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アナタが作る物語コミュの【ファンタジー】神話夜行9 ピクニック

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 こちらはシリーズ作品です。これだけでもわかるように書いたつもりですが、できましたら1話を読んでいただけると設定がわかりやすいかもしれません。

 シリーズ第1話はこちらから、このコミュ内です↓

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 その他の作品はこちらから↓

【作品一覧【2009/02/25現在連載中】
 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=39667607&comm_id=3656165


 イラストはエーカさんです。コウです。

 とりあえず向こうの世界に行ってみました。
 でも、向こうの世界、まだちゃんとできていません。
 本格的に書く事になった時には、違ってしまうかも…。
 だから、今回の話はパラレルワールドという事で。あせあせ(飛び散る汗)

 以前に阿波木氏さんから、髪が空間を支配する、または自分以外を髪に閉じ込めるというコメントをいただきました。
 そんな話を考えてみました。アイデア、ありがとうございました。わーい(嬉しい顔)

 約7100文字です。初出 09/05/15

                        夜

 羽鳥(はどり)
 本体は鳥の体に女性の顔を持つハーピー。
 だが普段は男性の姿をしている。
 みかけは三十歳を少し過ぎたぐらいの日本人男性。短い黒髪。
 いつもはサングラスをかけ、丈の短い、黒の革ジャン、同じ黒の皮のパンツ。
 大きく開いた白いシャツから鍛え上げた胸板を見せびらかしている。片耳だけの銀のピアス。

 今は戦いのさなかだ。トップはハイネックの薄いグレーのシャツ。パンツは黒の細身。どちらも動きやすさを重視した装いだ。
 サングラスもピアスも消えている。

 敵と戦い続けてすでに三十分以上。
 背中合わせのコウの気配を羽鳥は測った。

 コウの体のあちこちに小さな傷ができていて、修復できなくなっている。
 息が上がり、集中力も切れてきている。

 蛟(みずち)、蛇と龍の中間体だ。角と赤い髭と四本の足。 背中には青い斑点、尾の先にはこぶ。もちろん想像上の生物だ。
 杜若(かきつばた)を食べて口から気を吐き蜃気楼を作るともいう。
 日本ではみずちだが、中国ではコウと呼ぶ。
 コウはその蛟という伝説の生物が気に入って、コウと名乗っている。

 コウの見かけは十七・八歳の日本人だ。
 身長は百七十センチそこそこ。筋肉などお世辞にも無いと言えるほどの細身。
 そして、男なのに美少女と言いたくなる美しい顔立ち。
 けれどもコウは、その見かけとは違い、ゴルゴンの三姉妹、つまり長姉ステンノー、次姉エウリュアレー、そして末妹のメドゥーサの三人で産み出した、最強の戦士に育つはずの若者だった。

 潜在能力では羽鳥よりも大きいはずのコウだが、体力や持久力、精神力、そういったものは経験でしか身につける事はできない。戦士としてのコウはまだまだ幼かった。

 すでにコウは限界が近づいている。羽鳥はそう感じた。

『もっと早く帰るべきだった。自分の判断ミスだ』
 
 押し寄せる敵は雑魚だが、数が多かった。四・五十体は倒したがまだ同じくらい残っている。
 それも徐々に強い敵に変わっている。相手にしてみれば当然の戦略だ。兵隊はしょせん消耗品だ。消耗品をぶつけ、敵の力をそいでおく。
 しかし、雑魚とはいえ、これほどの数を消耗品として使える、いや使う。こちらがそんな世界とは思わなかった。

 後ろのほうで出番を待って、あくびをしながら見ているやつらは今戦っている敵よりも強いはずだ。
 そいつらも全て倒したとしても、いずれ大将が登場する。
 それまでコウはもつだろうか。早く帰らなくては…。

 クリスタルを使い、コウたちの世界へ逃げ戻るには穴を開けなければならない。
 その時ほんのわずかだが、スキができる。
 死体で戻っても意味は無い。そのわずかな時間をどう作るのかだ。
 コウには、もうその時間を作る体力は無いだろう。
 誘惑が羽鳥を手招きする。

