻略部隊は発進していた。
情報で日本側の意図を捉えていた米側もハワイから機動部隊を出動させつつあった。
当時の索敵能力からすると、戦場予定海域（地域）に到達しても相手を視認しないと
確実な攻撃は出来ない。先手を取ることが双方とも会敵に際しての絶対条件であった。
もっとも日本側は米艦隊の早期の出現は予想していなかったので、索敵に「手抜き」を
生じたとされる。事前の情報確認が甘かった事実は否めない。
米側は「先手奇襲」のみが優勢な日本空母部隊相手に勝算を得る機会とみなされた。
そのため、米太平洋艦隊司令長官ニミッツはまだ２００機程度しか配備されていなかっ
た新型長距離偵察機ＰＢＹ5型機を百機ほどハワイからアラスカ方面に集中配置した。
ミッドウェー方面に約35機を配して、南２００度から北２０度の範囲を２２機で７度半
の角度で６００浬をカバーする濃密な索敵線で覆った。これは情報を先んじて得た優位
を活かしたものだった。
ミッドウェー島攻略作戦のために出動した。予定では前日に南雲忠一中将麾下の空母機
動が襲撃するはずだったが準備が間に合わず一日遅れとなった。すでに北方のアリュー
シャン攻略部隊は発進していた。
情報で日本側の意図を捉えていた米側もハワイから機動部隊を出動させつつあった。
当時の索敵能力からすると、戦場予定海域（地域）に到達しても相手を視認しないと
確実な攻撃は出来ない。先手を取ることが双方とも会敵に際しての絶対条件であった。
もっとも日本側は米艦隊の早期の出現は予想していなかったので、索敵に「手抜き」を
生じたとされる。事前の情報確認が甘かった事実は否めない。
米側は「先手奇襲」のみが優勢な日本空母部隊相手に勝算を得る機会とみなされた。
そのため、米太平洋艦隊司令長官ニミッツはまだ２００機程度しか配備されていなかっ
た新型長距離偵察機ＰＢＹ5型機を百機ほどハワイからアラスカ方面に集中配置した。
ミッドウェー方面に約35機を配して、南２００度から北２０度の範囲を２２機で７度半
の角度で６００浬をカバーする濃密な索敵線で覆った。これは情報を先んじて得た優位
を活かしたものだった。
日本側も電波探知で「敵艦隊が近くにいる可能性」を察知していたものの、十分な
量でもなかったために無視したようだ。ノイズが多くこれといった確実なものはえら
れなかったという。「奇襲に成功する」という前提が判断を誤らせたのだろう。
戦後の調査で海戦の前日（現地時間６月３日）午後３時頃、ＰＢＹ１機が南雲艦隊の
近く十数キロを通過していたと判明したものの、当時は双方とも気づいていなかった。
その２時間ほどして南雲部隊は「敵機発見」を報じたが、迎撃の戦闘機は何の成果も
得ることなく帰投したことが知られている。雲を見間違えたとされる。この時間には
ミッドウェーからの偵察機はすでに基地に戻っており、「単発機」とした日本側の資
料を裏付ける物はない。
結局、日米双方とも相手の存在を確認したのは翌４日のことだった。（すでに発見
されていた攻略部隊の輸送船団とアリューシャン方面の空襲を除く）
午前４時頃から索敵を開始した。ミッドウェー基地からは上空警戒の戦闘機を始め
として２２機もの偵察機や１６機のＢ１７は「地上での奇襲撃破」を防ぐために早々
と上空に昇っていた。この時点で日本側の意図していた「奇襲攻撃」は失敗していた
訳だ。それを知ったのは友永大尉の率いる攻撃部隊が現地に到着した午前６時頃で、
後手を踏んだことになる。
日本側の「索敵機の不十分さ」を指摘する声が多いが、そもそも準備不足のまま機
動部隊に出撃を命じた連合艦隊司令部の責任を問う声は少ない。攻撃隊１０８機（各
艦２７機）を２編成組んだら、上空警戒の戦闘機しか残らないギリギリの飛行機しか
与えなかった。アリューシャン攻撃などに６０機も割いてしまったし、珊瑚海で傷つ
いた５航戦も転用しなかった。しかも直前に人事交代を強行して南雲司令部の希望も
無視した形になった。
あれやこれやで南雲部隊は真珠湾当時の戦力に比べると半分程度まで落ちていたと
する見方もある。そこまで酷くはなかったにせよ、かなりの無理強いを強いたことに
なる。「敵艦隊の出現はほぼない」という敵情判断に基づいた索敵線は十分とはいえ
ないものの、戦力を考えると妥当だったと言えるだろう。実際、やや遅れたかも知れ
ないが、敵機動部隊を発見しているのだ。
ここで問題となるのが、米機動部隊を発見した索敵線４番を飛んだ「利根４号機」
と５番線を飛んだ「筑摩１号機」の行動だろう。
これについては畑郁彦氏の見解が多く引用される。しかし発表後４０年を経ている
のでそのまま使用することには少々問題がある。
量でもなかったために無視したようだ。ノイズが多くこれといった確実なものはえら
れなかったという。「奇襲に成功する」という前提が判断を誤らせたのだろう。
戦後の調査で海戦の前日（現地時間６月３日）午後３時頃、ＰＢＹ１機が南雲艦隊の
近く十数キロを通過していたと判明したものの、当時は双方とも気づいていなかった。
その２時間ほどして南雲部隊は「敵機発見」を報じたが、迎撃の戦闘機は何の成果も
得ることなく帰投したことが知られている。雲を見間違えたとされる。この時間には
ミッドウェーからの偵察機はすでに基地に戻っており、「単発機」とした日本側の資
料を裏付ける物はない。
結局、日米双方とも相手の存在を確認したのは翌４日のことだった。（すでに発見
されていた攻略部隊の輸送船団とアリューシャン方面の空襲を除く）
午前４時頃から索敵を開始した。ミッドウェー基地からは上空警戒の戦闘機を始め
として２２機もの偵察機や１６機のＢ１７は「地上での奇襲撃破」を防ぐために早々
と上空に昇っていた。この時点で日本側の意図していた「奇襲攻撃」は失敗していた
訳だ。それを知ったのは友永大尉の率いる攻撃部隊が現地に到着した午前６時頃で、
後手を踏んだことになる。
日本側の「索敵機の不十分さ」を指摘する声が多いが、そもそも準備不足のまま機
動部隊に出撃を命じた連合艦隊司令部の責任を問う声は少ない。攻撃隊１０８機（各
艦２７機）を２編成組んだら、上空警戒の戦闘機しか残らないギリギリの飛行機しか
与えなかった。アリューシャン攻撃などに６０機も割いてしまったし、珊瑚海で傷つ
いた５航戦も転用しなかった。しかも直前に人事交代を強行して南雲司令部の希望も
無視した形になった。
あれやこれやで南雲部隊は真珠湾当時の戦力に比べると半分程度まで落ちていたと
する見方もある。そこまで酷くはなかったにせよ、かなりの無理強いを強いたことに
なる。「敵艦隊の出現はほぼない」という敵情判断に基づいた索敵線は十分とはいえ
ないものの、戦力を考えると妥当だったと言えるだろう。実際、やや遅れたかも知れ
ないが、敵機動部隊を発見しているのだ。
ここで問題となるのが、米機動部隊を発見した索敵線４番を飛んだ「利根４号機」
と５番線を飛んだ「筑摩１号機」の行動だろう。
これについては畑郁彦氏の見解が多く引用される。しかし発表後４０年を経ている
のでそのまま使用することには少々問題がある。
秦郁彦氏の名前を「畑」と誤入力していました。
「利根４号機」の乗員は戦後まで生き残れず確かな証言は得られていないようです。
発進が遅れた理由もはっきりしていません。カタパルトが故障したという証言がある
一方で、そんなことはなく「対潜警戒機の射出を優先」しただけという証言もあるそ
うです。さらに飛行ルートや敵機動部隊の発見位置を「大きく誤った理由」について
の証言も乗員のそれは知られていません。
戦後米側の資料との突き合わせの結果、「筑摩１号機」索敵線が米機動部隊（第１
７？）と交差していたことが推測された。さらに機長の都間大尉が雲（積乱雲？）の
群れに遭遇したために、低空を飛ばずに雲上を飛んだと証言したことから、機動部隊
を見逃したのではという疑惑が生じた。
戦後、黒田と改姓していた都間大尉を探し出した秦氏がインタビューした際に、途
中で敵機と遭遇したが無線封止を命じられていたために、帰投するまでそれを報告し
なかったと答えたので、「重大なる怠慢行為」と書かれた。
秦氏の研究結果を受けた森史郎氏は２０１２年に出版した「ミッドウェー海戦」
（新潮選書 p.394-396)でこう書いている。
「５番索敵線を征く都間信（まこと）大尉は飛行長の立場として、発進のおくれが
ですんだことに一安堵していた。発進は午前４時３５分。」
「重要任務だから、無線封止で行け」
出発前に吉村艦長からきびしい注意があった。
出発時、気象条件は良くなかった。発艦後２５分たって、夜が明けた。水平線が
明るみをおびて出てくると、不連続線の影響が東側にひろがり、雲量８の雲海がつ
ながっている状態なのがわかった。
通常の場合、索敵機は高度３００メートルから１０００メートルを上下しながら
最良の視界を求めて索敵任務のだが、都間はこの雲の層にはばまれて水平線まで
はっきり見透せない。やむをえず、雲の上を飛ぶことにした。任務怠慢のそしりを
まぬがれない安易な行動である。
彼の怠慢をあざ笑うかのように、運命の女神はとんでもない悪戯をした。筑摩
一号機が飛ぶ第５索敵線７７度上をたどればスプルーアンスの第１６機動部隊上空
に到達することになるが、彼らを雲の下にすっぽりとおおい隠したのである。
索敵機の機長としては、致命的な過ちを犯したのだ。」
