アナタが作る物語コミュの【青春活劇】中二病疾患　第十六話『ダサい恋愛～眼鏡の地味子はモテモテ巨乳！』

　今更のような気がしますが、このシリーズには不適切な、過激な、人に不快感を与える描写が出て来ます。また一部の人を貶めるような表現もありますが、作者としては差別良くない、と思います。あくまでフィクションとしてお楽しみ下さい。

　＿＿＿

　ハーアイ♪（死語）　あたし二年四組の立野杏子。今日は真理子からとんでもない話しを聞いたの。
「委員長、解せませんわ…」
　白いハンカチをムキーって言いながら噛むのは昔のギャグ漫画みたいだからやめた方が良いんだけど、言って聞く相手じゃないのね。せっかくの華やいだ朝の教室が台なしじゃん。
「委員長がどうしたの？」
　加代がキョトンとしながら聞くのね。
「あ、分かった。ショーテンガイズ男子の内の誰かとトラブッたんだ。で、委員長の対応が悪かった」
　ひかるの言った事は確かにありそうな事だけど、それってアホな男子が悪いんじゃ（それにあんたも）…。
「健が作ったトイレットペーパーの芯タワーが崩れて頭に降って来たり、鈴木ちゃんが廊下でリフティングしてて顔面にぶち当てられたり、はじめが壊したホウキを使わされて壊した罪をなすり付けられたりしたもんね」
　…!?
「ちょっと香織！　最後のホウキの件、初耳だよ！　森くん、同じ清掃委員として聞き捨てならないんだけど！」
　ついうっかり吠えちゃった。あたしったらホント、おてんばさん、てへ。…って、自分でキモいわ！
「顔面じゃなくて背中ですわ。それにそれらの件はお三方と委員長に謝ってもらって解決しましたの」
　よく見たら背中にボールの後が、紺色のブレザーだから白っぽく浮いてる。
　つーか、やっぱり委員長に泣き付いて一緒に謝らせたんかい！　いつもながら情けなさ過ぎる…。
「じゃ、何で委員長にムカついてるのさ？　ケンカする理由ないじゃん」
　香織の指摘は正しい。
「委員長が悪くない事は分かってますの。でも女心は納得いきません事よ」
　ぷはぁー…と真理子の深いため息。相変わらずの小さな声。
「もしかして…ううん、私も認めたくない…」
　加代まで…。
　まぁ、真理子からの告白にあたしもショックを受けるんだけどさ。

　………

　高山くんが委員長を意識し始めたのはおそらく夏の終わり頃からですわ。私の恋い焦がれる殿方（死後）が高山くんだと言う事もご存じですわよね？
　それまでは高山くんは杏子を好きだったようですけれども…あら？　杏子は知りませんでしたの？　結構分かりやすくってよ？
　ともかくですわ、高山くんは部活が同じ委員長を意識し始めたのです。
　ほら、委員長って葉山くん達のお世話に追われて大変な挙げ句、ちょうどセクハラ…じゃなくて戸塚くんの解任とかで大変な時期でしたでしょう？　どうもお疲れだったようですの。
　ついうっかり同じ科学技術部だった高山くんに弱音を吐いてしまったようですわ。
　結局、男の方って女の弱い部分にキュンと来てしまうものなのですわね。それもいつも強い女が滅多に見せない弱った姿に…。
　杏子も清進学園の松山くんでしたっけ？　彼の事を好きだと公言して、高山くんもそれを応援する道を選んだようですし、ちょうど諦めていた所に…まぁ、タイミングですわね。
　こうして男心は秋の空のごとく移り変わってしまわれたようですわ。

　………

　知らなかったよ、旬があたしの事をそんな風に想ってくれていただなんて。
「高山くん…委員長が好きなんだ…」
　あ、加代もそんな風に呟いている所を見ると、旬が好きだったっぽい。

　高山旬は同じマンションに住んでいる男の子。この地域はちびっ子相撲が盛んで、旬も小学生の時は力士だったの。
　いやぁ、旬の相撲は迫力があったな。北小（あたし達の出身小学校ね）の同学年、ううん、一学年上まで敵なし。強かったのよ。まぁ、隣の学区に更に強い子がいたけどね。そして、その子が今、旬と同じクラスの田村くんって言うのもね。
　旬の話しに戻るけど、旬ったら普段は優しいのよ、誰に対しても。重い物を運ぶ時は必ず手伝ってくれるし、元気がない子には『大丈夫？』とか聞いてくれるし。力士の時とのギャップに真理子もメロメロだったみたい。
　中学入ってからは相撲部ないから相撲は辞めたのか、少し痩せたしね。顔付きも体付きも精悍になって来たと言うか、筋肉は付いたけどまだ肉付きは良いから、優しいお兄さん的な性格と合わさって貫禄があると言うか。
　男の子が苦手で一メートル以内に近付かれるとドキドキして発狂しちゃうあたしでも、旬なら安心感があると言うか、男の子として見れるのに平気なんだよね。
　恋愛対象にした事はなかったけど。

「こうなったらエセ恋愛マスターの出番じゃん、杏子」
　ひかる、今、エセって…。
「恋愛マスター？」
　香織がキョトンとした顔を向けるのね。そっか、香織は大町小だったっけ？
「小学生の時、杏子は恋愛マスターでしたのよ。いつも女子の恋愛相談に乗ってましたわ」
「あれで…？」
　香織が今にも、うわぁ、絶対に信じられないよ、彼氏が出来るどころか男が近くにいるだけで近い近い！　って騒いでる人が…とか言いたげな顔を向ける。分からなくはないけどね、我ながら…。
「だからエセなんだよ」
　ひかるがニヤニヤしながら言うの、ムカつくわー。あんたも彼氏いないじゃん。野中くんとか仁平くんとか周りに仲の良い男子は結構いるのにね。
「お姉様の雑誌やお母様が小学生時代に読んでいた漫画の知識ですわ」
　真理子もバシッと斬って捨てやがる。
「お母さんの漫画って『あずきちゃん』だっけ？　杏子ちゃんに借りたよ」
　加代、あんたも相当空気読めないね…。
「もう！　良いじゃんか－。あたしだってそんな時代があったんだって」
　膨れて見せるけど、我ながら今の顔って絶対ブスだなーって思う。
「まぁまぁ、森くん来たよ？　言わなきゃ、ホウキの件」
　と、ひかる。指差す方には葉山くんと並んで森くんがご登校。清掃委員なのにホウキ壊しておきながらのうのうと…。
「そうですわね。杏子のお耳に入ってないのは問題ですわ」
　真理子も同意。歩き出して、とは言え森くんには距離を取らなきゃ。
「じゃ、行ってらっしゃーい♪」
　ひかるの嫌な意味で明るい声。背中にトンと置かれる手。
　…え…？　ちょっと待った！　あんた何する気!?
　周囲を見渡すと、仁平くんが、あちゃあって感じでひかるを見てる。真理子は呆れ顔を作ってる。加代は何も知らないっぽい。森くんの後ろには男臭さは学年一の田村くん。
　やめてーっ！
　思い切り背中を押さ…今あんた蹴ったよねっ!?
　歩き出したプラスひかるの蹴りのせいであたしはぶっ飛んだ。
「うわっ！」
　森くん、避けた。でも…!!
「大丈夫か？」
　あたしを受け止めたのは…田村くん!?
　ヤバいって！　心拍数が上がる上がる。心臓に悪いわっ!!
「キャッ！　近いって！　ってか、肩ぁーっ!!」
　田村くん、ごめん。別にセクハラだと思ってる訳じゃないんだよ。異性が苦手なんだよ。いつも男子や男の先生には悪いと思ってるから…！
「あ…悪い」
　田村くんは以外と紳士だからすぐに離れてくれたけど、周りには田村くんや森くんと一緒に教室に入って来た葉山くん、佐藤くん、津山くん。男子に囲まれちゃってんじゃん！
「ちょ…近いよ！　ごめん！　マジで！」
　逃げ場がない。ヤバい！　体が…勝手に回る！　
　ちょ…そんな、時代劇とかで着物の帯をほどいて、あ～れ～っ！　とか言うやつ？　みたいな感じにあたしは回り始めた。
　更に不幸は続く。
「キャアーッ!!」
　目の前にいた森くんと葉山くんがなぜか全裸になると言うハプニングが…！