『俺が時間を作る。おまえだけ帰れ』

 それが最悪の選択だとしても、このままではいずれそうなる…。

 ゆっくりと呼吸を整え、気を練る。短い風の槍が羽鳥の右手にあらわれた。細く練り上げられた鋭利なその槍の刃先を羽鳥は自分に向け両手で握り締めた。

「コウ。動くな」

「?」

「くっ!」

 羽鳥が一気に力をこめる。

「!」

 コウは、強い痛みと共に自分の胸に生えた血塗られた風の槍をみつめた。
 羽鳥は後ろ向きのまま、風の槍でコウを貫いていた。
 敵の軍勢さえも、羽鳥の突然の行動に息を呑んだ

「は…ど……」

 コウの髪が急速に伸び、倒れるコウをくるくると包んでいく。髪は赤い繭(まゆ)となりその場に落ちた。コウは繭の中で柔らかな光に包まれ胎児のような眠りにつく。
 眠りながら泣いていた。『羽鳥がぼくを。なぜっ!?』

 その場に横たわる赤い繭に、右足をかけ、羽鳥は敵を見渡した。

「こいつが欲しけりゃ、俺を倒すんだな!」

『うまくいった。
 大事な臓器にはキズをつけずにすんだ』

 そのために細く鋭利な槍を使ったのだ。
 この程度のケガならコウの治療は1時間程度で済むはずだ。一時間後、完全体のコウが戻ってくる。

『一時間なら、…俺ひとりで戦ってみせる!
 より強い敵に悟られないように…!』


 繭がコウの傷ついた体、消耗した体力、磨り減った精神力を治療していく。
 徐々に完全体に戻っていくコウは眠りの中で涙を拭いた。
 泣く必要が無かった事を思い出した。

『…はあちゃんはぼくを裏切らない。絶対にだ。
 …待ってて。すぐに戻るから』


 繭に亀裂が入り、キラキラと外の光が繭の内部へとあふれてきた。
 コウは目を開け、回復した自分の体を確かめるようにしてゆっくりと立ち上がる。
 赤いローブのような衣服がコウの体の周りでゆらめいていた。
 開いた繭がほどけて髪に戻ってゆく。
 髪がうねる波のように、広がり、伸びていく。

 ゆっくりと…そうコウは感じた。
 ゆっくりと周りを見渡した。


 傷つき、引きずり倒され、繭から十メートルほど離された羽鳥の目に、繭に取りつこうとしている二・三人の敵が目に入った。
 繭は強靭だ。そのまま燃える溶岩の中に放り込んだとしても、中のコウにはキズひとつつかない。その熱さえ届かないだろう。しかし、上級者の下に運ばれたら…。

『ここまでか…。いやまだだ。まだ俺は戦える』

 その時、繭に亀裂が入り、繭の中から外へと光があふれてきた。

 光の中に人影のようなものを見た。と、羽鳥が感じた次の一瞬。羽鳥を押さえていた敵が短い叫び声を上げて消えた。繭に取り付こうとしていた敵もキラキラと輝きながら消えた。
 空間が真っ赤な何かに埋め尽くされ、目に入る全ての敵が、きらめいて消えた。

 コウを中心に半径百メートルほど。コウの髪は敵を貫いて空間を支配していた。その中の敵は一瞬で消し飛ばされた。羽鳥のみ見分けられ、傷ひとつ無かった。

 ごうっと一陣の風が吹き、コウの髪がいつもの長さに戻る。
 お気に入りのダメージジーンズに白いTシャツ。
 返り血ひとつついていない。それほど一瞬でコウは何十人もの敵を消した。
 赤い髪の下で真っ赤なピジョンブラッド(鳩の血の色)の瞳が輝いている。
 コウが羽鳥を見てにやりと笑う。
 地面に手をついたまま羽鳥も口のはしで笑う。首にはちぎれた敵の鎖が巻きついていた。
 羽鳥の左手は翼に変わり、鎌が突き刺さっている。右足にも折れた矢が刺さっている。