「敵の見落としたとすれば天候以外に考えられない。途中で米軍哨戒機と二、三
回ぶつかって格闘戦にはいったので、それにまぎれて見落としたのかと思う。」
米軍哨戒機とは、未明に空母ヨークタウンを飛び立った第５哨戒中隊ＳＢＤ［
ドーントレス」１０機のうち１機と遭遇したことを指す。北方１００カイリ半円
を哨戒中のベン・プレストン少尉機がフロート付きの日本軍水上偵察機と交戦し
たことが、米側にあり「戦果を確認する時間はなかった」としているが、いずれに
しても都間機と空中格闘し、致命的な攻撃を加えることなく別れた事実がこれで
証明される。
【以下、続く】
「利根４号機」の乗員は戦後まで生き残れず確かな証言は得られていないようです。
発進が遅れた理由もはっきりしていません。カタパルトが故障したという証言がある
一方で、そんなことはなく「対潜警戒機の射出を優先」しただけという証言もあるそ
うです。さらに飛行ルートや敵機動部隊の発見位置を「大きく誤った理由」について
の証言も乗員のそれは知られていません。
戦後米側の資料との突き合わせの結果、「筑摩１号機」索敵線が米機動部隊（第１
７？）と交差していたことが推測された。さらに機長の都間大尉が雲（積乱雲？）の
群れに遭遇したために、低空を飛ばずに雲上を飛んだと証言したことから、機動部隊
を見逃したのではという疑惑が生じた。
戦後、黒田と改姓していた都間大尉を探し出した秦氏がインタビューした際に、途
中で敵機と遭遇したが無線封止を命じられていたために、帰投するまでそれを報告し
なかったと答えたので、「重大なる怠慢行為」と書かれた。
秦氏の研究結果を受けた森史郎氏は２０１２年に出版した「ミッドウェー海戦」
（新潮選書 p.394-396)でこう書いている。
「５番索敵線を征く都間信（まこと）大尉は飛行長の立場として、発進のおくれが
ですんだことに一安堵していた。発進は午前４時３５分。」
「重要任務だから、無線封止で行け」
出発前に吉村艦長からきびしい注意があった。
出発時、気象条件は良くなかった。発艦後２５分たって、夜が明けた。水平線が
明るみをおびて出てくると、不連続線の影響が東側にひろがり、雲量８の雲海がつ
ながっている状態なのがわかった。
通常の場合、索敵機は高度３００メートルから１０００メートルを上下しながら
最良の視界を求めて索敵任務のだが、都間はこの雲の層にはばまれて水平線まで
はっきり見透せない。やむをえず、雲の上を飛ぶことにした。任務怠慢のそしりを
まぬがれない安易な行動である。
彼の怠慢をあざ笑うかのように、運命の女神はとんでもない悪戯をした。筑摩
一号機が飛ぶ第５索敵線７７度上をたどればスプルーアンスの第１６機動部隊上空
に到達することになるが、彼らを雲の下にすっぽりとおおい隠したのである。
索敵機の機長としては、致命的な過ちを犯したのだ。」
「敵の見落としたとすれば天候以外に考えられない。途中で米軍哨戒機と二、三
回ぶつかって格闘戦にはいったので、それにまぎれて見落としたのかと思う。」
米軍哨戒機とは、未明に空母ヨークタウンを飛び立った第５哨戒中隊ＳＢＤ［
ドーントレス」１０機のうち１機と遭遇したことを指す。北方１００カイリ半円
を哨戒中のベン・プレストン少尉機がフロート付きの日本軍水上偵察機と交戦し
たことが、米側にあり「戦果を確認する時間はなかった」としているが、いずれに
しても都間機と空中格闘し、致命的な攻撃を加えることなく別れた事実がこれで
証明される。
【以下、続く】
【承前：３１９】
ＰＣの変換がおかしくなったので、中断した続きです。
「しかしながら、都間証言のもたらす意味は重大である。相手の米軍哨戒機がＳＢＤ
「ドーントレス」艦上爆撃機であれば、彼らの飛行圏内に空母部隊が確実に存在するは
ずであり、少なくとも彼は発艦後２時間以内に、南雲艦隊に米空母出現の通報ができた
はずである。空戦をおえてなお都間はこの事態に思いいたらず、帰途に報告もしなかっ
た。
筑摩１号機の機長は、二度も信じられない怠慢を繰り返したのだ。」（p.398)
と、都間大尉（戦後「黒田」に改姓）の怠慢を責めている。これは秦氏の調査・研究
に基づいたものであることは、森氏が本書の後書きの中で明記している。
この秦氏の「ミッドウェーの索敵機」という論考を読んだのが１９８０年半ばのこと
だった。午前６時４０分頃に、少なくとも一隻の空母を含む米機動部隊の存在を知れた
となれば、史実の「利根４号機」の曖昧な発見報告より確実なものであり、海戦の行方
を変えた可能性が非常に高かったことになる。
不思議なことに、この論考が広く検討されることはなかったようだ。
普通に出版された書籍しか見ていないが、「利根４号機」については語られるが、
「筑摩１号機」については２０００年を過ぎてもほとんどみかけない。海外のもの
も同様だった。もっともプランゲ教授の「ミッドウェーの奇跡」が邦訳出版されたの
がその頃だが、渕田美津夫や源田実たちの証言が中心とされていた。そのためか、
「筑摩１号機」は雲上飛行をしたため米機動部隊の上空を通過したが「見落とした」
という説が主流となっていた。
【続く】
ＰＣの変換がおかしくなったので、中断した続きです。
「しかしながら、都間証言のもたらす意味は重大である。相手の米軍哨戒機がＳＢＤ
「ドーントレス」艦上爆撃機であれば、彼らの飛行圏内に空母部隊が確実に存在するは
ずであり、少なくとも彼は発艦後２時間以内に、南雲艦隊に米空母出現の通報ができた
はずである。空戦をおえてなお都間はこの事態に思いいたらず、帰途に報告もしなかっ
た。
筑摩１号機の機長は、二度も信じられない怠慢を繰り返したのだ。」（p.398)
と、都間大尉（戦後「黒田」に改姓）の怠慢を責めている。これは秦氏の調査・研究
に基づいたものであることは、森氏が本書の後書きの中で明記している。
この秦氏の「ミッドウェーの索敵機」という論考を読んだのが１９８０年半ばのこと
だった。午前６時４０分頃に、少なくとも一隻の空母を含む米機動部隊の存在を知れた
となれば、史実の「利根４号機」の曖昧な発見報告より確実なものであり、海戦の行方
を変えた可能性が非常に高かったことになる。
不思議なことに、この論考が広く検討されることはなかったようだ。
普通に出版された書籍しか見ていないが、「利根４号機」については語られるが、
「筑摩１号機」については２０００年を過ぎてもほとんどみかけない。海外のもの
も同様だった。もっともプランゲ教授の「ミッドウェーの奇跡」が邦訳出版されたの
がその頃だが、渕田美津夫や源田実たちの証言が中心とされていた。そのためか、
「筑摩１号機」は雲上飛行をしたため米機動部隊の上空を通過したが「見落とした」
という説が主流となっていた。
【続く】
>>[321]
日本ではあまり評価が変わりませんが、世界史的にも大きな
転換点のひとつとなったされつつあります。４２年６月初旬の
日本海軍の大敗が与えた影響は、ガダルカナル＝ソロモン＝
ニューギニア諸島戦のそれとは違います。
同じ月前後にアフリカ北部トブルク陥落、黒海セバルトポール
要塞の陥落がありましたから、それに先立つ枢軸国側の挫折は戦
略的、心理的に大きく影響しました。
太平洋方面でまっ先に、脱落が懸念されていた豪州も珊瑚海海
戦の勝利（日本では日本側の勝利か引き分けと重られてます）で
心配がなくなりました。英国植民手だった印度やエジプトの独
立派なども「日本勝利」か「日本に有利な講和」はないと判断さ
れたことです。
それは「戦後世界の構築」に関して連合国内での駆け引きの始
まりでもありました。アジソン病で惚け始めたルーズベルト、心
臓病の爆弾を抱えたチャーチル、スターリンがいち早く戦後世界
の覇権を狙った工作を強化しています。
戦闘の当事者達はそんな歴史的な意義はともかく、目先の勝利
を得るために全力を尽くしていたのですね。
この戦闘で山本五十六ら連合艦隊司令部が望んだような戦果を
挙げる機会は、待ち伏せていた米機動部隊を先に発見して先手を
打てたかに掛かっていたと思います。
その意味で４番捜索線、５番捜索線を飛んだ「利根４号機」と
「筑摩１号機」の行動を見直して見ました。
日本ではあまり評価が変わりませんが、世界史的にも大きな
転換点のひとつとなったされつつあります。４２年６月初旬の
日本海軍の大敗が与えた影響は、ガダルカナル＝ソロモン＝
ニューギニア諸島戦のそれとは違います。
同じ月前後にアフリカ北部トブルク陥落、黒海セバルトポール
要塞の陥落がありましたから、それに先立つ枢軸国側の挫折は戦
略的、心理的に大きく影響しました。
太平洋方面でまっ先に、脱落が懸念されていた豪州も珊瑚海海
戦の勝利（日本では日本側の勝利か引き分けと重られてます）で
心配がなくなりました。英国植民手だった印度やエジプトの独
立派なども「日本勝利」か「日本に有利な講和」はないと判断さ
れたことです。
それは「戦後世界の構築」に関して連合国内での駆け引きの始
まりでもありました。アジソン病で惚け始めたルーズベルト、心
臓病の爆弾を抱えたチャーチル、スターリンがいち早く戦後世界
の覇権を狙った工作を強化しています。
戦闘の当事者達はそんな歴史的な意義はともかく、目先の勝利
を得るために全力を尽くしていたのですね。
この戦闘で山本五十六ら連合艦隊司令部が望んだような戦果を
