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アナタが作る物語コミュの【ファンタジー】神話夜行 7 椿山荘(ちんざんそう)・オリオンの間

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 こちらはシリーズ作品です。これだけでもわかるように書いたつもりですが、できましたら1話を読んでいただけると設定がわかりやすいかもしれません。

 神話夜行1はこちらから↓
 http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=73750993&comm_id=3656165

 写真。作中に出てくる羽鳥のチョーカーをめざして作ってみました。
 でも、かな〜り違う。第一チョーカーじゃなくてネックレス。しかも、滴るルビーも無いしィ。あせあせ(飛び散る汗)

 7300文字。少し長いです。初出 09/04/18

                      乙女座ブティック

 細いゆりの華のようなシルエットの黒いドレスが、女バージョンの羽鳥(はどり)の体の線を浮き立たせていた。

 彼女の白い肌に黒いドレスの組み合わせは男達にとっては刺激的だ。
 三十歳をすぎたところ。熟れきった肉体が若さの盛りをすぎて、少し崩れ始めている。そのゆるみが官能的な魅力をまき散らしている。
 肩もあらわ、胸も思い切り広く開けてある。すんでのところで乳首を隠しているだけだ。動きによってはこぼれてしまいそうで、男達の視線を釘づけにする。
 背中もざっくりと開けられていて、下着をつけていない事は当然だが、なぜドレスが落ちないのかがわからない。そんなデザインだ。
 黒の薄いジョーゼットを何枚か重ねたスカートも、うっすらと足の線が透けてしまう。くるぶしあたりまでの丈も彼女の細い足首を引き立てる。シーム入りの黒いストッキングはわざわざガードルで吊ってある。
 立っているだけならわからないが、スカートには深いスリットが両方の脇に入れられている。歩くと素肌の白い太ももがちらちらと見えてしまう。
 太い首輪のようなチョーカーが羽鳥の白くて長い首にまきつく。オニキス、ブラックダイヤ、スワロフスキー社の高級多面カットのビーズ。それらを編み上げた黒で統一したチョーカーの中央に、しずく形の真っ赤なルビーが一粒下げられている。のどのくぼみで揺れている。
 指先を切った黒いレースの長手袋の上に、チョーカーとセットのブレスレットをまいて、耳にはブラックダイヤのピアスが揺れる。
 アクセサリーのきらめきと競うように、ドレスの生地にもところどころラメのような光が踊った。
 細い眉。濡れたような瞳。真っ赤な厚い唇。のどもとのルビー。ピンヒールの赤いハイヒール。
 羽鳥自身が真夜中にしたたる一滴の血のようだった。

「はあちゃん…。露出狂…」

 長いすに寝転んで、眠そうに羽鳥を待っていたコウがつぶやいた。
 その言葉に、妖艶にほほえんだ羽鳥は、ついと手を伸ばし、真っ赤に塗られた長い爪で、コウのほほをつまんで言った。

「ぼっちゃま? どこでそんなはしたない言葉を覚えていらしたのかしら?」

「イタタ。
 羽鳥…。男の羽鳥が俺は露出狂だぁって言って、ぼくの目の前で筋肉をみせびらかした…」

「記憶にございません」

 女にとってドレスは戦闘服だ。いつもはコウに甘く、なんでも言いなりの羽鳥も戦闘モードの今は、なかなかに手強い。その上、女の羽鳥はサディスティックでもある。
 鏡の前で、羽鳥の髪がクルクルと踊り、一昔前のハリウッド女優のような大きなウエーブを作り、ピッタリと顔のまわりに納まった。

「作りすぎだよ…はあちゃん…」

「化粧とは人工物を取り付けることですわ。ぼっちゃま。
 ナチュラルさなんて無意味でございます。やるのなら、思いっきり作らなければ。
 さて、でかけますよ。ぼっちゃま。おしたくは?」

「とっくに済んでるよぉ」

 シルクのシャツにエリだけグレーの黒のタキシード。胸には白いバラの生花が一輪、ブローチ代わりに留まっている。
 おかっぱのような、ボブのような。長めの髪は、絵本の中の王子様に似ている。黒のタキシードとあいまって、コウは本当にヨーロッパあたりの小国の王子のようだった。

 コウ(蛟・みずち) 姿は蛇と龍の中間体。
 角と赤い髭と四肢を持ち、 背中には青い斑点があり、尾の先にはこぶがあるという想像上の生物だ。
 日本ではみずちだが、中国ではコウと読む。水神あるいは水霊。雨竜とも呼ばれている。
 あやめに似た杜若(かきつばた)の花を食べて、口から気を吐き蜃気楼を作る。
 コウはその蛟(みずち)が気に入り、自身をコウと名付けた。

