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アナタが作る物語コミュの【青春活劇】中二病疾患 第三話「イタい子達のレクイエム(第三話だけどパート2)」

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第一話「空色デイズ」 はこちらから↓
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第二話『イタい子達のレクイエム』はこちらから↓
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その他の現在連載中の作品はこちらから↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=39667607&comm_id=3656165

                       えんぴつ

 二年四組の川村純です。六月になっても中々梅雨入りしません。毎年六月の中頃に梅雨入りして、夏休み前くらいにあけるだろ、なんてユウタは言います。俺はそうだっけ? なんて思いながらもユウタがそう言うのならそうなんだろうとも思います。
「おはよう」
 キヨちゃん…ではなく、今井清美さんが挨拶に来ました。
 俺の出身小学校は一学年一クラスしかなく、それまでは同小の今井さんとは六年間ずっと同じクラスで、あと石松のテッちゃんや相田百合ちゃんとも六年間一緒でした。三宅のコウちゃんも一応は同小でしたが、コウちゃんは五年生に上がる時に転向して行きました。逆に、あの惨劇を見なくて良かったのかも知れません。それからなのです、今井さんが変わってしまったのは。
 今井さんは木下さんやユリちゃんのグループと笑い合っています。何かのアニメの話しで盛り上がっているようです。さっきまでは沢菜さん達とファッション誌の内容について話していたのに凄い身代わりの早さです。
「おはようさん」
 ユウタが野球の朝練が終わって教室に来ました。
「おはよう」
 レイカがユウタに笑いかけます。クラスの女子では二番目に背が高く、セミショートの髪型とエクボが可愛らしい人ですが、気が強くて俺は逆らえません。
「おはよう、ユウタ。ちゃんと汗拭いた?」
 おユキがユウタの腕に抱き付きます。二人は恋愛関係にあります。おユキは笑うと半月型になる目と肩の位置で揺れる髪が愛らしく、胸も大きいので魅力的な女性です。胸が押し付けられているユウタの左肘になりたいです。
「おはよう」
 俺はやっと挨拶します。この順番を守らないといけません。面倒ですが仕方ないのです。
「おう、ジュン。ちょっとツレション」
「もう、ユウタ、やだぁ」
 おユキの笑い声を背に、俺達はトイレに向かいます。
「オトコ会、近々したいな」
 なる程、その話しですか。喜んで。

 四月の終わり頃の土曜日、俺達二年四組の男子達は屋上に集まりました。オトコ会です。
 二年四組の男子達は比較的立場が弱く、女子の尻に敷かれがちです。たまにはぱぁーっとバカ騒ぎをしたい、なんて思っている奴らはたくさんいるはず、女子の目なんか気にしなくても良いように。だったらたまに集まってすれば良い。それがオトコ会です。
 第一回は津山浩樹くんと本田ゆたかくん、三宅コウちゃん以外は皆集まりました。今回は浩樹くんが田村明仁くんのグループに入ったので、きっと来るでしょう。後は保健室登校しているゆたかくんです。彼と仲の良い高山旬くんか工藤仁平くんに誘ってもらうか、保健委員の葉山健くんにそれとなく話してもらうか。コウちゃんはきっと誘われないと思います。

 ユウタとは中学に入ってから仲良くなりました。中学生活で最初の友達です。ユウタは男っぽい性格で、明るく社交的、器用で勉強もスポーツもそこそこできるイケメンです。なので当然のようにモテます。そんなユウタと一緒にいると自分まで一目置かれているように錯覚してしまいます。
 二人でトイレから帰ると予鈴が鳴りました。
「ほら、早く席に着け」
 なんてユウタに急かされます。

 ___

 私の朝は忙しい。クラスの女子全員に声をかけて、話しをして、女子達の状況を確認する。誰それと誰それがケンカはしていないか、誰それと誰それが仲良くなり出した、誰それと誰それがどうしたこうした…数えたらキリがない。それでもやらなくてはならない。
 それぞれの変化や状況をメモして、線で結んだり囲んだり、バツ印を付けたりして、自宅の秘密のノートに書き込む。それからそれぞれの趣味や嗜好に合わせたネタを仕入れて、どうしたら面白がるか楽しむかを分析して、時には芸能人や先生達のモノマネの練習までする。それから宿題をキチンと済ませておく事も忘れない、誰かが忘れた時にコソッと見せてあげるため。
 こうしてクラスを裏から回していても自分は凄いなんて思わない。逆だ、逆。私は猿回しの猿か、一時的に週刊誌に載るために離婚してヘアヌードを晒すおばさんタレントみたいなものだ。愚かな奴。笑われ役。クラスの子達は思わぬ行動に出る事もあるから、そもそも裏から回せてないし。だからいつも立ち回って、ツギハギだらけの芸とトークでごまかしている。でもそれで良い。あんな思いはしたくないから。
 正直、同小のクラスメイトが私をどう見ているか…ヨケイナオセワ! あんた達に迷惑なんかかけたか、なんて思う。
「キヨちゃん、何だってそんなに無理してるの? 昔はもっと真面目で…」
 相田百合が心配そうに聞いて来た事がいつかある。
「無理なんてしてないよ。皆と仲良くするのは楽しいから、好きでやってるんだ」
「何か今井さん、変わったね。昔は静かな人だったのに」
 川村純がそう言った事もある。
「そう? あんたもレイカちゃんやおユキちゃんと仲良くなって明るくなったんじゃない?」
 石松哲也と三宅洸太は取り敢えず関わらない。ウザがられてるのにギャグを連発する芸人志望と、一年生の時に学級崩壊の主要メンバーだったヤンキーだ。二人とも私にとっては不安要素なのだ。私の小学生時代の地味で目立たない過去を知っているから。いや、知られていても良い。邪魔にならなければそれで良い。
 クラスを良くするには円滑な人間関係、とりわけ女子達の関係をとにかく改善する事。男子はいつまでもおバカで単純だから女子がしっかり力を持って引っ張ってあげれば良い。そのためには女子達が仲良く楽しく、問題を未然に防ぎ、防ぎ切れない時には速やかかつ適切な対処。そのために笑われ役になるくらい朝飯前ではないけれど、私がやらなくてはならない。デブでブスで勉強も頑張ってまぁまぁな私には、皆を引っ張るようなカリスマだか何だかはないから。
 予鈴が鳴ると同時に男子達が携帯を確認する。あと五分で先生が来るぞ、アホ共。

 ___

戸塚佑太『三時には皆集まれそう?』
工藤仁平『オレは塾があるから十五分くらい遅れそう』
高山旬『僕も』
葉山健『ヒロとはじめも誘って良い? あ、俺は行くよ!』
戸塚佑太『ヒロくんとはじめくんも良いぞ』
野中務『俺は大丈夫だ』
津山浩樹『行く行く! 楽しみー』
戸塚佑太『ユタカ誘えるか?』
高山旬『一応声はかけてみる』
佐藤雅希『行く』
鈴木和也『はじめちゃん捕まえました〜。俺も参加しますよ』
山口大輔『行けるぞ』
江野健太『行くけど、バレないかな?』
森はじめ『行きます』
田村明仁『妹を迎えに行くから五時半には帰るが、行く』
戸塚佑太『多分バレない。そんときは一緒に怒られようぜ?』
本田ゆたか『行っていい?』
戸塚佑太『もち!』
石松哲也『俺も当然行くよ−!』
戸塚佑太『ちょ…お前何でいる? つーかパスワードどうして分かった?』
川村純『ごめん、おれ』
鈴木和也『絶対、絶対にギャグで他人に笑うのを強要しない事! バレたらオレまでお姉に怒られるんだよ!』
石松哲也『へいへい』
戸塚佑太『まぁ良い。なら良い。これで全員集合な』

 俺達はラインの男子の秘密のグループを作っています。二年四組のグループは別にありますが、男子だけのグループはここ。主にオトコ会の事で使います。
 テッちゃんの件で皆に怒られそうになりましたが、全員集合のようです。コウちゃんを除いて。コウちゃんとテッちゃんは皆から嫌われているようです。
 でも俺はテッちゃんとは小学生時代の六年間だけでなく、中一、中二と同じクラスになったので、義務教育の九年間を一緒に過ごす運命です(藻茶北二中では二年に上がる時にクラス替えがあったら、三年に上がる時はそのまま繰り上げだそうです)。コウちゃんとは五、六年生の二年間が、今井さんやユリちゃんとは中一の一年間が抜けただけです。
 さて、どこから話しましょうか。誰の話しから? まずは小学生の時のあの事件から?
 では話します。五年生の時ー…

 ………

「ははは! 哲也、マジウケる!」
「最高! 腹痛てぇ」
「ははは、おまえら笑い過ぎだって!」
 そう言いながらテッちゃんも笑っています。
「もう、やぁね、哲也のヤツ。ね、キヨちゃん」
「うん」
 ユリちゃんの呆れ笑いはどこか優しげで、控え目なキヨちゃんの笑いはどこか嬉しそうで、俺は幸せでした。
「ほら、早く席に着け。先生来るよ?」
 当時の委員長だった俺は皆を席に座らせようとします。
「うるせぇよ」
「うるさくねぇよ、早く座れ」
 マミ子さんです。マミ子さんは勉強がよくできて、女子達のグループのリーダーです。何度うるせぇと言われたか分かりません。
「私達は塾でやってるから学校で勉強しなくても良いんだよ」
「屁理屈言うなよ」
「良い子ぶるなよ」
「ぶってねぇよ」
 埒が明きません。
 そうこうしている間に京子先生がやって来ました。先生になって二年目の優しくて美人な先生です。
「ほら、早く席に着いて」
 優しく声をかけるとマミ子さんと取り巻きの女子三人は席には着きます。でもおしゃべりをすぐに始めます。いつもそうです。そもそも席決めを生徒達に自由にさせた時点で京子先生にも落ち度があったのだと、今なら思えます。
 マミ子さんのグループだけでなく、他の子達も皆騒ぎ出します。席には着いていても仲良し同士で集まっているのです、わざわざ立ち歩かなくても良いのです。おしゃべりし放題。ガヤガヤと賑やかに授業は進みます。それと裏腹に京子先生は小さな声で黒板に向かって何かを言って、書いて、そうして時間が流れて行きます。

