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SS・小説置き場コミュのVOCALOID SS

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VOCALOIDのSS置き場です。
VOCALOIDは書き手によって性格が色々変わりますが、この中に於いては統一するよう努めてまいります。・・・実はとあるアンソロジーの性格を大元にしてたりしますが・・・w

尚、閲覧はPC推奨です。

コメント(3)

「ん〜・・・今日はこのくらいにしておこうか?」
「ううん、まだまだ大丈夫!もっとレッスンつけて、お兄ちゃん!」
呆れたような困ったような、KAITOはなんとも微妙な苦笑を浮かべている。
「でもミクちゃん、もう3時間も休みなしで声出し続けてるよ?」
「ホンマや〜・・・うちもうヘトヘトや・・・。そろそろ終わろ?ミク姉」
鏡音リンはレッスンルームの床に尻餅をつくようにへたりこんでしまった。
「でもリンちゃん。お兄ちゃん、まだ一度も満足そうな顔してくれてないよ?私たちは世界中の人に歌を聞いてもらうんだから、中途半端はいけないと思う」
KAITOに向かう態度と変わり、実の姉のように、諭すようにリンの説得を試みる初音ミク。
「うぅ・・・せやけど、このままやと声潰れてまうって・・・レンもさっきから一言もしゃべらんようになってもうたし」
「・・・」
じっと姉弟子と、双子の姉のやりとりを聞く鏡音レン。
「レンは元々無口じゃない!」
気持ちが先行したか、ミクはやや声を荒げてしまう。発言した当のミク自身も、己の言動に驚き、やや気まずい空気が流れてしまった。
「・・・ふぅ。ほら、ミクちゃん。世界中に響かせるはずのその声が、今無理をしてしまうと、もう二度と使い物にならなくなっちゃうかもしれないし・・・ね?今日はもう休もう」
ミクはニッコリ微笑みながら頭を優しく撫でてくる歌の先生・・・KAITOの言葉に、不本意ながらも頷くしかなかった。

レッスンルームから出て、近未来的な細い廊下を1,2分程歩いていくと、非常口のような鉄扉がある。その扉をくぐった先には、ごくごく一般的な木造住宅の佇まいがあった。ここが彼女ら『VOCALOID』達の居住区である。
VOCALOID達にはそれぞれ個室が与えられており、部屋はそれぞれの個性豊かな洋風部屋であったりするのだが、こと居間に至っては明らかな和風である。というのも、この建物の管理人でもあるMEIKOの趣味というか本人曰く、『団欒はちゃぶ台から』というポリシーのせいだったりするのだが・・・。
「おかえりなさい♪ごはんできてるわよ〜・・・って、随分ご機嫌斜めね?ミクちゃん」
「なんでもないもんっ」
と、見るからにふくれっ面なミクを見咎めるMEIKO。
「いや〜・・・今日のレッスン、あんまり僕が納得しないもんだから、ムキになっちゃったみたいで」
「あらまぁ・・・」
「だって、音もブレスも、アクセントやスラーだって絶対外してないのに、お兄ちゃんず〜っと今ひとつって感じの顔してるんだもん!」
「しかも、ミク姉にだけは何かアドバイスするでもなし、『もう一回歌ってみて?』ばっかりやもんなぁ?うちらなんてダメ出しだらけやっちゅうのに・・・」
「・・・」
コクリと頷くレン。
「まぁ?KAITO君ったら、贔屓はダメよ?」
「ええっ?!そ、そんなつもりじゃなくて・・・」
狼狽するKAITOをケラケラと笑うMEIKO。
「冗談は置いといて・・・ミクちゃん。KAITO君はね、ちゃんとできてるところはできてるってわかってくれてる。きっと、それでもできていない何かがミクちゃん自身にあるんだと思うわよ?」
「何かって・・・何?」
半べその瞳でKAITOに詰め寄るミク。
「え、いや、その〜・・・ね・・・?」
しばし狼狽した後、KAITOはまっすぐミクを見つめ、
「その何かは、ミクちゃんが自分自身でわかって欲しい課題なんだ。ううん、そうじゃないと意味がないことなんだ。技術的に僕が新しく教えられることは、今のミクちゃんにはない。ここからは自分で考えて・・・本当の意味での自分の歌を歌えるように、ね?」
「自分の・・・歌・・・?」
KAITOの深く澄んだ蒼い瞳に吸い込まれるような錯覚を覚えるミク。
「お腹すいた」
それまでの空気が一瞬にして崩れ去った。
その声の主は、レンであった。
「あ、そ、そうねレン君。お腹すいたわよね?準備はできてるから、どうぞ召し上がれ♪」
MEIKOがレンにごはんをよそってやる。
ミクも豆鉄砲を食らったような気分だったが、瞬間、そのKY発言に心が和み、楽しく食卓を囲える心持ちになった。