『もう、立つ事もできなくなっているんだ』
 そうコウは思った。
 一瞬でも羽鳥を疑った自分を許せなかった。

「遅かったじゃないか、コウ。また寝坊したな」

「早かったぐらいさ。まだ文句を言う元気があるじゃないか」

 コウの髪の一束が伸び、蛇のように羽鳥に近づいた。

「?」

 髪が羽鳥をつかみ、包んでいく。

「やめろ。コウ! やめろ。すぐに…かえ…」

『ばかやろう。他人を治療した事なんかないくせに…。すぐに元の世界に…』

 繭の中で眠りに落ちながら羽鳥はコウの意志に逆らおうとした。
 羽鳥を包んだ繭が地面に横たわると、コウはふわりとその繭に足をかける。

「羽鳥が欲しかったら、ぼくを倒すんだねっ!」

 気を失い、繭の中で眠っていたコウが、羽鳥と同じ事を言っている。

 さっきコウが作った空間に敵の軍勢がじわりと入ってくる。
 後ろで笑いながら見ていた者たちだ。コウの見せた力に緊張をしている。
 遊び相手を見つけた子猫の目をして、コウは敵の軍勢を見回す。

 羽の生えた者。獣の足をした者。角、尻尾、牙。まがまがしい軍勢。

『羽鳥のケガが治るまで、ぼくは一人で戦ってみせる』

 一瞬でも羽鳥を疑った自分を、そうしなければ許せなかった。

 羽鳥を守りつつ、一人で戦う事を覚悟したコウの戦い方は、自分でも気づかぬうちにそれまでとは変わっていた。
 最小の力で最大のダメージを与える。ほとんどの敵は一撃で死んだ。
 自分で決めた空間の中には誰一人侵入させなかった。
 一瞬でも気を抜かなかった。無駄な力を使って消耗するような事はしなかった。

 コウの時よりも短い時間で繭が開き、羽鳥が戻ってきた。

「ばかやろう。くだらない事をしやがって。
 すぐに帰るぞ」

「うん。はあちゃん」

「羽鳥とよべ」

「あはっ」

 息をはずませたコウが楽しそうに「せえの」と言い、それに羽鳥が気を合わせた。
 コウの髪が波となって空間をなぎ払い、羽鳥の風の刃が無数に飛び交った。
 髪と刃が消えた後にはふたりの姿も無かった。


 出発した場所、新宿にそびえ立つ百二十階建てのビルの屋上に二人は戻った。
 コンクリートの屋上の床に手をついて、荒い息をしながらコウは笑った。

「あはははは。帰って来た〜。
 あぁ、楽しかったぁ」

『命がけの潜入と帰還も、コウにかかっちゃまるでピクニックだな』

 羽鳥は苦笑した。しかし…。

 自分の思いは言葉にはせず、羽鳥が胸の中からクリスタルを取り出した。
 薄い水色だった。
 コウのクリスタルは薄い赤だった。

「一回で色がついちゃうね。はあちゃん」

「ああ。もう俺専用だ。ジジィには返さねぇ。人をエサにしやがって」

「エサ?」

「ああ、いい。おまえは気にするな」

「ええっ!?」

 不満そうにコウは口を尖らせた。



「ラボに行っておけよ」

 家に入るとすぐにコウの背中にそう言って、事務室のパソコンからテュポエウスに連絡を取った。

 画面が明るくなり小さな年寄りが顔を出した。

 多くの風の神々の父でもあるテュポエウスは、本当なら、星にも届く巨体で肩からは百の蛇が生えていると言われている。だが、その実体を羽鳥もまだ見た事が無い。不死の魔人とも呼ばれている。本来は羽鳥でも足元にも寄れない上級者だ。