 ………

「何ボケっとしてるの?」
 ユウタが声をかけてきました。
「いや、何でもないよ?」
 慌てて返しました。俺は急いで給食の食パンを噛んで飲み込んで、咽せそうになるので牛乳で流し込みます。灰田先生の方を見ます。お行儀良く給食を口に運んでいます。
 灰田先生は小学校と中学校の両方の教員免許を持っていて、六年の時の担任でした。当時流れた噂では、札付きのワルを矯正するために市の教育委員会が送り込んだ先生で、お陰でマミ子さん達も六年に上がると大人しくなりました。
 中一の時に荒れていた俺達の学年には、それぞれのクラス担任にワルを矯正するための特殊教員が置かれていると言う噂です。充分に有り得ます。
 灰田先生は給食時間のざわつきは大目に見てくれますが、授業はピリリと厳しく、とてもざわつくなんて出来ません。小柄な体格と美人ではないけれど可愛らしい外見(でも三十後半)とは裏腹に、雰囲気は凜としています。
「ユウタは昼は職員室に呼ばれてるんだよね」
 背中合わせのレイカが聞きます。
「いつもの雑務だよ」
 副とは言え学級委員なので様々な用事があるようです。ユウタは淡々と答えます。そして、俺に目で合図します。オトコ会の話しを詰めといてくれと給食前に耳打ちされていたので、その確認です。
 ユウタはミートボールシチューをかき込むと、トレーを持って立ち上がりました。じゃあな、と言いながら委員長と灰田先生と一緒に教室を出ます。
「ねえ、ジュン。今日は私とおユキと遊ぼうよ」
 本当はオトコ会の話しをしたかったんですが、仕方ありません。レイカには逆らわない方が良いのです。明仁くんに、ごめんね、と目線を送ります。仕方ないな、と言うような苦笑いが返って来ました。

 ___

 西田麗香と尾瀬由紀が川村純を連れて教室を出る。またか、と思う。川村純は小五の時にもいじめに遇っていた。
 助けない。助ける必要は、ない。いじめられているのが女子ならば何かと裏で動いて何とか手を尽くすけれど、相手が男子ならばその必要性はない。

 ………

 マミ子は女王様だった。勉強もスポーツも完璧にこなせる美人で、彼女の周りには取り巻きの女の子がいつもいた。同じ塾の女の子達だった。私は子分トリオなんて呼んでいて、皆私立の中学に行ったから名前なんて今となればどうでも良いから思い出せない。いや、初めから覚える気すらなかったのかも知れない。仮にA子、B子、C子とする(これから話す中でそれすら呼ぶ事もないかも知れないが)。
 川村純は小五当時、学級委員だった。ジャンケンで負けて押し付けられただけの委員長だった。
 だが、彼は妙な真面目さと責任感があった。私からすれば運悪く押し付けられただけなのだから適当にしていれば良いのにと思うが、彼は彼なりに学級経営をしてクラスを良くしようと頑張っていた。
 例えば、月曜日は毎朝早起きをして、学校林を歩き回って花を摘んで花束を作り、それを朝、花瓶にいける。金曜日の夕方には皆が帰った後の教室でクラス二十三人分全員の机と椅子を拭いてから帰る。当時の担任だった遠藤京子先生を訪ねて職員室に出向き、何か用事を探す。等、ザッと思い出しただけでも結構たくさんある。
 そう、遠藤先生だ。皆は京子先生なんて呼んでいたが、私は先生を下の名前で呼ぶ事に抵抗があり、ずっと苗字で呼んでいた。
 遠藤先生と川村純が事件の原因であり被害者であった。
 これは地味でブスでデブで、ギャグ化しないとキャラが立たない哀れな中学生が振り返る惨めな回想である。

 マミ子はお受験勉強とイイオンナである事に力を注がれた女子であった。彼女の母親はこんな田舎とは言え、全国的に名の知れた大企業に勤務している一人親で、マミ子も自身と同じになるように育てていたと知ったのは小学校を卒業する直前だ。今から振り返ると、だからなのか、と思うフシはいくつもあるが、後付けのようにも感じる。とにかくマミ子は完璧と言って良い子だった。
 小五のゴールデンウィーク明け、コンビニであるお姉さんを見かけた。綺麗な人だった。腰まで伸びた黒髪はサラサラとしていそうで、特別美人ではないが割と整った顔立ちに凜とした雰囲気の人だった。年はよく分からないが大人ではない年上、中学生か高校生か、ある意味年齢不詳な人だった。
 私は朝、学校に行く途中で消しゴムを買うためにコンビニに立ち寄った。そこで見かけたお姉さんに魅入ってしまった。だが、声をかけるなんて非常識過ぎてするはずもなく、彼女も見ず知らずの子豚ちゃんに声をかけられる事を望んでいる訳でもないだろう。そのまま消しゴムだけ買って学校に向かった。
 彼女がどんな人物かはすぐに判明した。マミ子がバカにしている、そして私が入学予定の藻茶北第二中学の生徒で、マミ子が通っている駅前の大手学習塾の中学クラスの人らしい。
「見た? 今朝、二丁目のセブンに出没したらしいよ、弟殺し」
「マジで? 超怖い」
「あれでしょ? 何でも雑誌読んでるフリしながら次に殺す子供を狙ってるって」
「今度は殺し損じないように綿密な計画を練ってるんだって」
「私見たよ、キヨちゃんがちょうどコンビニから出たとこでさ、そしたらいたんさ、弟殺し」
「次はキヨちゃんか、可哀想ー」
「間違って私達まで殺されないよね?」
「やぁだー、そうなったらキヨちゃんのせいじゃーん」
「とにかく、髪の長いあの女には注意ね」
「でも何で弟を殺して、次は別の子供を狙うの?」
「快楽殺人」
「何でも受験に失敗していじめに遭って、おかしくなったって。で、今は学校行ってないって。人生完全に終わったね。生きてて恥ずかしくないのかね」
 アホらしい。自分と関係のない人の噂でよくそんなに盛り上がれると思う。
「あ、京子来たよ」
「座って下さいだってさ」
「お前が座れよ」
 キャハハと言う悪意に満ちた笑い声が黄色く響いた。

 ………

 男子が女子の犠牲になるのは仕方のない事ではないのかも知れない。でも川村純は大丈夫。戸塚佑太が付いているから。戸塚佑太が側にいる時には西田麗香も尾瀬由紀も何もしない。だから質が悪いかも知れないが、川村純自身も身を守りたかったら戸塚佑太の側からできるだけ離れないか、他の人と何か用事をする振りをして西田麗香達から離れれば良い。私自身、川村純と同じ祭事委員だが、特に用事がないなら声をかけない。助け船は出さない。自分から助けを求められれば何か野暮用くらいは考えてやっても良いくらいには思う。
 だが、私はこのクラスの女王様である西田麗香には逆らわないと決めている。

 ___

「何で言わないの?」
 ユウタ以外には俺がレイカやおユキから何をされているか大体知れ渡ってます。
「だーい丈夫。ほら、お尻濡れただけだし。暑いからハーパンの方が良いし」
「俺達から言ってやるよ、ユウタに。あいつらユウタがいたら何にも出来ないだろ?」
「だから、大丈夫だって!」
 ホントは大丈夫なんかじゃないんです。はじめくんと和也くんの心配は当然なのです。
「じゃあさ、自分の口でやめろって言いなよ。じゃなきゃ僕達、委員長経由で佑太くんにチクるよ?」
 はじめくんの脅し、初めてです。普段は女子グループと一緒にいる事も多く、大人しく、朗らかなはじめくんとは思えません。心配してくれているのは分かりますが。
「だから大丈夫! だからやめろなんて言う必要なし!」
 俺は笑って見せました。自分でも悲しくなるくらい顔の筋肉が笑いを否定しようとピクピクしているのが分かります。頬を撫でる生ぬるい風さえも、お前は無理をしている、と言っているような気がします。だから校舎裏にいるのが嫌にやります。だから走って立ち去ります。それに、泥だらけのズボンも着替えたいですし。

 ………

 マミ子さんが俺の教科書や筆箱をゴミ箱に捨てたり、机にエロい落書きをしたりするようになっても京子先生は何もしてくれませんでした。誰もその現場を見ていないので決め付ける事はできない、との事で、学級会でも取り上げてくれませんでした。お父さんやお母さんには言えませんでした。こんな事をされているのがカッコ悪くて、情けなくて、ささやかなプライドを守っているつもりでした。それに、特にお父さんは女子にいじめられているなんて知ったら何と思うか…。
 でもそれがいけませんでした。
 俺へのいじめと平行して京子先生へのいじめは行われていました。同時進行とは器用なものです。勉強や他の習い事も同時進行なのだから、マミ子さんは侮れない人です。
 俺は毎週月曜日の朝に摘んで来た花を教室の後ろのロッカーの上の花瓶にいけていたのですが、それが先生の机の上に置かれるようになりました。これは中学に入ってから分かったのですが、亡くなった人の席に花を飾る、それを模した嫌がらせだそうです。犯人はきっとマミ子さん。でも、当時何も知らなかった俺は、先生は花が好きだからそうしたのだと、先生の机に花をいけるようにしました。それについて誰も何も言いませんでした。京子先生は花を見て、黙ってそれを机の角に移動させるのでした。
 俺は小五の一学期は、マミ子さんに言い返しながら、更に取り巻き三人衆(名前は思い出せません)とマミ子さんの四人に言い返されるのです。そもそも屁理屈でも口が達者な女子には叶わないんですけどね。

