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THE 感動する話コミュの青の洞門

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涙そうそう



大分県に実際にあるものです。史実は少し違うのですが今回は菊池寛さんの解釈で書いていきます。

昔の豊前の国(今の大分県の一部です)の北の方に山国川という川がありました。
その川は絶壁に囲まれておりましたが、その絶壁のがけを通らないと地元の人たちがおまいりするお寺に行けない事から転落する人が後を絶ちませんでした。

そこに一人のお坊さんがやってきました。

名は了海と言います。了海は出家する前に大きな罪を犯していました。人を殺していたのです。そしてそれを償う為に、苦しい修行をして何か人の為に出来る事をしたいと考えていました。

了海がそのガケを渡ろうとしていると前に村人たちが集まって騒いでいました。
近づくと傷だらけになっている村人の死体を囲んでいるところでした。

当時のガケの架け橋は『くさりわたし』と言って手すりも何もない、丸太を鎖でつないだだけの物でした。

その死んでいる村人はくさりわたしから転落して亡くなったそうです。

周りにいる村人は

『この先の険しいガケの中腹にくさりわたしがあるのですが年に10人くらい落ちて死ぬんです。くさりわたしは直す職人が豊前にはいないので直す事が出来ません』

了海はそのガケまで行ってみました。

確かにガケの中腹にくさりわたしがあり、その下は30m程の絶壁が続いていました。了海は意を決してくさりわたしを渡ってみました。

岩にしがみつくようにして震えながら渡るのがやっとでした。
そして渡りきった時、了海の心に大きな決心がわきました。

『この大きな岩をくり抜いて道を作ろう。そうすれば村人を救う事ができる。
自分が求めていた人の為になる仕事に違いない。今だけでなくこれから生まれてくる人たちの命も救う事ができる』

了海はさっそく村へ行って人々にこの計画を話して活動の為の寄付を集めました。ですが村人は一人も取り合ってはくれませんでした。

『あの岩をくり抜こうなんて、無理な話だ。そんな事出来るわけがない』

『うまいこと言ってお金を盗もうって事だろ、だまされてたまるか』

など言って嘲笑いました。

誰一人として協力してくれる者がいなくても了海の決心は変わらなかった。自分だけでやろうと決め、槌とノミを用意すると険しいガケの前に立ちました。

そして祈りを込めながら最初の槌を振りおろしました。

二つか三つの小さなかけらが飛び散っただけでしたが了海は続けました。
それから一日も休む事なく朝は暗いうちに起き、夜は真っ暗になるまで、一心に岩を打ち続けました。

1年経つと3mくらいの洞窟が出来ていました。3年経っても了海の槌の音は絶える事はありませんでした。

『どうやら本気みたいだぞ』

さすがに村人たちもこのころになると了海を見る目が少し変わってきました。
ひそかに同情を寄せる人も増えてきました。

『これを食べて下さい』

と了海に食べ物を届ける人もいました。

そして9年経ちました。

洞窟は40mまで掘り進められました。それを見た村人達は

『この分では本当につらぬけるかも知れない』

と考え、数人の大工を村人のお金で雇いました。この応援を得て洞窟の中は活気づきました。槌の音もにぎやかに響きました。

しかしそれは1年と続きませんでした。穴が全体の4分の1にもなってないことが分かると大工たちは次々に去っていき了海はまた一人になりました。

掘り始めて10年。

了海はすっかりやせおとろえました。目も落ちくぼんで生きている人とは思えないほどでした。

ですがそんな体で更に8年掘り続けました。合計18年。

穴はようやく半分程になりました。人々はもう了海を疑うのはやめました。

真剣に仕事を助けようと今度は30人の大工が集められました。大工たちは痛々しい了海の姿を見て

『あなたは指図だけして下さい』

と泣いて頼みましたが了海はやめませんでした。大工たちは了海のひたむきさに打たれ、互いに励まし合いながら懸命に掘りました。

そんなある日

一人の武士がこの洞窟にやってきました。

若い時の了海に父を殺された息子の実之助が親のかたきを取ろうとやってきたのでした。

『20年も国々を追って、ついに探し当てた父親のかたき。一太刀にしてくれる』

実之助は洞窟の入口に立ち刀に手を掛けて待っていました。ですが洞窟の中から出てきた了海を見た時、思わず息をのみました。

見るにしのびない、あわれな姿をした老人ではないか。

勇みたっていた気持ちが急にしぼみ実之助は刀から手を離しました。

『何故、こんなにまで苦労してこの洞窟を掘ってきたのだろうか…せめてこの男の一生の大仕事が出来上がるまで待ってやろう。それまでぼんやりと待っている事はない。その日は一日も早く来るようにした方が良い』

そう考えた実之助は、翌日から素姓を全て明かした上で自分も洞窟の中に入って手伝い始めました。

かたきを討つ方と討たれる方が並んで穴を掘り始めました。

大工たちが休んでいる時も二人は休む事なく続けました。

実之助が掘り始めて1年6カ月、了海が掘り始めてから21年目の夜。

了海が打ち込んだ槌がとうとう絶壁の最後の岩をくり抜きました。

ぱっかりと開いた穴からは月の光が差し込み、了海の病み衰えた目にも山国川の青々とした流れがありありとうつりました。。

『おおっ、あいた、あいたぞ!』

了海は躍り上がって喜び、泣き、そして笑いました。

実之助の手をとって小さな穴から山国川の流れを見せました。その穴の下に見えるのは岸に沿う道にまぎれもありませんでした。

『やりましたなぁ』

実之助は感動のあまり、われを忘れて了海の骨ばった手を握りしめました。
了海もそれをしっかり握り返しました。

ですが了海は、はっとしたように体を離して静かに言いました。

『実之助どの、さあ、お切りなされ。この喜びの中で死ねたなら極楽浄土に生まれ変われる事、間違いなしじゃ。わしはもう何も思い残すことはない』

了海のしわがれた声が洞窟の中の夜の空気を震わせた。

心の底から湧きあがる喜びにひたっている了海の姿を見て、実之助の胸には熱い思いがこみあげてきました。

このかよわい老人によって成し遂げられた仕事に対する驚きと感激の心で胸がいっぱいになっていました。

『真に、よくやりとげましたなぁ』

深くしわの刻まれた老いた了海を仰ぎみました。

実之助の手は、かたきへの憎しみも忘れて再びしっかりと固く了海の手を握りしめていました。

二人は今、過去の全てを水に流して感激の涙にむせびあっていました。

コメント(7)

微妙くん、確か小学生か中学の頃、教科書か本で、読んだ様な記憶が有りましたが、改めて素晴らしい話しを読めて嬉しく思います。ありがとうございました。
今さらなんですが。。。
私の地元の話でございます。(´・ω・`)微妙さんが書いてたとはビックリ!よく調べましたね!
俺が小学生くらいまでは実際現地に行くと側にある山に、鎖の崖を再現してある場所がありまして。。。むちゃくちゃ恐ろしいんですけど半泣きで渡った記憶あります(*´∀`*)

あまりに危険過ぎて、しかも実際に人が墜落してしまって(木に引っ掛かって命は助かった)
現在は登ることはできません。
心を変えたこの場所に行ってみたいと思いました涙

だだ一つのことを成し遂げるのにこんなにも一生懸命になれるって素敵だと思いますわーい(嬉しい顔)ぴかぴか(新しい)

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