 だが今は小さなはげ頭の年寄りだ。80歳にも100歳にも見えた。
 紺の作務衣(さむえ)を着て、背中を丸めている。
 実体は巨体なのにそんな姿を好んでしているのだ。
 ただの変わり者ではない。とんでもない変人だ。

「始めてくれ」

 テュポエウスが言い、羽鳥が目を閉じた。
 画面に羽鳥が向こうで見たものが映し出された。早回しのDVDのように、くるくると映像が変わった。
 5・6時間はあった潜入の記憶が5分ほどで流し終わった。
 終わって、画面がテュポエウスに変わった。

「ひっひっひっ。命拾いをしたなぁ」

「……」

 羽鳥は視線を落とし答える事ができない。自分の甘さが、コウの甘さにつながっている。
 確かに命拾いをした。それでもコウを愛さずにはいられない。

「ジジィ…。感謝している。いつもだ。
 うざいとは思うが…、見ていてくれて、感謝している」

「ひょお。こりゃあ、あしたは槍が降るのぉ」

 画面が暗くなり、すぐに明るくなった。

「忘れておったよぉ。言っておいたかなぁ。
 わしは徳太樓の金つばが好きなんじゃよ。
 榮太樓や竹隆庵じゃなくてな。浅草の徳太樓じゃよ。
 じゃあな」

 ケッケッケッという笑い声を響かせ、プツンと切れた。
 ぽかんと口を開けて見ていた羽鳥がつぶやいた。

「だから、なんだというんだ。クソジジィ」


『向こうへ行き、真っすぐ進み、みつかったら適当に戦って、生きて帰って来い』

 それが、テュポエウスの指示だった。偵察か?
 意味はわからなかったが、従うだけだ。

 報告をしながら、テュポエウスの気配を探った。
 隠す気はなかった。隠しても悟られる。ならば、と探る事に集中した。
 気がついているはずのテュポエウスはその事に触れなかった。

 コウが復活して繭から戻った時に、テュポエウスの気はわずかに揺れた。

『やはり、だ』と羽鳥は思う。

 繭から戻った時のコウはあきらかにそれまでのコウとは違っていた。
 まとった赤いローブも、赤い髪も、コウの気に揺らいでいた。
 羽鳥の教えに従い、すぐに自分の能力を隠し、さらに力が外から感知されないように結界を張った。
 それでも、半径100メートルの広さの空間を、その髪で支配した。

 ジジィは俺の命をエサに、コウの覚醒をうながしたのだ。
 本人はその事にまだ気がついていないだろう。だが、道はできた。
 羽鳥ではなくテュポエウスがその道を作った…。その事が羽鳥自身を責めた。


 自分もラボに行き、それからコウの部屋のドアをノックした。
 コウは自分のベッドの中に居た。疲れたのだろう。眠そうだった。

「コウ」

「…」

 羽鳥の気配でいい話では無いと悟ったのだろう。コウは起き上がった。

「なぜすぐ帰らなかった? お前が回復して戻ってすぐだ。
 あの時のおまえなら、ふたりが戻る時間を作れたはずだ。
 なぜ、俺の回復を優先した」

 それを言えば、羽鳥を疑った事を話さなければならない。
 コウは答えられなかった。

「あの場にテツ爺クラスの敵が居たら、おまえはどのくらいもった?
 俺とおまえは帰ってこれたか?」

「…!」

「もし、上級者が俺たちに関心を持っていたら、回復して戻ってきたおまえの一瞬の気配に気がついただろう。
 雑魚に俺たちを任せたりはしなかったはずだ。

 俺たちを偶然できた穴から迷い込んだ雑魚だとたかをくくっていた。
 俺たちが穴を開けて逃げられるとは思っていなかった。
 最初の熱帯植物園での敵を、俺がそう思っていたように、敵も俺たちを甘く見ていた。
 だから、助かった。そういう事だ」

