大橋翠石コミュの有明海の干拓と大橋翠石

夏休みを利用して嫁の実家へ帰省してきました。その間佐賀県立美術館、大隈重信資料館、北原白秋生家を見学してきました。
この九州の有明沿岸と大橋翠石との関係は地理的にみても離れているので関係が薄いと考えられがちですが、１９２７年、東京上野日本美術協会で翠石百幅展が開催された時の発起人は東郷平八郎、金子堅太郎、団琢磨の名士です。
これらの方々はみんな九州人です。
特に金子と団は福岡藩士であり関係が深い。
この両氏は大橋翠石との面識もあることは当然であろう。大隈重信も翠石との文書で絵を所有している。

今回みやま市瀬高図書館で「有明土地改良事業」の歴史本を読んで分かったことが、北原白秋が金子、団両氏を瀬高・鍵屋という場所？屋号なのか分かりませんが、そこで接見をして土地改良の要望をしたことが事実として分かった。
北原家は家業が造酒屋の家で生まれている。造り酒屋は広い水田が必要とするために河川の改修（筑後川、矢部川）の必要性を両氏に強く要望したということだ。
特に金子は農商務省大臣であったためにおそらく直訴のような形となって行われたのではないかと推察する。また団はこの事業と同時に同じ有明海に三池港を建造することになる。
これによって筑後川、矢部川下流の土地改良、有明干拓事業が現代のような形になったと思われる。

少々歴史的は背景となってしまったが、大橋翠石との関係は北原白秋の姉の嫁ぎ先が瀬高で造り酒屋を営んでいる。そこの親戚筋に当たるところが以前ここで取り上げた大橋翠石の絵を版画にした引きびき（広告）を出したところです。
この子孫の方は現存しており、今回お会いすることが出来ました。
現在は運送業を営んでおり、翠石という画名はご存じありませんでしたが、有名な人が書いた虎画があったそうで、その方自身も子供の頃に絵を見たそうです。
聞いた絵のイメージは岩を降りてくる虎の絵でかなり大きいものということでした。

この瀬高町に翠石との関係を調べていくと北原白秋とつながり、白秋と金子、団という福岡の有力者とつながりが確認できました。
大隈重信と北原白秋の関係も白秋が東京へ出るときに大隈重信を頼って上京した事実。
このような関係から北原白秋も大橋翠石との関係もかなり深い。また姻戚の家にも大橋翠石の作品の引びきの利用。翠石らしい作品の所在などからかなりの頻度で関係があったと推察される。

今回の調査ではこれ以外にも副島種臣と大隈重信の深い親交が分かり、佐賀にも何らかの関係があったと考えられる。
次回は副島種臣との関係を探ってみたいと思う。

これからも九州に行く機会があるのでこの件については調べてみたい。また大橋翠石の作品についても掘り起こしをしたいと思っています。

コメント(1)

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[1] mixiユーザー 08月16日 11:38

　まだこれだけでは翠石とこの地域の関係性を言うことはできません。重要視しておられる引札についても、翠石が特に描き下ろしたという周辺情報（原画が伝わっており、箱書や添状からその制作経緯が知られるなど）のがないなら、何らかの出版物等から画像を転載している可能性を否定しきれません。

　子孫の方の所蔵していた虎図云々の話も、写真等伝えられていない状況では参考にしかできません。佐賀は長崎に近く、長崎派や来舶清人の手になる虎図も多数伝えられているでしょう。よしんばそれが翠石の作品であったとしても、当時の翠石は今とは違って全国的な人気のあった作家（山形や秋田の素封家も所蔵している事例があります）ですから、その一事をもってこの地域と翠石が特に密接な関係を持ったということはできないでしょう。

　私が注目している翠石と九州との関係としては、金子が開学に尽力した九州帝国大学に息子が入学していることが上げられます。本来、翠石は九州とは縁がないのですから、なぜあえて九州帝国大学か、ということがより重要ではないでしょうか。当時の指導教官などに、卒業等の謝礼として翠石の虎画が贈られることなどはあったやもしれず、そのようなお宅にいまなお翠石の作品が存しているなら、それは非常に貴重な情報ですが……

　金子に「大橋翠石との面識」があったことは確かですが、団の場合は「当然」と言い切るだけの情報を私は得ていません。百幅画会に合わせて翠石が上京したことを窺わせる証拠がないからです。私は金子・松方以外の百幅画会関係者の翠石との直接的な関係については懐疑的です。東郷とは、面識は無いにせよ、もう少し交流があったことが想像されますが……

　研究をされる場合は、そこまで言えるかどうかを熟考されることを強くお勧めします。翠石の研究者としては、彼に関わる根拠に乏しい情報が世に流布されることがとても残念です……

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