挙げる機会は、待ち伏せていた米機動部隊を先に発見して先手を
打てたかに掛かっていたと思います。
その意味で４番捜索線、５番捜索線を飛んだ「利根４号機」と
「筑摩１号機」の行動を見直して見ました。
インド作戦でも直前の装備変換はやっていたが、運よく奇襲されなかった。それを反省せず、ミッドウェーでも同じ轍を踏んだことが裏目にでた。単なる索敵線の問題ではなく、索敵機が故障したら、そのバックアップをどうするかを考えていない硬直的な思考が問題。それを突き詰めれば、ハンモック�睛ダ茲凌融�。レーダーの軽視など科学技術重視の合理性に欠けた精神主義にいきつくんだな。イタリア海軍でもレーダー装備の有無が英国との海戦の差になった。
英国は陸軍はアホだが、海軍は合理性があった。日本もそうだが、レーダーを簪みたいで格好悪い、とかレーダ―電波を出したらこちらの位置がわかっちゃうとか、合理性が海軍でも乏しかった。月月火水木金金の訓練主義もアホな思考ができる原因だな。
英国は陸軍はアホだが、海軍は合理性があった。日本もそうだが、レーダーを簪みたいで格好悪い、とかレーダ―電波を出したらこちらの位置がわかっちゃうとか、合理性が海軍でも乏しかった。月月火水木金金の訓練主義もアホな思考ができる原因だな。
【承前：３２３】
この海戦での「索敵の失敗」が問題とされますが、批判のほとんどは「後知恵」であっ
て、検討する意味がありません。奇襲がもっとも重要だった真珠湾攻撃のさいでも索敵は
全周囲３６０度で８本の索敵線を配しただけです。これは敵情を知ろうとして過剰な斥候
を送ることは、かえって相手側にこちらの存在を知らせ占める危険を増すからです。
その意味で、ミッドウェーでの方位１８０度から３１度への反時計回りの７本の索敵線
は過剰ではないが、足りないとも言えません。存在を厳に秘匿せよ命じられていたフレッ
チャーが指示に反して早朝の奇襲を警戒して、北方１８０度１００カイリを偵察させた時
でも１０機でした。あとはミッドウェーからのＰＢＹがカバーしてくれるはずでした。
「筑摩１号機」の行動を怠慢とする説では、「命令に反して雲の下を飛ばず、上を飛ん
だために、敵艦隊を発見できなかった」とすることが主流です。ところが戦後明らかにな
っている米艦隊の行動図からすると午前６時半より前に同機が接近することはあり得ず、
艦隊の「上」空を交差」するのは７時を過ぎてからです。そのとき第１７機動部隊はそこを
１時間以上前に通過していたので、「眼下に敵艦隊を発見する」ことなど出来ません。
また「敵ＳＢＤと遭遇したが双方とも相手に致命傷を与えることなく別れた」ことを
報告しなかったと批判されますが、これは明らかに誤認です。「筑摩１号機」が米側の
索敵圏に到達したとき米機はすべて収容作業圏に戻っており、遭遇は考えられません。
日本側が「怠慢ゆえに報告しなかった」としても、米側が報告しないはずヶありません。
それにレーダーにも「ボギー」の存在はこの時点では確認されていません。
この朝の哨戒にでたショート大尉の報告はヨークタウン」沈没の際に失われたようで、
詳細は分かりません。それでも担当の将校が記憶で落とすとも感がられません。実際、
「筑摩１号機」と交戦したとされるプレストン少尉はその日の午後、日本軍の水上偵察
機を共同撃墜しています。
これを午前中のこととするのは６０年代に出版された「空母ヨークタウン（原題：
ミッドウェーでの会合」だけのようです。これを秦氏が読んで都間（黒田）氏に問うた
と思われます。この時点で米側の詳細な記録は開示されておらず、秦氏も裏を取りきれ
なかったので、推測の域をでなかったことが惜しまれます。
都間氏は「敵機２，３回ぶつかって格闘戦に入った」と証言しています。（森。１部
p.396) しかし、この証言はどのような条件で行われたのかよく判りません。問題は
「敵機」とあるだけで、機種が不明なことと複数回の交戦があったらしいことしか判り
ません。
「筑摩１号機」（やより南側を飛んだ他の索敵機も）ミッドウェーからの索敵機と
遭遇したことが双方の記録に残っています。そうすると「筑摩１号機」が遭遇したの
はＳＢＤよりもＰＢＹであった可能性が高いことになります。それなら「緊急性」は
低く、報告を怠ったこと不思議はないでしょう。もちろん、怠慢のそしりは免れませ
んが。他の偵察機も同様な対処を取ったと思われます。
【続く】
この海戦での「索敵の失敗」が問題とされますが、批判のほとんどは「後知恵」であっ
て、検討する意味がありません。奇襲がもっとも重要だった真珠湾攻撃のさいでも索敵は
全周囲３６０度で８本の索敵線を配しただけです。これは敵情を知ろうとして過剰な斥候
を送ることは、かえって相手側にこちらの存在を知らせ占める危険を増すからです。
その意味で、ミッドウェーでの方位１８０度から３１度への反時計回りの７本の索敵線
は過剰ではないが、足りないとも言えません。存在を厳に秘匿せよ命じられていたフレッ
チャーが指示に反して早朝の奇襲を警戒して、北方１８０度１００カイリを偵察させた時
でも１０機でした。あとはミッドウェーからのＰＢＹがカバーしてくれるはずでした。
「筑摩１号機」の行動を怠慢とする説では、「命令に反して雲の下を飛ばず、上を飛ん
だために、敵艦隊を発見できなかった」とすることが主流です。ところが戦後明らかにな
っている米艦隊の行動図からすると午前６時半より前に同機が接近することはあり得ず、
艦隊の「上」空を交差」するのは７時を過ぎてからです。そのとき第１７機動部隊はそこを
１時間以上前に通過していたので、「眼下に敵艦隊を発見する」ことなど出来ません。
また「敵ＳＢＤと遭遇したが双方とも相手に致命傷を与えることなく別れた」ことを
報告しなかったと批判されますが、これは明らかに誤認です。「筑摩１号機」が米側の
索敵圏に到達したとき米機はすべて収容作業圏に戻っており、遭遇は考えられません。
日本側が「怠慢ゆえに報告しなかった」としても、米側が報告しないはずヶありません。
それにレーダーにも「ボギー」の存在はこの時点では確認されていません。
この朝の哨戒にでたショート大尉の報告はヨークタウン」沈没の際に失われたようで、
詳細は分かりません。それでも担当の将校が記憶で落とすとも感がられません。実際、
「筑摩１号機」と交戦したとされるプレストン少尉はその日の午後、日本軍の水上偵察
機を共同撃墜しています。
これを午前中のこととするのは６０年代に出版された「空母ヨークタウン（原題：
ミッドウェーでの会合」だけのようです。これを秦氏が読んで都間（黒田）氏に問うた
と思われます。この時点で米側の詳細な記録は開示されておらず、秦氏も裏を取りきれ
なかったので、推測の域をでなかったことが惜しまれます。
都間氏は「敵機２，３回ぶつかって格闘戦に入った」と証言しています。（森。１部
p.396) しかし、この証言はどのような条件で行われたのかよく判りません。問題は
「敵機」とあるだけで、機種が不明なことと複数回の交戦があったらしいことしか判り
ません。
「筑摩１号機」（やより南側を飛んだ他の索敵機も）ミッドウェーからの索敵機と
遭遇したことが双方の記録に残っています。そうすると「筑摩１号機」が遭遇したの
はＳＢＤよりもＰＢＹであった可能性が高いことになります。それなら「緊急性」は
低く、報告を怠ったこと不思議はないでしょう。もちろん、怠慢のそしりは免れませ
んが。他の偵察機も同様な対処を取ったと思われます。
【続く】
【承前】
「筑摩１号機」の行動を批判する声がありますが、当時の機動部隊の戦策を考えれば
不思議ではないでしょう。ミッドウェーへの攻撃は「奇襲」が想定されていましたから、
攻撃開始の想定時間午前６時半（あるいは午前６時頃か？）までは機動部隊の存在を余地
させることは厳禁でしたに、また攻撃開始後もその存在位置を推測させる電信を打つこと
も攻撃部隊の存在位置を推定させることになるので、本当に緊急か、重要であると判断さ
れる情報以外に発信することは考えていなかったのでしょう。
そのためか、潜水艦の存在などを報じた通信を打ったことを否定する証言なども理解でき
ます。すなわち「無暗に、自軍の存在を敵に知らしめるような発信は避けるべきだ」という
ものです。それが「利根４号機の軽率は発信」への批判になっているのかも知れません。
それでも不思議なのは「０２２０ 敵潜水艦２隻見ゆ」と「０２５５ 敵機１５機貴方に
向う」の電報です。共に、時間と方位からして「利根４号機」からのものではないとされて
います。
【続く】
「筑摩１号機」の行動を批判する声がありますが、当時の機動部隊の戦策を考えれば
不思議ではないでしょう。ミッドウェーへの攻撃は「奇襲」が想定されていましたから、
攻撃開始の想定時間午前６時半（あるいは午前６時頃か？）までは機動部隊の存在を余地
させることは厳禁でしたに、また攻撃開始後もその存在位置を推測させる電信を打つこと
も攻撃部隊の存在位置を推定させることになるので、本当に緊急か、重要であると判断さ
れる情報以外に発信することは考えていなかったのでしょう。
そのためか、潜水艦の存在などを報じた通信を打ったことを否定する証言なども理解でき
ます。すなわち「無暗に、自軍の存在を敵に知らしめるような発信は避けるべきだ」という
ものです。それが「利根４号機の軽率は発信」への批判になっているのかも知れません。