「……」

「おまえしか戻れない。そんな時に、おまえが俺を切り捨てても、俺はおまえを恨んだりしない。
 逆もだ。俺しか戻れない。そんな時は俺はおまえを切り捨てる」

 コウの顔が青ざめ、唇が震えた。
 気がついているんだ。ぼくが羽鳥を疑った事を…。疑った自分を責めた事を…。

「勝つ事じゃない。生き延びる事、死なない事、そのほうが重要なんだ」

 羽鳥が部屋を出て行ったあと、コウはひざを抱えて丸くなった。
 眠気はふき飛んでいた。自分のした事がわかった。

『ぼくを切り捨てると言ったけれど、羽鳥は最後までふたりで戻る方法を探した。
 ぼくを風の槍で貫いた事も、ひとりで戦った事も、ふたりで帰るための選択だった。
 あの時のぼくは限界だった…。
 戦う事が楽しくて、夢中で力を使った。無駄に消耗していた。
 ぼくが帰る時間までは、羽鳥には作れなかった。だから、ぼくを…。

 なのに、ぼくが羽鳥を繭で包んだのは、ぼくの気持ちを救うためだった。羽鳥を疑った自分を許せなかった。
 …羽鳥が命がけで作ったチャンスを、ぼくはぼくのために使った。

 羽鳥の言うとおりだ。
 あの場にテツ爺クラスの敵がいたら、ぼくでは勝てなかった』

 悔しい。自分の甘さが…。悔しくて涙が出ない。
 頭の中と、心の中が感情でいっぱいになって、涙が出ない。
 泣けたら、楽なのに。でも、泣いてはいけない。この借りを返すまでは…。


 ホトホトと小さな音で、コウの部屋のドアがたたかれた。

「ぼっちゃま…、入ってもよろしいですか?」

 男の羽鳥はコウを突き放した。しかし鳥の姿になると、放ってはおけなくなった。
 ドアが開き、おずおずと鳥の羽鳥が部屋に入ってきた。
 マリリンモンローに似た、美しく官能的な顔が不安に曇っていた。

「はあちゃん!」

 コウははじかれるように駆け寄り、その首にしがみついた。

「はあちゃん、ごめんね。ごねん。もうしない。
 これからは羽鳥の言うとおりにする」

 泣かない、と思っていたのにコウは泣いていた。

「謝るのはわたくしのほうですよ。ぼっちゃま。
 わたくしの判断ミスが危険を招いたのですから。
 それに…、悪いのはあのクソジジィですわ」

『きっと、ああなる事をわかっていたのだ。あの狸ジジィは。
 わたしたちが死ぬ事さえもあのクソジジィは受け入れていたのだ』

「? テツ爺?」

「いいんです。ぼっちゃまはお気になさらずに。

 それに…。
 これからの、羽鳥の訓練は今まで以上に厳しいものになると思います。
 羽鳥を、男の羽鳥を許してやって下さいね」

 羽鳥は何度もテュポエウスに、文字通り半殺しにされた。
 戦士を育てるために必要な事だとわかっている。
 実戦で死なない事。そのためのスキルを身につけさせる事。
 それが本当の優しさだという事もわかっている。

『バカヤロウ。クソジジィ。大ッキライだ』

 そう言い、泣きながらテュポエウスにしがみついた幼い羽鳥を、テュポエウスは笑いながら抱きしめた。

 でも、羽鳥にできるだろうか。今でさえこんなに胸が痛んでいるのに。コウを…。
 男の羽鳥ならするだろう。この痛みを乗り越えるだろう。

 数日後、羽鳥は事務室に入り発見する。
 モニター前に羽鳥が置いておいた徳太樓の金つばの箱がからになって投げ捨てられ、空袋や包み紙が床に散乱していた。
 怒り狂って拾い集め、モニターの中に投げ込んだ。怒りのあまり、意味の無い言葉を叫んだ。

「俺をなめるなっ! クソジジイッ!
 ゴ、ゴミは…ゴミはちゃんと分別しろっ!」

 …終わり

 神話夜行 10 新宿パークタワーはこちらから↓
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