　＿＿＿

　朝の空気が冷たいもののまだ息が白くなる程の事ではありません。
　私はいつものように教室に滑り込みました。と、言っても遅刻しそうな時間でもなければ、別に急ぎ用があった訳でもありません。単にせっかちな性分なだけです。それ故に幼い頃から何度も損な思いをしましたし、未だに年に何度かは落ち着いた性格になろうと試みるのですが、どうも上手く行きませんでした。おそらくこの先もずっとこうなのでしょう。
　教室を見渡します。
　二学期になってからは一学期の間は交流の薄かったグループ間の交流が割りと盛んになっています。男子は割りと皆仲が良かったと言う印象でしたが、女子は派閥争いのようなものはなかったもののグループ意識は割りと強かったように感じます。
　例えば、沢菜結唯、立野杏子、新川千沙は同じグループで、今でも仲が良いのですが、二学期になってからは立野は村上真理子のグループと話している事が増えました。村上と一年生の時に仲が良かった和田加代が村上のグループに加わった事、和田と立野が同じマンションに住んでいる事、なども関係しているのでしょう。
　一方、沢菜は小学生時代に仲の良かった竹山綾と再び距離が近くなったようで、引っ張られるように新川が一緒にいる形でしょうか。
　一学期に川村純をいじめてクラスから浮いていた西田麗香は、桃井知美と仲良くなったようで、桃井と仲の良い相田百合や木下恵美子と一緒にいる事が増えました。
　西田と言えば一緒に純をいじめていた尾瀬由紀です。尾瀬は三組のクラスの長内茂（金持ち）と付き合い出してから、三組の不良四人組と一緒にいる事が増えました。スカートの長さは一学期から変わりませんし（元々クラスで二番目に短いのですが）、髪も黒のままで巻いて登校したりはしていないのですが、よく見るとアイメイクはしているのでしょうか。目の縁に微妙に黒い線が入っているようですし、リップクリームもヌードカラーの物を使っているのか色艶が気になります。先生からは何も言われないのでしょうか。
「でさ、母さんがまた可愛いとか言ってビーズの暖簾とか台所にかけたんだよね。どうせ父さんか兄ちゃんが邪魔だとか言って取るのに」
　野中務が話し掛けて来ます。家の愚痴も少しは入っているようです。父親が出張で家にいない事が多く、兄弟も妹しかいない私としては、両親と共に夕食を囲めて、男兄弟に挟まれている務は羨ましくもあるのですが。
「じゃ、行ってらっしゃーい♪」
　嫌な予感とはなぜこうも明るく楽しげな声と共にやってくるのでしょうか。宅間のワクワク感満載の声に、務は少し頬を赤らめて口元はだらしなくにやけたのですが、私は悪ふざけを感じ取らずにはいられませんでした。
　辺りを見渡すと、今にもアチャーと言いそうな工藤仁平がいます。彼の視線が追っているのは前のめりに男子数名に走り込んで行く立野でした。
　絶対に蹴飛ばすとかしやがったのでしょう。
　まず立野は森はじめ目がけて突撃しましたが、はじめはこれをおそらく反射的にでしょうが避けました。そして立野ははじめの後ろにいた田村明仁の大きな体に向かってまっすぐに倒れ込みました。
「大丈夫か？」
　明仁は立野の肩を掴んで何とか受け止めました。
　しかし、立野は男性に対してな苦手意識が異様に高いようで、取り乱し出しました。私も噂でしか聞いた事がなく、初めて見るのですが、立野は慌てて明仁から離れました。
「近いって！　ってか、肩ぁーっ!!」
　黄色い悲鳴が教室中に響き渡ります。まさにつんざくようです。
　しかし、周りにははじめと明仁の他にも佐藤雅希、葉山健、津山浩樹、と男子に囲まれていました。立野は近いとかごめんとか取り乱しながら慌ててふためきました。
　私はこの情況では近付く事もできず、成り行きを見守るだけしかできませんでした。
「ヤバいな、回りそう…」
　沢菜が立野に歩み寄ろうとして私の横を通った時、確かにそう呟きました。回る？
「ドュッフフフフフフフフッ！　シモシモーっ?!　シモシモーっ?!」
　なぜ!?　立野は突然、コマのようにクルクルと回転し始めました（クラス一のミニスカを誇っているのでパンツが丸見え）。
「凄い！　立野さんが何か面白い事になってる！」
　純が目を輝かせています。あれはパフォーマンス…には見えないのですが…。
「立野さん、怖いけどちょっとばかりカッコイイぜぃ…」
　三宅洸太が言います。カッコイイのはちょっとばかりで基本は怖いんですね。
「今だ！」
　また別の声がします。これは相田百合です。嫌な予感がするまでもなく、悪い事が起こると確信しました。
　突然、はじめと健の衣服が弾け飛んだのです。
「…え？　あーっ!!」
　二人は一糸まとわぬ状態になり、慌てて股間を手で隠しました。
「フハハハハッ！　さあ、お二人さん、絡みたまえ！」
　相田が不適な笑みを浮かべてデジカメ片手に二人に駆け寄りました。同時に立野が鼻血を盛大に吹いてその場に倒れました。
「ちょっ…それより今の立野さん、ヤバかったよ！　血の中に固形っぽい物がドバドバって！」
　健も成長したのか、保健委員としての使命感からか、鼻血まみれで床に仰向けになって白目を剥き、だっふんだ、だっふんだ、とひたすら呟いている立野を心配しています。私はそんな状況にちょっと和んでいる暇などなく、教室内に散らばったはじめと健の衣服の回収を開始しました。
　木下に目で合図を送ります。
　─相田さんの阻止を頼む、木下…！
　─江野は森と葉山をよろしく…！
　私達は委員長から過度の下ネタを止める、と言う使命を受けています。この破廉恥な展開を何とかせねばなりません。
　二学期からクラスに加わった割居希も衣服の回収を手伝ってくれています。ありがたい事です。
　スパコーンと小気味良い音が響きます。木下のハリセンが相田の頭に炸裂したようです。
「百合？　あんた今絡めとか言ってなかった？」
「いやぁ、私の考えたＢＬの主人公のモデルに森くんと葉山くんを使おうと…」
　相田は正座しながら答えます。
「百合！　そう言う事はやめろ！　可哀相だろ？」
　石松哲也が相田に言います。最近はまともな発言もたまにするようになったのか安心…
「そう言うのは俺がやる！　美しい物にしかならない！」
　安心してはいけませんでした。哲也はズボンとパンツに手をかけましたが、木下にハリセンを突きつけれたので最悪の事態は免れました。
　私と割居は横目で軽く哲也に軽蔑の眼差しを送りながらはじめと健に集めた服や下着を渡しました。
「あ…ありがとう」
　二人は慌てて着替えます。健はパンツを穿く時に手を放したので再び大事な所を晒してしまい、赤面した新川が慌てて目を逸らしました。
「しゅーんくん♡」
　気付けばこっそりと教室から抜け出そうとしていた高山旬の肩を沢菜が後ろから叩いていました。彼の大きな背中がビクンと跳ね上がります。
「あんな事ができる道具、委員長かあんたしか作れないよね？」
　冷や汗とぎこちなさ過ぎる作り笑いを浮かべた旬が振り向いて言います。
「僕です」
「いやぁ、まさか高山くんが悪用しない、マネキンにしか使わないって私のセリフを信じるとは思わなかったからさ」
　相田がシレッと言い放ち、木下に喉元にハリセンを突き付けられます。
「あー、誰かさんが十四話で行方不明騒動を起こしてた頃に作ってたってアレっすね？」
　仁平がない伊達眼鏡を直す手振りを見せながら言います。今日はかけ忘れたようです。一方、旬と一緒に誰かさんこと浩樹はバツが悪そうな顔をしました。
「使えそうなタイミングを狙ってたら一カ月近く立っちゃった」
　相田は反省しないのでしょうか？　何度もＢＬのモデルになれと男子の服を脱がせてデジカメ片手に追いかけ回して、その度に木下のハリセンの餌食になり、私も反省文を書いてもらったのですが…。
「おはよう…どうしたの？　不穏な空気が漂ってるけど」
　そこへひょっこりと現れたのは黒渕眼鏡にヘアピンで止めた前髪、委員長の水沢花です。
　委員長の眼鏡がキラリと光り、奥二重が教室全体を見渡します。
「大体状況は理解しました。江野くんは相田さん、宅間さん、高山くんから事情を聞いて。沢菜さん、新川さん、立野さんを保健室へ。はじめちゃんは鼻血を拭いて」
　委員長が指示を出します。
　私─江野健太、副学級委員─は相田と宅間と旬を呼び集めました。

　＿＿＿

　血まみれになった制服から体操着に着替えて、それで今日は一日過ごしたよ。
　まぁ、森くんが自分からホウキを壊した件で詫びて来たから良しとしよう。それに鼻血もあたしが倒れたから清掃委員として一人で拭いてくれたって真理子から聞いたし。
「しかしごめんね、まさか第三形態があんなだとは自分でも思わなかった」
「第二形態だとクルクル回って、第三形態だと鼻血出して倒れるんかい…」
　そうみたい、あたし。
「ってかさ、杏子って小学生時代は恋愛マスターって言われてたのに、いつからあんな事になったの？」
　千沙がおっとりと聞いてくるんだけど、ずいぶんとまぁ羨ましい胸だ事。
「うん、中学上がって生理始まった頃…」
「うおーいっ!!　男子聞いてるから！　言葉を選んで」
　香織が慌ててる。またあたしったら。また野中くんや江野くんを赤面させちゃった。
「まぁ、あたしが大人の女としての一歩を踏み出したその頃から、急に男の子が近くにいると、ドキドキして頭が真っ白になるようになったんだよね」
　深いため息が出たよ。あー、思春期が始まると同時にこんな本質まで出て来て、恋愛マスターだなんて自ら言ってた過去が恥ずかし過ぎる。黒歴史認定。しかもお姉ちゃんの雑誌や『あずきちゃん』の知識でああでもない、こうでもないなんてアドバイスしていただなんて。
「そんな事で明日のデートは大丈夫なのかねぇ…」
　あ、因みにあたし、彼氏って程の関係にはなれなくとも、好きな男子はいるの。
「ああ、あの清進学園のエリートくん？　目付きが悪くて…」
「あたしの王子様なの！」
　ついムキになってしまう。
「ほら、灰田ちゃん来たし、さっさと帰りのホームルーム始めよう？」
　結唯が言う。
　今日は…部活でリキ入れて走って明日に備えよう。

　＿＿＿

　私が帰宅するとセリは自分の寝床に横たわっていました。狭い場所が好きだなんて、こいつとは気が合うと思っています。
　両親は私には陽当たりの良い四畳半の自室を与えてくれていますが、四畳半にはほとんど使った事のない学習机が一台あるだけで他の物はありません。
　私は衣服を入れているコンテナケースや書籍やＣＤをしまう棚を押し入れの下の段に入れ、棚と壁の隙間にセリの寝床を宛がいました。上の段には私の寝床になっていて、更に両親に無断で取り付けた電球があったり、簡易式の小型の折り畳みテーブルを学習机の代わりに使って宿題をしていたりします。
　すっかり慣れましたが変わり者などと呼ばれ、両親からも呆れられていますが、一人で広い場所でジッとしているのが苦手な私としては、狭い場所の方が一人でいるには良い、それが本音です。
　今日は、二体。奴らの死体が押し入れの前の畳の上に転がっていました。セリの仕業です。
　セリは二年前に母親が連れて来た始末屋です。
　それまで私の家は奴らに悩まされていました。奴らは私達の財産をことごとく汚し、台所を食い荒らし、夜中にはバタバタと暴れ回っていました。
「セリだよ。ちゃんと育つか分からないけど、上手く行ったらこの子が奴らから家を守ってくれるからね」
　二年前のこの時期でした。母親がまだ幼かったセリを保護施設から引き取って来たのです。
「こんな可愛い子なのにそんか事させるの？」
　当時小三だった妹は不安そうにそう聞きました。
「当たり前じゃないか、これがこの子達の生きている理由さ」
　母親がそう言い放ったのを今でも覚えています。
　─ちょっと疲れているんじゃないかい？
　すっかりプロの始末屋へと成長したセリが私に訪ねます。気だるそうに首を私に向けながら、そのまっすぐに伸びた腕を組み直します。
「そんな事ないさ。ま、朝からトラブルはあったけどね。委員長の登場で解決した」
　私は自分の仕事でもある奴らの死体の処理にかかりました。奴らの死体はまだほのかに温かく、ぐにゃりとした感触が専用の布を通しても指から伝わり、背筋をゾクゾクとさせます。
　─最近、委員長の話しばかりだね。
「そうか？　副委員だからだろ？」
　夏休み中に当初クラスの副委員だった戸塚佑太が不祥事と女子からの激しいバッシングによって解任され、更に明仁に断られたため私に回って来た役職でした。
　─その女の子、可愛い？
　意地悪な聞き方をしやがる。私は奴らの死体を袋に入れてしまうと、死体の置いてあった場所と周辺を念入りに消毒しました。
　─ねぇ、可愛いの？　あたいとどっちが可愛い？
　セリはほっそりとしながらもきちんと筋肉のついたしなやかな身体を、とりあえず腰を下ろした私の太股に押し付けるように甘えた声を出しました。私は家では薄着や下着姿で過ごしているので、セリの体温が直に伝わって来ます。
「お前の方が可愛いよ」
　私はセリの脇腹を撫でながら答えました。セリは嬉しそうに小さな悦びの声を出しました。でも、
　─ウソつき、本当は委員長の方が可愛いと思ってるくせに。
　そう言って明るい茶色の瞳で私を見上げると、さっさと自分の寝床に引き返しました。
　私の指にはセリの短く茶色い毛が着いていました。