それでも不思議なのは「０２２０ 敵潜水艦２隻見ゆ」と「０２５５ 敵機１５機貴方に
向う」の電報です。共に、時間と方位からして「利根４号機」からのものではないとされて
います。
【続く】
>>[327]
>機動部隊の存在を余地させることは厳禁
>攻撃開始後もその存在位置を推測させる電信を打つことも攻撃部隊の存在位置を推定させることになるので、本当に緊急か、重要であると判断される情報以外に発信することは考えていなかったのでしょう。
この辺りの戦策はミッドウェー海戦後も同じですね。
第2次ソロモン海戦でも味方機動部隊の行動秘匿のため、偵察機からの報告電は緊急・重要なこと以外の通信を禁じています。敵機動部隊発見は緊急・重要なことだが、潜水艦などは重要でないという判断です。
この判断は当然、連合艦隊も承認していたものですから、偵察機の行動や通信の方針はミッドウェー海戦だけが特別というわけではなさそうですね。
>機動部隊の存在を余地させることは厳禁
>攻撃開始後もその存在位置を推測させる電信を打つことも攻撃部隊の存在位置を推定させることになるので、本当に緊急か、重要であると判断される情報以外に発信することは考えていなかったのでしょう。
この辺りの戦策はミッドウェー海戦後も同じですね。
第2次ソロモン海戦でも味方機動部隊の行動秘匿のため、偵察機からの報告電は緊急・重要なこと以外の通信を禁じています。敵機動部隊発見は緊急・重要なことだが、潜水艦などは重要でないという判断です。
この判断は当然、連合艦隊も承認していたものですから、偵察機の行動や通信の方針はミッドウェー海戦だけが特別というわけではなさそうですね。
【承前】
前の「潜水艦ミユ」はともかく、次の「敵１５機、貴方二向フ」は米側が傍受して
いて「メク４」という「利根４号機」の呼出符号も入っています。この謎は解けない
ままになっています。時間や機数からすればミッドウェーから飛び立ち攻略部隊の船
団を目指した１６機のＢ１７の編隊であり、それを南側を索敵していた「赤城」か
「加賀」の報告が合致するのですが、「呼出符号」の問題となります。この件につい
てはっきりした答えはまだないようです。
「利根４号機」は発進が予定より３０分遅れたものの索敵線を大きく変えたとは
考えられていません。森氏の「ミッドウェー海戦」では次のような記述が見られます。
「都間機の南側、第４作敵線１００度上を往く利根４号機は、忠実に命令通りの海
上５００メートルをたどっていた。
発艦時、視界は１５カイリ（約２８キロ）と制限され、途中で雲が張り出してきて
困難な飛行であったが、機長甘利洋司一飛曹は愚直に雲の下をたどって、索敵飛行を
つづけていた。
甘利はこの５月２１日、瑞穂から利根乗組に転じてきた新参者である。電信員内山
博一飛も同様で、二人は偵察ー電信のペアを組んでいる。操縦員鴨池源八一飛は２３
歳と二人より２歳年上。（中略）コンビも初顔合わせで、チームワークも万全とはい
いがたい。ここにも直前の人事異動の弊害があった。」（森、第一部。p.397)
「甘利は１００度方向東へ、ひたすら飛びつづけたた。零式水偵の巡航速力１２０
ノット（時速２２２キロ）、約２時間を過ぎたところで、側程にはいる！と操縦席に
命じた。
なぜ、命令に違反して索敵線末端まで飛行しなかったのか、利根水偵隊員にとって、
進出距離３００カイリ、時間にして約２時間３０分の往路飛行を中断して勝手に側程
飛行に移るなどとは、ありえない軍規違反であった。
発艦３０分のおくれが、重巡利根の幹部たちをあせらせていたことは事実である。
単純に甘利機長のみの判断とするには疑問の余地がある。あるいは索敵線省略に
ついて飛行長の暗黙の了解があったものか。これも利根４号機の謎として解明できな
いままおわる」（森、p.399）
「利根４号機」が空母エンタープライズを中心とした輪形陣を発見したのは、午前
２０分から２５分までの間である。機長甘利洋司一飛曹は電信席の内山一飛に緊急信
を打電させる。
「敵ラシキモノ１０隻見ユ」（森。第２部 p.85)
【続く】
前の「潜水艦ミユ」はともかく、次の「敵１５機、貴方二向フ」は米側が傍受して
いて「メク４」という「利根４号機」の呼出符号も入っています。この謎は解けない
ままになっています。時間や機数からすればミッドウェーから飛び立ち攻略部隊の船
団を目指した１６機のＢ１７の編隊であり、それを南側を索敵していた「赤城」か
「加賀」の報告が合致するのですが、「呼出符号」の問題となります。この件につい
てはっきりした答えはまだないようです。
「利根４号機」は発進が予定より３０分遅れたものの索敵線を大きく変えたとは
考えられていません。森氏の「ミッドウェー海戦」では次のような記述が見られます。
「都間機の南側、第４作敵線１００度上を往く利根４号機は、忠実に命令通りの海
上５００メートルをたどっていた。
発艦時、視界は１５カイリ（約２８キロ）と制限され、途中で雲が張り出してきて
困難な飛行であったが、機長甘利洋司一飛曹は愚直に雲の下をたどって、索敵飛行を
つづけていた。
甘利はこの５月２１日、瑞穂から利根乗組に転じてきた新参者である。電信員内山
博一飛も同様で、二人は偵察ー電信のペアを組んでいる。操縦員鴨池源八一飛は２３
歳と二人より２歳年上。（中略）コンビも初顔合わせで、チームワークも万全とはい
いがたい。ここにも直前の人事異動の弊害があった。」（森、第一部。p.397)
「甘利は１００度方向東へ、ひたすら飛びつづけたた。零式水偵の巡航速力１２０
ノット（時速２２２キロ）、約２時間を過ぎたところで、側程にはいる！と操縦席に
命じた。
なぜ、命令に違反して索敵線末端まで飛行しなかったのか、利根水偵隊員にとって、
進出距離３００カイリ、時間にして約２時間３０分の往路飛行を中断して勝手に側程
飛行に移るなどとは、ありえない軍規違反であった。
発艦３０分のおくれが、重巡利根の幹部たちをあせらせていたことは事実である。
単純に甘利機長のみの判断とするには疑問の余地がある。あるいは索敵線省略に
ついて飛行長の暗黙の了解があったものか。これも利根４号機の謎として解明できな
いままおわる」（森、p.399）
「利根４号機」が空母エンタープライズを中心とした輪形陣を発見したのは、午前
２０分から２５分までの間である。機長甘利洋司一飛曹は電信席の内山一飛に緊急信
を打電させる。
「敵ラシキモノ１０隻見ユ」（森。第２部 p.85)
【続く】
【承前】
「米第１６機動部隊は攻撃隊発艦のために２群に分かれ、南よりの位置にエンター
プライスがいた。
画期的な成果といえるべきである。
往路を途中で左折し、測程に入ったことによって、おもいがけなく米空母部隊と
遭遇する機会を得たのである。それが発艦がおくれために独断で距離をちぢめたか、
あるいは武田（春雄・大尉）飛行長の判断で距離短縮を命じられたものか、いずれ
にせよ”怪我の功名”ともいうべき偶然により、日本側に攻撃のチャンスが転がりこ
んできたのである。
ただし、機長は第一報を打電すると操縦員の鴨池一飛に反転を命じ、上空から離
脱して姿をくらました。偵察員としては、何とも消極的すぎる行動であろう。
だが、甘利（一飛曹・機長）は偵察員としてはやってはならない過ちーー報告電
の位置をまちがえる、という決定的なミスを犯してしまったのだ。」（森・２部 p.
85-86)
「だが、この消極的ともいえる偵察機の行動をだれが非難できようか。ともかく
も彼は、敵発見第一報を打電した。
その発見電に最高司令官はどう対応するのか。つぎは、南雲司令部の戦場指揮が
問われる番だ。」（森。p.88)
「非難できようか」と書きながら、文章からうける印象は「消極的な行動を批判」
するものとなりますね。歴史書ではないので、書き手の感想というか見方が入り込
むのは「ノンフィクション」にはよくありますから、仕方がありません。
ここに森氏や資料を提供した秦氏、さらには当時入手できたその他の資料・史料
より新たに知られるようになったものを加えると、少し異なった視点ができそうで
す。
具体的に言うと、米海軍情報部ハイポ局の傍受記録と米海軍大学校の研究資料で
す。その一部は公開されていましたが、ほぼ全容が公開されたのは最近のことです。
俗に「ニミッツのグレイブック」と呼ばれる「米太平洋艦隊司令部戦時日誌」な
どもそれに含まれるでしょう。
【続く】
「米第１６機動部隊は攻撃隊発艦のために２群に分かれ、南よりの位置にエンター
プライスがいた。
画期的な成果といえるべきである。
往路を途中で左折し、測程に入ったことによって、おもいがけなく米空母部隊と
遭遇する機会を得たのである。それが発艦がおくれために独断で距離をちぢめたか、
あるいは武田（春雄・大尉）飛行長の判断で距離短縮を命じられたものか、いずれ
にせよ”怪我の功名”ともいうべき偶然により、日本側に攻撃のチャンスが転がりこ
んできたのである。
ただし、機長は第一報を打電すると操縦員の鴨池一飛に反転を命じ、上空から離
脱して姿をくらました。偵察員としては、何とも消極的すぎる行動であろう。
だが、甘利（一飛曹・機長）は偵察員としてはやってはならない過ちーー報告電
の位置をまちがえる、という決定的なミスを犯してしまったのだ。」（森・２部 p.