 テッちゃんの話しをしましょうか。
 テッちゃんは今でこそつまらないまとか、ウケないとか、寒いとか、イタい子とか、空気読めないとか、滑ってるとか、ギャグがストレスを与えるとか、アホとか、金属バットで殴りたいとか、やっぱりアホとか…その他諸々、散々に言われていますが、小学生の時は皆を笑わせていました。
 いつも皆の中心にいて、周りに皆が集まって来て、皆を笑わせて、テッちゃん自身もよく笑っていました。いいえ、違います。テッちゃんが笑うと皆笑うんです。正直、ギャグが面白いかつまらないかは関係なかったと思います。テッちゃんだから面白い、だったんのです。
 低学年の頃から皆の中心人物だったテッちゃんは、今で言うとユウタのポジションに近かったと思います。
 テッちゃんがつまらなくなった理由、笑わせる事が出来なくなった理由、それにもマミ子さんが関わっていたように今なら思えます。
 マミ子さん達に言われまくって俺が落ち込んでいるある日の事でした。毎週金曜日は皆の机と椅子を綺麗にしてから帰るようにしています。自分の机は特に毎日綺麗にしていました。自分だけ特別に…ではありません。マミ子さんや取り巻きが犯人と『思われる』落書きがひどかったのです。油性マジックとか使われるんですよ? され始めた時は泣きそうになるのを堪えて拭き取っていたのも、いつしか淡々と拭き取り作業だけできるようになりました。とは言え、その日はけちょんけちょんに言われまくった後だったので、久し振りに泣きそうでした。
「よう、ジュン」
 そう言って肩を叩かれて振り返ると、眉をハの字にして黒目を中央に寄せ、鼻の穴をめいっぱい膨らませてすぼめた唇から舌先を突き出したテッちゃんが、ズボンとパンツを膝までずらして立っていました。だから不覚にもプッと吹き出してしまいました。
「泣いたカラスがもう笑った」
「泣いてねぇよ、早くチンコしまえよ」
 俺もテッちゃんもあはは、と声を上げながら笑い合って言いました。声をあげて笑ったのは久し振りな気がしました。
 ひとしきり笑った後、テッちゃんは椅子を引くと、座れよ、と指さしました。
「ごめんな、マミ子達の事、いつも助けてやれなくて」
 テッちゃんは寂しそうに言いました。そう言うと、俺の手から雑巾を引ったくって俺の机を拭き始めました。薄くなってはいましたが、裸の男女が抱き合っていて、男にはジュン、女には京子、と矢印がしてありました。それをゴシゴシと拭いているテッちゃんの真剣な横顔を見ていると、また泣きそうになっていた顔に戻ってしまいます。
「ほら、何泣いてんだよ?」
「だから、泣いてねぇし」
 そう言って涙を抑え付けるように顔を横に振ると、小さく言いました。
「ありがと」
 テッちゃんはその後は黙って机を拭いてくれました。

 ………

 パンツまで泥水が染み込んでいたので、トイレで体操着のハーフパンツに履き替えました。下着を着けずに汗臭いハーパンは気持ち悪い気もしましたが、濡れた物を履き続けるよりマシだと自分に言い聞かせました。ついでにズボンについた泥も水で流しておく事にします。
 中途半端に冷たい水でズボンを流しながらゴシゴシ擦っていると、小五の一学期を思い出します。机に書かれた落書きを毎日のように拭いて消していました。テッちゃんが消すのを手伝ってくれたから、俺は休まずに通学し続けていられたのかな、なんて思います。今のテッちゃんは…
「大丈夫?」
 顔を上げると、健くんがトイレの出入り口に立っていました。少しだけ悲しそうな顔に見えたので、歯を見せて笑い返しました。
「あのさ、ずっと気になってるんだけど、何であんな事されてまで西田さん達と一緒にいる訳?」
 口調はつまらなさそうな、不満そうなものでした。
「あんな事って?」
「質問に答えてよ。答えたくないんなら良いけど。
 まあ良いや。ジュンが色々されてる事、自分から言わないんなら、俺達の誰かがユウタにチクるから。放課後までは待つ。それまでに答えを出して」
 頭が真っ白になって、お腹の底から胸に冷たいものが湧き上がって来ました。
「ちょっと…勝手な事はやめてよ! それに俺達って、誰かと一緒にしてるの?」
「俺はジュンの質問に答えるようには言われてない。伝えるように言われただけ。じゃあな」
 健くんはそう言うとくるりと背を向けて、行ってしまいました。中途半端に冷たい水を流しっぱなしにしながら、俺は呆然としていました。それから生ぬるい空気を突き抜くように予鈴が鳴るまで、どのくらいの時間が経ったのでしょうか。

 ___

 コメントへ続く。

コメント(24)

 被害者は川村純、十三歳、男子。校舎裏に西田麗香と尾瀬由紀に呼び出され、水たまりに突き飛ばされて尻もちを着いた。西田麗香と尾瀬由紀は時々、戸塚佑太のいない時に校舎や体育館の裏に川村純を呼び出し、暴行と暴言を繰り返していた。
 知っている。三年前に正論で言い返したらいじめが酷くなった事で間違った学習をしたのだろう。やられっ放しになる事で、今回も悪化させている。頭の悪い奴だと思う。
「どうしたの、そのズボン。濡れてるみたいだけど」
「転んで尻もち着いちゃってさ、汚れたから洗ったんだ」
 知らないのは戸塚佑太だけ。川村純はヘラヘラ笑いながら答えるだけ。私はできるだけ見ないようにするだけ。
「今井ちゃん、川村くんの事なんだけど…」
 給食を食べ終えた頃、村上真理子と宅間ひかるに声をかけられた。彼女達のグループにはあともう一人、戸田香織がいるのだが給食委員なので片付けの為に動いていたので、二人で声をかけて来た。
「今井ちゃん、同小だし同じ祭事委員だよね」
 村上真理子は淡々と言った。吹奏楽部で肺活量はありそうだが、普段は声が小さい。今日もいつも通りの音量だ。
「うん、何か川村くんに用事?」
 ある程度の伝言くらいならやってあげても良い。しかし用件は伝言やお使いの類いではないようで、村上真理子の表情が引き締まる。
「知ってるよね、西田さん達の事」
 いじめの件か。
「えっと…よく分からないけど」
 私は少しだけ笑いながらとぼけて見せた。
「嘘。知ってるよね。西田さんと尾瀬さんが川村くんをいじめている事」
 宅間ひかるは西田麗香と尾瀬由紀が教室から出て行ったのを確認してから行った。川村純も連れて行かれている。
「ダイ小って一クラスしかないから六年間一緒だったんでしょ? なのに何で今井ちゃんってそんなに冷たいの?」
 ダイ小、私の出身の小学校は高の丘台小学校、略してダイ小。少子化の影響をモロに受け、私の学年は二十三人しかいなかった。宅間ひかるの声は柔らかいが、言い方には明らかに私への不満がこもっている。
「でも私、元々そんなに仲良くないし」
 それが今の私に言える精一杯だった。しらばっくれられそうには、到底ない。それに元より、本当に川村純とは仲良くなかった。
「とにかく、皆動いてるから、今井ちゃんもやれる事があったら協力して」
 曖昧に笑って頷いたが、私にできる事など多分、ない。
 どうしよう…。今までグループに属さず、様々な女子と仲良くして、男子とは挨拶程度。誰かから嫌われたりはしていないと思うが、孤立した時に助けてもらえるかどうかは微妙だ。
 でも、ある程度の覚悟はしていた。いつこんな日が来てもおかしくはなかった。所詮は焼き付け刃。クラスの分解。また起こってしまうのか、私がいる限りは守り抜くつもりだったのに…。

 ………

 その日は突然やって来た。一学期の最後の日、終業式も終わり、帰りのホームルームで事件は起こった。
「きゃははは、つまんねぇ」
 マミ子が黄色い声をあげた。むわっとする七月の教室には一際響いた。
「マミちゃん、マミちゃん。京子、来たよ」
 子分の一人がマミ子に慌てたように言う。
「はぁ? 知らないよ。ほっとけよ」
 マミ子は鼻で嘲った。だが、遠藤先生の雰囲気はいつもと違った。口元には笑いを浮かべていたが、目は血走って笑っていない、異様な空気を漂わせていた。
「何だよ?」
 マミ子はいつも通り強気に返した。いつも通り、見下したような軽い態度だ。
「そんなにつまらないんなら、楽しい事をしましょう」
 遠藤先生の声はマミ子の生意気な態度を一瞬で振り払った。マミ子は驚いただろう、突然自分のペースを乱されたのだ。狼狽えている。更に狼狽えているのは子分トリオだった。彼女達はその場に固まって怯えを隠し切れていない。
「何だよ、あっち行け!」
 マミ子はいつも以上に反抗的だった。声が少し震えているが、強気に言い放った。しかし、遠藤先生は異様な笑いを浮かべたままだった。そして、マミ子の手首を掴んだ。
「痛い! 放せ! 痛い痛い痛い!」
 マミ子の喚き声が教室のくすんだ壁にぶつかってはこだましかけて、消えていった。
「楽しい事をしましょうね」
 遠藤先生はきっぱりとそう言うと、マミ子の手を引いて、大股で歩き出した。マミ子の座っていた椅子がガチャンと音を立ててタイルの上に倒れた。マミ子は相変わらず放せとか、痛いとか、訴えてやるとか、ババアとか喚きながら繋がれた手を振り解こうと暴れていたが、遠藤先生は表情を変えずに歩き出した。向かっているのは窓辺だ。風を入れるために空けている。遠藤先生はマミ子の手を握ったまま窓へよじ登った。
「あああああーっ!!」
 マミ子の喚き声はもう言葉になってはいなかった。走り出して遠藤先生から離れようとしていた。しかし、大人が本気を出したら子供の力では叶うはずなどない。マミ子はバタバタと動き回っては床に膝を着き、引きずられた。私達はそれをただ黙ってみているだけしか出来なかった。何がどうなっているのか、その場では分からなかった。これは回想だから、こうして整理して思い出せるだけなのだ。
 遠藤先生は泣き喚いて床にしがみつこうとしてもがいて、顔も涙と恐怖でぐちゃぐちゃになったマミ子を見て、ニタリと心底嬉しそうに笑った。嫌な笑顔だったが、とても幸せそうだった。そして、窓の外に向かって飛んだ。いつもは肩の辺りでまっすぐに揃っている遠藤先生の艶やかな黒髪が宙に躍り出し、青白い顔はニタニタ笑いを続け、手はマミ子から放れずに強く握りしめたままだった。マミ子の体がふわりと浮き上がって、外に引きずり出されようとしていた。全てがスローモーションのようにゆっくりだった、走り出した私自身の動きでさえも。
 私は、マミ子の先生に繫がれていない方の手を取ると、有りっ丈の体重をかけて引っ張った。身長は標準的な小学五年生でも体重は大人並みにある私と、身長は標準的な大人でも痩せている遠藤先生、それに加えて外に引きずり出されるのを拒んで逆方向にもがきながら進もうとするマミ子、今から考えれば勝敗は簡単に分かる。遠藤先生は手を放してしまい、私とマミ子は夏だと言うのにやけに薄ら寒いタイルの上に転がった。その冷たさは今でも覚えている。目を見開き、ニヤニヤ笑いをやめて私の顔を見た遠藤先生が一瞬にして窓から見える景色から消えたのも覚えている。
 ガサッと音がした。次の瞬間、女の金切り声が窓の外、下の方から響いて来た。その声の主が遠藤先生だと気付くまで少し時間がかかった。マミ子は声を出さずに汚い顔を床にこすりつけながら泣いていた。
「裏切られた! 裏切られた! お前達は全員裏切り者だ!」
 遠藤先生の金切り声がいつまでも耳に残った。
 ………

