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アナタが作る物語コミュの【心霊系】ZERO・4.5

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†††††††††††††††††††



『私は寝首をかかれても困るのでな、
瑛地の滞在期間中は深苗のもとで世話になるよ』



…………はぁぁ。

昨日の成宮家での事が悪夢であったなら
良かったのに。
……と、昨日から何度願ったことか。

ふとキッチンからリビングを見ると、
ソファの上で気持ちよさげに眠る男の姿。

昨日出会った俺の『親戚』であり、
『生死に関係なく生物の魂に障る』という
物騒な能力と破天荒な性格を持つ、
この川嶋 瑛地(かわしま えいじ)という男を預かる
ハメになった現実を改めて痛感し、
朝から幾度となくため息を連続させる。





…………昨日、庸佑の車内。



「大体『更正』って、俺より年上じゃねぇか……」

「??庸佑はいくつや?」

「俺か?21だけど」

「何や、俺より年上やったんか」

「えっ!?」

「俺今18やで」

「………………!!!」

どう見ても20代真ん中よりはいってるだろ、
その顔は……と思ったが、その言葉は
口から出すことなく俺の喉の奥へと消えた。





………そんなやりとりの末、現在。

朝食が出来上がり、俺は皿を運びながら
瑛地に声をかける。

「おーい、朝飯だぞー」

俺の声に瑛地がぼんやりと目を覚まし、
のっそりと起き上がる。

「パンツくらいはけよ……」

まるで母親かのように呟き、キッチンから
食事を運び終え、瑛地の正面のソファに座る。



「……何だ?食わないのか?」

目の前の食事を見つめたまま動かない瑛地に、
思わず声をかける。

「……や、家の飯とか久しぶりやなぁ思て」

そう言って瑛地はぎこちなく箸を持ち、
味噌汁が入った汁椀に手を伸ばす。



「アメリカ育ちやのに、日本食作れるんか庸佑……」

「あぁ、じーさんばーさんが和食派だったからな。
俺も気がついたらそうなってた」

「へぇ………
あ、意外に美味い」

そう言って嬉しそうに笑う瑛地を見て、
そこまで悪い奴でもないのかな?と思いながら
朝食の時間は過ぎていった………。





※コメントに続きます※

コメント(13)