85-86)
「だが、この消極的ともいえる偵察機の行動をだれが非難できようか。ともかく
も彼は、敵発見第一報を打電した。
その発見電に最高司令官はどう対応するのか。つぎは、南雲司令部の戦場指揮が
問われる番だ。」（森。p.88)
「非難できようか」と書きながら、文章からうける印象は「消極的な行動を批判」
するものとなりますね。歴史書ではないので、書き手の感想というか見方が入り込
むのは「ノンフィクション」にはよくありますから、仕方がありません。
ここに森氏や資料を提供した秦氏、さらには当時入手できたその他の資料・史料
より新たに知られるようになったものを加えると、少し異なった視点ができそうで
す。
具体的に言うと、米海軍情報部ハイポ局の傍受記録と米海軍大学校の研究資料で
す。その一部は公開されていましたが、ほぼ全容が公開されたのは最近のことです。
俗に「ニミッツのグレイブック」と呼ばれる「米太平洋艦隊司令部戦時日誌」な
どもそれに含まれるでしょう。
【続く】
【承前】
「ミッドウェー海戦」については、資料・史料もほぼ出尽くした感じがあるけれども、
欧米では盛んに研究がされている。日本ではほんの一部のというのが残念だ。
日本側の研究でもただの好事家が首を突っ込めるの部分はほぼないが、意外にここ
２０年、すなわち２１世紀にはいってからはほとんど進捗が見られないようだ。過去
の歴史ついて淡白な体質のためかもしれないが、「歴史を軽んじるものは歴史に報復
される」という古人の戒めの言葉もあるので、まだまだ余地はあるのかもしれない。
この１５年ほど気になっているのが、「ミッドウェーの索敵機」だ。特に、有名な
「利根４号機」と「筑摩１号機」についてだ。
「筑摩１号機」については、規定に違反して雲の下を飛ばずに雲上を飛行したために、
「敵機動部隊の上空を飛びながら、それを見逃した」とか「艦載機と遭遇しながら、そ
れをすぐさま報告もせずに、『にんびりと索敵飛行』を漫然と続けていたと批判された
が、米側の資料や研究を丹念に見るとどちらも違っていた可能性が高いことが分かった。
とすると、「利根４号機」についても違う側面が見えてくるのではないだろうか。
９０年代に解禁された米側ハイポ局の傍受記録の内容を知ると、そんな思いが湧いて
きた。はじめは０５年ころ、何気なく投稿したコメントーー和英辞書を引き引き、なんと
かでっち上げた英文ーーに思いがけなく米国の研究者ジョン・ランドストローム氏から、
に返信が寄せられて、有名な「利根４号機」の「０４２８番電」が実際には「１２分遅
れて」発信された可能性があると知って驚いたことがきっかけだった。
ハイポ局の記録を見たいと思っても、わからないままいたずらに時間が過ぎっていっ
た。２０１０年を過ぎたころ、米海軍戦争大学で教鞭をとっていたダラス・アイソム氏
が退官記念論文として発表した論考をさらに深めた「審問・ミッドウェー海戦」を入手
した。その巻末の資料集にハイポ局の傍受記録の抜粋が載せられていた。
そこには確かに「利根４号機」から電文「０２５５ 敵機１５、貴方に向かう」や友
永大尉の「第２次攻撃の要あり」といったものを傍受したことが残されていた。そして、
「０４２８番電」はなく、私にとっては所見の「０４４０番電」が載っていた。ただ内
容については解読できなかったことも記されていた。それでなぜか、微妙は違和感は
あったものの納得してしまった。また、南雲司令部から０４４７時に「利根４号機」に
直接打電した「艦種確かめ、触接保て」が暗号化されず、平文であったことも傍受記録
に残っていたことも深く考えることはなかった。
数年して、戦艦大和の元副砲塔長の深井氏の著書の中で、日本海軍の地点符号地図を
見て「えっ？」と思った。わずか４文字で「５海里四方」を特定できるグリット方式
だったからだ。知識としてはずっと前から知ってはいたが結びつくことはなかった。
改めてハイポ局の記録を見ると、「０４４０ カナ４文字 濁り」となっている。
ランドストローム氏は「０４２８番電は何らかの理由で送られず、１２分後に時刻を
変更することなく打電したか、または打電したものの再送したのかも知れない」と
コメントしていたことを思い出した。
確かにあらかじめ決まった内容の略号ならともかく、「敵らしきも１０隻見ゆ・・」
の報告を送るには４文字では少なすぎることに改めて気づいた (o.o;;) ０４４０番電
は確かに「再送」されたものであり、ほんの一部分だったために「番電」とされずに
いたものと思われる。要するに「０４２８番電」はそれだけでは受領解読されたので
はなく、部分的に崩れたので、それを補完するために再送されたわけだ。
こう考えると、０４４５に南雲長官が「転換作業止め、そのまま」と指示し、さら
に０４４７に「艦種確かめ、触接保て」と平文で指示したことは、通説にいう南雲は
逡巡しがちだとか、航空戦に慣れていないという批判は適切ではないと思われる。
ただここで日本側にとって不幸なことは、空中状態のせいかは不明だが、その指示
が「利根４号機」に全文が届いていなかった可能性がある。米側の傍受記録では「触
接保て」の部分しかないからだ。
発信する側が落とすわけはないから、何らかの事情で前半の部分が脱落してしまい、
しかもそのことに受信側が気づかなかったか、のかも知れない。一つには、受信状態
が悪かったことと、司令部から直接にしかも平文で指示が入ることなど予想できなっ
ただろう。そのため「触接保て」の部分だけを受領して行動したのかも知れない。
【続く】
「ミッドウェー海戦」については、資料・史料もほぼ出尽くした感じがあるけれども、
欧米では盛んに研究がされている。日本ではほんの一部のというのが残念だ。
日本側の研究でもただの好事家が首を突っ込めるの部分はほぼないが、意外にここ
２０年、すなわち２１世紀にはいってからはほとんど進捗が見られないようだ。過去
の歴史ついて淡白な体質のためかもしれないが、「歴史を軽んじるものは歴史に報復
される」という古人の戒めの言葉もあるので、まだまだ余地はあるのかもしれない。
この１５年ほど気になっているのが、「ミッドウェーの索敵機」だ。特に、有名な
「利根４号機」と「筑摩１号機」についてだ。
「筑摩１号機」については、規定に違反して雲の下を飛ばずに雲上を飛行したために、
「敵機動部隊の上空を飛びながら、それを見逃した」とか「艦載機と遭遇しながら、そ
れをすぐさま報告もせずに、『にんびりと索敵飛行』を漫然と続けていたと批判された
が、米側の資料や研究を丹念に見るとどちらも違っていた可能性が高いことが分かった。
とすると、「利根４号機」についても違う側面が見えてくるのではないだろうか。
９０年代に解禁された米側ハイポ局の傍受記録の内容を知ると、そんな思いが湧いて
きた。はじめは０５年ころ、何気なく投稿したコメントーー和英辞書を引き引き、なんと
かでっち上げた英文ーーに思いがけなく米国の研究者ジョン・ランドストローム氏から、
に返信が寄せられて、有名な「利根４号機」の「０４２８番電」が実際には「１２分遅
れて」発信された可能性があると知って驚いたことがきっかけだった。
ハイポ局の記録を見たいと思っても、わからないままいたずらに時間が過ぎっていっ
た。２０１０年を過ぎたころ、米海軍戦争大学で教鞭をとっていたダラス・アイソム氏
が退官記念論文として発表した論考をさらに深めた「審問・ミッドウェー海戦」を入手
した。その巻末の資料集にハイポ局の傍受記録の抜粋が載せられていた。
そこには確かに「利根４号機」から電文「０２５５ 敵機１５、貴方に向かう」や友
永大尉の「第２次攻撃の要あり」といったものを傍受したことが残されていた。そして、
「０４２８番電」はなく、私にとっては所見の「０４４０番電」が載っていた。ただ内
容については解読できなかったことも記されていた。それでなぜか、微妙は違和感は
あったものの納得してしまった。また、南雲司令部から０４４７時に「利根４号機」に
直接打電した「艦種確かめ、触接保て」が暗号化されず、平文であったことも傍受記録
に残っていたことも深く考えることはなかった。
数年して、戦艦大和の元副砲塔長の深井氏の著書の中で、日本海軍の地点符号地図を
見て「えっ？」と思った。わずか４文字で「５海里四方」を特定できるグリット方式
だったからだ。知識としてはずっと前から知ってはいたが結びつくことはなかった。
改めてハイポ局の記録を見ると、「０４４０ カナ４文字 濁り」となっている。
ランドストローム氏は「０４２８番電は何らかの理由で送られず、１２分後に時刻を
変更することなく打電したか、または打電したものの再送したのかも知れない」と
コメントしていたことを思い出した。
確かにあらかじめ決まった内容の略号ならともかく、「敵らしきも１０隻見ゆ・・」
の報告を送るには４文字では少なすぎることに改めて気づいた (o.o;;) ０４４０番電
は確かに「再送」されたものであり、ほんの一部分だったために「番電」とされずに
いたものと思われる。要するに「０４２８番電」はそれだけでは受領解読されたので
はなく、部分的に崩れたので、それを補完するために再送されたわけだ。
こう考えると、０４４５に南雲長官が「転換作業止め、そのまま」と指示し、さら
に０４４７に「艦種確かめ、触接保て」と平文で指示したことは、通説にいう南雲は
逡巡しがちだとか、航空戦に慣れていないという批判は適切ではないと思われる。
ただここで日本側にとって不幸なことは、空中状態のせいかは不明だが、その指示
が「利根４号機」に全文が届いていなかった可能性がある。米側の傍受記録では「触
接保て」の部分しかないからだ。
発信する側が落とすわけはないから、何らかの事情で前半の部分が脱落してしまい、
しかもそのことに受信側が気づかなかったか、のかも知れない。一つには、受信状態
が悪かったことと、司令部から直接にしかも平文で指示が入ることなど予想できなっ
ただろう。そのため「触接保て」の部分だけを受領して行動したのかも知れない。
【続く】
【承前】
そのため司令部の思惑とは歌腹に「のんびりと触接を保ちつつ」、敵らしき艦隊の
変針を報告してきたのが、１２分後の０４５８番電だった。この通信に「激怒した」
源田参謀？が改めて「艦種知らせ」と送った（０５００時）ことで、「利根４号機」
は接近を始めたものと思われる。９分後に「巡洋艦５隻と駆逐艦５隻」と報告した
のち、１０分後に「後方に空母らしきもの１隻を伴う」と知らせてきた。
ここで南雲司令部はテンヤワンヤの騒ぎ？になったのかもしれないが、確たる物証
はもちろん証言もないので考えを広げるのはやめておく。
森史郎氏の「ミッドウェー海戦」第２部の８１から８５ページまで描かれている