 午後の授業が始まろうとしている。放課後は、必ず来る。

 ___

 放課後になりました。まさかユウタにレイカとおユキからいじめられているなんて言える訳もなく、とうとうこの時間を迎えました。
 逃げます! 部活に行こう、行きましょう! 俺の所属する応援部には怖い先輩が沢山います。その人達をいればきっと皆追い払われてくれるはずです。
「部活には行かなくて良いから。副会長にはいってある。俺達、副会長を黙らせるコネがあるから」
 足早に荷物をまとめてバックレようとしたら、健くんが目の前に立ちふさがりました。どんなコネなんですか、逆に怖いですが。その脇で、乱用したら俺が怒られる、とか泣きそうになっている和也くんも気になるのですが。(因みに生徒会の副会長は応援部の副部長でもあります)
 見渡すと、教室にはクラスのほぼ全員がいます。皆、帰るつもりはないようです。レイカとおユキはふんぞり返って腕を組んでこっちを睨んでいます。俺の学校生活はどうなるのでしょうか。
 委員長が教壇に上がりました。まさか、クラス全員巻き込んで何かを始めるのでしょうか。
「話しは戸塚くんにもう通してあります。事実確認だけしましょう」
 委員長の声が教室に響きました。
「ほら、早く座れ、真ん中の席だ」
 クラスで一番体が大きな明仁くんが背中を押します。逆らうなんて出来ません。
「川村くん、あなたは西田さんと尾瀬さんにいじめを受けましたね?」
「はあ? そんなんしてないよ!」
 委員長の質問にはレイカが代わりに答えました。
「これでも?」
 黒板にはいつの間にか白い紙が貼られています。少し離れた席にはいつの間にか映写機とノートパソコンが置いてあり、旬くんがカタカタと操作していました。
『はい、どーん! あんた臭いから泥水で洗った方が良いよ?』
 今日の昼休みに校舎裏で、水たまりに突き飛ばされた時の映像でした。突き飛ばしたレイカ、指差して笑っているおユキ、水たまりに尻餅をついて飛沫を上げた俺が白い紙に映されています。音声までバッチリです。
『あれ? 靴、汚れてるんじゃない?』
 スニーカーに泥が目一杯詰められた俺、それを笑いながら覗き込むレイカとおユキが映し出されます。俺は困り顔でヘラヘラしています。もうやめて!
『おお、意外とでかいけど皮かむってんじゃん。だから臭いんだね、あんた』
 男子トイレにて、小を足している俺を覗き込みながらニヤニヤしているレイカ、用を足している俺の大事な部分を携帯で撮影しているおユキが映し出されます。俺は顔を赤くしながら…もうやめて下さい!
「他にもあるけど」
 委員長、あなた何でそんな「(休憩時間とかに)ビスケット食べる?」的な口調なんですか?
 一方、後ろを振り返ると、レイカは気を付けの姿勢のまま拳を握って歯を食いしばっていましたが、おユキは床にへたり込んで両手で顔を覆っていました。しゃくり上げているので泣いているように見えます。
 因みに泣いているのはおユキだけではないようでした。少なくても桃井さんと宅間さん、村上さん、新川さんは泣いていました。
「俺は携帯に送ってもらってもう知ってるよ」
 ユウタが言いました。
「誰だよ、こんなの盗撮した奴? 委員長に言われてやったんならショーテンガイズ? それとも竹山さんや山根さん?」
 レイカは震える声で言いました。
「委員長の指示じゃない。委員長は相談を受けて、さっきの証拠を見せられて、この場を設けただけだ。あの動画は一人が撮ったんじゃない。誰がかは言わん」
「答えになってないじゃん! 何で私達がこんな事…」
「じゃあ、何でジュンがあんな事されてんだ!?」
 ユウタの声が響きます。ユウタは声変わりが終わっているので、低く重く教室内に轟きました。
「ジュン、お前はどうなんだ? お前がどう言う気持ちであんな事をされていたのか話して欲しい。俺達はレイカとユキにそんな事はやめさせる。ここにいる皆はお前の味方だ」
 ユウタの大きな手が俺の肩に置かれました。俺の気持ち? 自分でも何て言って良いかなんて分かりません。やめさせる? そんな事頼みましたっけ? 本当なら死ぬ程嬉しいセリフと態度ですが、俺の本当の気持ちって何ですか? 分かりません。みんな、こっちを見ないで。
 明仁くんの肩に一瞬、白い鳥が見えたような気がしました。鳥と目が合った瞬間、頭の中でカチャっと音がしました。息を吸い込みます。足に力を込めます。ユウタの手を振り払います。
「にゃあああーーーっ!!」
 自然と声が出ました。走り出します。
「にゃあっ!?」
 誰かの声がしました。構わず教室を飛び出します。廊下を走るのは小学生以来です。風が気持ち良いです。もうどうでも良いのです。雅希くんか務くんかユウタなら俺より足が早いから追い付くでしょう。そんな事すらもどうでも良いのです。このまま終わってくれれば良いのです。いっそ頭にタライでも落ちてくれれば良いのです。
 ぐわあーんと音がして、頭に衝撃が走り、廊下に前のめりに倒れました。目の前に金ダライが落ちまし…

 ………

 テッちゃんが手を引いて京子先生しかいない教室に連れて来てくれました。
「あなた達、終業式は?」
 戸惑ったように先生は聞きました。
「お腹が痛くなって保健室に行こうと思ったら何故かここに来てしまいました」
 かなり無理のある言い訳です。ちなみにテッちゃんはお腹が痛いから保健室に付き添って欲しいと俺に頼みましたが、終業式が行われている体育館を出ると、俺の手を掴んでいきなり走り出したのでした。
「お腹はもう直りました。先生、ジュンがマミ子達に何をされてるか知ってますよね?」
「机の落書きの事? あれは証拠がないから万人が誰かなんて…」
「このままじゃジュンは潰れてしまいます。早くマミ子達にやめるように言って下さい。マミ子達の親にチクっても良いです。そうしないと…」
「もうやめて!」
 京子先生は手でした耳を塞いで下を向いてしまいました。それでもテッちゃんはやめません。
「ジュンは登校拒否もできないんです。お父さんが厳しいから。先生の力が必要なんです、先生は大人でしょ? 大人の力が必要なんです!」
「大人にもどうにも出来ない事があるの。もうそっとしておいて! 私は二学期からは学校に来ない。マミ子の親みたいなめちゃくちゃなババアも、そのめちゃくちゃな子供も、全部嫌になったよ!」
 マミ子さんのお母さんがモンスターペアレントと言われる人種である事を、俺達は夏休みの初日に知らされる事となります。でも、俺達はまだその時はそんな事は知りませんでしたし、今から考えても京子先生は間違っている気がします。
 その場では、俺達は立ち尽くすだけしか出来ませんでした。それは京子先生がマミ子さんの手を引いて窓から飛び降りようとする一時間前の出来事でした。

 ………
 小学五年生の夏休みは出足から躓いた感がひどかったなぁ、だって担任が窓から生徒を道連れに飛び降りようとしたし、モンペのババアがクラス全員の家を回って、うちのマミちゃんがぁって喚き散らしてたし、お父さんには女子にいじめられてたのがバレて散々情けないとか怒鳴られて、お母さん泣くし…。二学期は更に酷かったかも。キヨちゃんが突然ギャグキャラになるわテッちゃんのギャグが滑りまくってるわで、皆マジ人格崩壊したかとか思ったわ。さて、起きなくてはいけませんな。あれ? 今、何時? ここは家? 学校?

 誰かの話し声と笑い声が聞こえました。薄いクリーム色のカーテンは外から入ってくる光りを柔らかく透かして通していました。安物のシーツは洗濯糊が効いていて少し堅い気もしますが、どこか安心感のある触り心地でした。そして、俺は頭に軽い痛みを感じていました。
「目が覚めた?」
 坊主に近い程に髪を短くした男子中学生が話しかけて来ました。
「ジュンは突然、叫んで走り出して、廊下で頭にダライが落ちて気を失って、俺達に保健室に運ばれたんだ」
 そうです。俺は小学五年生ではなく中学二年生で、この子は同級生の健くんです。タライのぶつかった跡とは違う頭痛がして来ました。
「で、俺とカズとはじめでここまで運んで付き添ってる。ユタカも一緒にいて、交替でジュンの様子を見ながら、ダベりながら…まぁ、そう言う訳だ」
 そうでした。俺はまたいじめに遭って、それがクラス全員にバレていたらしく、レイカとおユキの公開処刑(笑)があって、そこから逃げようとしたのでした。そして何故かタライが頭に落ちてきた。
「おっ、目が覚めたじゃん」
「良かった良かった」
「大した事はないとは思うけど、最近タライが頭に落ちて来る事件が増えてるから気を付けなさいね」
 和也くんとはじめくんが安堵の表情で顔を覗かせ、保健室の先生がベッドのカーテンを開けながら言います。…タライが頭に落ちる事件が増えている?
 健くんは立ち上がると、和也くんやはじめくんと一緒にカーテンの向こうに行ってしまいました。先生はそっとカーテンを引きます。
「色々と大変だったみたいだね」
 眼鏡をかけたベテランの先生が言います。
「さてと、ここには色んな生徒が来る。体調の悪い子やケガをした子以外にも遊びに来るだけの子もいる。君は気を失って運ばれて来た」
「はい」
「その前に色んな事があったそうだけど、私は君を連れて来たあの子達から聞いた断片的な事しか知らない。さて、どうする? 話すだけでも楽になるとは言うけれど、話すか黙っているかは君次第。きっと私は聴くだけしか出来ない」
 先生はふっと笑いました。柔らかくて、少しだけユウタと一緒にいる時のような温かみを感じました。
「大丈夫です。他の人が聞いていても。でも、どこからどう話して良いか…」
「焦らなくて良いんだ。上手く伝える必要もない」
「健くん達もいてもらっていいまですか?」
「良いよ」
 健くん達は若先生と何やら談笑していました(この中学の保健室はベテランと若い先生の二人がいます)。ベテラン先生がカーテンを開いて手招きします。健くん、和也くん、はじめくんの他にユタカくんもいます。彼は確か保健室登校をしていたな、と思い出しました。
 健くん達は小五の時に俺達に何があったかは、大雑把には知っていたようです。当時の担任の先生と俺をいじめていた子がいた、先生がそのいじめっ子と窓から飛び降りようとする事件が起きた事、です。でも、俺の中ではそんな単純な事ではなく、コウちゃんやテッちゃんの事も知って欲しくて…
「さて、どこから話しましょうか。誰の話しから? まずは小学生の時のあの事件から?
 では話します。五年生の時ー…」
 ___