朝食を終え、洗濯物を干していると、
ふとポケットから携帯電話が着信を知らせる。

『深苗ババア』というディスプレイ表示を見て
通話ボタンを押すと同時に、一気にまくし立てる。

「本日はいつもの素晴らしい目覚ましサービスもなく
のんびりと朝食の時間を過ごして大変良い1日に
なると思われる中岡 庸佑ですがご用件は?」

『おや朝から元気な事だねぇ庸佑。
瑛地とはうまくやってるかい?』

「あぁ、まぁそれなりにな。
で、何の用だ?」

『ゼロがこっちにいるから寂しい朝を迎えてるんじゃ
ないかと思ってねぇ』

「余計な心配いらねぇよ(怒)
むしろせいせいしてるって言っといてくれ」

『ははっ、そうかいそうかい。
瑛地の様子はどうだい?』

「どう、ってまぁ普通だよ。
さっき一緒に朝食食べて……って感じだな。
代わろうか?」

『いや、別にいいんだ。
夜ちょっとした仕事がある。
また夕方にでも連絡するから、
瑛地にも伝えといておくれ』

そう言って電話を切られる。
全く、自分の用件だけ言ったらとっとと
切りやがって………。

ぶつぶつ言いながら洗濯機のスイッチを押し、
キッチンへ行くと瑛地が洗い物を済ませていた。



「お、悪いな」

俺が声をかけると瑛地が少々はにかみながら
こちらを見る。
こういうとこは18歳らしいな、などと思いながら
深苗ババアから連絡があった旨を伝える。

「とりあえずお前、荷物全然持ってきてないだろ?
服は俺のでも着ときゃいいから、
今のうちに下着とか日用品だけ揃えに行くか」

「あぁ、こっちに金借りに行く、って
目標以外何にも考えてへんかったからなぁ……
深苗さんとこの費用で落としといてもらうわ(笑)」



………数時間後。



買い物を済ませ、ふと時計を見る。

「そろそろ夕方にさしかかってくるな……
深苗ババアから連絡来るだろうし、帰るか」

「ほやなぁ」

そう言って車に乗り込み、家路に就く。
しばらく走っていると、見覚えのある人物を見つけた。
車を停め、その人物に声をかける。

「眞理ちゃん!」

俺の声に反応し、眞理ちゃんは笑顔で
駆け寄ってきた。

「庸佑くん!久しぶりだね!
……ん?そちらは?」

瑛地の方を不思議そうに見る眞理ちゃん。

「あぁ、うちの親戚だよ。
……瑛地、こちらは俺の本住まいのマンションの
上の階に住んでる、高塚 眞理ちゃん」

「あ、火事になった言うとったとこのか?
俺は川嶋 瑛地、よろしゅう」

無愛想気味に瑛地が自己紹介をすると、
眞理ちゃんは応えるように笑顔で一礼する。

「庸佑くん、どこかにマンション借りたって
聞いたけど……元気にしてるの?」

「あぁ、ぼちぼちね。
昨日からこいつの子守してるんだ」

そう言って瑛地の頭をくしゃくしゃっ、と撫でると、
瑛地はふくれっ面になってシートを倒した。
その光景を見て、眞理ちゃんがクスクスと笑う。

「まるで弟みたいね」

いやいや、本当はかなり物騒な奴で……
などと考えながら苦笑いで瑛地の方を見ると、
瑛地はなぜか驚いたようにこちらを見ていた。




「………?
どうした瑛地??」

声をかけると、瑛地は「別に」といった顔で
助手席のドアの方へ顔を伏せた。

「何だよ、変な奴………って、あ」

不意に携帯が鳴り、ディスプレイを見ると
深苗ババアからの着信だった。

「眞理ちゃんごめん!
送ってくよ、って言いたいとこだったんだけど、
今からこいつの仕事場に行かなきゃいけないんだ」

「大丈夫よ、早く電話に出てあげて。
じゃあ、またメールでもしてね」

そう言って手を振りながら去っていく眞理ちゃんを
見送りながら、俺は携帯の通話ボタンを押した。

『出るのが遅いねぇ庸佑。
ナンパでもしていたのかい?』

「なわけねぇだろ。知り合いがいたんだよ……
ってか、何で俺達が外にいるの知ってるんだ?」

そう言って辺りを見回すが、誰もいない。

『縁の『目』だよ。
昨日瑛地に『つけて』おいたみたいでね』

「あ、なるほどな」

昨日瑛地に出くわした成宮家に縁さんの用事で
付き合っていたことを思い出し、
縁さんの『能力』を考えて納得する。

『とりあえずうちからわりと近い場所に
いるようだね、そのままこっちに来ておくれ』

そう言ってまたいつもの如く電話を切られる。



瑛地に深苗ババアの家にこのまま向かう旨を伝え、
俺はまた車を発進させた………。



「うっ、何だい?この荷物は……」

「……嫌な予感がするな、深苗」

深苗ババアの家の前に着いた途端、
玄関先で待ち構えていたらしい深苗ババアとゼロが
後部座席を覗き込んで顔をしかめる。

「あぁそれ、俺の当分の日用品やら何やらや。
庸佑に立て替えてもろたから、『給料天引き』で
頼むわ〜」

そう言って瑛地は素知らぬ顔で口笛を吹く。

「「やっぱり………」」

「別にえぇやん、俺がおった方が『助かる』やろ?」

「うっ……」

図星だったのか、深苗ババアとゼロがもごもご
しているのを見て俺は思わず笑いをこらえる。
それを見たゼロがヒュルリ、と俺の肩に
乗り、耳打ちしてきた。

「……瑛地、お前の家に居座る気だぞ」

「なっ!?」

「元より『交通費』のための『バイト』だ。
考えてもみろ、仕事の内容が内容なんだ、
一度の仕事で交通費はおろか当面の生活費くらいは
楽に稼げる。
………お前、懐かれてしまったようだな」