南雲司令部の反応は「０４２８番電」の受領直後のものではなく、かなり後のもの
か、脚色されたものである可能性が高いことが、米側の資料から読み取れると思え
るのだ。
米側が「０４２８番電」を傍受できなかったことや「０４４７番電」を部分的に
しか傍受していないことから、通信状況は刻々と変化していたことが分かる。
ために利根司令部も「利根４号機」からの通信を全文受信できず、部分的に再送
させてやっと通信文を復元できた０４４０番電として、南雲司令部に送ったのだろう。
宇垣纒の「戦争藻」の記述からはそう読める。０４４２時から０４４４時あたりに
南雲たちは知った可能性が高い。そうだとすれば、南雲の反応は十分に早いものだっ
たことになる。その意味で「南雲愚将説」は当たらないと思う。
従って、「０４２８番電」のことをしったのが０５００時直前のことだったとする
淵田の記述は間違いだろう。南雲の「弁明書」には０５００少し前とあるが、確かな
証拠はない。
通常、暗号化してから発信される司令部の指示が、その手間を惜しんでまで平文
で打電した通信が完全には伝わらかった可能性があり、それは日本側にとって不運
といえることだ。
しかし、こうしたことは戦場においてはよく起こることであって、珍しいことでは
ない。日常のせいかつのなかでもこうしたことは当然のように起きていることも知っ
ておく必要あるだろう。
【続く】
そのため司令部の思惑とは歌腹に「のんびりと触接を保ちつつ」、敵らしき艦隊の
変針を報告してきたのが、１２分後の０４５８番電だった。この通信に「激怒した」
源田参謀？が改めて「艦種知らせ」と送った（０５００時）ことで、「利根４号機」
は接近を始めたものと思われる。９分後に「巡洋艦５隻と駆逐艦５隻」と報告した
のち、１０分後に「後方に空母らしきもの１隻を伴う」と知らせてきた。
ここで南雲司令部はテンヤワンヤの騒ぎ？になったのかもしれないが、確たる物証
はもちろん証言もないので考えを広げるのはやめておく。
森史郎氏の「ミッドウェー海戦」第２部の８１から８５ページまで描かれている
南雲司令部の反応は「０４２８番電」の受領直後のものではなく、かなり後のもの
か、脚色されたものである可能性が高いことが、米側の資料から読み取れると思え
るのだ。
米側が「０４２８番電」を傍受できなかったことや「０４４７番電」を部分的に
しか傍受していないことから、通信状況は刻々と変化していたことが分かる。
ために利根司令部も「利根４号機」からの通信を全文受信できず、部分的に再送
させてやっと通信文を復元できた０４４０番電として、南雲司令部に送ったのだろう。
宇垣纒の「戦争藻」の記述からはそう読める。０４４２時から０４４４時あたりに
南雲たちは知った可能性が高い。そうだとすれば、南雲の反応は十分に早いものだっ
たことになる。その意味で「南雲愚将説」は当たらないと思う。
従って、「０４２８番電」のことをしったのが０５００時直前のことだったとする
淵田の記述は間違いだろう。南雲の「弁明書」には０５００少し前とあるが、確かな
証拠はない。
通常、暗号化してから発信される司令部の指示が、その手間を惜しんでまで平文
で打電した通信が完全には伝わらかった可能性があり、それは日本側にとって不運
といえることだ。
しかし、こうしたことは戦場においてはよく起こることであって、珍しいことでは
ない。日常のせいかつのなかでもこうしたことは当然のように起きていることも知っ
ておく必要あるだろう。
【続く】
【承前】
「利根4号機」の行動が「やや不活発であった」と評するものが少なくない。
発見時（０４２０〜０４２５辺りか？）には米空母は南雲艦隊への攻撃隊の
発艦をしていた。しかしこのときは「敵らしきもの１０隻」を視認しただけで、
近くに空母が存在するとは考えなかったようだ。発見されないように雲に隠れ
ながら艦隊からの指示を待っていたのだろう。
０４２８時に発見の報を打電したが、たぶん空中状態の関係で全文を受領で
きなかった利根から、再度位置情報を送れと言われ、再送したのが０４４０時
だった。そこへいきなり上級司令部である南雲の旗艦である赤城からの「緊急
電」それも平文で指示が入ったので、驚いたことは確かだろう。
当惑したしたものの受信した内容は「触接せよ」だけだったようだ。なぜ
その前の「艦種確かめ」という部分を受け損なったのか、クルーが帰還した
後のやり取りなどではわからない。彼らは戦後まで生きていなかったので、
詳細な部分は謎のままなってしまった。
そのためか、艦種の確認をするためにあえて接近することを控えながら、
飛行を続けていたと思われる。そこへ０５００時に「艦種知らせ、触接保て」
という指示が入り、接近を図ったのだろう。そして０５０９に「巡洋艦５、
駆逐艦５」と報告した。
そのあとわずか十分後に「その後方に空母らしきもの１隻を伴う」と報じた。
この報告を南雲司令部が受けたのが０５２０から何分を経てからなのか不明
だが、利根を経由したので、数分から十分程だったようだ。
よく描かれる南雲司令部のやり取りである「敵との距離は２３０海里、戦闘
機の援護はつかないし、攻撃隊もまだ届かないだろう」といったものは、この
時のものだったと思われる。でないと０５３０時の「兵装再転換」命令が分か
りにくい。
敵の攻撃圏内にあると判断すればただちに西方なり南西に退避したはずで
あるが、ミッドウェー攻撃から帰還してきた友永隊を収容しなければならず、
時間を空費することを強いられた。（まだ基地からの攻撃も終わっていなかっ
た。）
このあたりで「利根４号機」の役割は終わったといえる。しかし、その後も
戦闘詳報はなぜか帰還を急ごうとする同機とのやり取りを書く。
０５３４ われ是より帰投す
０５４８ われ、帰投す
０５５５ 帰投 待て（司令部）
０６２９ 燃料少なし、帰投す
０６３５ ０７００まで待て（司令部）
０６３７ 燃料残、少なし 帰投す
０６３８ 筑摩より交替機 待て（司令部）
０６３８ われ 出来ず
０６４１ われ、出来ず（重複？）
０７２５〜０７３０ 三空母被爆
０８２５ 燃料残り五〇リットル
０８４７ 利根、４号機と１号機を収容
やけに「燃料少なし」を理由に「利根４号機」が帰投を急いでいる印象を
受けてしまう。なんとなく「へっぴり腰」の行動をしやがって、お前の
せいでこんなことになった、と責任転嫁を図っているのではと勘繰りたく
なるのは「歴史陰謀論大好き」人間の癖かもしれない。
ほかの資料と参照したくても皆無なので、これ以上は分からない。
「真相隠し」はこの国（ほかの国でもにたものだが）の「お家芸」のひとつ
なのかもしれない。
【続く】
「利根4号機」の行動が「やや不活発であった」と評するものが少なくない。
発見時（０４２０〜０４２５辺りか？）には米空母は南雲艦隊への攻撃隊の
発艦をしていた。しかしこのときは「敵らしきもの１０隻」を視認しただけで、
近くに空母が存在するとは考えなかったようだ。発見されないように雲に隠れ
ながら艦隊からの指示を待っていたのだろう。
０４２８時に発見の報を打電したが、たぶん空中状態の関係で全文を受領で
きなかった利根から、再度位置情報を送れと言われ、再送したのが０４４０時
だった。そこへいきなり上級司令部である南雲の旗艦である赤城からの「緊急
電」それも平文で指示が入ったので、驚いたことは確かだろう。
当惑したしたものの受信した内容は「触接せよ」だけだったようだ。なぜ
その前の「艦種確かめ」という部分を受け損なったのか、クルーが帰還した
後のやり取りなどではわからない。彼らは戦後まで生きていなかったので、
詳細な部分は謎のままなってしまった。
そのためか、艦種の確認をするためにあえて接近することを控えながら、
飛行を続けていたと思われる。そこへ０５００時に「艦種知らせ、触接保て」
という指示が入り、接近を図ったのだろう。そして０５０９に「巡洋艦５、
駆逐艦５」と報告した。
そのあとわずか十分後に「その後方に空母らしきもの１隻を伴う」と報じた。
この報告を南雲司令部が受けたのが０５２０から何分を経てからなのか不明
だが、利根を経由したので、数分から十分程だったようだ。
よく描かれる南雲司令部のやり取りである「敵との距離は２３０海里、戦闘
機の援護はつかないし、攻撃隊もまだ届かないだろう」といったものは、この
時のものだったと思われる。でないと０５３０時の「兵装再転換」命令が分か
りにくい。
敵の攻撃圏内にあると判断すればただちに西方なり南西に退避したはずで
あるが、ミッドウェー攻撃から帰還してきた友永隊を収容しなければならず、
時間を空費することを強いられた。（まだ基地からの攻撃も終わっていなかっ
た。）
このあたりで「利根４号機」の役割は終わったといえる。しかし、その後も
戦闘詳報はなぜか帰還を急ごうとする同機とのやり取りを書く。
０５３４ われ是より帰投す
０５４８ われ、帰投す
０５５５ 帰投 待て（司令部）
０６２９ 燃料少なし、帰投す
０６３５ ０７００まで待て（司令部）
０６３７ 燃料残、少なし 帰投す
０６３８ 筑摩より交替機 待て（司令部）
０６３８ われ 出来ず
０６４１ われ、出来ず（重複？）
０７２５〜０７３０ 三空母被爆
０８２５ 燃料残り五〇リットル
０８４７ 利根、４号機と１号機を収容
やけに「燃料少なし」を理由に「利根４号機」が帰投を急いでいる印象を
受けてしまう。なんとなく「へっぴり腰」の行動をしやがって、お前の
せいでこんなことになった、と責任転嫁を図っているのではと勘繰りたく
なるのは「歴史陰謀論大好き」人間の癖かもしれない。
ほかの資料と参照したくても皆無なので、これ以上は分からない。
「真相隠し」はこの国（ほかの国でもにたものだが）の「お家芸」のひとつ
なのかもしれない。
【続く】
【承前】
では、なぜ「利根４号機」の行動は「へっぴり腰」だったのか？
このことを考える場合、同機が「予定より３０分遅れて射出」されたことが
大きく影響しているようだ。
命じられた索敵距離は３００海里、２時間半の飛行時間。さらに左へ転じて
６０海里、３０分の側程に入り、再度左に転じて帰投する。この間、艦隊は高
速（２４ノット＝海里）で移動を続けているので、１５０海里前後先にいるこ
とになる。そうすると復路は往路の３００海里より長く、４５０海里前後にな
ると想定される。巡行の飛行時間にして約４時間弱になる。合計すると異常が
なくても、飛行時間全体は少なくとも７時間となる計算だ。
航続距離の長い零式偵察機をもってしても、かなりきつい任務だ。一応、同
機種の運用時間は９時間半程度（ウィキの記述による）とされているが、安全
な運航と不測の事態を考慮すると余裕はあまりない。
７時間かかっても、まだ２時間半の余裕があるのではと感じるが、目印も