　＿＿＿

　バッカみたい、あたし。今日は九時からの待ち合わせのはずが、十三時からになっちゃった。八時五十分の藻茶市文化学習センターにぽつんと一人きり。
『ごめん。弟が熱出した。祖父も昼近くならないと戻らないから、待ち合わせの時間はお昼過ぎに変えてもらって良いかな？』
　絵文字やスタンプが入ってない素っ気ない文章。
　そりゃ、あたしも自分が病気の時にお姉ちゃんが看病ほっぽり出してデートなんかしてたら薄情者だとか思うからさ、良いよ、無理しないでなんて送ったけどね。ちょっとだけ大人な対応よね？
　しかも今日はちょっと早起きしてお弁当なんて作ったから大変な訳よ。はぁ…どうしよう、この成長期男子を意識した量…。
「あれ？　杏子ちゃん？」
　この弾むような聞き覚えのある声は…
「メグ！」
　振り向くとこっちに手を振って歩いてくる女の子、旬の妹の恵ちゃん─通称メグ、小五─が。マシュマロみたいなほっぺに顎ラインのボブが女の子らしくてソーキュート♡　このセンターは図書館も入ってるから勉強か読書かな？
「そっちの子は？　学校の友達？」
　隣には長い髪にカチューシャの将来は和風美人になりそうな女の子。
「いえ、同じ塾の友達です」
　女の子はニコッと笑って答えたんだけど、色白だから雛人形みたいに可愛らしいの。
「江野洋子って言います」
　ぺこり。礼儀正しいじゃん。見習わなきゃ。
「立野杏子です、よろしく」
　圧倒されちゃったよ。
「こちらは杏子ちゃん。同じマンションでうちのお兄ちゃんと同じクラス」
　洋子ちゃんの奥二重が大きく見開くんだけど、どっかで見た顔なんだよね、この子。初対面のはずだけど。
「あの…名字でお気づきかも知れませんが兄がお世話になってます」
　また頭を下げて…兄？
「メグのお兄ちゃんと私の兄も同じクラスだと聞いてまして…」
　と、洋子ちゃん。
「江野ってまさか…」
　切れ長な奥二重に小さな口や細い鼻を見ると、一致する。もう少し洋子ちゃんの色白な細面を色黒でがっちりした顎にして、温厚なんだけどイタズラ好きそうな笑みを浮かべさせたら…。
「副委員の？　水泳部の？」
「はい。迷惑とかかけてませんか？」
「それ程でも…」
　いや、昨日あたしが思い切り迷惑かけた方なんだけど。
　それにしても、似てるのに全然そんな気がしない。こうも性別や性格、雰囲気で変わるもんかね。あたしはお姉ちゃんと似てるって言われた事あんまりないけど、あたし達も性格や雰囲気が全く違うのかな？
　まぁ、とりあえず九時の図書館開館と同時に、あたし達はテーブル席を一つ取って話しをする事になったの。

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[1] mixiユーザー 01月20日 18:07

　二人は同じ塾に通う友達同士だったんだけど、お兄ちゃん同士が同じクラスだって気付いたのは最近の事だったみたい。で、江野くんや旬が付けてる（妹達曰く鳥肌物の）日記を無断で読んだりしていて、それで二人とも委員長が好きだと言う事が分かったらしいの。日記って、何で二人ともそんな乙女チックな行為を…。
　まさか江野くんまで委員長に惚れていただなんて…。何て魔性の女…羨ま…凄い展開だよ、これ。しかしあの地味子がねぇ…。あ、旬も真理子と加代に惚れられてるから魔性の男か。
「で、水沢委員長ってどんな人なんですか？」
　洋子ちゃんが身を乗り出して訊いて来るし、メグも目を輝かせて訊きたがってる。
「えーっと…地味な子だよ。黒渕眼鏡にショートで。勉強もスポーツもかなり出来るけど、あんまり冴えない」
　そう言えばあたし、必要な事以外で委員長とあんまり話した事ないっけ。大概は清掃委員の事で相棒の森くんが抜けてるとこを手伝って欲しい的な…。
「あんたり杏子ちゃんと仲良くない？　性格悪いとか？」
「いや、性格は良いよ。自分より他人を優先させてる良い人だよ」
　それで損な目ばかり見てるけどね。特に商店街の男子三人のせいで。
「で、委員長の好みのタイプとか分かる？」
　メグが突っ込んで来る。
「え？　分かんない」
　つい間抜けな声が出たな、今。
「え？　恋愛マスター…なんですよね？」
「うん、どんな恋の悩みにもズバッと解答してたって聞いてるよ。しかもオシャレで可愛い！」
　洋子ちゃんの質問になぜかメグが答える。あたし、後輩達にそんな風に伝わってる？　顔から火が出そうになるよ。だって、あんな第三形態まで…。
「その人って、恋とかしないガリ勉タイプ？」
　メグが答えずにいるあたしに訊く。
「えーと…勉強勉強って感じの不健康なタイプではないけど、恋愛とか浮いた話しは聞かないかな…」
「周りに男の人はいるんでしょ？　商店街のプチイケメン三人組とか」
　洋子ちゃんが言う。江野くんの日記に書いてあったのかな、それにしてもプチイケメンって…。
「いつも委員長の周りにいる悪い奴じゃないけど、委員長が常に心配してる三人組ね。お兄ちゃんの日記にも書いてあった」
　あら、あの子達、割りと有名なのね。
「でも幼なじみってだけでそんなにべったりするでしょうか？　まさか…三人の内の誰かを好きとか…」
　洋子ちゃん!?　有り得ないから！　開いた口が塞がらなくなったよ。委員長に限って…。
「そもそもその委員長がどんな人か掴めないんだよね。写真とかないの？」
　メグが訊いてくる。
「ないよ」
　そう言えば委員長と記念に写メったりプリしたりする仲じゃなかったな、あたし。
　顔は思い出せるんだよね。地味な顔立ち、ブスではないけど決して美人ではない。黒渕眼鏡。そうそう…ちょうどあんな感じで向こうから…え？
　何で委員長、図書館にいるの？　いや、いてもおかしくないし、悪くないんだけど…。
　動きのないショートも学校と同じだけど、デニムに黒の上着と白のインナー、シンプルなベージュのトートバッグを持ってる。
　あ、こっち向いた。あたしに気付いた？　あ、手を振りながらこっち来る。
「たーてのさん」
　ご機嫌な声で話し掛けて来る。笑わなきゃ不自然だよね？　メグと洋子ちゃんが頭を軽く下げる。委員長もにこやかに二人に頭を下げて、こんにちは、って。
「学校のお友達ですか？」
　と、洋子ちゃん。
「はい、立野さんと同じクラスの水沢って言います」
　委員長はにこやかに自己紹介した。
「水沢って、委員長…さん？」
　洋子ちゃんが驚いたように顔を見る。
「そう。江野くんの妹さんだよね？　前に一緒にいるの見た事あるよ。あなたは高山くんの妹さんでしょ？　お友達同士だったんだね」
　しかも二人を委員長は知っていた！　二人も頷く。
「あ、はい。あの…兄がお世話に…」
「お兄ちゃんから聞いてます。えっと…」
　二人とも緊張し始めている。当然だよね。今まで話題にしてた人が目の前にいるんだもん。
「こちらこそお兄さん方にはいつもお世話になってます。そんなに固くなってどうしたの？」
　委員長はこう言う時に状況が読めないのか、いや、まさか自分が噂されてるなんて思いもしなかったんだろうな。
「あの…良かったら席、ご一緒しませんか？　一つ空いてるし」
　メグが言う。
「良いの？　土曜日だから席はことごとく埋まっちゃっててさ。ありがとう」
　委員長は嬉しそうにあたしの隣に座る。
　メグと洋子ちゃんは顔を見合わせる。頷く。何する気？　嫌な予感が…。
「あの！　私達の兄は同じ人を好きらしいのですが、委員長さんはそれについてどうお思いでしょうか？」
　本人に訊くーっ!?　そしてハモるなよ…。