「ま、まじかよ………」

深苗ババアの方を見ると、
まぁいっか、という顔で俺の顔を見て
ほくそ笑んでいる。

………やられた。
先程の買い物で軽く1ヶ月以上は生活できるほどの
買い込みをした事を思い出し、
俺はため息をついた。

「まぁ一応は瑛地の『更正』も目的の一つだ、
何とかうまく自分の住む所を探すように
話をもっていくんだな」

そう言ってゼロは俺の膝の上にちょん、と座る。
それを見て深苗ババアも後部座席に乗り込む。

「とりあえず出発しておくれ。
詳しい事は道中説明するよ」

「えっ、俺もついてくのか!?」

「嫌ならさっさと瑛地を降ろして帰っておくべき
だったね庸佑。残念、残念」



そう言ってニヤリと笑う深苗ババアを
ルームミラー越しに睨みつけ、
俺は渋々と車を発進させた………。



………現場に着き、深苗ババアとゼロ、
瑛地がぞろぞろと車を降りる。

「結構離れてるじゃねぇか……
最初から俺に車出させる気だったんじゃ」

「そんな気ぃしたから降りひんかってんや、俺」

「お、お前もグルかよ………」

はぁ、と一際大きなため息をついて、
俺はハンドルに顔を伏せる。



着いたのは、見るからにテレビの
『心霊スポット特集!』
みたいな番組に出てきそうな薄気味悪い廃墟だった。

「ああ、テレビの取材も何度となく来た所だよ」

「だから読むなっ!!!」

またも人の心を勝手に読んだ深苗ババアが、
頼んでもいないのに返答をしてくる。

「………取材班はほぼ全滅したけどねぇ」

「えっ………」

そ、そんな所に一般人の俺を連れてくるなよ……
しかも『ここで停まっておくれ』って、
ここ思いっ切り敷地内だし……
完全死亡フラグじゃねぇか?俺。

「はぁ、不幸、だな………」

「俺のセリフを勝手に言うなっ!てか読むなっ!!」

やれやれ顔の深苗ババアに俺が怒鳴っていると、
突然敷地の入り口の重そうな鉄製の門が
ギチギチと音を立てながら閉まった。

「えっ?えっ?えぇっ!?」

俺があたふたしていると、
ゼロは慣れた様子でその門を見つめる。

「庸佑、お前のような0感者でもこうして
自分の目で目の当たりにできるような場所だ。
私達は奥に進むが、お前は車に残るのだな?」

「……………」





俺は無言で車を降り、ゼロを抱き上げてしがみつく。

「や、身体の小さい私に抱きついても……
というか邪魔………うぎゅ」

そうして苦しそうに抱かれるゼロと、
俺達3人は、建物の中へと歩を進めた………。



「………ごっつい気配はしとるけど、
いまいち『ボス』の居場所がわかりにくいなぁ」

1Fの探索を何事もなく終え、2Fに続く階段を
登りながら瑛地が呟く。

「縁を連れてくるべきだったかねぇ」

応えるかのように深苗ババアも呟く。

「に、2Fも何もありませんように………」

震えながら呟く俺に、俺の腕からやっとの事で
顔を出したゼロが呆れ顔で言う。

「………本当に『0感体質』なのだなお前は。
いいか、ここは『3F建て』だ」

「えっ!?」

外から見た感じ、どう見てもただの2F建ての
建物だった事を思い返し、俺はいよいよ
わけがわからなくなる。

「何や、庸佑『見えへんかった』んか?
ここは3F建てやで」

瑛地にまで呆れ顔で言われ、
何だか気まずくなってくる。

「あのなぁ、俺はあくまで『一般人』だぞ?
そんなお前らみたいにサクサク見えるわけが……」

「ここに今まで立ち入った者達と最後に連絡を
取った奴らは皆こう言っていたよ。
『彼らは3Fへの階段を見つけてから連絡が
途絶え、未だ行方不明か、気が触れて帰った』
………って、ね」

深苗ババアの言葉に、俺は背筋に氷を垂らされた
気分になった。



「………おっと、『出てきよった』でぇ、
『3Fへの階段』ちゅーのが」




「…………えっ?」

瑛地の視線を辿るが、そこにはどう見ても
壁しかなく、階段などは見あたらなかった。
何かの冗談だろ?と腕の中のゼロの顔を見るが、
ゼロも瑛地の見ている方を凝視し、
何かを見つけたような顔をしている。

