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リレー小説やってますコミュの風のバトン 第一章 風をみつけて。 第 1 話

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「よう、毎日何をスケッチしてるんだい」
いきなり声をかけられた堀井 翔は、
あわててスケッチブックを閉じた。
「ここ座っていいかな?」
そういうと男は、学生の横に座った。
「いつも、ここのグランドを見て描いてるようだが、ちょっとその中身を見せてくれないか?」
「え?」
「いや、ストーカーなどとは思ってないさ。君は堀井 翔、わが聖学院大学基礎総合教育部1年生だろ」
「どうして」
「ははは、私はそこのグランドの陸上部の監督だ」
5月も終わりの風が吹いていた。


監督はいつの間にか、堀井のスケッチブックを開いていた。
「ほおお、この子は雪村しのぶ君だ、君と同じ1年生だよ」
「す、すいません」
「おや、こっちの子は清野つばさ君だね」
「走ってる姿が好きなんです」
監督はにこりと笑った。


「この雪村君、どう思う」
「どう思う?」
「そう、期待の新人なんだけどね」
「彼女は右足と左足のステップ幅が違うんです」
「な、なにい?」
「左足のステップが短い。ですからコーナー向きでしょうね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、じゃあ、清野は?」
「彼女はスタート時のキック力が足りない」
監督は目を丸くした。
「すいません、眺めてスケッチしてるうちにそう思いました」


「さすがはスプリンター堀井翔だ」
「え?」
「インターハイ、決勝、ゴールした君は大腿二頭筋を断裂した」
「・・・」
「有名大学への推薦入学を断念させられ、そして」
「すべて夢だったんです」
「どうだった、ゴールのあの周り、すべて緑に輝く風に包まれた気持ちは」
「緑に輝く風、もう昔のことです」
「またあの風の中に飛び込んでみたいとは思わないか」

「もう無理です」
「一言で言えば単なる肉離れじゃないか」
「でも」
「うちの連中のコーチをしながら、リハビリをしないか。必ず治るさ」
「でも僕はやっと松葉杖がとれたばかりで」

監督は急にジャージの左足を捲り上げた。
「あっ」
監督は左足のひざから下を取り外し、右手で引き離したのだ。

「中学2年生だったなあ、もう13年になるかな、クレーン車が倒れて僕の左足はこうなった」
堀井は声が詰まった。
「僕もね、君ほどとはいかないが、走るのが速くてね」
「だから緑の風を」
「そう、あのゴールの瞬間に緑に輝く風を見た一人だ」
堀井の顔は紅潮した。

「そう、そうですよね、あの風を突き抜ける瞬間がたまらない」
「僕はまだ諦めてはいないよ。それをパラリンピックで味あうつもりだ」
堀井はドキン、ドキンとする胸の音を感じた。

「どうだ、君は必ず治る。夢を信じて、しばらく手伝ってはくれないか」
「夢を信じる・・・」
「何しろ僕は陸上部全体を見なければならない」
二人は立ち上がり、グランドへ降りていった。


08/11/03 ちいーまん


次回 →
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=36810203&comm_id=3816953

コメント(2)

原則、cocott 投稿時の画像・本文を誤字・脱字・改行そのままで保存していきます。
もし、また連載が決まれば、ブラックさんサイドで監修・加筆修正・校正されるんでしょうね かたつむり
8行目「聖学院大学」を「星緑院大学」に訂正お願いします。

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