　＿＿＿

[2] mixiユーザー 01月20日 18:09

　＿＿＿

　気温が下がってからは週に一度、市のスポーツセンターのプールに水泳部として行く以外は部活で泳ぐ事はありません。それ以外ではジョギングや筋トレをし、週に一回程度スポーツセンターのプールで個人的に泳ぐくらいです。
　今日はまだ薄暗い時間から河川敷を走っていました。空気がずいぶんと冷たくなったなと思います。
「かなり町外れまで来ちゃったな…」
　私はつぶやきました。おそらく学区外でしょう。何かトラブルがあれば面倒な事になるかも知れません。
「あれ？　健太？」
　聞き慣れた声の方を向くと、高山旬が立っていました。ジャージの上下を着ています。
「お前もジョグ？」
「ああ、まあな。お前も…？」
　確かに旬も汗をかいて息が上がっています。
「何だよ、だったら運動部に入れば良いのに。自主トレしてるよりよっぽど体力つくぞ？」
　旬は科学技術部に所属しています。
「いや、僕は機械とかいじってる方が好きだからさ。たまに朝走って体力作り兼ダイエット的な…」
　そう言えば旬は入学当初から比べるとかなり精悍な体付きになっていました。まだむっちりとした柔らかさを残しているので、別に老けている訳ではなく肉付きの良い男らしい体付きです。
「俺は冬の間に鈍らないように」
　私は旬に笑いかけました。旬も笑い返してくれます。
「普段もこの時間？」
「時間はこのくらいだけど、ここまで遠くに来る事はない、かな」
　私は正直に答えました。
「来れば良いじゃん。ほら」
　旬が指差す方には見知った顔が二人、いえ、三人いました。
「雅希に三組の山名くん、あの子は松山くんって子だろ。知ってるの？」
　赤いジャージの松山は、六月に我々の学校の校長先生が引ったくりに襲われる事件があったのですが、その時の襲撃犯の一人でした。私としては同じ小学校であったものの私立の中学に進んだ篠原友樹と言う友達の友達、友樹と一緒にそそのかされた子、と言う程度の認識しかありませんでしたが。
「松山徹郎。ほら、ユタカが夏休みに映画作ってたって聞いた事ない？」
「ああ、そう言いつつ、いちご百％みたいなエロい事してたんだろ？」
「何でそうなるの!?　全くそんな展開なかったよ！」
　私としてはほんの冗談のつもりだったのですが、旬は割りと本気で突っ込み返して来ました。
「あれ？　今日は健太も？」
　佐藤雅希の弾んだ声がしました。山名恭一も軽く頭を下げます。松山徹郎も。
　正直、私は松山にはあまり良い印象を持っていませんでした。
　友樹は勉強はよく出来るのですが、要領が悪く頼りない少年でした。その分、素直な良い子ではありましたが。
　校長先生襲撃の件も真犯人は南出虎次と言う人物だと聞いていましたが、この松山がもう少ししっかりしていれば友樹も巻き込まれずに済んだのではないかと思ってもいました。
　そのせいか、松山には少しぶっきらぼうな態度になっていたと思います。
「何で松山くん一緒なのさ？」
　私は口を尖らせました。

　関係を整理するとこうでした。
　まず、雅希と松山は小三まで同じサッカーのクラブチームに所属していました。小四から雅希はＪの下部のチームに行ってしまい、小五の夏には松山も中学受験のためにサッカーを辞めたそうですが。
　その二人は校長先生襲撃事件で最悪な再開をしたそうです。ただ、連絡先だけは交換して細々とメールやラインのやり取りはあったようです。
　二年四組の本田ユタカは一学期の間は保健室登校をしていました。映画好きと言う趣味を持つ彼は保健委員の沢菜結唯から作ってみてはどうだと言われ、沢菜、立野、新川のグループとユタカと仲が良かった旬と仁平が加わり、沢菜と幼馴染みの友樹と、それに引っ張られる形で松山が加入、秋にはコンテストに作品も出し、今は結果待ちだそうです。
　雅希は一年の二学期にケガで一度サッカーを離れていましたが、今夏にはフットサルを始め、秋には町クラブの中では強豪と言われるチームにスカウトされ、サッカーに本格的に復帰しました。学校の部活でサッカーをしている山名とはお互いに技術力を高めるために朝一緒に練習しているとの事で、復帰を知った松山も懐かしさから付き合うようになった、との事でした。
　後は旬と顔を合わせて今に至る、と言う事です。

「まさか小学生の時にすげーって思ってたマサやハヤブサのテツに練習付き合って…」
「ハヤブサのテツ!?」
　山名の発言に聞き返しました。
「うん。徹郎くんは小学生時代、他のチームからは素早く切り込んでくる事から…」
「キョンちゃん！　昔の事だから！」
　松山が赤くなって慌てています。
「そんなに凄い奴なら中学から部活でもクラブチームでも復帰すれば良かったのに…」
　また私は余計な事を言ってしまったようです。

[3] mixiユーザー 01月20日 18:11

「家は父子家庭で普段はじいちゃんしかいないからさ、家の用事とか色々とね」
　ぽつりと返されました。
　私は家の事を考えました。我が家も共働きですが、母親は夕食には帰って来まてくれますし、休みの日にまとめて掃除や洗濯もしてくれます。父親は出張で何ヶ月も他の地域にいる事が多いのですが、月に一度は帰って来て家族で食事もします。妹はワガママで生意気ですが、二ヶ月に一回くらいは可愛げがあると思ってやらない事もありません（私はツンデレではありません！）。そして気まぐれな所はありますが頼れる始末屋のセリまでいます。
　私は家族に恵まれているのです。
「うちの学校って男子が七割だからか男ばっかで言いたい放題さ。主婦じみてるとか、嫁の貰い手には困らないとか言われるんだよね。彼女にするなら女子の誰か、結婚するなら俺、的な…」
　松山は相当こじらせているようです。山名は分かる、と言いたげに頷いているのがまた…そう言えば彼もサッカー部のおかんって影で…。
　朝焼けの眩しさを切り裂くように電子音が鳴ります。携帯の着信音のようです。
「あ、俺」
　松山は携帯を耳に当てて立ち上がりました。
「え？　タクロウが？　八度二分？　分かった、すぐ帰る」
　松山は携帯をポケットにしまうと両手を顔の前で重ねました。
「ごめん、弟が熱出したから帰らなきゃ。じいちゃんも午前中はどうしても行かなきゃいけない用があるらしくて。じゃ」
「でも、今日は杏子ちゃんと約束あるって…」
　旬が言います。
　なるほど、松山が最近女子の間で噂になっている（と、木下が言っていた）立野の想い人なのかと思いました。
「それはライン入れとく」
　松山は立野には割りと素っ気ないようです。
　再び松山は走り出しました。
「良いお兄ちゃんだねぇ、見習わなきゃ」
　旬が言うので私と山名は頷きました。
「でも家のがやったら鬱陶しいだろうな…」
　と、雅希の呟きで台無しになりましたが。
「普段は着くなりボール競り合ってそれなりに時間潰すんだよ」
　雅希がぶち壊した空気を取り持つように山名が言います。
「後は雑談…的な」
　旬が言います。
「どうせ恋バナだろ？　松山くんと立野さん、熱いんだろ？」
　どうやら私は松山には少しキツい性格のようです。我ながら声に刺があると思いました。
「いや、それはあんまないよ。杏子ちゃんが男子が苦手な程じゃないけど、徹郎も女子が苦手だし」
　初耳でした。私も女性に免疫がないので他人様の事は言えませんが。
「真っ赤になって話せなくなる。結唯ちゃんでも千沙ちゃんでも。特に近付くと混乱する杏子ちゃんには真っ赤になって泣きそうなくらいだよ」
　またずいぶんと純情な少年だと思いました。
「そんなに酷いの？　沢菜さんはヘビー級に可愛いし、新川さんは超絶巨乳だからまだ分かるけど」
　山名がさり気なくセクハラ発言をかましました。女子の目がないとこんな感じなのでしょうか。
「それに雅希の前で恋バナは問題あるし…」
　旬が耳打ちします。そう言えば、雅希は桃井知美と言う同じ委員会の女子に片想いなのですが、桃井と鈴木和也と言う男子が両想いなのです。
「聞こえてるけどな…」
　雅希が言います。雅希はどうやら空気をぶち破るのが得意なようです。
「つーかさ、いい加減諦めて恒川さんとかに乗り換えな」
　私は雅希の肩をポンと叩きました。
「恒川さんとはホントに何もないよ。それに桃井さんの事も諦めてる…」
　一瞬、失恋した男の哀愁が漂いました。
「つーか、俺、恋愛至上主義じゃねーし。サッカーも英語部もあるし」
　雅希、この流れで何を言っても負け惜しみにしか聞こえないぞ…。
「つーか、お前らはどうなんだよ。人の事ばっか詮索してないでさ。好きな子くらいいるんだろ？」
　しばし沈黙。
「あ、そう言えば山名くん、三組の大和撫子グループの…誰だっけ？　ほのめかしてなかった？」
　夏休み、林田正義と和也のイザコザの席でそんな事を言っていたような気がしました。
「い…言ってない！　江野くんの勘違いだから！」
　山名は赤くなって手を顔の前でバタバタと振りました。
「うわ…キョン分かりやす…」
　雅希はいじれる相手を見つけて元気を取り戻したようです。
「あのメンバーだと巨乳の町中さんか…いや、サラサラロングの尾長さんか…」
　旬はメンバーの特定に乗り出したようです。
「宮部さんだよ！　あーもう！　私は宮部さんが好きです、これで良い？」
　真っ赤になりながら、やけっぱちで山名は答えました。
「宮部さんと言えば柔道部…何気に尻に敷かれたい願望があるとか？」
　私は意地悪な質問を投げかけます。
「あれ？　そう言えば江野くんと高山くんの好きな人は？　自分達だけ言わないなんてずるくない？　なぁ、マサ？」
　山名が今度は意地悪な笑みを浮かべます。