 唐突に叫んで走り出した川村純を見て、一瞬遠藤京子が窓から崎田真美子と飛び降り未遂(結局ひとりだけ落ちた)を起こした時の映像が脳裏に浮かんで、消えた。
「お願い、追って」
 相田百合が葉山健と森はじめの背中を押す。二人が走り出すと、条件反射のように鈴木和也も後を追った。
「お…おうよ!」
「うん!」
「置いてくな!」
 声は聞こえなかったが委員長の唇が動いた。
「ナイス人選かも」
 多分、そう言った。
 相田百合は私の方に歩いて来た。
「今井ちゃん、いや、キヨちゃん」
 相田百合は何故か私の事を呼び直した。
「ダイ小の皆は知ってる。他の子達の中にも気付いている子もいる。キヨちゃんのお笑いキャラは虚像だって。そうしないと、キヨちゃんは皆を守れないと思ってるから。自分が笑われ役になって平和にクラスを回せば五年生の時みたいな事は起きないと思ったから。でも、やっぱり起きたよ。ジュンくんが何されたか分かったでしょ、ちゃんと。だから、話してあげて。皆には大体の内容は話してあるけど、キヨちゃんからちゃんと、キヨちゃんの言葉で伝えないと、何も解決しないって思う。だって、なら…何であの時、マミちゃんの手を引っ張って助けたの?」
 何を言いたいのか分からない、ただ相田百合が一生懸命なのだけは分かった。
「小五の時に何があったか伝えればこの件が解決するとは思わないけど、話すよ。普段のキャラもへったくれもない、胸糞悪い話しだけど、ちゃんと聞いてよね。
 これは地味でブスでデブで、ギャグ化しないとキャラが立たない哀れな中学生が振り返る惨めな回想である」

 ………
 遠藤先生はほぼ無事だった。死んだり重症を負ったりはせず、少なくとも身体的にはほぼ無事だった。飛び降りたのが二階からだった事、落ちた先に花壇があって植え込みがあったのでクッションになった事、などが要因と聞かされた。植え込みの枝で腕にかすり傷を負うなど小さなケガはしたため『ほぼ無事』と言う表現を使う事とする。
 翌日、夏休み初日だと言うのにクラス全員が教室に呼び出された。教壇には校長と怒り狂ったマミ子の母親が立った。そしてマミ子の母親は喚き散らした。いかにマミ子が素晴らしい子で、それを産んで育てた自分は更に素晴らしく、それに比べて私達がいかに劣っているか、遠藤先生と共犯になってマミ子をいじめていたと言うストーリーを支離滅裂に語った。
 だが、それも二日後には覆された。他の児童の親達と教職員、更には教育委員会までが調査を開始したのだ。私は同じ質問に同じ答えを何度も返した。こうして、マミ子と子分トリオの悪事は明るみになり、 マミ子の母親は黙らざるを得なくなった。
 私は二学期に向けて動き出していた。窓から落ちる遠藤先生の顔と落ちた後の金切り声がいつまでも頭から離れなかった。そして、クラスメイト達の悲しみとか辛さとか、そう言った感情まで引きずってしまっていた。
 夏休みに入ってから、石松哲也がつまらなくなったと聞く。何を言っても皆を笑わせていたはずの彼なのに。登校日に彼を見て、私は何となく分かってしまった。石松哲也は無理をして皆を笑わせようとしている。
 この一連の騒動の中で皆の心には大きな傷跡が出来ていた。だから、皆は笑わなくなってしまった。いつも皆を笑わせていた石松哲也は、ならば自分が笑わせるしかないと思ったのだろう。だから無理をしてでも体を張ってでも、ウケを狙いに行った。だが心に傷を負った子供に、それは空気の読めない行動、もしくは石松哲也の真意を汲み取ったとしても、とても笑える状況ではなかった。石松は小五の夏を境につまらないギャグを飛ばす空気の読めない奴になり、それは中学に入ってからもエスカレートの一途を辿った。
 私は小五の夏休み、ならば私が笑われようと思った。マミ子達の暴走は女子グループの、彼女達が浮いていた事にあった。男子達は中学受験組と一般公立校組にさほど温度差はなく、休み時間にはアホな事でふざけ合っていた。しかし、女子の受験組はそうは行っていなかった。
 受験組の中で一番気が強く、一番影響力も発言力もあるマミ子が一般公立校に行く子達を否定するように母親から教育されていた事が原因だと思う。そして、そのような女子は自立を受験する以外の要素でもいくらかはいる事を認識した。例えば学習塾で、他校の女子で容姿が優れている子がいて、その子の周りにはお洒落な女子が取り巻きになっていて、ダサい子達をバカにしていた。また、街で見かけた小学生から高校生まで、女子を観察していると、彼女達の中に、排他的な女王がいる事に気付いた。女王を頂点に厳しい上下関係を無意識に刷り込まれ、その中で誰かを生け贄にする事で女王は立場を保っている事も分かった。
 そう、マミ子や西田麗香のように。
 ならばどうするか。ある意味、そのピラミッドはバランスを保つためにも必要なものにも思えた。ならば、その中で女王の暴走を事前に食い止めれば良いと思った。そのためには女子の関係の改善、円滑化が必要だ。
 だから私はギャグキャラになった。デブでブスだけど明るく図太く、面白く。クラスの女子達の間に入って笑わせて、笑われて、それであんな悲劇が二度と起こらなければ良いと思った。結果的に起こってしまったが。
 女子グループを管理するための秘密のノートまで作った。クラス全員のプロフと関係を書いて、線で繋いだり囲ったり、何度も書き直した。
 小六と中一の時はそれで何とかなった。私の所属していた一年四組は一組が荒れていた時も無事だった。でも、二年に上がってから、川村純が西田麗香と尾瀬由紀にいじめを受けるようになり、恐れていた事が起きたと思った。
 男子は単純だし基本的に粗暴な部分があるから、多少のいじめや暴力があっても後を引きずらないのでクラスの平和を乱す事はない。クラスの善し悪しは女子が握っているのだ。だが、女子が男子をいじめた場合、これはマズい。でも、川村純なら大丈夫だと思っていた。戸塚佑太が守ってくれるからだ。戸塚佑太は西田麗香にも発言力があるし、だから西田麗香も戸塚佑太の言う事には反発しにくいのだ。マミ子に言いくるめられて川村純を守り切れない石松哲也とは違う。しかし、川村純は戸塚佑太に助けを求めなかった。だから悪化した。
 でも、一番悪いのは私だ。ずっと分かっていた。
 川村純も遠藤先生の件では傷付いていたし、マミ子にも傷付けられていた。それに川村純の父親は、男らしく逞しく川村純を育てようとしていた。マミ子の件でも、被害者だった川村純を叱り飛ばしたと聞いた事がある。だから、川村純は自分が我慢して表に出さなければ良いと思い込んでいた。私はそれを知りながら悪化させていたのだ。