 見かけは十七・八歳の日本人だ。
 身長はやっと百七十センチ。筋肉などお世辞にも無いと思えるほどの細身。
 そして、男なのに美少女と言いたくなるほど端正な顔立ち。
 けれども、コウはその見かけとは違い、ゴルゴンの三姉妹、ステンノー、エウリュアレー、そしてメドゥーサの三姉妹で産み出した、最強の戦士に育つはずの若者だった。

 真実、コウは羽鳥にとって、三人のご主人様から預かった大切な王子だ。

「めんどくさいなぁ…」

「テュポエウス様からのご指示でございます」

 ドアのところでコウを振り返り、羽鳥は言った。

「テツ爺?」

 立ち上がりながら、コウは聞いた。

「ぼっちゃまは、先日あのかたをお供になさいましたでしょう?
 今度はわしのお使いを頼むと。
 あのかたはそういうかたでございます」

「おとなって、やだ…」


 約一時間後、ふたりは椿山荘の五階、オリオンの間に居た。

 椿山荘(ちんざんそう)

 南北朝の時代から、椿の景勝地として椿山の名は文献に残っている。
 武蔵野台地の東はじのこの地を明治十一年(1878年)に山縣有朋(やまがたありとも)が購入し屋敷とした。そしてその屋敷を「椿山荘・ちんざんそう」と名づけた。
 山縣は明治天皇をはじめとする当時の政財界の大物を「椿山荘」に招き、しばしば「ささやかな」食事会を開いた。
 その「ささやかな」食事会で国政を動かす重要な決定が、何度も、密かに、されていた…というのは有名な話だ。

 現在でも、庭園だけで二万坪。
 樹齢五百年の椎(しい)の木も、有形文化財に指定された建物も、その庭園の中にはある。
 つまり、椿山荘とはそういう場所だ。

 セレブとは違う階層の人間達がつどう。
 成り上がりの者達が、金にあかせてリゾートを満喫する場所ではない。
 トラックの運ちゃん達が愛してつどう定食屋に近い。
 ただ、払う金額のケタが違う。そして話される内容が違う。

 シャネルやらグッチやらの、ブランドを見せつけるような品物は持たない人種。
 本物のブランドはこれ見よがしのロゴなどはつけない。修理をさせてひとつの品を何世代も使う。
 何世代も使える物を作る事のできる職人が、丁寧に作った物しか身につけない。
 百年愛された品には物の怪が宿るという。
 それが本当なら、物の怪がうじゃうじゃとひしめいている世界。
 そこに住む人間達もまた物の怪に似る。

 オリオンの間はその椿山荘が持つ二十二ある広間の中で、広さも格式もトップの部屋だ。
 立食で二千人は入れる。天井までは六メートル以上の高さがある。ゆうに二階分を使う贅沢な作りだ。

 普通は半分に仕切って使用されるその広間を、今夜はまるまる使用している。
 けれど招待客は千人もないだろう。立食といってもあちこちに数人ずつゆったりと座れるスペースを作ってある。
 彼らのつれてきた秘書達は、今、別室で、公けにはできない話をしているはずだ。
 生のオーケストラが入り静かな曲を奏でていた。
 カウンターバーもあり、バーテンが無表情でシェイカーを振っている。
 その前の背の高い椅子に羽鳥はひとりで座っていた。

「失礼。彼はあなたの恋人でしょうか?」

 白いタキシードを身につけた、四十歳ぐらいの男が羽鳥に声をかけた。
 その髪は銀色に近い白。ほりの深さは白人の血が混ざっているのかもしれない。
 胸に一輪、白い蘭(らん)をつけている。話し方も物腰も、遊びなれたキザさが漂う。
 男の視線はコウを見ていた。

「いいえ。
 年下の男を恋人にするほど暇ではありませんわ」

 男を見もしないで羽鳥は答える。

「年下の男を恋人にする事を、好む女性も多いですよ」

 男は聞く。

「学ぶ事の無い相手とつきあうなんて、時間と体力の無駄遣いだわ。
 そうしたい人を止める気も無いけれど…」

 男の方を向き直って羽鳥はいどむように言った。

「男はどうしましょう?
 多くの男は、年下の、学ぶ事の無い女とつきあっていますよ」

 羽鳥は、ふっ、と笑いながら答えた。

「男は女と違うわ。
 ごみ捨て場の中が似合うような女のためにでも、自分の人生を無駄にする。
 女の踏み台になる。それが男という人種の存在価値というものよ」

 羽鳥が立ち上がる。コウはすでに気がついて、羽鳥のそばに戻ろうとしている。

「?」

「中庭に出ましょう。ここでは迷惑をかけるから」

 そう言って、羽鳥は男の先に立って歩き始める。
 オリオンの間の出入り口でコウはふたりに追いついた。


 和と洋の絡み合ったような夜の庭園に三人は出た。椿山荘の庭は入園料無料でだれにでも解放されている。
 しかし、その格式が無意識な結界になってでもいるかように、昼間でも外部の者は入ってこない。
 まして、夜の8時すぎ。外灯の数を最低限に抑えてあるので、ほとんど闇に包まれている。