[4] mixiユーザー 01月20日 18:13

「うん、ずるい。男らしくない」
　雅希も同意しました。
「え？　好きな子なんていないいない。俺は水泳に青春捧げてるから」
　私はさり気なく、嘘をつきました。委員長の顔が頭を過ぎります。そんな無防備に笑わないでくれよ…。
「僕も恋愛してないよ。今は機械いじるのが楽しくってさ」
　旬も嘘か真かは分かりませんが、同じ方法でかわすようです。
「おい、納得できるか？」
「納得できんなぁ。人の恋バナにはあんだけ食い付いときながら、私は恋してませんだなんて」
　二人は不敵な笑みを浮かべて立ち上がりました。
「言え、好きな女ってのは誰だ？」
　私は旬と顔を見合わせました。観念した方が良さそうです。
「分かった、言うからその物騒な笑顔はやめてくれ」
　何とか二人をたしなめて、腹を括りました。誰かに言って回ったりする連中でもありません。
「委員長」
　私と旬は同時に答えました。
　え？　今、旬も委員長って…。
　雅希と山名が固まっています。私と旬はまた顔を見合わせました。
「委員長…って言った？」
「うん。俺が好きなのは…委員長」
　再び沈黙が流れます。
「四組の委員長だから…水沢さん？」
　山名が言います。
「うそ…三角関係かよ」
　雅希はまだ呆然としていますが、そう言いました。
「何で？」
　二人とも不思議そうに私と旬の顔を交互に見ました。
「何でって…」
　私は耳が熱くなって来ました。旬も真っ赤です。
「俺はだなーっ！」
　私は大きな声を張りました。旬に先に委員長を好きになった理由を言われて、私よりも真っ当な理由だった場合、諦めてしまいそうです。情けないですが、先に言わせてもらう事にしました。
「まず、ほら、俺って佑太の後釜で副委員になったじゃん？　あの人は何でも自分でやっちゃうからそんなに気を遣わなくて良いって言ってくれたけど、そうも行かないだろ？
　それに、いつも委員長って他人ばっかり優先させて自分の事は後回しじゃん。俺にも途中から副委員やらせて気を遣ってたみたいだ。だから俺も頑張ったよ。できる限りの仕事はしたつもりだ。
　で、委員長に言われたんだよ。
『江野くんに副委員頼んで良かった。だっていつも他の人のために一生懸命なんだもん』
　って。そりゃあんただろ、あんた。でも、何か人に頼られるって言うか、普段は人に頼らない委員長に頼りにされてるって、何か良いんだよ。そりゃ委員長と副委員だから単なる仕事として、だと思うけどな」
　深く息を吐きました。
「僕はさ、夏休みのいつだったかな。はじめと健が色々あって不安定だったり淫行の噂が流れた事もあったじゃん。それを収拾した後に和也のオスグットとかあって色々と心配が尽きなかったからね。
　で、つい『私、逆にあの子達をダメにしてるのかな』なんて言っちゃってた訳よ。泣きそうな感じではなかったけど、淋しそうに。
　だから言ったよ。そんな事はないって。あいつらは委員長がいなきゃだめなんだって。それに、自分はいつも後回しなのに人の世話ばっか焼いてる委員長にみんな感謝してるって言っちゃったよ。
　その時に委員長を守ってあげられたらって思ったんだよね」
　再び沈黙が流れます。辺りはかなり明るくなっています。まだ寒いのですが、日の当たるところはポカポカと気持ち良いくらいです。
「二人とも似たような理由だね。俺はてっきり何気に胸がデカいからだとばっかり…」
　雅希、それは大きな誤解だぞ。ちなみに木下が夏休みの少し前に言っていました。
「水着を新調したんだ、胸がデカくなったから割りと困ってたから。今Ｄだよ」
　因みにお前それ下ネタ防止部隊のセリフじゃねーよ、と返したところ、
「あ、そう言やあんた男だったわ。ごめん、女子同士と勘違いしてたわ。委員長とも話したんだけどね。委員長もＤで、水着とか何気に嫌だって言ってた」
　との事でした。
　委員長はＤカップ、中々デカい。やはりあのずっしりとした重みは男子の目を引いているのでしょうか。
「水沢さんって隠れ巨乳なの？」
「うん、デカい。メガネっ娘エロい説を実証できるかも知れん」
　目を輝かせながら訊いた山名に雅希が喜々として答えました。こいつら…単に欲求不満なだけだろ？
「あのさ、胸の大きさはどうでも良いんだよ」
　旬が赤面しながら言い返します。
「そうだよ、お前らエロ過ぎだぞ。一回病院で頭の中診てもらって来い」
「何だよ、女子がいなかったら普段はエロ話しにノリノリな癖に」
　雅希の意見は正しいのですが、好きな人を他の男がいやらしい目で見るのはどうも気に入りません。
「で、実はか弱い一面を見せた委員長には好きな男はいない訳？」
「あ、分かる。場合によっては新たなライバルが現れる可能性あるよね」
　ぐわあーんと音を立てて私と旬にタライが落ちて来ました。

[5] mixiユーザー 01月20日 18:15

「だろ？　旬と健太のどっちかを好きになる保障もないし」
「二人ともフラれるってのもアリなんだ」
　ゴツッと音を立てて、今度は漬け物石が私と旬に落ちて来ました。
「可能性があるとすれば…誰もが恐れる中、委員長だけは恐れない阿久くんか、いや、商店街で御用聞きやってるアキのお兄ちゃんみたいな年上もアリだな」
「絶対にその辺りだね。か弱い一面があるんなら守ってくれそうな強ーいヤンキーか年上だよね、普通の同級生とか有り得んし」
「だろ？　だろ？　二番手に甘んじてる副委員とか機械オタクはやっぱ頼りにならんだろ？　学級委員としての立場も理数系の知識も委員長のが上だし」
　私達は石化してバリーンと音を立ててその場に崩れました。
「あれ？　ちょっといじり過ぎたかも…」
「ヤバくない？　二人とも立ち直れそうにないよ？」
　そうでしょうよ、そうでしょうよ、自分達で散々言いたい事を言っておきながら。私達は何とか人の姿には再生しましたが、しばらく地面に突っ伏したまま起き上がれそうにありません。
「あ、俺、そろそろ帰らなきゃ。朝ごはん食べなきゃサッカー遅れる」
「俺も部活に行かなきゃ。部長が遅れる訳には行かないし…。まぁ、元気出しなよ」
　雅希と山名はスタコラサッサと逃げ出しました。
「うう…あいつら…おい、旬、大丈夫か」
「何とか…でも結構来たわ」
　何とか私達は立ち上がりました。
「まぁ、帰るわ。また学校でな」
「うん、じゃあね」
　こうして私達は別れました。
　それから何時間も経たない内に委員長から二人とも呼び出される事も知らずに…。

　＿＿＿

　旬と江野くんの片想いの相手が委員長だと言う事は黙っていたけど、日記を盗み読みして二人が同じ人を好きだと分かった事を、メグと洋子ちゃんは委員長に伝えたの。あたしも口を半開きにして聞いてるだけしかできなかったよ。
「で、その地味だけど真面目で世話焼きな女の子が私だった場合、どう思うかって事？」
　委員長、テンションおかしいよ…。
「あのさ、ほら。こう言うのはデリケートな問題だから。雑誌にも男の子の方がよっぽど傷付きやすいって書いてあるし」
　あたしは取り持つように言ったけど、委員長は楽しそうなまま。
「ごめんごめん。実は私、こう言う話しが大好きなんだ。ほら、私って思いっ切り恋愛向きのキャラじゃないガミガミうるさい委員長じゃん。
　でも、二人を傷つけないようにってのは重要だね」
　解ってくれた！
「よっしゃ！　だったら今すぐその子に二人の想いを伝えさせよう」
　解ってなかった…。メグと洋子ちゃんも頭にタライが落ちて来てぐわあーんって音が鳴ったし、そのせいで図書館の職員さんにちょっと睨まれたし。
「えっと…なんで今すぐ…？」
「このまま引きずって、お互いに同じ人を好きだって分かったら更に傷つけ合うよ、その好きな人だって傷付けてしまう。今の内に告白してもらって晴れやかな気持ちのまま、傷が浅い内に解決しなきゃ。それに、あの二人なら大丈夫。例え二人ともフラれても！」
　本人にそれを力説されても…。
「さあ、そうと分かれば恵ちゃん、洋子ちゃん、怖がってる顔をして」
　既に委員長のあんまりな鈍さと発想とハイテンションで怖がってるけど。委員長はお構いなし、二人を写メった。
「何するの…？」
「メール送るんさぁ。『妹達が大切ならすぐに来い』って文面付きで」
　傷が浅い内にじゃなくて、完全に面白がってるじゃん！
「何で脅迫するの？」
「大切な妹に心配させるなんて兄の風上にも置けないからね」
　こじつけじゃん！
「やめてあげて…」
「もう手遅れだ。送ったから。ふふふ…」
　ああ…もう。とんでもない展開になる予感しかしない。

　メール送信から十分もしないのに、旬と江野くんは汗だくで肩で息をしながら図書館に走り込むなり、委員長にいきなり土下座。
「すまん！　うちの妹が絶対に迷惑かけたんだな。何やらかした？」
「メグのやった事の責任は僕が必ず取るから！　この通り」
　職員さんも利用者さんも皆、こっちを白い目で見てる。恥ずかしいからやめて！
「大丈夫。問題があるのはあんた達だから。妹さん達は来てもらうために協力してもらっただけだよ。お願いだから顔をあげて」
　二人がおずおずと顔をあげる。
「大丈夫、皆は側で見てて」
　いや、あんたのこれまでやった事を考えると、どう考えても大丈夫じゃないんだけど！
「さあ、席に着いて」
　旬と江野くんを並んで座らせると、委員長は向かい合って座った。あたしとメグと洋子ちゃんは側に立って見守るだけしかできないみたい。だって委員長、マイペースなんだもん。
「時にお二人さん、好きな女性がいますね？」
　委員長が眼鏡を直しながら言う。
「わっかりやす…」

[6] mixiユーザー 01月20日 18:18

　洋子ちゃんの呟きの通り、旬と江野くんは耳まで真っ赤になって下を向いた。そりゃ本人に指摘されたら、あたしなら泣くわ。
「あの…そのだな…何でそんな事を訊くんだよ？」
「そうだよ、唐突に何さ？」
　二人の指摘は正しい。
「妹さん達から聞きました。お二人の見かけとは裏腹にメルヘンな日記を読んだそうです」
　旬と江野くん、ピシャーンと音を立てて石化。
「まあ鍵付きの日記帳を使わなかった自分達が悪いと思って許してあげなよ、お兄ちゃん」
　旬と江野くんはメグと洋子ちゃんを片目で睨んでるし。委員長がここまでデリカシーに欠いた人だとは思わなかったよ。
「で、本題なんだけど、二人ともその子に告白しなさい」
　二人とも机に突っ伏して動かなくなるし。
「このままずっと秘めた恋心なんて絶対に良くないよ。いずれその子を巡って三人で傷つけ合うようになる」
　だから、本人が言っちゃだめーっ！
「さ、その子を呼び出して今すぐ告白しよう！　フラれた方には甘酒だけどヤケ酒付き合うから。金つばも羊羹もどら焼きもあるよ」
　家が和菓子屋の委員長はすでに商売の事も考えてるっぽい。奢るとは言ってないから請求書とか絶対に用意してそう。
「で、その子は誰なの？　クラスの子？　私ならすぐにでもデータを取り寄せて対策も可能だよ。アドバイス上手な女の子も三人いるし」
　あたしとメグと洋子ちゃんの事？　巻き込まないで！
　僕らが好きなのはあなたです、とはさすがに言えないらしく、二人は突っ伏したまま。そもそも二人はお互いに委員長が好きだったって知ってたのかな？
　旬と江野くんがゆっくりと顔を上げて、お互いに目を合わせる。頷く。
「実は日記にも書いてない秘密があるんだ。いや、あの日記は全てカモフラなんだ。真実を隠すために敢えて妹達の目に触れるようにしていたんだ」
　旬が淡々と言う。目は笑ってないからヤケクソっぽい。
「実は俺と旬がデキてるんだ」
　江野くん、衝撃発言。目がマジだから、照れ笑いも作り物だってバレバレで、逆に怖い。
「ちょ…二人とも…目がヤバいよ？　恥ずかしいからウソついてない？」
「こんな事を言うのに目がヤバくならない奴の方がおかしいよ」
　旬はきっぱりと言い放った。
「はじめの例もあるだろ？　俺達、そう言う奴らなんだ。証拠を見せる」
　江野くんは旬を見て、立ち上がる。旬も立ち上がる。
　二人が着ていたのはジャージ。そのジャージに手をかける。
　え？　やめて！　公共施設で脱がないで！
「ちょ…最後の一枚はやめて！」
　委員長が慌てている。
「大丈夫！　水泳の時はすっげーＶパンだし、脱げてフルチンになった事あるから人前でも平気」
「僕も元力士だし、モロダシとかもした事あるから大丈夫！」
　力強く言わないで！　昨日の森くんと葉山くんのアレがむしろ可愛らしく思えるよ。旬と江野くんのアレは上を向いてるし、赤黒く膨らんでるし、毛の面積も昨日の二人より…ってか、葉山くんは毛生えてたっけ？
　目の前が真っ赤に染まって、電源が切れたように真っ暗になった。
　だっふんだ…だっふんだ…。