 ………

「ジュンの親父さんが厳しいのは知ってたよ。でも、そんないじめに遭ってて、そんな事になってたなんて…」
 戸塚佑太が力なく言った。
「あと、あんたが尾瀬さんと付き合ってるから。自分の彼女が自分の友達をいじめたりなんて、あんたが傷付くような事は言いたくなかったんだよ」
 相田百合が毅然とした態度で言い放った。
「西田さんと尾瀬さんがジュンくんをいじめた理由にしたって、あんたが尾瀬さんよりジュンくんを優先させるのが気に食わないから、尾瀬さんがジュンくんをあんたから離れさせるため。それがどうして西田さんまであんなに調子に乗ったのか、まあ、これから時間はかかっても良いから解明して解決策を出したい。
 それから西田さん達は何か勘違いしてそうだから教えてあげる。この集まりを企画したのは私。委員長でもショーテンガイズでもない。
 私も京子先生の事でキヨちゃんもジュンくんもテッちゃんもコウちゃんも、他のクラスに散らばったダイ小だった皆、傷付いていたのは知っていた。そりゃそうだよね。担任とクラスメイトがいじめられた挙げ句、飛び降り騒動。ああ、もう、同じ話しばっか。
 私、ここでまたジュンくんが我慢してれば…ってのが見ていられなかった。守りたくても守ってあげられない自分は、結局自分が可愛くてジュンくんの代わりにいじめられるのが嫌な最低な奴なんだって思い知らされた。テッちゃんは男子にもハブられ気味だったから知らなかったし。だからテッちゃんに話したら、俺が公開処刑してやるって。バカでしょ? いつまで経っても小学生のまんまなんだから。でも、私もバカでも何でも良いからジュンくんを守りたかった。だから、今回の公開処刑を押し通したのさ。
 戸塚くん以外は皆知ってたり、勘付いたりしてたからね、ジュンくんのいじめの事。だから、それを解決するためって、クラスの皆に動いてもらった。裏から証拠となる映像を携帯で隠れて撮影してもらったり、いつ、どこでってのも明確に記してね。この二週間くらいで出るわ、出るわ、証拠の山。他にも靴に泥詰めたり、鞄にガム入れたり、体操服の袋にエロ本入れたり、その現場をばっちり押さえてある。あなた達、皆が黙ってると思ってそんなにコソコソしてはなかったでしょ? クラス全員が二人が行っていたいじめの証拠を握ってる。言い逃れなんかさせない」
 そこまで言うと相田百合はふぅ、と、息を吐いた。
「私達をどうする気?」
 西田麗香は相田百合を睨みつけた。
「どうもしない。あなた達をこれからいじめるなんてせこい真似はしない。でもいじめはしないって約束して謝ってもらう。じゃなきゃ、職員室と二人の親に証拠を持ち込む」
「これで満足? もうジュンはいじめない。ジュンにも謝る」
 明らかに不満そうだが、西田麗香は確かにそう言った。横でへたり込んでいた尾瀬由紀はしゃくり上げていたが、頭を上下に降って頷いていた。
「尾瀬さんも同意したとみなします。ここにいる全員が証人だからね」
 相田百合はにっこり笑うと、膝を床について尾瀬由紀に手を差し出した。尾瀬由紀の手を取ると立たせ、ポケットからハンカチを出す。
「私、二枚持ち歩いてるの。未使用だから良ければ使って」
 尾瀬由紀はハンカチで涙を拭いた。
「俺、親友だと思ってたのにジュンの事、何も分かってなかった。ジュンの側にいてあげたい。俺も探しに行く」
 戸塚佑太が呟くように言った。
「探さなくても大丈夫。さっき今井さんが話してる時、廊下で音がしてさ、ジュンくんタライが頭にぶつかって倒れて、タケ達が保健室に運ぶって」
 津山浩樹が答えた。小学生が中学の制服を着ているように見える男子だ。
「タライ!? 何でまた…。いや、俺も保健室行くよ」
 相田百合が戸塚佑太のシャツの裾を掴む。
「だから、大丈夫だって。あの三人に任せれば。いや、本田くんも保健室にいるかも…。ならより良いんだけど」
「どう言う事?」
「キヨちゃんがクラスの関係を詳細に示したノートを作ってるって言ったでしょ? 実は委員長もクラス全員のプロフ、データによるまとめてるんだよね。それ見せてもらっちゃった。そしたらジュンくんの側に着いててあげて、吐き出させるのに適切なのがショーテンガイズの男の子メンバーなんだよ」
 委員長はパソコンの前の席を高山旬と変わった。
「ほら、見て」
「葉山健。保健委員…」
「じゃなくて、兄弟構成のとこ」
 私も戸塚佑太の横に並んで、委員長の後ろからパソコンを覗き込む。
「あ、分かった」
 私は呟いた。
 川村純は木工所を経営する両親の元に長男として生まれた。上には二人の姉がいる。待望の跡取り息子として父親は川村純を厳しく男らしく育てようとした。しかし、気が強く勉強もスポーツも出来る姉に比べ、勉強も中の下、スポーツも人並みで、どちらかと言うと大人しい。少なくとも女子につけ込まれていじめられる程度には。
「健にも和也にも勉強ができて気が強い姉ちゃんがいる。はじめは女子的な行動を…」
 相田百合は戸塚佑太に続ける。
「弟に威張り散らしてるあんたとは対照的にね」
 ___

 一通り話し終えて、お父さんには女子にいじめられたなんて言えない事を話しました。四人ともベッドを取り囲んで丸椅子に座って黙って聞いてました。先生達は机で何やらお仕事をしています。
「男は強くなきゃだめなんだ、ユウタみたいに。少なくともお父さんはそう思ってる。勉強もスポーツもお姉ちゃん達に勝てないからせめてそこだけでも応えたいんだ」
 和也くんが口を開きました。
「何か、分かる。家の親はそこまでは言わないけど、俺もお姉ちゃん優秀だから。サッカーもさ、俺が小さい頃に相手してくれてただけなのにお姉ちゃんの方が上手いんだ。俺、未だに抜けないもん。ボール取れないもん。高校だって同じとこには行けないしさ」
 健くんがつまらなさそうに言いました。
「家はもっと酷いよ? 姉ちゃん、何でも出来るくせに、みんなあんたしか好きにならない、とかほざいてさ。今はじいちゃんばあちゃんのとこで暮らしてるから距離取れてるから良いけど」
 保健室登校しているユタカくんとも話しました。きちんとユタカくんと話すのは初めてでした。
「家は姉貴に加えてよく出来た弟にも挟まれてるから散々。二人とも私立受かってるのに俺だけ公立だからさ。皆の事は好きだ。公立だからどうとかは思わない。ただ、家族の俺への腫れ物扱いと言うか、あんまり居心地良くないんだよね」
 はじめくんも口を出します。
「独りっ子も大変だよ。僕、男を好きになるようなオカマじゃん」
「ちょ…はじめ、さらっと言うな!」
 和也くんが何故か慌ててます。
「僕は普通にただ漏れしてると思ってたよ、垂れ流しと言うか」
「いや、俺やタケは分かってるから良いけど、世間にはそう言う人に対して悪意のある行動を…」
「今のところ大丈夫。で、何の話しか分からなくなったじゃん」
「はじめが一人っ子のオカマは大変ってとこからだよ」
 健くんは平然としています。ユタカくんは、マジ? と、云わんばかりにはじめくんを見ています。
「そう、一人っ子のオカマだと大変だよ。家は父さんに僕が男らしくなるように色々やらされたなぁ。空手とか剣道とか。結局僕は見ての通りナヨナヨしてるけどさ。離婚して親権を得た今は、だからかおじいちゃんとおばあちゃんのとこに預けて、会うのは月一回ペース」
「男は色々大変だよな。もっとでかい男になりたいよ」
 俺は前から思っていた事を吐き出しました。
「無理しなくても良いんじゃない? ジュンくんはジュンくんだし。ユウタくんでも今井さんでも哲也くんでも助けを求めれば良かったんだよ」
 はじめくんが言ってくれた言葉が嬉しくて、泣きそうになりました。
「そろそろ良いか?」
 引き戸が開いて顔を出したのはテッちゃんでした。その後ろにユウタが立っていました。
「じゃ、後は二人に任すわ」
「頼んだよ」
「じゃ、僕ら帰ります」
「お疲れ」
 四人は立ち上がると、足早に保健室を出て行きました。
「何泣いてんだよ」
 テッちゃんがわらいながら言いました。涙が頬を一筋伝っていたようです。
「な、ユリの見立ては間違ってなかったろ?」
 テッちゃんはユウタに何か話しています。
「ほら、ジュン。俺達も帰ろうぜ」
 ユウタが手を差し出しました。

 ___

 翌日は金曜日だった。灰田先生に放課後の予定を明けておくように言われていた。終わりのショートホームルームの後、職員室に付いて繰るように言われた、川村純と一緒に。
 あの公開処刑は一昨日の事だった。まさかバレて何か聞かれるとか…? ならば私と川村純だけと言う事はあるまい。おそらく祭事委員の用事か何かだろう。
 職員室の前で川村純と二人で待っていると、鞄と車の鍵を持った灰田先生が出て来た。
「さて、行くよ」
 どこへ?

 灰田先生の軽自動車が走り出す。
「今、クラスの皆は一昨日の放課後の件で桜井先生にこってり絞ってもらっています」
 やはりバレていたらしい。いや、自分達からバラしたのか。いじめの主犯である西田麗香や尾瀬由紀がバラすとは思えない、保健室の先生達が不審に思って通報したか。
「昨日、相田さん達が自分達から申し出たよ。こんな事をしちゃいました、えへへ♡ って。で、頼まれたんだ、あんた達を連れ出すように」
「どこに行くんですか?」
 川村純が訪ねた。
「藻茶特別支援学校」
 灰田先生が答えると同時に車は少し右に寄り、対向車とぶつかりそうになった。
「あんまり話しかけないでね、死ぬから」
 助手席に座った川村純が顔を青くして、目が変だよ、と呟いた。

 特別支援学校は市内の南部に位置してある。ただ、私達が学校が終わっているので、当然特別支援学校の生徒達も学校は終わっているだろう。皆帰ってしまった後だろう。
「こっち。会わせたい人がいる」
 灰田先生は駐車場に車を駐めると歩き出した。だが、向かったのは校舎ではなかった。
「誰ですか?」
 川村純が訊いた。
「会えば分かるよ」
 灰田先生は微笑みながらはぐらかし、早足に歩き続けた。向かっているのは『ひだまりの家』と看板の付いたちょっとしたアパートか小さな病院のような、そんな建物だった。
「寮…?」
 川村純が呟いた。
「そう、正確には寄宿舎。学校まで通えない生徒の為の寮みたいな施設であり、自立支援施設でもある」
 灰田先生は淡々と言った。一回スペースは駐車場になっているようで、車が何台か停まっている。その内、一台に小学校中学年くらいの男の子が両親と思われる大人二人に手を繋がれて乗り込もうとしていた。男の子の顔はどこか不本意そうだった。
「今日は金曜日だから、入ってる子達も家に帰る日。時間的に、もうほとんどの子が帰ってるんじらないかな」
 灰田先生は腕時計を見る。五時を過ぎたくらいだった。灰田先生はインターフォンを鳴らし、藻茶北二中から来た事を告げた。
「まだ終わってない仕事があるから上がってくれって。もう終わる頃だって。行くよ」
 灰田先生は病院の自動ドアのような強化ガラスの引き戸を手で開けた。玄関は広い。目の前には学校にあるのと同じような下駄箱。上履きやズックが並べて合って、それぞれの仕切りには名前が書いてある。灰田先生は来客用と書かれた仕切りの中からスリッパを取り出した。
「土足厳禁だからね。早くする」
 私と川村純は慌てて靴を脱いでスリッパに履き替えた。川村純はスニーカーの中で靴下が片方脱げたようで、片足は裸足のままスリッパを履いていた。やはり抜けている。
 エレベーターは有ったが、若いもん、健康なもんは階段、と灰田先生の言葉に従い、階段を登った。三階まで登った。再び、今度は一般家庭のガラス戸のような、だが磨りガラスではない引き戸を開けて中に入る。
 入ってすぐ目の前には『せんせいのへや』と、書かれた表札がついたスペース。大人の腰くらいの高さまでの壁に天井までの窓ガラス、いや、プラスチックかも知れない。その中には事務机とロッカー、本棚、ホワイトボードには何日に誰々がどうする、と言う予定が書き込まれている。事務机には女性が座って、パソコンに何やら打ち込んでいる。
「京子先生…」
 川村純が呟いた。灰田先生が頷く。
 髪が短くなっていたが、そこには私達の小五の一学期の担任だった遠藤京子がいた。
「こんにちは、久し振りですね」
 遠藤先生はぎこちなく頭を下げた。
 ___