「まさか庸佑、『見えていない』のかい?」

深苗ババアが驚いたように俺の方を見る。

「み、見えるも何も、壁見つめて何言ってんだよ」

俺が答えると、瑛地は目を見開いた。

「……なるほど、やっぱり『ボス』は
この階段の先っちゅー事やな」

そう言うと瑛地は突然壁に向かって歩き出し、
すうっ、と消えていった。

「なっ!?瑛地!?」

俺が驚いていると、ゼロもするり、と
俺の腕を抜けて壁の中へと消えた。

「えっ!?えっ!?」

深苗ババアも続いて壁に向かおうとし、
不意に立ち止まった。



「………しまった!」

深苗ババアが突然慌てたように近くに落ちていた
ガラスの破片をゼロ達が消えた壁に投げる。
しかしその破片はゼロ達のようには消えず、
壁に当たってカチャン、と落ちた。

「ゼロ!瑛地!!戻るんだよ!!」

深苗ババアが壁に向かって叫ぶが、
壁の向こうからは何も現れない。
ゼロや瑛地、深苗ババアが『階段が見えている』
なら、普通に階段の下から呼んでいるような
ものだろうから、戻ってきてもいいはずなのだが。

「……ちっ、やっぱり狙いは……」

そう言いながら深苗ババアが俺の方を見てきた。

「な、何だよ。
あいつら連れに行かなくていいのか?」

「鈍いねぇ庸佑。
私らがここに『入って』から、
ここの大ボスの『狙い』はあんただよ、庸佑」

「えっ、俺!?」

俺が驚くと同時に、深苗ババアは俺の腕を掴んだ。

「庸佑、目をしっかり閉じな!」

「へっ?」



そう言うと同時に、突然深苗ババアは
ゼロ達が消えた壁とは逆方向に踵を返し、
走り出した。



「お、おい!
あいつら置いてくのか!?」

「うるさい!とにかく目を開けるんじゃないよ!
一度ここから出るんだ!!!」

「ど、どういう事だよ!?」

深苗ババアは返事もせずただただ走る。
目を閉じている俺は何度も足がもつれそうに
なりながら、必死に手を引かれるまま走った………。



どれくらい走ったのか。

ようやく立ち止まり、俺は目を閉じたまま
深苗ババアの言葉を待つ。



「………目を開けていいよ、庸佑」

ゆっくりと目を開けると、建物の入り口だった。
そして視線の先にはゼロと瑛地が倒れていた。

「………!?おい、大丈夫か!?」

「気を失ってるだけだ、心配ないよ」

「一体何が……」

そう言って深苗ババアの方を見ると、
眉間に皺を寄せて、俯き加減で深苗ババアが呟く。



「……お前の『目』が、正しかったのさ。
あの階段は『お前じゃなきゃ』
壁に見えなかったんだよ」

「どういう事だ?」

「お前が『武器屋』だからさ。
初めからここの『本星』は、あの『偽階段』で
1人になったお前をどうにかするつもり
だったのさ。
つまり以前ここに立ち入った者達も私らも、
まんまと敵の『術』に嵌まった、って事さ」

そう言って深苗ババアは唇を噛み締める。

「いくらお前が『0感体質』でも、
今まで立ち入った『一般の人間達』には
あの『階段』が見えた。
しかし『階段』が姿を現しているにも関わらず、
お前には『見えなかった』んだ。
その時点で気づくべきだったかねぇ……」