　＿＿＿

　本当は大会で水着がずれて局部が露出した時は死ぬほど恥ずかしかったですし、旬もモロダシの時は同様だったと思います。
　でもここまで来たら後には引けません。
　なぜって？
　だって委員長、鈍いんだもん。
　鈍いにも程があります。妹達から色々聞いているのなら分かるでしょうが、私達が好きな女性が自分だって。それに、他の女性と私と旬のどちらかをくっつけるためにあんなに盛り上がった挙げ句、フラれた方にはヤケ酒に付き合うと言うサービス付きです。
　もうフラれる前から完全に無理だとわかってしまいました。だからフラれる前にヤケクソです。
　しかし、自分で言い出しておきながら旬がここまで悪ノリについて来るとは思いませんでした。
　ファーストキスも初体験も恋愛感情のない相手、しかも同性愛者でもないのに男同士、妹に見られながら、好きな女性に見せつけながら、ギャラリーいっぱい…もうどうにでもなってしまえば良いのです。母親にバレて無期限の小遣い停止と外出禁止を言い渡され、学校でも何日も生徒指導室に通う事になるでしょう。更に出張先から慌てて帰った父親からはぶん殴られる程度では済まされないでしょう。誰も私と旬とは口を聞かなくなるでしょう。でもセリくらいは分かってくれるはずです。
　あ、そう言えば立野がまた倒れていました。鼻血を物凄い量…あ、確か第三形態でしたっけ？　でも何で今時だっふんだなんでしょうか。
　そりゃあ昨日のはじめと健より私達は発育が良い方ですし、ガタイも良いので刺激が強いのでしょう。アソコもヤケクソな割りには二人とも勃起してるし。
　私と旬はきつく抱き合い、唇を重ねました。

[7] mixiユーザー 01月20日 18:19

「二人とも！　脱ぐまでならともかく、もうシャレにならないから。やめなさい！　私が悪かった。無理に進展させようとして悪かったから、ごめんなさい」
　委員長が謝って来ました。
「お願いだから自分の体は大切にして」
　私達は無視してお互いの性器を擦り付け合いました。
「報道委員の石松です。我々取材班が文化学習センターに取材に来ていた時に偶然、とんでもない不祥事に遭遇しました」
　なぜか石松哲也がマイク片手に真剣な顔をして私達の前に立ちました。
　ちなみに、哲也と相田百合は元々は報道委員ですが、一学期の間は実験的に放送委員と新聞委員に分かれていました。しかし、やはり元々一つの委員会でしていた事を二つに分けるのはやりにくい、と言う理由で二学期からは統一され直し、報道委員に戻ったのです。
　相棒の相田がカメラを回し、私達の絡みを映しています。
「公共施設での公開性行為、おそらく前代未聞の不祥事でしょう。しかし、我々は揉み消す訳にはいきません。事実を伝えなくてはいけません」
　いつになく真面目です。普段からもこのくらい真面目に、良識を持って行動してもらいたい物です。きっと明日は吹雪になるでしょう。
「私の所属する二年四組の江野と高山ですね。ちょうど学級委員の水沢氏もいます。インタビューしてみましょう。水沢委員長、少し良いですか？」
　相田がカメラを委員長に向けました。
「あ、はい。どうしましょう？」
　横目で見ると委員長はカメラに微笑みそうになりましたが、慌てて顔を曇らせました。
　一方、私達は吸音用のカーペットが敷かれた床に倒れ込み、激しくまさぐり合いました。
「経緯とか分かれば教えて欲しいのですが」
「それが…二人が突然、俺達はデキてるんだ、その証拠を見せるって言ってセック…この行為を始めてしまったんです。私は止めたんですが…うう…」
「委員長、せめてタマネギは見えないように泣きましょう」
「ちっ…ウソ泣きがバレたか。でも、私から言っても聞かないし、どうしましょう。小さな子も見てますし」
「確かに問題ですね。校長先生の土下座では済まないかも知れません」
「誰かお助けヒーローでもいてくれれば…」
　そんなヒーロー…いました。でも遅過ぎました。
「あ…もうだめ…」
　旬の腰が小刻みに震えます。
「俺も…出そう」
　私も絶頂を迎えたようです。
　相田がカメラをこちらに向け、局部をズームアップします。
　私達はほぼ同時に射精し、妹二人はその直後に嘔吐しました。
「あんたらは何をやっとんじゃいっ！」
　木下の厳しい声が響きます。それと同時にスパーン、スパーンと言うハリセンの小気味良い音が鳴りました。私と旬の頭にクリティカルヒットしたようです。
　さて、困りました。勢いだけでここまでやってしまいましたが、射精後の妙に冷めてしまった頭ではどうにもこの展開を乗り越える事が出来そうにありません。更に、何か…このままゴロゴロしていたい…。
　しかし、そんな訳にはいきません。旬とはお互いに裸のまま腹に精液をぶちまけ合って、更に妹達は床に盛大に吐いているし、立野は鼻血をダクダク流しながら気を失っているし、委員長は心配そうに見てるし、木下、哲也、相田、あと周りの知らない人達は完全に軽蔑の眼差しを向けているし…どうしましょう？　私と旬はお互いに顔を見合わせました。
「えーと…ごめんなさい」
　本日二回目の土下座しかありません。

　取りあえず服を着るように言われ、立野は図書館の女性職員と相田に医務室へ運ばれ、委員長と木下と哲也にも謝ってもらい、妹達と一緒に吐瀉物と鼻血を拭きました。
　余談ですが相田と哲也は、図書館前の憩いのホールで将棋を通じて地域交流している人達の取材に来ていたとの事です。
「親と学校の呼び出しは避けられないって…」
　さすがの委員長もお手上げ状態です。当たり前です。
　いつの間にいたのでしょうか。はじめ、和也、健の三人が『代理』と書かれたハチマキをつけて、私が普段『反省文用』に原稿用紙を入れている包みを健が持っています。
　まさか自分が反省文を書くハメになるとは…。
　散々、職員から怒られ、学校の担任の名前と親の連絡先を教え、何とか解放されました。
「ホントにごめん。私が無理に告白させようとしたから」
　委員長が私と旬の前で手を合わせて頭を下げました。
「いや、悪いのは俺らだから！　いくら照れとヤケでもあれはやり過ぎた」
「委員長、顔を上げて。明らかに悪いの僕らだったじゃん」
　一方、木下、哲也、相田、あと私の代理らしい三人は妹達からゴニョゴニョと何やら聞いています。経緯を聞いているのでしょう。
「ま、ヤケ起こすのも大概にしときな」
　木下は私と旬を怖い顔で睨みながら言うと、今度は委員長に目を向けました。
「あんたも大変だね」

[8] mixiユーザー 01月20日 18:22

　ちょっとだけにやけながら言わないで欲しいものです。
「新聞に書けない…放送もできない…こんなアホ過ぎる真相…」
　哲也と相田は下を向いてブツクサ言いながら退場して行きました。
　はじめ、和也、健の三人は委員長を見ると、ため息をつき、ヤレヤレと今にも言いそうな表情を浮かべました。
「でも兄は今更ですから。こんな事では損とかしないと思います」
　妹の洋子が何やら余計な事を言い出しそうです。
「家では冬でもハーパンかパンイチに裸足ですし、押し入れがお気に入りですし、飼い猫を世界レベルの始末屋だと思い込んでますから…」
「洋子、お前何を残念そうに言ってるんだよ？　薄着や裸足は健康に良いんだよ。押し入れも狭いとこが落ち着くだけ。セリも奴らを始末してくれてるから助かってるだろ？」
　私は洋子の頬を軽ーくつねりました。
「いやあ、こいつ一言も二言も多くてさ…」
　勝手に個人情報を垂れ流さないで欲しいものです。
「奴らって？」
　健、そこ訊きますか？　あなたの空気の読めなさは全く…。
「ネズミです。母も兄もその名を言いたくないから奴らって呼ぶんです」
「嫌いな人に取ってはそうなんだよ！」
「平気で死体を処理してるじゃん」
「平気じゃねーよ。気持ち悪いよ、布越しにぐにゃって…」
「具体的に言わないで」
　和也が嫌そうな目を向けます。彼も苦手なようです。
「で、猫の名前がセリ子な訳か」
「健はわざと言ってるだろ。セリ子じゃない、セリだ」
「また随分とメルヘンチックな脳内なんだ、見た目とは裏腹に」
　はじめも一言多いのです。
「あーあー悪うございました。どうせ私は中二病ですよ」
「またヤケになる…」
「でももう人前で射精はしないでね」
　また蒸し返されました。
「あ、立野、復活したみたいだよ」
　木下が向いている方を見ると立野が（あんな姿を晒しておきながら）ニコニコ笑いながらこちらに歩いて来ます。
「でも良かったね、せっかくのおしゃれ着が血まみれにならなくて」
「鼻血も前に向かって噴射したし、うつ伏せに倒れたのが不幸中の幸いでしたね」
　洋子と旬の妹の恵が言います。立野は照れ臭そうに頭を掻きました。
「でも何で立野さんはそんなに気合い入った恰好なの？　バッチリメイクだし」
　健は気になった事をすぐに口に出すようです。
「普段着よりちょっと気合い入れた程度…あ、今何時？」
「十二時五十分」
　木下が呟きました。
「ごめん。ちょっと用事あるんだ。あ、これ、皆で食べて。人数的に足りないかも知れないけど」
　そう言うと、立野は巨大なバスケットを木下に押し付けて走り出しました。
「杏子ちゃん、お昼からデートなんだよ。彼氏が弟の看病とかで朝からの予定が狂っちゃったけど」
　恵がニヤニヤしながら言いました。
　私と旬は目だけでお互いを意識しました。きっと松山が朝、慌てて帰宅していた事を思い出したのでしょう。
　立野は鞄から取り出した手鏡で前髪を直し、リップクリームを塗ると、センターを出ました。センターの前には公園があります。
　駐輪場に自転車に乗った松山が駆け込みました。朝のジャージとは違い、少しオシャレな服装です。
「お幸せに」
　私と旬はほぼ同時に呟きました。
「杏子ちゃんの彼氏ならもっとイケメンだと思ったけど」
「コラ、メグ」
　旬が恵をたしなめます。
「確かに、立野はモデル系の爽やかイケメンが好きだと思ってたけど、何か冴えないな」
「木下まで…」
　私は呆れました。
「でもルックスだけなら商店街のお兄さん達や旬お兄さんの方がまともです」
「あのな、洋子。男は見た目じゃなくて中身なんだよ。それに何で俺が含まれてないんだよ」
　洋子には少しきつめに言います。一方、イケメン評価された三人と旬は少し嬉しそうです。
「え？　だって目付きの悪さはどっこいどっこい…」
　委員長、吹き出さないでもらえます？
「大丈夫、もっと目付き悪いのがクラスにいるから」
　健が言うと同時に、頭の中に雅希の顔が浮かびました。今頃クシャミしているでしょう。
「まぁまぁ、さっさと立野さんのお弁当食べようよ。ほら、五人分はあるよ？」
　まさか、立野はこの量を二人で食べるつもりだったんでしょうか…。
　少し焦げた卵焼き、大きめに切られたブロッコリーとプチトマト、タコの足がちぎれそうなウィンナー、歪んだ俵型のおにぎり…見た目は少し悪いとも思いましたが、味付けは中々でした。ブロッコリーの塩気は丁度良くマヨネーズやドレッシングは不要ですし、卵焼きからはダシの香りがふんわりと漂います。
「これから学校に親呼び出しで更に怒られるんだから、しっかり栄養取らなきゃね」
　木下がウィンナーを口にしながら言います。
「お前なぁ…」
　旬とまた顔を見合わせます。自然に笑いがこみ上げて来ました。