 京子先生は終業式の後、退職して、しばらくは実家で病院に通いながら過ごしていたらしいです。そして一昨年の春、教育関係者(説明を受けましたが俺にはよく解りませんでした)の勧めで特別支援学校の寄宿舎で働き出したそうです。因みに灰田先生とは俺達の担任を受け持った時、何度か話しをしていたそうです。クラスの状況を知るために必要な仕事として。
「あなた達には悪い事をしてしまいました。本当にごめんなさい」
 京子先生は悲しそうな顔をして頭を下げました。少しだけ、胸の奥の真ん中辺りにチクッとした痛みが走ったように感じました。
「私は何とも思ってません。だから謝らないで下さい」
 キヨちゃんが言いました。
「だって今井さんは、そのせいで笑われ役を買って出て、クラスの雰囲気が悪くならないようにしてたって灰田先生が…」
「私、自分のダサくてギャグキャラにならないと皆と繋がれないとこ、嫌いですよ。でも、皆が私のギャグで笑ってくれるのは好きなんです。だから先生が悪いとかじゃないんです。上手く言えないけど、先生のせいじゃありません。それに、上手くクラスを回せなかった。平和を守れなかった。だからもう、変な計算はやめるつもりです。だから気にしないで下さい」
 きっぱりと言い放ちました。そして、柔らかく笑いました。
 キヨちゃんの笑顔は久しぶりに見ました。クラスで皆を笑わせて一緒に笑っている顔はずっと見ていましたが、柔らかくて控えめな、小五の一学期まではよく見ていた笑い顔は、かなり懐かしくて、多分小五の一学期以来です。キヨちゃんの本当の笑顔がこれです。
「川村くんもいじめを受けて自分が我慢すればって…」
「それなら解決しました。テッちゃんもユリちゃんもキヨちゃんも味方です。ユウタって頼りになる友達も出来たし、後、色々吐き出せる友達も出来ました。だから俺なら大丈夫」
 はっきり言えました。言いたい事全てではないし、全て言ったらこんなにきれいな言葉にはならないけど、伝えなければいけないと思った事が伝えられたからそれで良いのです。
「私は崎田さんの母親の事ばかり気にして川村くんを助けられなかったし、今井さんは私と崎田さんを助けてくれようとしたのに、裏切り者とか酷い事を言った。担任失格ね」
「マミ子の母親が事あるごとに先生や職員室にクレームを付けて追い込んでいた事は夏休み中に知りました。仕方なかったでは済まないのですが、仕方なかったとしか私は思えません。それに、私も変な事にこだわり過ぎていました。それでギャグキャラになってバカみたいです。でも、先生のせいではないし、したくないし、そう思って欲しくないんです」
 キヨちゃんは淡々と言いました。
「あれ? キヨちゃんに…ジュンくん? 灰田先生も…」
 その懐かしい声は不意にやって来ました。ふと出入り口を見ると私立の女子大附属の中学の制服を着た女の子が立っていました。
「えっと…誰だっけ? マミ子の子分トリオの…」
「あ、マミ子さんの取り巻き三人衆の…」
 俺達は割とひどい人間であるようです。キヨちゃんが取り巻き三人衆に子分トリオなんて名付けていたのにも驚きです。
「三原だよ。まぁ良いや、妹を迎えに来ただけだし」
 三原さんはそう言うと、つかつかとテーブルや椅子やソファが並んだダイニングのようなフロアに歩いて行きました。フロアには両親と同い年くらいの女性と小学校低学年くらいの女の子がいるだけでした。三原さんは女性と何やら笑いながら話し、軽く頭を下げると、行くよ、と優しく言って女の子の手を取りました。女の子はぼんやりとした笑いを浮かべながら三原さんと一緒に俺達の前を通り過ぎました。
「じゃ、失礼します。灰田先生も今井さんも川村くんも、ゆっくり話せなくてごめんね。下に親を待たせてるからさ」
「じゃ、えっちゃん、また月曜日にね」
 京子先生は五年の一学期の始め頃はよく俺達にも見せてくれていた笑顔を女の子に向けると、手を軽く振りました。女の子も胸の高さで軽く手を振りました。
 俺はエレベーターへと消えていく三原さんとえっちゃんを見ながら、思った事があります。京子先生は、本当はこんな人だったんだと。この優しい笑顔が京子先生なんだと。だから、もう京子先生は大丈夫。マミ子さんの取り巻きだった三原さんの前でもその笑顔を見せたのだから。
 次は俺の番です。京子先生のように笑えるようになる番です。明日は、ユウタやテッちゃんやユリちゃん、コウちゃん、あと…クラスの皆、それからキヨちゃんにも、京子先生みたいな笑顔を見せてあげられるようになりたい、そう思いました。
 これはちょっと格好つけ過ぎでイタいので、黙っておいた方が良い事かも知れないですね。

 ___

 私達はよく分からないまま、いくつかの言葉を交わし、何かを分かったような気になった。それが何かは分からないけど。
 遠藤先生は退勤時間らしく、学校の駐車場まで私達を送ってくれた。最後に笑って見送ってくれた。三原紗菜と妹の三原果穂に見せたのと同じ笑顔だった。こんな風に笑う人なんだな、そう思った。そう言えば、まだマミ子達のいじめが起こる前、小五の一学期の始め頃にはいつもこの顔だった。
 良かったと思った。
「さて、帰るよ」
 恐怖のドライブが始まる。川村純は灰田先生の隣は怖いからと、私と二人で後部座席に乗る事を望んだ。
「遠藤先生、元気そうだね。私、改めて思ったよ。もう変なキャラ作りはやめる。一度染み着いた習性が簡単に抜けるとは思わないけど」
 これは川村純に言いたくなった言葉でもあり、一人言でもある。
 まだ当分、こうやって私達はイタい事を繰り返して行くんだな、それは言わない方が良い。灰田先生に、気になるからしゃべらないで! とか言われそうだから。フラフラなドライブはまだ続きそうだ。

[了]
【誰得一】

 今井清美 いまい きよみ
 文芸部所属の祭事委員。九月生まれ乙女座。ボブ、と言うよりおかっぱ頭のデ…太め女子。ギャグキャラになる事でクラスを裏から回して、ある程度の問題を解消して来た実はやり手。語りとして彼女の心情を綴ってみたら思った以上に可愛げのない女だった。実は読書が趣味で上橋菜穂子とかが好きなロマンチストだったりする。

 川村純 かわむら じゅん
 祭事委員。二月生まれ魚座。爽やか短髪に抜けた表情がアンバランス。男らしいものに憧れて応援部に入ったが、怖い先輩達に圧倒され気味。クラスでも割と取り巻き体質で佑太や西田麗香の配下に、実は自分から入っていた。パニクると『にゃあ!』と叫ぶ奇癖がある事が作中で明らかになった。

 石松哲也 いしまつ てつや
 サッカー部所属の放送委員。五月生まれ獅子座。サラサラストレートヘアだか、実は縮毛矯正で、クラスメイトからは分かりやすいストパーと言われている。かつては人気者の面白い奴だったが、繰り出すギャグはいつしか他者にストレスを与えるものとなり、一年生のサッカー部員が三人程辞めかけていた他、DJ気取りで放送委員の仕事を私物化して飯がまずくなる事態を引き起こした(第二話参照)。局部を晒すギャグが定番らしい。

 西田麗香 にしだ れいか
 バスケ部所属。委員会活動は特になし。ショートミディアムで美人ではないが、笑った時のえくぼが可愛いと純に評価された。仕切り屋かつハッキリとモノを言う勝ち気な性格と女王様体質でクラスの番長として恐れられていたが、今回、相田さんに下克上された。身長は167センチと純(158センチ)よりはるかに高い。

