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THE 感動する話コミュのクレヨンしんちゃんと相談バー。「俺のポケットには大きすぎる」(一夜目)

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※創作








都会の喧騒から逃れるように路地裏にひっそりと経営しているバーがある。

店の名前は「オカママジョ・デ・ナイト」

バーテンダーはマカオ。

オーナーはジョマ。

そして、相談員兼常連客の野原しんのすけ五才。

店内で流れる日本人歌手が歌う歌は悲しげで、少女の恋心が表されている。

…カランカラン。


ドアに備え付けられた鈴が鳴った。

お客がやって来たのだ。

「いらっしゃい、あら良い男」

オーナーのジョマが客を一瞥すると舌舐めずりした。
バーテンダーのマカオ同様オカマとして男には目がないのだ。

マカオに至っては客を凝視しながらグラスをベロベロ舐めてしまっている。

「ブランデーを一杯くれ」

客は緑色の上着を靡かせ、席につく。

マカオとジョマのことなど気にせずに、椅子に腰かけて空を見つめていた。

まるで、客自身しか視えない景色を見るように。

「おじさん、オラ野原しんのすけ。なんか悩みでもあるの?」

客の隣に腰かけていた、しんのすけは客を見つめる。
相談員としての仕事開始だ。

「ふ、俺か?バカ言っちゃいけないよ…俺はただ酒を飲みに来ただけさ」

客はニヤリと笑う。

時を待たずとして、客にブランデーが差し出される。
グラスの氷が、カララン、と音を立てる。

「嘘だぞ、おじさんの顔は悩みがい〜っぱいありそうだぞ?」

「子供は正直でいけね〜や、まだ酔ってねぇのに俺を酔わせる気か?」

客は自傷するように言うとグラスの液体を喉に流し込んだ。

酷く酔うぜ構わねぇか?と、客は言った。

しんのすけは、親指を立てた。

「昔の話さ、俺が若い頃にデカイ城に盗みに入ったんだが…ヘマをした。命からがら逃げたが俺は虫の息だ。その時一人の女の子が現れた…俺は年貢の納め時と思ったが、女の子は水を一杯飲ませてくれた…俺は救われたんだ。その時、女の子の指で光っていた指輪が印象的だったよ」

客は語り、うっすらと笑みを浮かべた。

グラスの液体は半分ほどなくなっている。

しんのすけは、オレンジジュースを飲みながら静かに耳を傾けた。

「それから時が過ぎて、女の子が悪い伯爵に婚約されそうになるっていう風の噂を聞いた…俺は俄然女の子を守りに行った…途中、カーチェイスしている二つの車がいた。ひとつは花嫁、もうひとつはむさ苦しくて悪そうな男共、俺は相棒とともに花嫁を助けた…驚いたのは花嫁の指には昔俺が助けられた女の子がつけていた指輪が光っていたんだ…俺は直感したよ、あの時の女の子だ!ってな…」

客は目を細めブランデーを飲み干した。

すかさず、ブランデーのお代わりを注文した。

「だが、俺は気絶してしまい花嫁は一人いっちまって伯爵に捕まった…俺はあの手この手で伯爵と戦い…花嫁は救われた…それで終わるはずだったんだ…だが、花嫁は俺を愛しちまった…コソ泥の俺を!」

客は継ぎ足されたブランデーを一口で飲み干すと、ガン!と勢いよくグラスをカウンターに置いた。

「好きなら結婚しちゃえばいいじゃないの〜」

不意にマカオとジョマが同時に口出しした。

色恋沙汰には目がない故だ。

「バッキャロー!あの娘はずーっと闇ん中だったんだぞ!?暗くて狭い場所に閉じ込められて…やっとお日様の下に出られたのに…!よりにもよって…俺を…っ!俺をっ!!俺なんかと一緒になったらまた闇ん中だ!できっかってんだ!ちくしょう!」

客は叫ぶと、酒を催促するようにグラスをカウンターにガンガン叩きつけた。

「おじさんは、その人のこと好きなの?」

しんのすけは客に向かって問いかける。

その人間が抱いている気持ちを。

長い沈黙が店内に流れた、歌手の切実なフレーズだけが印象的なサウンドとともに響くだけだった。

「好きなんだ?」

暫くして、しんのすけは肯定と取った。

客は空っぽのグラスをぼんやりと見つめたまま口を開いた。

「今、女の子は一人で国を支えてて、ある時空港で俺を待ってた…俺は顔見せできなくて…しっぽまいて逃げちまった」


客は寂しげに呟いた。





※続きます。

コメント(5)