[9] mixiユーザー 01月20日 18:24

「まぁ、うまい言い訳とギャグで乗り切るさ、な」
　肩を叩かれたので、梅の仄かな酸味と柔らかくなった海苔の香りが心地よいおにぎりを頬張りながら頷きました。
　食べ物を口に入れたまましゃべるのは良くありませんから。

　＿＿＿

　徹郎くんが駐輪場から小走りに駆けてくる。息が上がってる。そんなに無理しなくても良いのに。
　あたしは自分の服装が気になった。
　ピンクベージュのコートはお気に入りだけど、ガーリー過ぎたかな。ふんわりしたスカートは女の子らしいけど、少し短か過ぎないかな。ブーツももしかしたら歩くかもしれないから、不適切じゃないかな。髪だって巻いてるし、中学生らしくないかな。
　徹郎くんったら、ジャケットは大人っぽいけど、汗だくにスニーカーには合わないよ。ま、そんなとこも可愛いとは思うんだけどさ。
「ごめん、待った？」
　しんどそうに言うとあんまりカッコ良くないんだよな。それよりずっとカッコイイ姿を知ってるから別に構わないんだけどね。
「大丈夫。友達に会ってさ、時間潰したから」
　本当はとても説明できない悲惨な事態に陥ったけど。
「弟さん、大丈夫？」
「うん、病院連れて行って薬飲ませたし、じいちゃんも帰って来たから診てもらってる。熱も少し下がったしね。
　立野さん、お昼は？」
　そう言えば…お弁当渡して来ちゃった…。てっきり時間的に徹郎くんは食べてくると思ってたけど、まさか食べてない？
「あ、食べてない。でも大丈夫。朝たくさん食べたし」
「それなら、これ。俺もまだなんだけどさ」
　そう言いながら徹郎くんはポケットからカロリーメイトの箱を取り出した。
「チーズ味、大丈夫？」
「うん。ありがとう」
　丁度二つ残っていたみたい。一つをあたしに渡してくれるんだけど、目いっぱい手を伸ばして、あたしからも目いっぱい手を伸ばす。
　こう言う時、あの錯乱する癖が心底憎たらしいよ。
　一瞬、手と手が触れ合って小二の夏を思い出す。
　徹郎くんは忘れてるだろうな。
「少し歩こうよ」
　あたし達は距離を取りながら歩いた。手も繋がない。一メートルくらい空いてる。これがデートと言えるのか…。はぁ…男好きなのに男が苦手って、あたしはどんな女なんだよ？
　でも、今日は伝えたい事があるんだ。
「小二の夏休みに家族でキャンプに行ったんだ」
　あたしは切り出した。

　………

　お父さんとの最後の思い出作り。
　その時には両親との関係は破綻していて、もうあたしとお姉ちゃんはお母さんと暮らす事が決まってた。転校はしないけど、一軒家からマンションへお引っ越し。
　中学に上がってから知った事だけど、お父さんはお母さんに仕事を辞めて家に入って欲しがっていたけど、お母さんはお父さんとの暮らしより仕事を選んだ。お母さんは小さな会社の経理のおばさん。
「大した仕事じゃないんだし」
　お父さんは軽い一言のつもりだったし、そんな感じで結婚や出産を期に仕事を辞める女性はお父さんの職場では当たり前だったらしい。でも、お母さんはそれが許せなかったらしい。
　そして、二人は離婚が決まったけど、あたしとお姉ちゃんのために踏み止まっていた事も事実。結局あたしの小学校入学前に別れるはずがズルズルと一年以上先延ばしに。
　そして、小二の夏休みに二人は本当に離婚した。
　でも、二人はあたしとお姉ちゃんには気を遣っていたし、だから最後の思い出にって家族でキャンプに出かける事になったの。
　夏なのに山の中は風が気持ち良くて涼しくて、いつも仕事ばかりだった両親も楽しそうで、いつまでもこんな時間が続けば良いと思ったの。
　でも、そんなの有り得ないよね。翌日、家に帰ったら待ってるのは離れて暮らすための引っ越しの準備。憂鬱だよね。
　だから、逃げ出しちゃった。無駄だって分かり切ってたのにね。
　お昼を食べてから勝手に森の中に入ってデタラメに歩いたの。で、夕方にはどこか分からなくなって、急に怖くなった。自分で始めておきながらね。
「迷子になったの？」
　ふと声がして、顔を上げると同い年くらいの男の子がいるの。ちょっと不機嫌＆生意気そうな、ちょっと苦手な感じの男の子。
「うん」
「お前、キャンプ場で父さんと母さんと姉さんといただろ？」
「うん」
　ちょっと怖くて小さな声で答えるだけしか出来なかった。
「ほら、帰るぞ。道はこっちだ」
　男の子は勝手にスタスタと歩き出したけど、あたしは疲れてたし、男の子が不機嫌そうで怖かったから座り込んだままだった。
「何で座ってるんだよ、今から歩けば暗くなる前にはキャンプ場に着くぜ」
「帰りたくない」
　何でそう言っちゃったのかな。その時は早く家族のとこに戻りたくて、淋しかったはずなのに。
「ワガママなお姫様みたいだな。ほら、手ぇ出せよ」

[10] mixiユーザー 01月20日 18:25

　男の子はあたしの方に歩いて来ると、しゃがんでいたあたしに手を差し伸ばした。
「でも…」
「大丈夫だ。俺が守ってやるから」
　あたしが手を伸ばすと、男の子は手を握り返してくれて、あたしは立ち上がって、二人で歩きだした。
　結局、男の子はその後何も話してくれなくて、あたしも何も話せなくて、そのまま歩き続けたんだけど、キャンプ場に着いた時には真っ暗になっていたの。
　両親は激怒、お母さんは泣きながら怒るし、お父さんはずっと機嫌が悪そうにしてて、あたし、泣き出しちゃった。
　それは男の子の方も一緒だったみたい。向こうはお父さんが怒鳴ってて、お母さんが困ってる感じだったけど。
「俺が一緒に遊ぼうって言って、あの子を誘い出したんだ。あの子はもう帰ろうって言ったのに、俺がまだ遊びたいって言ったから暗くなっちゃったんだ」
　男の子は自分のお母さんにそう言ったよ。そうしたら、男の子のお父さんは男の子の頭をゲンコツで思い切り叩いてさ。
「お前は何をやってるんだ！　よその子にまで迷惑かけて！」
　って怒鳴ったの。家の両親も男の子のお母さんもその怒り方にびっくりして止めに入ったよ。
　とにかく、その場は男の子のお父さんがうちの坊主のせいでって事にして収めて、あたしも簡単な注意だけで済んだんだ。
　バカだよね。自分でお父さんとの最後の思い出、ぶち壊そうとしておきながら、誰かを悪者にして…。でも最後の思い出が怒られた思い出にならなくて良かったって思えたんだ。

　………

「ちょっと待って。立野さん、眼鏡、取ってみて」
　眼鏡は視力が低下し始めた小五の夏からかけてるの。今かけてるのはブラウンのフレームの精一杯オシャレなやつ。
「で、髪、後ろ結びにして」
　ゴムがないから手でうなじの辺りで束ねるだけにしてみる。
　徹郎くんがあたしの顔をじっと見つめる。
　思い出した？　あたしは結唯が友樹くんと一緒に連れて来た時から分かってたよ。
「小二の夏休みだったよね。その男の子って…俺？」
　あたしは頷いて見せた。
「あの日は…連れ回しちゃってごめんね」
「何で謝るの？　あたしが勝手に迷子になってたのに一緒に帰ってくれて、悪者になって怒られてくれたのに」
「あのさ、家の親も実はあの直後離婚して、あのキャンプは立野さん家と一緒で最後の思い出だったんだ。で、俺も家族のそんな雰囲気が嫌でわざと森で一人で遊んでた」
　初めて知ったよ。
「で、家はおっかあが出て行く事になったんだけど、俺、最後におっかあに怒られたかったんだ。変だろ？　甘えたかったとかならともかく。
　おっとうに愛想尽かしたおっかあの思い出、欲しかったんだ。よその女の子連れ回すような奴、普通は怒るだろ？　俺、おっかあの気を引くのに褒められるより怒られる方が効果的だってその時は思っててさ。
　でも、おっとうがブチギレておっかあは俺を庇ってくれてさ。そっちの方が嬉しかった。
　立野さんが思ってるようなカッコ良い理由じゃなくて、ガキ丸出しの理由でだったんだ」
　人の行動には色々と理由があるみたい。それがどう動くかは行動した本人にも分からない。
　お母さんの気を引くために徹郎くんがした行動は、あたしの家族の思い出を悲しい思い出にしないでくれた。
「そんな事はどうでも良いよ。結果的にあたしは今、幸せなんだから」
　あたしは笑ってみせた。
「手、繋ごうよ」
　あたしは手を差し出す。　
「でも立野さん、男が苦手で、下手したら回っちゃうじゃん。それに俺も女の子相手だと恥ずかしいし」
　真っ赤になっちゃって。あたしも人の事は言えないけど。
「大丈夫だよ。小さい頃は平気だったでしょ」
「じゃ、目を閉じて」
「うん」
　目の前が真っ暗になる。隣に、すぐ側に徹郎くんが立つのが分かった。胸が薄いから心臓のドキドキが徹郎くんに聞かれてるんじゃないかって思う。
「大丈夫？」
　上ずった徹郎くんの声、少し冷えた手があたしの手をそっと握る。
「うん、大丈夫」
　とは言え、すぐにドキドキして離れちゃったけどね。
「ついに立野さんに触っちゃった」
「その言い方いやらしい」
「へへ」
　その笑い方もいやらしいなぁ…。
「あとさ、立野さんじゃなくて杏子で良いよ」
「わかったよ。…杏子」
　ああ、やっぱ胸がまだドキドキしてる。ＡＡＡを突き破って心臓が飛び出しそう。