ままならない広大な洋上を移動を続ける基地に戻るには十分に、余裕があると
いえないそうだ。（現役の飛行士、一人だけど、と雑談をしたときの感想とし
てこう答えてくれた。）
そのある意味では余裕があまりない飛行機を飛ばした「利根４号機」のクルー
たちは、「３０分遅れ」ということがかなり重くのしかかっていたと思われる。
その焦りが往路の３００海里を巡行の１２０ノットではなく、より速く飛ぼ
うとしたとしても不自然ではないだろう。２５％増しの１５０ノットで飛べば
遅れは取り戻すことができるからだ。だが事はそう簡単ではないのが当然だ。
燃料の消費を計算すると、側程を含めた３６０海里をほぼ４０％の燃料でカ
バーすると安全な帰還が期待できるだろう。ほぼ１０００海里の飛行距離を
持つ零式偵察機なら十分なものと思われる。
ところが実際にやってみると、燃料の消費は予想より大きく往路の途中、
たぶん２４０〜２６０海里あたりで４０％に近づいてしまい、やむな側程に
入ったようだ。
流体力学の基本だそうだが、運動の負荷は速度の３乗に比例するので、
２５％増しの場合約１．９５倍とほぼ倍になる。そんなことは飛行士にとって
基本中の基本だから、それを踏まえての増速飛行だったが、それでも想定以外
の要素が加わったのだろう。ともかく、予定の３００海里を飛行することは燃
料の消費を危険なものにすると考えたのだろう。さらに「この付近には敵艦隊
はいないだろう」という事前の情報の刷り込みもあったのかもしれない。
０４００頃に側程に入り、２０分ほど飛んだところで前方もしくは左側に敵
艦隊を視認したようだ。確認に数分をかけて、電文を作成し０４２８番電を発
信したようだ。
米側の記録にも０４１５（現地時間０７１５）にエンタープライズのレーダー
が「方位真南（１８０度）距離７２０００ヤード（約６５．５キロ）にボギー
（敵機）を発見」とあるから、双方の距離は約３５海里半だった。飛行機の飛
行方向が分からないので、側程であったのか、あるいは復路にあったのかを判
断するのが難しい。
というのは、利根４号機が側程測定に入ったのは０４００前後よりも早く、
０３５０以前であったという研究もあるからだ。元のソースが明示されていな
いので困るのだが、先に引用している米海軍戦争大学のアイソム氏の論考の中
の図に利根機の航跡として０３４８に側程に入り、０４１１に復路に入ったと
されているからだ。（米海軍戦争大学紀要・２０００年夏号・２６ページ）
（地図内の時刻は現地時間表記なので、それぞれ０６４８、０７１１とある）
往路に入って０４２８に米第１６機動部隊を視認したと読める。
さらに０４５８（同０７５８）と０５２０（同０８２０）に、針路を変えて
いることなどが読み取れる。驚くべき資料なのだが、肝心の日本側の資料の出
所がないのだ。
これだけ具体的な記録なのに、なぜか出所が分からないのは困る。米国の論
文、特に専門家が読むものについては、編集者が事前にかなりのチェックを入
れるので、それなりの根拠があると思うのだ。
さらに困惑させられるのが、数年後に纏められたアイソム氏の「審判・ミッ
ドウェー海戦」に収められている図では、利根機の航跡は０４２８までで、そ
の後の部分が消されているのだ。
この問題については、それなりの論争があったはずなのに、さがしだせてい
ないのは、不徳に至りだ。
【続く】
では、なぜ「利根４号機」の行動は「へっぴり腰」だったのか？
このことを考える場合、同機が「予定より３０分遅れて射出」されたことが
大きく影響しているようだ。
命じられた索敵距離は３００海里、２時間半の飛行時間。さらに左へ転じて
６０海里、３０分の側程に入り、再度左に転じて帰投する。この間、艦隊は高
速（２４ノット＝海里）で移動を続けているので、１５０海里前後先にいるこ
とになる。そうすると復路は往路の３００海里より長く、４５０海里前後にな
ると想定される。巡行の飛行時間にして約４時間弱になる。合計すると異常が
なくても、飛行時間全体は少なくとも７時間となる計算だ。
航続距離の長い零式偵察機をもってしても、かなりきつい任務だ。一応、同
機種の運用時間は９時間半程度（ウィキの記述による）とされているが、安全
な運航と不測の事態を考慮すると余裕はあまりない。
７時間かかっても、まだ２時間半の余裕があるのではと感じるが、目印も
ままならない広大な洋上を移動を続ける基地に戻るには十分に、余裕があると
いえないそうだ。（現役の飛行士、一人だけど、と雑談をしたときの感想とし
てこう答えてくれた。）
そのある意味では余裕があまりない飛行機を飛ばした「利根４号機」のクルー
たちは、「３０分遅れ」ということがかなり重くのしかかっていたと思われる。
その焦りが往路の３００海里を巡行の１２０ノットではなく、より速く飛ぼ
うとしたとしても不自然ではないだろう。２５％増しの１５０ノットで飛べば
遅れは取り戻すことができるからだ。だが事はそう簡単ではないのが当然だ。
燃料の消費を計算すると、側程を含めた３６０海里をほぼ４０％の燃料でカ
バーすると安全な帰還が期待できるだろう。ほぼ１０００海里の飛行距離を
持つ零式偵察機なら十分なものと思われる。
ところが実際にやってみると、燃料の消費は予想より大きく往路の途中、
たぶん２４０〜２６０海里あたりで４０％に近づいてしまい、やむな側程に
入ったようだ。
流体力学の基本だそうだが、運動の負荷は速度の３乗に比例するので、
２５％増しの場合約１．９５倍とほぼ倍になる。そんなことは飛行士にとって
基本中の基本だから、それを踏まえての増速飛行だったが、それでも想定以外
の要素が加わったのだろう。ともかく、予定の３００海里を飛行することは燃
料の消費を危険なものにすると考えたのだろう。さらに「この付近には敵艦隊
はいないだろう」という事前の情報の刷り込みもあったのかもしれない。
０４００頃に側程に入り、２０分ほど飛んだところで前方もしくは左側に敵
艦隊を視認したようだ。確認に数分をかけて、電文を作成し０４２８番電を発
信したようだ。
米側の記録にも０４１５（現地時間０７１５）にエンタープライズのレーダー
が「方位真南（１８０度）距離７２０００ヤード（約６５．５キロ）にボギー
（敵機）を発見」とあるから、双方の距離は約３５海里半だった。飛行機の飛
行方向が分からないので、側程であったのか、あるいは復路にあったのかを判
断するのが難しい。
というのは、利根４号機が側程測定に入ったのは０４００前後よりも早く、
０３５０以前であったという研究もあるからだ。元のソースが明示されていな
いので困るのだが、先に引用している米海軍戦争大学のアイソム氏の論考の中
の図に利根機の航跡として０３４８に側程に入り、０４１１に復路に入ったと
されているからだ。（米海軍戦争大学紀要・２０００年夏号・２６ページ）
（地図内の時刻は現地時間表記なので、それぞれ０６４８、０７１１とある）
往路に入って０４２８に米第１６機動部隊を視認したと読める。
さらに０４５８（同０７５８）と０５２０（同０８２０）に、針路を変えて
いることなどが読み取れる。驚くべき資料なのだが、肝心の日本側の資料の出
所がないのだ。
これだけ具体的な記録なのに、なぜか出所が分からないのは困る。米国の論
文、特に専門家が読むものについては、編集者が事前にかなりのチェックを入
れるので、それなりの根拠があると思うのだ。
さらに困惑させられるのが、数年後に纏められたアイソム氏の「審判・ミッ
ドウェー海戦」に収められている図では、利根機の航跡は０４２８までで、そ
の後の部分が消されているのだ。
この問題については、それなりの論争があったはずなのに、さがしだせてい
ないのは、不徳に至りだ。
【続く】
【承前】
● なぜ利根４号機は報告位置を誤ったのか？
これはミッドウェー海戦に興味を持つ人なら、だれでも考えることの
一つでしょう。諸説ありますが、確定されたものはないようです。
・単純な航法ミス
１．利根４号機のミス
コンパスの狂いか？
２．発進したときに与えられていた艦隊位置のミス
当日の日出時、水平線を覆う雲の為、日出地点を視認出来なかった
ので、各艦の推測測定値を平均して出したため、実際のいちより北方
にずれていた。
・磁方位の過ち
１．機体が新しく、磁方位の修正が不十分だった。
２．発進が遅れたので、消磁作業を省いたため、実際の位置より北方を
示していた。
３．磁極方位の修正値を、南方のそれのまま北で使用したため
これは利根４号機の機長と電信員は、海戦の直前の５月２３日に
水上機母艦「瑞穂」かれ転属してきたばかりで、操縦員と組むのは
始めてだったので息が合わなかったためなどという。
この３人は戦争を生延びなかったので細かな証言は残されていない。当時の
関係者たちの証言でも、このミスについて厳しく追及した様子はないようで、
「往路での短縮飛行」や「敵艦隊発見時の様子」などの詳細も定かではありま
せん。それほど重視されていなかったのも知れません。
英米諸国なら当然開かれたはずの「査問委員会」などもなかったし、極秘裏
に「ある程度おざなりに調査して一件落着を図った」と言われかねない処理を
した？ 関係資料の多くが敗戦時に焼却されたので断片的にしか分からないま
まになりました。
何かまずいことが起こったときに日本人がよくやる「もみ消し」ですかね。
公開しなくても、責任者達を厳しく審問にかけて多くの教訓を引き出すという
作業を嫌います。「明日は我が身」という同情か、あるいは恐怖は分かりませ
んが、「真実を追究する執念が足りない」のかも知れません。
この海戦の２ヶ月に起きた「第一次ソロモン海戦」での敗因を追求した米
の査問委員会の様子とは大違いですね。議長に退役海軍大将を据えて、徹底的
に事実を追求しています。その激しさに自殺者がでるほどのものだったのです。
それを日本でやろうとしたら、南雲中将以下の司令部要員は勿論のこと山本
司令長官にまで、火の粉が飛びかねないので無理だったでしょう。
【続く】
● なぜ利根４号機は報告位置を誤ったのか？
これはミッドウェー海戦に興味を持つ人なら、だれでも考えることの
一つでしょう。諸説ありますが、確定されたものはないようです。
・単純な航法ミス
１．利根４号機のミス
コンパスの狂いか？
２．発進したときに与えられていた艦隊位置のミス
当日の日出時、水平線を覆う雲の為、日出地点を視認出来なかった
ので、各艦の推測測定値を平均して出したため、実際のいちより北方
にずれていた。
・磁方位の過ち
１．機体が新しく、磁方位の修正が不十分だった。
２．発進が遅れたので、消磁作業を省いたため、実際の位置より北方を
示していた。
３．磁極方位の修正値を、南方のそれのまま北で使用したため
これは利根４号機の機長と電信員は、海戦の直前の５月２３日に