「サイテー」


マカオとジョマが同時に口をついた。

しんのすけは二人を、まーまー、となだめた。

同時に、しんのすけが目配りをして水を一杯出してもらい奥へ引っ込んでもらった。

「あの娘は今でも俺が好きなんだ…」

「じゃあ、もう酔うのはやめたら?」

しんのすけは、一杯の水を客に差し出した。

客は水を凝視する。

不意にコップの水に波紋が広がる。

しんのすけは、ポケットをまさぐったが生憎、しゃれた物など持ち合わせておらずアメぐらいしか見当たらなかった。

外ではうるさいサイレンが鳴り響き、ポツポツと雨が降りだし始めた。

だが、二人は気にとめない。

不意に頬をわずかに、ひんやりとした風が流れた。

しんのすけは、不意に後ろをチラリと振り返り太い眉毛を上下させる。

そして、客の背中を叩いた。

「おじさん、水飲んだら?」
「うるせーってんだよ、今夜は飲むぞ!じゃんじゃん飲むからなっ!!」

客はしんのすけの忠告は聞かなかった。

サイレンの音が酷く煩かった。

雨もいつのまにかどしゃ降りになっていた。

扉に備え付けられた鈴の音が聞こえぬほどに。

しんのすけは席を外した。
しんのすけの仕事は終わったのだ。

後は「二人」の問題だ。

「おじさま…お水」

客に一杯の水が差し出された。

添えられていたのは美しい女性の手だった。

客は女性を一瞥すると、瞳を見開き酔いが醒めてしまったかのようだった。

女性は客の隣に腰かけると嬉しそうに笑った。

「なんでここが…」

客は女性を直視できずに前を向くと呟いた。

「こちらのお店の素敵な方達が教えて下さったんです」

女性は、奥に控えているマカオとジョマを見つめた。
マカオとジョマは視線が会うと黒電話片手に手を振った。

「くそ!余計なことを〜!」
たった一人、客は毒づいた。

だが、どこか嬉しそうにも見えた。

「おじさま、一つ謝らせて下さい…私、お忍びでここに来たんですけど…警察の方にバレてしまったみたいで」

女性は申し訳なさそうに俯いた。

店の外では、ルパン逮捕だー!と拡声器で叫ぶ声が響いていた。

客は、ヌフフフ、と笑うと水の入ったコップに口を着けた。

「クラリス…泥棒に不可能なんてないって昔言ったろ?泥棒を信じてくれたら…湖の水だって飲み干してみせら〜!とっつあんごとき屁でもね〜!」

客が言うと。

二人の間で笑いが溢れた。
「でも、俺のポケットには大きすぎる…クラリスっていうお宝はな。」

「おじさま…」

「いっけね〜や!」

「どうしたの?おじさま?」
「気付かないうちに泥棒さんは大切なもんをクラリスに盗まれちまったみたいだ」

クラリスは、客の言葉に首を傾げた。

客はニンマリと笑って言った。

「俺の心をさ!」


二人の間で笑いがまた溢れた。

同時にクラリスの瞳には涙が浮かんでいた。

客は慌てた。

「泣くんじゃないクラリス」
「じゃあ抱き締めて下さる?」

「え…ぁあ?うー、まいったなぁ」

クラリスの言葉に客は苦笑したが、コホン、と咳払いした。

「また闇ん中に戻るかもしれないぞ?」

「おじさま…私はまだ闇の中です。カリオストロという国そのものが…」

「クラリス…」

「おじさまが…いいえ、ルパン…貴方が私の光だったんです!会えると信じてました!お願いもうどこにもいかないで!」


クラリスは叫ぶと、熱い抱擁を受けた。

少しタバコ臭くて酒が漂う胸だったが温もりが彼女を優しく包んでいた。


いつまでも…いつまでも。





おわり。








※もしかしたら、続きがかけたら書くかもしれません。ではでは、また!

おたっしゃで!
こういう後日談的なの大好きですo(≧∀≦)o 創作で書けるって凄いですね(^O^人)ハート達(複数ハート)ハート達(複数ハート)

次のお話をお待ちしてます(*´艸`)
ルパン三世としんのすけのコラボ、いいですねぇ〜電球
> 萩女撫子さん


ありがとうございますわーい(嬉しい顔)

パッとなんとなく、こんなのがあったらいいなぁ、と思ったら。

書いちゃってましたあせあせ

いつか、また思いましたら書かせて頂きます。
> いのちゃんさん


意外とかっちりと来ちゃいましたわーい(嬉しい顔)

頑張ります。

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