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アナタが作る物語コミュの【ファンタジー】The sound of the rainbow

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「ねぇ英次、私とても虹が奏でる音が聴いてみたいわ」知子が言った。
英次は寝転んでいたソファから起き上がり、読んでいた音楽雑誌をキッチンのテーブルに置くと、知子の顔を覗き込み言った。
「虹の音か…またどこで仕入れてきたんだ、そんな言葉」
「閃いたのよ、あんなに綺麗な虹ですもの、きっと美しい音色がするのだと思うわ」
「あれは遠くに見るから美しく見えるんだよ」
「あら、現実主義者なのね」

英次はインスタントコーヒーを二杯つくり、一杯を知子の前に置いて、自分は飲みながら窓辺まで歩いてゆき曇った空を見上げた。


蓬莱堂は不思議を扱う古美術屋で、伝説や魔法について書かれた書物や雑貨が多く売られている。
小さな店構えだが、中に入るとなぜか広い。
そのスペースには所狭しと商品がランダムに並べられいて、触れないように歩くのがとても困難だ。

中に入るとレジに座って本を読んでいた女性が顔を上げ、眼鏡を外してこっちを向いた。
「久しぶりね、なんかずいぶん大人っぽくなったわ」と言って笑う。
「今日はどうしたの?知子ちゃんは元気にしてる?」
「うん、虹について調べてるんだ」
「虹?」
「そう、虹が出す音について」
「またへんな事件にでも巻き込まれたのかな?」
「そんなんじゃないんだ」
「いいわ、何冊かあるから出してあげる」
「助かるよ」

英次は三冊の本を抱えて店を出ると、静かな喫茶店の隅の席に座って本を開いた。
本は英語に訳されていたが、見慣れない単語が多く苦労した。

「こりゃ三冊とも童話だな…」
本はどれも似た内容で、要約するとこんな感じだ。

ケベロというとても醜い妖精がいて、人間を喰らう。
その妖精は虹の光によって変幻する。
虹の匂いや発生する時の音を嗅ぎつけ見つけ出し、光を浴びると暫くの間だけ、とても美しい容姿に変幻するという。
そして人間を惑わし異次元へと連れていく。

「虹には近づくな…ってことか…」


その日はとてもよい天気だった。
知子と英次は海へドライブに出かけ、浜辺を歩いた。
「英次、私喉が渇いた」
「いいよ、どこか店を探そう」
「私海を見ながら飲みたいの、そうビールがいいわ」

「ここにちゃんといてくれよ」
「わかったわ」

ビールか、どこで手に入るだろう?
考えながら英次は浜辺を離れた。

冷たい風が吹き抜けたかと思うと、雲も無いのに霧のような雨。
空に虹が架かった。
なんか嫌な予感がする…
英次はビールを買いに行くのを途中でやめ、浜辺へ引き返した。

知子が綺麗な少年と屈みこんで何か話をしている。
少年と手を繋ぎ海へ向かい歩きはじめた。
英次は走りながら知子の名を呼んだが聞こえないようだ。
今度は少年に向かい「ケベロ!」と叫んだ。
少年は振り返ると英次を睨み、そして蒸発するように消えていった。

「大丈夫か?」
「あの子、消えてしまったわ…私に虹の音を聴かせてくれるって言ったの」
「そう、名前を呼ぶと消えるって書いてあったんだ」
「なんのこと?」
「知りたいのか?」
「あたりまえでしょ!」
「教えてあげない、内緒だ」
「またそんなこと言って!もーっ!」

二人は笑いながら、ビールがある店を探すため浜辺を後にする。

空には虹の欠けらが微かに残っていて、風に揺られ何か音を発しているようだったが、もう二人には届かなかった。



end

その他の作品はこちらからです。↓
作品一覧【単発/完結】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=39667160&comm_id=3656165

コメント(10)

(((*´∀`)虹の音、マーチを奏でるオルゴールに幼い子どもが気まぐれに鳴らずハンドベルを合わせたような音を想像しました。
 少年はきっと気まぐれに虹の音を聴かせる存在なのでしょう。
 虹の奏でる音と言う発想はなかった。
 そもそも光りって音が出るのか…的なあせあせ

 少年ケベロは果たして本当に人を異次元に連れて行ってしまうのか、または美しい物を見せてくれるのか。そこが謎ですね。
 ちなみに雨と共に現れてすぐに消えてしまう虹はかつては不吉の象徴とまで言われましたが、現在は美しいでしょう物としてとらえられています。この人の心の移り変わりの早さもまた虹や天気のごとく移り変わりが激しいですね虹
>>[5]

 知子さんはわざとやって面白がってるんだ…あせあせ そして、虹は爆音と共に現れてサイレンと共に去る…虹
>>[5]
 遅くなりました。目次作業終わりました。
 一応、単発/完結に入れましたが、もし蓬莱堂や英二君の話があがったら、シリーズ連載に移しますね。
 あって欲しいと言う願いを込めて。
>>[5]
 感想なのでコメ欄替えます。

 虹の色の別はつまり波長で。人間に見える範囲が赤から紫。
 人間に見えない赤の外は赤外線。赤外線っていったら温度じゃないのぉ? 赤外線カメラとかね。
 紫の外は紫外線。紫外線ていったら日焼け〜!

 てわけで。
 紫外線や赤外線もちゃんと見えている動物もいるわけよ。
 モンシロチョウは紫外線で羽を見ると簡単にオスとメスの区別つく、とかね。

 音だって波長よね。そしたら虹の色を音として認識する生物もいるんじゃない?
 波長を10倍とか100倍とかに伸ばしたら、色が音になったりね。その逆とか。

 ってわけで、人間よりもも〜っと広い範囲を色として認識する異星人(もしくはそんな人間)が・・・って話を以前書こうと思ったんだけど、な〜んにも浮かばなかった〜。
 って事を思い出した。

 という無粋な話。わーい(嬉しい顔)

 こういう話は思い浮かばなかったわね〜。虹のカケラがキラキラしているような読後感でした。

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