水上機母艦「瑞穂」かれ転属してきたばかりで、操縦員と組むのは
始めてだったので息が合わなかったためなどという。
この３人は戦争を生延びなかったので細かな証言は残されていない。当時の
関係者たちの証言でも、このミスについて厳しく追及した様子はないようで、
「往路での短縮飛行」や「敵艦隊発見時の様子」などの詳細も定かではありま
せん。それほど重視されていなかったのも知れません。
英米諸国なら当然開かれたはずの「査問委員会」などもなかったし、極秘裏
に「ある程度おざなりに調査して一件落着を図った」と言われかねない処理を
した？ 関係資料の多くが敗戦時に焼却されたので断片的にしか分からないま
まになりました。
何かまずいことが起こったときに日本人がよくやる「もみ消し」ですかね。
公開しなくても、責任者達を厳しく審問にかけて多くの教訓を引き出すという
作業を嫌います。「明日は我が身」という同情か、あるいは恐怖は分かりませ
んが、「真実を追究する執念が足りない」のかも知れません。
この海戦の２ヶ月に起きた「第一次ソロモン海戦」での敗因を追求した米
の査問委員会の様子とは大違いですね。議長に退役海軍大将を据えて、徹底的
に事実を追求しています。その激しさに自殺者がでるほどのものだったのです。
それを日本でやろうとしたら、南雲中将以下の司令部要員は勿論のこと山本
司令長官にまで、火の粉が飛びかねないので無理だったでしょう。
【続く】
【承前:338】
ＰＣもまともに使いにくい状態だったので、ＴＶも見ないし、映画もうかつにいけ
ないので、ネットサーフィンをしていた。もっぱら歴史ものや科学モノ（宇宙。動物）
などをみていた。
日本近現代史というか、全般を通じてみると例外的なものを除けば「娯楽もの」の
域をでないものがほとんどだ。だいたい、数分から１時間半までと種類は豊富に見え
るが、放送大学のレベルはおろか、中学高校レベルの通信教育にも及ばないものばか
りだ。
歴史物をみていると、本当に軍事・戦争・外交などの基本的知識を欠いたままで
語ったり、見せたりするから「冗談か漫談もどきの仕上がり」となるようだ。
真珠湾攻撃やミッドウェー海戦だけでなく、第１次、第２次大戦、冷戦なども定説
だけでなく、新らた説などを生半可に混ぜ込むからますますややこしくなる。そこを
強引に「ｕｐ主」が力説するから分かったような気がする人もすくなくないのだろう。
本人には責任はないのだが、歴史を素材にした小説を多く発表した司馬遼太郎など
は「新神話作り」の創作者にされている。「司馬史観」などというものを作られて、
ご本人もかなり閉口していたと聞く。
ＰＣもまともに使いにくい状態だったので、ＴＶも見ないし、映画もうかつにいけ
ないので、ネットサーフィンをしていた。もっぱら歴史ものや科学モノ（宇宙。動物）
などをみていた。
日本近現代史というか、全般を通じてみると例外的なものを除けば「娯楽もの」の
域をでないものがほとんどだ。だいたい、数分から１時間半までと種類は豊富に見え
るが、放送大学のレベルはおろか、中学高校レベルの通信教育にも及ばないものばか
りだ。
歴史物をみていると、本当に軍事・戦争・外交などの基本的知識を欠いたままで
語ったり、見せたりするから「冗談か漫談もどきの仕上がり」となるようだ。
真珠湾攻撃やミッドウェー海戦だけでなく、第１次、第２次大戦、冷戦なども定説
だけでなく、新らた説などを生半可に混ぜ込むからますますややこしくなる。そこを
強引に「ｕｐ主」が力説するから分かったような気がする人もすくなくないのだろう。
本人には責任はないのだが、歴史を素材にした小説を多く発表した司馬遼太郎など
は「新神話作り」の創作者にされている。「司馬史観」などというものを作られて、
ご本人もかなり閉口していたと聞く。
「帝国軍人」戸高一成・大木毅（角川新書）を読んでいますが、ミッドウェー海戦の「利根」カタパルト故障についての記述があったので、参考までに以下に記します。
（P137〜138）
・・ミッドウェイでアメリカの空母を探す偵察機・「利根」四号機が、カタパルトの故障により遅れます。それにより、米艦隊の発見が遅れる。なぜそのようなことになったのかを調べたのは、宮崎勇（海兵五八期）さんでした。軍令部の参謀だった宮崎さんは、戦後も調べました。その調査によると、夕方に甲板整列といって、兵隊のお尻をこん棒でぶん殴るのが激しすぎたため、みんな半分ストライキ状態だったそうです。巡洋艦には普通、カタパルトは二個あります。故障しても、すぐに代わりを出せるということです。ところが、本来なら代わりを出さないといけないほうがストライキを起こしていたので動かなかった。「俺たちの方に命令が来たわけじゃない」と。それで遅れたのだ、と言っていました。宮崎さんが、飛行科の人たちに聞いて歩いた結果です。こんなことを書いてある本はありません。
（P137〜138）
・・ミッドウェイでアメリカの空母を探す偵察機・「利根」四号機が、カタパルトの故障により遅れます。それにより、米艦隊の発見が遅れる。なぜそのようなことになったのかを調べたのは、宮崎勇（海兵五八期）さんでした。軍令部の参謀だった宮崎さんは、戦後も調べました。その調査によると、夕方に甲板整列といって、兵隊のお尻をこん棒でぶん殴るのが激しすぎたため、みんな半分ストライキ状態だったそうです。巡洋艦には普通、カタパルトは二個あります。故障しても、すぐに代わりを出せるということです。ところが、本来なら代わりを出さないといけないほうがストライキを起こしていたので動かなかった。「俺たちの方に命令が来たわけじゃない」と。それで遅れたのだ、と言っていました。宮崎さんが、飛行科の人たちに聞いて歩いた結果です。こんなことを書いてある本はありません。
【nagao_eijiさん】「帝国軍人」は先週一晩でよみきりました。
興味ふかいエピソードがいくつも紹介されていますが、結構、裏付けを欠く
ものが少なくないので、きちっと主張できないものがあるのが残念です。
「自慢はなし」「誇張」「思い違い」「ねつ造」などはついて回ることなど
ですから、歴史を扱う場合は特に用心がいると思います。それらを検討する
のは推理小説を読むような楽しみを覚えるのは私だけではないと思います。
書中で触れられている兵士達による「蛮行」の数々については、戦後の混乱
期に出された怪しげな雑誌などで見かけたものが少なくない印象を受けました。
当時の紙の質は劣悪なものでしたから、１９７０年代でも古書店で触るだけ
で崩れるようなものもありました。当然現在では入手は難しくなっているでしょ
うね。
古代からの伝承の中でも多く語られてきた「蛮行」の焼き直しがあるので、
真偽を確かめるのは難しいです。「暴君伝説」のその最たるものでしょうか。
（「世界暴君伝説」なんてものを斜め読みをすることもある昨今です。
興味ふかいエピソードがいくつも紹介されていますが、結構、裏付けを欠く
ものが少なくないので、きちっと主張できないものがあるのが残念です。
「自慢はなし」「誇張」「思い違い」「ねつ造」などはついて回ることなど
ですから、歴史を扱う場合は特に用心がいると思います。それらを検討する
のは推理小説を読むような楽しみを覚えるのは私だけではないと思います。
書中で触れられている兵士達による「蛮行」の数々については、戦後の混乱
期に出された怪しげな雑誌などで見かけたものが少なくない印象を受けました。
当時の紙の質は劣悪なものでしたから、１９７０年代でも古書店で触るだけ
で崩れるようなものもありました。当然現在では入手は難しくなっているでしょ
うね。
古代からの伝承の中でも多く語られてきた「蛮行」の焼き直しがあるので、
真偽を確かめるのは難しいです。「暴君伝説」のその最たるものでしょうか。
（「世界暴君伝説」なんてものを斜め読みをすることもある昨今です。
「ミッドウェー海戦解説ビデオ」
昨年春に公開されて半年足らずで３百万回以上の再生を記録し、コメントが
数千も寄せられたビデオの後半部が公開されました。
「日本側から見たミッドウェー海戦・第一部」
https://www.youtube.com/watch?v=Bd8_vO5zrjo
「日本側から見たミッドウェー海戦・第二部 飛龍の逆襲」
https://www.youtube.com/watch?v=BXjydKPcX60&t=846s
「米側から見たミッドウェー海戦・第三部 戦略的意義」
https://www.youtube.com/watch?v=WHO6xrSF7Sw
良質な近年の研究を取り入れたアニメーション主体のものです。
米国で公開されたものですから、英語のナレーションですが、
字幕を日本語に設定すれば、難はありますがわかりやすくなると
思います。
ここの攻撃の詳細をこれまた個々の機体についてまで語っている
ので、日米双方のパイロット達の行動まで分かります。森史郎氏の
「ミッドウェー海戦」などの記述を理解しやすくなります。
日本人の手でこのようなビデオを作成できなかったのが残念です。
また、来月（９月）に公開が予定されている「ミッドウェー」（２０１９）
を見る前に見ておくと良いでしょう。映画そのものは話題を詰め込み過ぎなど
でマニアの評価はいまいちのようです。
昨年春に公開されて半年足らずで３百万回以上の再生を記録し、コメントが
数千も寄せられたビデオの後半部が公開されました。
「日本側から見たミッドウェー海戦・第一部」
https://www.youtube.com/watch?v=Bd8_vO5zrjo
「日本側から見たミッドウェー海戦・第二部 飛龍の逆襲」
https://www.youtube.com/watch?v=BXjydKPcX60&t=846s
「米側から見たミッドウェー海戦・第三部 戦略的意義」
https://www.youtube.com/watch?v=WHO6xrSF7Sw
良質な近年の研究を取り入れたアニメーション主体のものです。
米国で公開されたものですから、英語のナレーションですが、
字幕を日本語に設定すれば、難はありますがわかりやすくなると
思います。
ここの攻撃の詳細をこれまた個々の機体についてまで語っている
ので、日米双方のパイロット達の行動まで分かります。森史郎氏の
「ミッドウェー海戦」などの記述を理解しやすくなります。
日本人の手でこのようなビデオを作成できなかったのが残念です。
また、来月（９月）に公開が予定されている「ミッドウェー」（２０１９）
を見る前に見ておくと良いでしょう。映画そのものは話題を詰め込み過ぎなど
でマニアの評価はいまいちのようです。
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