　【了】

[11] mixiユーザー 01月20日 18:26

相田「何で!?　デジカメにコンピューターウイルスが！　どうやって…こんな事ができるのは…」
水沢「さあ？　何の事ざんしょう？」
相田「うわ…その顔、絶対に犯人だよ。将棋インタビューは残ってるのに江野くんと高山くんの絡みだけ都合良く削除できるような物を作れるのあんたくらいしか…」
水沢「ワターシ、ニホンゴ、ワッスレマーシタぁ」
相田「いや、思いっきり日本語だけど」
石松「さすがに数々の二年四組不祥事案件を揉み消して来ただけある…」
水沢「まぁまぁ。本人達も親と先生に大目玉食らって反省してるし。それにしてもモテないので興味本位で男に手を出しました、で押し切るとはねぇ。でも、あの子達が好きな女の子って誰だろ？」
相田、石松（気付いてやれよ…）
水沢「あ、来た来た。今日のゲスト」
立野「え？　あたし、ゲスト？」
水沢「ほら、江野くんと高山くんは今、親から外出禁止されてるし、あんたしかいないんだって。恋バナしよ！　松山くんとの事聞かせなさい」
立野「こいつ…一番反省しないといけないのに…」
水沢「進展したの？　言わなきゃ石松くん近付けるよ？」
立野「分かった、言うよ。手は繋ぎました」
水沢「それだけ？　私やタケちゃんなんて誰とでも繋いでるよ」
立野「あんた達の基準で言わないで。あたしだってドキドキして大変だったんだし、徹郎くんも恥ずかしがってたし」
相田「また随分と可愛らしいね。図書館で会った時はギャルだったのに、見た目とは裏腹にウブ過ぎると言うか」
石松「旬と健太はモロに性行為だったからともかく、はじめと健でアレはなかったわ。俺で慣れてるだろ？」
立野「あんたで慣れてるってのもどう？　でも二人とも中二男子だよ？　あ、またのぼせて来た」
石松「はじめも健もまだ皮かぶってたろ？　そもそも健はまだ毛が生えてないし」
水沢「産毛が根元に生えてるくらいはあるよ。二人とも一応勃ったら剥け…」
立野「言わなくても良いから！」
相田「むしろ詳しく聞かせろ！」
水沢「あれでも一応発育はしてる。カズちゃんも…」
森、鈴木、葉山「うわーっ！　うわーっ！　木下姐さーん！」
木下「ほほう…まあこいつらなら良いか。委員長、詳しく」
葉山「二年四組の良心の木下さんまで…こうなったら！」
森「たーてのさん♡」（左隣にピタッと寄り添う）
立野「近い！　やめて！」
鈴木「立野さん、止めてよ」（右隣にピタッと寄り添う）
立野「は…挟まれたーっ!!　破廉恥過ぎるーっ！」
木下「それも大げさだけど」
葉山「はい、どーん！」（背中を思い切り押す）
立野「ドュフフフ！　ドュフフフフフフフ！」（高速回転し始める）
葉山「進め！　立野号！　目指すは委員長！」
立野「ドュフフフフフフフ！」（バシッ！　ドカッ！）
水沢「ぎゃあーっ！」
相田「二人負傷…」
木下「ってか、さっきの会話で頭に血が上ったのか立野は鼻血垂らしてるし…」
石松「三人とも恥ずかしがり屋さんだな」
森「あのね…体の事とか詳しく言われるのは普通に恥ずかしいじゃん」
相田「でも何で委員長はあんた達の発育具合に詳しい訳？」
鈴木「風呂上がりとかに訪ねて来た時に見てたんだろ？」
木下「ちょ…風呂上がりに女の子の前に裸のまま出たりしてるの？」
三人「うん…え？」
葉山「あ、そう言えば委員長って女だっけ？」
森「忘れちゃうよね」
鈴木「委員長や咲ちゃんも風呂上がりに裸でウロウロしてるから気付かなかった」
石松「ちょっと待て！　それは破廉恥だぞ！」
木下「あんたが言うか」
石松「男は悪ふざけで済む。女は…それに委員長って胸結構あるし…」
相田「あ、鼻血」
葉山「ブラはＤだって言ってたよ」
石松「でーカップ!?　いや、口が軽いお前に言うとかオープン過ぎだろ！」
鈴木「あ、でも家のお母さんもＤだし、お姉ちゃんはＥだからそんなに驚かないかも」
石松「はあっ!!?　あのお姉さんあんなに細いのに巨乳なのか!?　鈴木家の養子にしてくれ！」
鈴木「欲しけりゃあげるよ…ってか、第二話であんだけケチョンケチョンにやられといて…」
石松「巨乳のお姉さんならケチョンケチョンにやられたいんだよ！　風呂上がりに裸で遭遇とかラッキースケベしたいんだよ！」
葉山「姉ちゃんなんて母親と一緒だろ？」
鈴木「うん、お母さんが二人いるみたいなもん。お母さんの裸見れて哲也は嬉しいの？」
石松「ぐはっ！　若い頃の写真の二倍の横幅が…がく…」
木下「こうなる事を予想してたから石松の下ネタを止めなかったんだけどね」
相田「ショーテンガイズ男子、最強説浮上…三人負傷って」
葉山「さてと、次回の予告行くか」
森「次回は僕ら商店街メンバーの少し暗い過去に触れるよ」
相田「それって阿久くんも出る？」
鈴木「うん、ってかリュウが主役になるみたい」

[12] mixiユーザー 01月20日 18:28

木下「それはそうと委員長と立野と石松はどうする？　気を失ってるけど」
葉山「見なかった事にしよう。では…」
木下、相田、森、鈴木、葉山「次回もお楽しみに！」

一話　空色デイズ　四月終わりから五月始め頃（作中での時間軸）
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二話　イタい子達のレクイエム　五月後半頃
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三話　イタい子達のレクイエムパートⅡ　六月前半頃
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四話　アジサイの季節に　六月後半頃
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五話　雨上がりの屋上　七月前半頃
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六話　それいけ！　アホ娘！　アホ男！　七月中頃
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七話　夏時間　七月終わり頃
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八話　寄り添って眺める朝日　八月前半頃
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九話　涙色の夕日　八月後半頃
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十話　守るって何？　九月始め頃
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十一話　クラゲと一緒に旅に出よう！　九月中頃
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十二話　私の世界　九月終わり頃
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十三話　砂時計　十月前半頃
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十四話　アイスクリームとキャッチボール　十月後半頃
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十五話　俺があいつであいつは誰だ？　十一月始め頃
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=81437615&comment_count=13&from=one_tab

その他の現在連載中の作品はこちらから↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=39667607&comm_id=3656165

[13] mixiユーザー 01月21日 21:36

　何か杏子ちゃんの度を超えた純情ぶりが可愛い

[14] mixiユーザー 01月22日 08:07

>>[13]

(((;´∀`)いや、むしろ立野のあれは迷惑と呼ばれる部類…

立野「可愛いだなんて、そんな…（ぽっ）」
沢菜「いや、第三形態とかひどかったよ？」
立野「う…」
新川「あれだけ出したら死ぬんじゃないかってくらいドバドバ出してたじゃん」
立野「レバーとホウレンソウ食べたから大丈夫」
沢菜「でもさ、森くんとか葉山くんとか、脱いでも思い切り子どもじゃん。うちの弟と背の高さ以外はそんなに変わらないよ？　あれで鼻血出すとか逆にどれだけ…」
立野「いや…それもどう？　それに旬と江野くんにも脱がれたし」
沢菜「二人とも水泳と相撲の選手なんだから別に何とも思ってないでしょ？」（公開性行為を見てないので適当）
新川「まあ間近で見ちゃったらねぇ。私だったらお嫁に行けなくなりそう…」
沢菜「大げさな…昨日も私は幼なじみのトモくんの裸見たよ？」
（第四話参照。篠原友樹と沢菜は幼なじみです）
立野「何で…!?」
沢菜「家のマンションの前の公園で水たまりにこけたから、急いで風呂に入らせて…」
新川「幼児とお母さんじゃないんだから！」
沢菜「トモくんなら二人とも裸で同じ布団で一晩過ごしても何もない自信あるけど」
立野「結唯がだんだんおばさんに見えて来た…」
新川「でもさ、杏子の第二形態もすごかったよね。委員長を倒す武器にされたんでしょ？」
立野「うん、認めたくないけど」
沢菜「つーかあの高速回転のせいでパンツ丸見えだったけど、そっちの方もはしたなくない？」
立野「大丈夫、見られても良いように水着みたいな可愛い奴しか持ってないから」
新川「見られる事前提なんだ…そのスカート丈の短さなら分かるけど。でもさ、津山くんとか結構陰湿ないやらしい見方してるから気を付けなよ」
立野「大丈夫だって。津山くんなら陸上で鍛えたこの足で蹴り飛ばせるから」
沢菜「その前に高速回転でぶっ飛ばすでしょ」

[15] mixiユーザー 02月11日 20:35

>>[14]
　目次作業、大変大変遅くなりました～。
　ご確認ください。m(__)m

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