  続く...
あくる日、ミクはまたもや仏頂面をしながら街にくり出していた。
午前に1時間ほどレッスンを受けたところで、KAITOに
「気分転換に2時間ほど散歩しておいで」
と、天使の微笑みで悪魔の宣告を受けたからであった。
KAITOのレッスンを毎日の楽しみとするミクにとって、悪魔の宣告とは誇大表現ではなかった。事実、普段からレッスンやボイストレーニングばかりしていたミクは、おしゃれやお出かけといった、年頃の女の子の娯楽とは全くの無縁であり、街へ出てきたところで何をしていいやら皆目見当もつかなかった。
(お兄ちゃん・・・私のことはどうでもよくなっちゃったのかな・・・?)
暗い妄想ばかりが膨らみ、前を見て歩くことすら失念していたミクは、当然のように壁にぶち当たった。・・・物理的な壁に。
「「いたっ!」」
衝突を物語る声は2つ同時に響いた。ミクが慌てて壁を見上げると、それは壁ではなく、ミクと同じく考え事をしていた亞北ネルの額であった。
「あっ、あんたねぇ!どこ見て歩いてるのよ!」
ミクが現状を把握する間もなく、開口一番文句を浴びせかけるネル。
「うぇっ?え、あ!ご、ごめ・・・って、ネルちゃん?!」
ネルとミクは同期にVOCALOIDとしてデビューした仲間であり、ライバルであった。・・・のだが、ネルが一足先にマスター付きVOCALOIDとして数々の歌を発表したことにより、ミクにとってネルは憧れの存在となっていた。ただ、ネルにとってのミクは相変わらずの存在のようで・・・。
「フンッ、ボヤーッっとした性格は相変わらずのようね。このあたしの存在にすら気づかないなんて、どうかしてるわよ?」
と、顔を合わすなり憎まれ口ばかり叩く有様であった。
「う、うん・・・歌がなかなかうまく歌えないみたいで・・・ちょっと、どうしていいかわからなくなっちゃって・・・」
皮肉にすら気づかず、悩み事を暴露するミク。
「くっ・・・!・・・ふ、ふ〜ん。大変そうねぇ?ま、あんたの歌が今どの程度なのかは知らないけど、あたしがいた頃でもあんたの歌の技術は、なかなかのものだったと思うけど?」
「えっ?ほ、ホントに?!」
ミクは心底嬉しそうにネルを見つめ返す。
「べっ、別に褒めたわけじゃないんだから!あんたのは音楽としてはそれなりでも、歌としてはまだまだだって意味なんだからねっ!」
「ど、どういう意味・・・?」
ネルに真剣な眼差しで聞き返す。
「あんたのそういうところ。どうすれば上手く歌えるか。どうすれば上手く声を響かせるか。そんなことばかりに気を配ってても、『歌』として人を魅了することなんてできないって言ってんの」
いつになく静かに、諭すようなネルの言葉に引き込まれるミク。ミクが感心してその言葉を反芻すると、ネルはハッと我に返った。
「ムキーッ!なんであたしがミクのために助言してやんなきゃなんないのよ!もうあんたの相手飽きた!帰って寝る!」
「あ、うん。ありがとうネルちゃん!おやすみなさい〜!」
プリプリしながら帰るネルの背中に、またもや皮肉に気づかないまま生真面目に言葉を送るミク。ネルとの短い会話の間にその心中は、嵐から穏やかな凪へと変わっていた。

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