深苗ババアがそう言ってため息をついていると、
ゼロ達が目を覚ました。



「……まんまと嵌められたみたいやなぁ、俺ら」

「そう、だな」

むくり、と起き上がり、
ゼロ達がため息混じりに呟く。

「さて……どうするか。
……庸佑、この建物は『まだ』2F建てか?」

ゼロに聞かれて建物を見上げると、
先程は間違いなく2F建てだったはずが
いつの間にか3F建てになっていた。

「えっ!?3F……???」

俺の反応に、深苗ババアは満足そうに頷く。



「……敵の『術』もそろそろネタ切れのようだね。
さて、本星にご対面といこうじゃないか」



………再び建物内に入り、真っ直ぐ2Fに上がる。

2Fの踊場にはやはり3Fに続く階段はなく、
しばらく探索していると、先程の偽階段?とは
違う場所に一際こじんまりとしたドアを見つけた。



開けてみると、そこには細く続いた階段があった。
俺達は互いを見合わせ、
頷いて階段をゆっくりと上がる。



10段ほど上がった所で踊場が現れ、
そこには錆びかけた鉄製のドアがあった。

ギギギ、と音を立ててドアを開けて
中をのぞきこむと、何十本もの蝋燭に照らし出された
部屋になっていた。



「………さっきはえらい世話になったなぁ」

瑛地が殺気立った視線を部屋の奥に向ける。
ゼロも、身体を大きくさせ戦闘体制の構えになる。

「………あんた、どうやってここに
『来られた』んだい?」

深苗ババアが数珠を構え、低い声で呟く。
それにつられ、俺は目を凝らし、相手の姿を
確認する。





「………!!
あんた、何でここに………!?」



「………久しぶりだなぁ、
『武器屋』の中岡くん」

そう言って蝋燭の灯りに姿を浮かばせたのは、
先日深苗ババアの家に『術』をかけ、
俺とゼロ達を引き離して俺達を始末しようと企んだ
俺のマンション(本宅)の管理人だった。

「あんたあの時確かに熊田さん妹に捕まって
警察に……てか、片腕が」

あの事件の日に銃の暴発によって片腕を無くした
はずが、まるで何事もなかったかのように
しっかりとある。

「あの時はとても痛かったよ中岡くん。
私が『人間』ならばこうして繋がっていなかった
だろうね、何しろ木っ端みじんになったんだから」

そう言って管理人は無くしたはずの腕を
プラプラと振って見せる。



「くっ、全く気づかなかった……
お前、人間ではなかったのか……!!」

ゼロと深苗ババアが悔しそうに呟く。



「あぁ、普段は発する『気』も人間のそれと
ほとんど変わらないようにしているからね。
『三沢』の者がいればすぐにバレただろうが」

ククッ、と皮肉っぽく笑う管理人。

「あのマンションに近づこうとする度に
縁が見あたらなかったりしていたが………
あれも貴様の『術』の影響か」

ゼロが管理人を睨みつけながら言う。

「それに『気づかなかった』お前達の
落ち度だろう?
『負け猫の』遠吠えか?くっくっくっ」



「とにかく何があったんか知らんけどな、
誰であろうと俺を『歓迎』してくれたんや、
しっかり礼さしてもらうでぇ!!」

そう言って一瞬にして間合いを詰め、
差し出された瑛地の手を管理人はいとも簡単に
ひゅっ、と避ける。

そしてすうっ、と奥の窓際に立った。



「今日は回復したばかりでちょっと調子が
出ないもんでね。
もう少し再会を喜びたかったが仕方ない。
この場所も潮時だ、また近々別の場所で
会おうじゃないか、『神前』の諸君」


そう言って管理人は煙のように、
まるで空気に溶け込むかのように消えていった。



………翌日。

午前中から深苗ババア宅に呼び出され、
熊田さん妹と連絡を取り終えた深苗ババアが
ゆっくりと語り始める。



「確かにあの事件の日にあの男を連行し、
警察病院で拘留してたんだが、今朝になって
確認したところあの男は居らず、代わりに
昨夜の見張り番の刑務官が記憶が混濁したまま
病室内にいたらしい。
刑務官は庸佑があの男の片腕をぶっ飛ばした通り
片腕を無くしていて、あの事件を起こしたのは
自分だと思い込んでいる状態らしいよ」



「……くそっ、昨夜あいつに出くわした時点で
『術』だけでも解けていれば……!!」

俺が呟くと、ゼロが無言のまま俺にすり寄って来た。

「心配するな庸佑。
腕を無くしたのは残念だが、記憶はじきに
戻るだろう。
そう長く『術』をかけていても何の得も
ないだろうからな……」

慰めてくれているつもりなのか、
ゼロが静かに俺に言う。



「くそっ、やられたまま逃げられてしもたな……
次は絶対魂の欠片も残らんくらいやったんねん、
あの野郎………!!」

「『次は』って、やっぱりこっちに
居座る気なのか瑛地……」

「当たり前やないか!
やられっぱなしで帰ったら男やないで!!」

「「「最初から帰る気なんかさらさら
ないくせに…………」」」



異様に張り切る瑛地を横目に、
先行き不安さが更に募った俺だった………。
【心霊系】ZERO・5はこちらから↓

 http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3656165&id=74567560


 他のシリーズはこちらから↓

【作品一覧【2009/02/25現在連載中】
 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=39667607&comm_id=3656165

【作品一覧【シリーズ/完結】】
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