 尾瀬由紀 おぜ ゆき
 バレー部所属。やや小柄で色白、巨乳(男子達からは推定Eカップと言われている)、セミロンを揺らしながら甘えてくるので、大して美人ではないがモテていて、クラスで一番人気の戸塚副委員をゲットした(でも今回の件でフラれた)。純同様取り巻き体質で、西田に付いている。
【誰得二】
相田「はぁ、副担にこってり絞られた、あのホモ教師、特に私にはキツかったな」
石松「いや、お前が首謀者だから」
相田「それよりキヨちゃんとジュンくんは無事に帰れるかな、灰田ちゃんの運転で」
石松「下手なジェットコースターより怖そう」
相田「安全装置的なものがない分、ね。一応スマアシとか言う安全機能の付いてる車みたいだけど、運転手があれじゃ…」
石松「つーか、俺さ、そんなにウケてない? 個人的には将来はお笑い芸人になってブレイクできそ…」
相田「できない! やめとけ」
石松「ちょ…またダライが落ちて来そうな事を! そう言えば何でジュンの頭にタライが落ちて来たんだ?」
相田「この世界には不思議が沢山ある。ただのつまらないギャグなのに後輩が退部しかけたり、クラスのほぼ全員が公開処刑に賛同したり、タライもその一つだよ」
石松「ちょ…前者は俺…」
相田「でも公開処刑はさすがに皆が賛同するとは思わんかったわ。委員長とか村上さんとか高山くんとか、真面目な子達までノリノリだったしね! 皆、やって良い事と悪い事の区別がついてないとしか思えない行動だったしね!」
石松「ホントは止めて欲しかったかいっ!」
相田「当たり前じゃん。もうやるっきゃないと思ってさ、どうせ私、地味グループだからこれを逃したらもうステージに上がれないって。結果的に私もイタい子だったんだよ」
石松「つーかさ、後で聞いたんだけど、ジュンのにゃあ! に続いて、健達はわおーん、こけこっこー、ひひーん、って言おうと思ったらしいぞ」
相田「ブレーメンの音楽隊じゃん!」
石松「でもユリのマジっぷりが怖くて、健がうっかりおうって応えたから、はじめと和也も言うタイミングをなくしたって」
相田「うん、結構ガチだったから。でも瞬時に葉山くんと森くんのプロフを思い出して、二人が追えば鈴木くんも追う事を計算できた私ってすごくない?」
石松「うん、正直凄いと思った。つーか、俺は何もするなって言われてユリについて大人しくしてたけど、お前、結構やり手なのな。キヨちゃんのノートまで作ってた告白と言い、お前ら計算高過ぎだぞ」
相田「そう? あんたが無鉄砲過ぎなんよ。意味もなくパンツ脱ぐとか」
石松「いや、男子にはウケルし、女子にはサービスカットですから!」
相田「皆白い目で見てるよ。粗末なもん出すなって」
石松「がふっ!!(タライが落ちて来た)」
相田「つーかさぁ、キヨちゃんもジュンくんも、マミ子はともかく取り巻き三人衆とか子分トリオとか、呼び方ひどくない?」
石松「うん、それは俺も思った。いてて…」
相田「あの四人の進路とか要る?」
石松「どうせこのコーナー事態蛇足だろ? 今更蛇足が増えても変わらねぇよ」
相田「崎田真美子。中学進学と同時に福岡県へ引っ越し。母親が転勤したため。福岡の中高一貫の進学校へ。
 三原紗菜。隣の市にあるお嬢様系女子大の附属中学に進学。知的障害の妹を大切にする家族想いな一面も。
 工藤友理奈。藻茶市内の市立の中高一貫校へ進学。動物好きで飼育係としてウサギやニワトリの世話に生き甲斐を感じている。
 三田村愛美。藻茶市内の尻の中高一貫の進学校へ。体操部で汗を流す一見爽やかだがくさいながらも、充実した日々を送る。
 私の追跡調査によるとこんな感じ。どう? 凄くない?」
石松「個人情報もへったくれもないわ!」
相田「で、そろそろ次回予告行く?」
石松「梅雨のジメジメした話し…つーか、今回もさ、ヨシ(著者)がダラダラしてるせいで梅雨入り前の話の設定なのに、梅雨入りしてから十日くらい経ってからの掲載なんだけど」
相田「それは大丈夫ってほざいてたよ。いざとなったら、この話の世界は現実から見たら異世界、時間軸が違うのは仕方ないって逆ギレするって言ってたから」
石松「逆ギレかよ!」
相田「まあとにかく進めるよ。次回の語り手はクラスで一番小柄な津山浩樹くん、そして女子の中では一番長身な新川知沙さん。凸凹コンビで送るよ」
石松「新川さんって、身長だけじゃなくて胸とか識りもバーンとしててエロいんだよなぁ、ハァハァ。推定Iカップ」
相田「ズボンの前、膨らんでるぞ。つーかさ、あんた達がコソコソやってるオトコ会もそんな感じなの?」
石松「俺は参加した事ないから分かんない。でも男ばっかでしか出来ないアホな事をしまくるらしい…って、俺がバラしたのは内緒な」
相田「実はバレて…いや、何でも。(バレてるの気付いてないからこのままほっといて話しを進めよう)」
石松「せいぜい菓子食ってプロレスごっこが精一杯だろうがな。あとエロ本読むくらいじゃね?」
相田「って、事は男の子故の手を使っての性欲処理行動もやるんだ! やりなさい! 私はカメラを仕掛けておくから!」
石松「何で興奮してんだよ」

相田「BLのためだよ! 私って美術部から独立して漫研作った女だから」
石松「まぁ、オナニーくらいならいっか」
相田「良いんだ! じゃあ決まりで!」
石松[スパーン!/ハリセンで叩かれた音]
相田[ピコッ!/玩具のハンマーで叩かれた音]
葉山「何考えてんだ、こいつら」
水沢「危うく恥ずかしい行為を晒すとこだったね。で、二人とも気絶しちゃったけど、どうする?」
葉山「予告だろ? ヒロと新川さんが語る校長先生と近所のおじちゃんのラブコメ。二人の過去に迫ると共に俺達が物騒な通り魔事件に首を突っ込む」
水沢「随分と大雑把だね、また」
葉山「しょうがないじゃん、ヨシは思い付きで筋書きとか変えちゃうし、俺達も暴走するし」
水沢「今回の公開処刑然り、ね。でもあれは面白かった」
葉山「だから細かく予告しても全く違う話になる可能性のが高いじゃん」
水沢「さっき言った予告でさえ変わる可能性さえあるもんね」
葉山「あ、ジュン達帰って来た」
水沢「随分疲労困憊してるね。川村くん、顔が真っ白だよ」
川村「いや、死を覚悟する運転だったからさ、先生って」
今井「粗くて粗くて…何度ぶつかりそうになったか。アレでゴールド免許って、嘘だろうな…」
川村「で、何でユリちゃんとテッちゃん倒れてんの?」
水沢「それはほっといて、ほら…」
葉山、水沢、今井、川村「次回もお楽しみに!」
事実は小説より奇なり、その1
 知り合いの高校には校内では全裸という男の子がいました。何度かの先生との話し合いの末、廊下では下半身は出さないと約束したそうです。よそから来るお客様がいて、いろいろ対外的に問題があるという事をその子は納得したそうです。つまり教室内だけになりました。
 1年の2学期にはたたでさえ少ない女子が、全員他のクラスに移りました。
 卒業アルバム撮影にも全裸で参加して。さすが理数系。卒業アルバム委員がCGで金太郎の腹掛けを付け加えました。

その2
 知り合いの中学校の向かいには14階建てのマンションがあり、授業を抜け出した中学生がその屋上でお菓子を食べたりしてました。で、中学校とマンションの間の路地に黒塗りの車が停まり、窓から手だけを出してシンナーを売ってたそうです。それを買って男の子たちは屋上でお菓子パーティーをするわけです。(シンナーという点が古い。今なら覚せい剤ね)
 小学生の時から悪グループとわかっていたので、悪に対抗できる先生をかき集めてあって。
 屋上に人影が見えると、出動です。ぼこぼこにして、学校に引きづり戻しました。
 どのくらい悪かったかというと、小学生の時に、いじめのターゲットになった女の子がいて、6年生の年わーい(嬉しい顔)末に飛び降り自殺をして亡くなりました。

 なんて事を思い出しました。
 ヨシさんの中学生は本当に透明感があります。ほろ苦くて柔らかな懐かしい日々です。

 目次作業、ちょっと待っててね。

 そろそろ新作をUPしようかなぁって思ってたら、先を越された。ちょっとすねてます。
 気分が上がったらね〜。
>>[17]
(((*´∀`)ありがとうございまするんるん ごゆっくりで構いませんよウインク そして二年四組の面々から何かあるようです。

相田「よっしゃあっ! 全裸の男子がいる学校に私は行く! 新聞委員の肩書きを乱用してカメラ持参で!」
水沢「卒業してるみたいだよ。よく読みなよ」
相田「ガフッ(タライが落ちて来た)」
葉山「つーか、シンナーとか覚醒剤とかヤバ過ぎだろ! マッチ売りの少女とか小さい頃に読まなかったのかね」
水沢「そんな話だっけ?」
葉山「だってマッチ擦って幻覚見たんだろ? 明らかにマッチに危険ドラッグとか混ぜてあって、あれだ、炙り? とかで吸い込んでたんだ。最終的に一気に燃やして沢山吸収したから急性の中毒を起こして少女は死んだ」
水沢「最悪な童話の解釈だよ!」
葉山「誤解がないように言っとくけど、オトコ会では菓子食ってプロレスごっこして、エロ本回し読みしたくらいで、俺達は煙草すら吸ってないぞ」
水沢「意外…」
葉山「だって俺達、死体を探しに線路沿いを歩く人達とは違うし。好きな言葉は平和ボケだし」
水沢「後、透明感って、私達にある?」
葉山「ないだろ。委員長が一番よく知ってるじゃん。色々と黒幕的な事やってる癖に」
水沢「うん、濁り、雑味、えぐみ、その他色々混ざってて透明感ない」
>>[18]
 自信は無いんですが。下記のマリ子ってマミ子の誤字ですか? ↓

 テッちゃんがつまらなくなった理由、笑わせる事が出来なくなった理由、それにもマリ子さんが関わっていたように今なら思えます。
 マリ子さん達に言われまくって俺が落ち込んでいるある日の事でした。毎週金曜日は皆の机と椅子を綺麗にしてから帰るようにしています。自分の机は特に毎日綺麗にしていました。自分だけ特別に…ではありません。マミ子さんや取り巻きが犯人と『思われる』落書きがひどかったのです。油性マジックとか

 子供は歪んでこそなんぼ、と思ってます。まっとうなら歪む。歪んでない子供は危険です。
 屋上でシンナーパーティーはまっすぐだから危険。
 全裸の高校男子はまっとうに歪んでるから大丈夫。わーい(嬉しい顔)
>>[19]
(((;´∀`)実は始め、『マミ子』は『マリ子』と言う名前の予定でした。しかし、(一応作中でも委員長や今井さんが作っていたようなプロフをクラス全員分作っていたのですが)二年四組に村上真理子と言う人物がいる事を思い出し、途中まで書いておきながら急きょマミ子に変更したのです。なのでマリ子表記は私の直し忘れです。いやぁ、面目ないです。

村上「私、忘れられかけてたんかい…ちっ(怒った顔)
>>[20]
 私もよくやります。途中で変更、変更もれ。あっかんべー しかも姉妹の名前を取り違えて、マイミクさんから指摘されたり・・・。あせあせ(飛び散る汗)
 本文中なので、変更出来ます。訂正しておきます。
 メモがわりにこのあたりのコメントを残しておきますね〜。
>>[20]
 大変大変、遅くなりました。
 目次作業と名前の訂正、終了しました。

 17日〜19日(本日)までお出かけで、その前にやりたかったんですが、どうにも時間が取れず。
 申し訳なかったです。m(__)m
>>[22]

(((*´∀`)お忙しい中、本当にありがとうございますぴかぴか(新しい) 頭が下がりますほっとした顔
>>[23]
 頭下げないで。
 忙しい理由の中にはアプリでギルドマスターやってるせいもあるの。
 目次作業はしないけど、ギルドの勧誘は毎晩出してるの〜。わーい(嬉しい顔)
 バカにしていいわ。

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