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THE 感動する話コミュの「 焼肉 」

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私がまだ日本語教師だったころの話。そして、このクラスが私にとって最後の生徒たちでした。
今日、東京で行われているタイフェスティバルに行った帰りに、ふっと思い出してしまった話。

その日は遠足。このクラスは中国・韓国・アメリカ・タイ・スリランカの5か国から生徒が集まる、多国籍クラスでした。そしてみんな個性が強く、会話の授業が大好きで、みんなが優しいクラスでした。
遠足のシメは焼肉。普段苦学生な彼ら(ほとんどがアルバイトをしながらカツカツの生活をしていた)。焼肉に決めたのは生徒たちの言葉でした。「焼肉食べ放題やりたいです!」と。異論は全くなかったんです。

そして当日。みんなそれぞれ友達とテーブルを囲みます。皿に盛られた肉や野菜をみんな焼き始めました。

タイ出身の男性の生徒はなぜか野菜しか食べていないのです。「?」と思った私。確か彼は仏教徒だと言っていたはず。でも「僕はお坊さんじゃないから肉も魚もOKです」と笑っていたなぁと思う私。彼もまた新聞配達をすることで奨学金を得ている学生でした。

「おい、なんで肉食べないんだよ。ほら、これ焼けてるよ」と中国出身のチェさんが言いました。ぶっきらぼうだけど実は優しくて日本語も上手な生徒。横には彼の恋人でアメリカ出身のマリーさんがチェさんの言葉にうなづいて、「そうよ、どんどん食べないとあなたまた痩せちゃうよw」と微笑みました。

すると・・・
「実は僕・・・仏教徒は仏教徒なんだけど・・・牛肉を食べちゃいけないんだ・・・僕の宗派の戒律・・・」とタイ人の学生。

「え?どうして言わなかったの?」と私。
「みんなが楽しければそれでいいと思っていたので・・・。大丈夫です。僕は野菜を食べますから。」とタイ人。

すると・・・・

「よし!これからこのテーブルは鶏肉と豚肉と野菜と海鮮の席にする!文句あるやつは申し訳ないが隣に移ってくれ。俺も今日は牛肉を食いたくない気分なんだ。今日はチェのわがままを聞いてほしい。」

チェさんがそういって、隣のテーブルにいた同郷の友人に「おい、リー。これもってけ」と牛肉の乗った皿を渡しました。

「いや、みんないいよ。僕は野菜を食べるから気にするなよ」とタイ人。

「牛肉食いたければ隣に行くだけの話だ。みんなわかったか?席を移動したければ今そういってくれ」と同じテーブルに着く数人にチェさんは問いかけました。
誰一人、席を立つ人はいませんでした。

「あ、ここには牛肉以外を運んでくれますか?」とチェさんは店員の女性にそういい、エビを焼き始めました。

「みんな、僕のせいでごめん・・・」とタイ人。

すると・・・

「お前とこうして同じクラスになれたことが幸せだった。最初は嫌なやつだと思っていたけど・・・今はこうして同じクラスで学べたことがうれしくてたまらない。国籍も母国語も違うけど、お前は大親友なんだ。俺はお前と飯が食いたい。牛肉なんかまたいつでも食べられる。お前とこうして食事する機会のほうが俺には大事だから。」

チェさんはそういって焼けたエビを真っ先にタイ人の生徒の皿に乗せました。

「私も鳥のほうが好きなのよ」「上海人は海鮮が一番だ!」「そういえば私、2キロ太ったから牛肉はNGなのよ」と口々にそのテーブルに着いた学生たちがそういいました。

「俺らはみんな、お前と一緒に飯が食いたいからお前のそばに座ったんだ牛肉のためじゃない。一緒に卒業しよう」
チェさんの一言にみんながうなづきました。

気が付くと、隣のテーブルからも「ここはうまい鳥があるって聞いた」「エビがたくさん焼いてあるって?」とほかの学生も集まりだしました。

タイ人学生は「ありがとう・・・みんなありがとう・・・。僕はみんなと友達になれただけで留学した意味があった・・・」と言いました。その眼に涙が浮かんでいました。私は彼らの光景を見ていて、教師になってよかったと心から想っていました。

本当は問題が山積みになるだろうと思った多国籍クラス。このクラスにはそんな心配は不要だったようです。彼らは卒業し、それぞれの人生を今歩んでいます。

私自身もその後留学し、彼らの苦しみや喜びを知りました。私は教師として教壇で教える仕事をしていましたが、実は私が学生たちからたくさんのことを学んでいた気がします。学校自体が経営難に陥ったため、教師陣で一番若かった私は生活のために退職し、彼らの卒業式を見届けることなく学校を去りました。

その後、管理職だった職員から手紙が届きました。「あなたの教育方針は間違っていなかった。あなたのように熱心に学生たちと向き合う教師が必要なんだと痛感しました。同封の作文を読んでください」と書いてありました。
作文はあのタイ人からでした。

「先生、今どうしておられますか?僕は会いたくてたまらないんです。先生のおかげで日本語能力試験2級を合格しました。入国したときは不安でホームシックで、ずいぶん先生に迷惑をかけました。ごめんなさい。日本留学で一番想い出すのは先生と、チェさんたちと一緒にいたクラスです。入国当初、僕はきっとつまらなくてさみしくて、嫌な留学になると思っていました。でもそれは違いました。とても楽しくて素晴らしい毎日でした。先生、僕はタイに帰国することにしました。僕の家は貧しいので、進学をあきらめ、妹が日本に留学できるようにしてやりたいと思ったからです。先生、今どこにいらっしゃいますか?僕は先生のこと死ぬまで忘れません。先生がタイに来るときは教えてください。留学中の恩返しをさせてください。待っています。先生、本当にありがとうございました。先生の幸せを祈っています」

この作文は今も私の「貴重品入れ」の中に入っています。

タイ人学生はその後、日系企業に通訳として就職し成功したと聞きました。同じクラスであの日一緒に食事をしていたキョウさんは3年ほど日本で働き、その後中国でアパレルの会社を立ち上げました。上海人は海鮮が一番!と言っていた武さんはその後東京の大学を卒業、今は名古屋で働いているといいます。チェさんとマリーさんはその後結婚したと聞きました。

私にとって最後のクラスはかけがえのない素晴らしいクラスでした。彼らが私の学生でいてくれたことに、そしてお互い思いやりを持った学生たちであったことに、心から感謝をしています。そして、彼らの人生がいつも希望に満ち溢れ、輝かしいものであることを祈ってやみません。いつまでもあの頃の思いやりを持って生きて行ってくれますように・・・。彼らのような人が増えるのなら世の中はきっと平和だと、そう信じているから・・・。

コメント(5)

題名から考えられないくらいの素晴らしい話でした。ありがとうございます。
心がものすごくほっこりしました

こんなに素晴らしい生徒さんに、こんなに好かれて尊敬される貴女も素晴らしい方だと思います。

良い話ありがとうございました(T-T)

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