「こんなところで、どうするのです…?」

 前に羽鳥、後ろにコウ。狭い飛び石の小道を、二人にはさまれた形で歩いていた男が、立ち止まり聞く。
 答えがわかっている者の聞き方だ。
 
「一戦交えようって言うのさ」

 羽鳥の姿が男に変わり、振り返り言った。黒のパンツにグレーの長袖のTシャツだけ。
 いつもの革ジャンもサングラスも無い。すでに動きやすい戦闘用の服装だ。

「無粋だなぁ。女のきみと戦いたかったのに」

 コウが芝生の中に入り、羽鳥と九十度の位置に移った。二対一で戦う時の鉄則。はさんでしまったら、敵の体で味方の行動が確認できない。気配で感じ取れるとは言っても、目で確認できればそれにこした事は無い。

「でも、なぜわかった?
 ぼくは完璧に人間に擬態していただろう?」

「ぼく達は人間には見えなかったんだ。ぼくがフェイクをかけていた。
 声をかける者がいたら、そいつは人間じゃない」

 コウが少し自慢げに言う。

「女の俺に声をかけやがった、てめえのすけべ心をうらむんだな」

「きみに声をかけたわけじゃないさ。美しい人に声をかけたんだ」

 キザなセリフに羽鳥が顔をしかめた。

 かすかなノイズのような、夜の底を伝わってくる都会の雑音が消える。
 風の音も消え、建物の明かりも消える。
 コウが空間を切り取ったのだ。もうここにはだれも入っては来れない。
 どんなに破壊をしようと、表の世界に影響は無い。

 コウのタキシードが姿を消し、ハイネックの長袖シャツに変わった。
 シャツの暗いオレンジ色は、意外にも闇の中に溶け込んでいた。

 男の姿も変わった。銀の髪。白いローブのような服。銀のサンダル。
 古い絵画の中の神話の神のように銀の矢を数本右手に握っている。

「ぼくの矢に痛みは無い。けれど、一瞬の死をきみ達に与えるだろう」

「銀の矢。アルテミスの眷属…か」羽鳥がつぶやく。

「ああ、美しい月の女神だよ」

 手をはなしても矢は空中に留まり、男が何もしなくても、羽鳥をめざして飛んだ。

 キン。

 矢は羽鳥の前ではじかれ、きらめく光となって消えた。
 透明な空気の円盤が羽鳥の前で盾となっていた。
 羽鳥のまわりで細かな羽毛がはじける。
 羽鳥の作り出した無数の真空の刃が、空中を飛び交い、次々と産まれる銀の矢とぶつかり合い、きらめく光となって消えていく。
 無数の火花が二人のまわりできらめいては消えていく。

 コウの髪が赤く燃え、伸び、コウのまわりでうごめいている。
 瞳がピジョンブラッド(鳩の血)の濃い赤に輝く。

 男の作り出した矢と羽鳥の空気の刃は三人のまわりで飛び交ってはいたが、コウには攻撃が無かった。
『ぼくはなにをしたらいいのだろう』
 そんな気配を見せて、コウは無数の火花に見とれていた。

「きれいだ…」
 
 突然に大量の矢が、コウをめがけて飛んだ。あやうく空に飛んでよけるコウ。
 飛び道具を使う敵に高く飛ぶのは危険だ。着地点を攻撃される。当然のように、大量の矢がコウの着地点に突き刺さる。
 空中に浮かぶ薄いピンク色の円盤の上に、コウは立っていた。何本かの髪の毛が矢を絡め取っていた。
 絡め取られた矢がぼやけて消えて行く。羽鳥のように消し去る事ができないのだろうか。
 そう悟った敵が、コウに対して攻撃を集中させた。

 複数の敵と戦う時には弱い敵から叩く。戦いのセオリーだ。

 三人の動きが活発になった。髪で矢をはたき落としながら逃げるコウ。追う敵。さらにその敵を追う羽鳥。
 ピンクの円盤を作り、飛び移り、動きを読まれないようにして、コウは位置を変えていく。羽鳥と一直線にならないように。
 そして、スキを見て反撃をする。無数の髪が敵の矢の間をぬって、敵に迫るが届かない。
 銀の矢に切り取られ、赤い髪の切れ端が飛び散る。
 コウに気を取られ、敵が羽鳥に背中を見せた。その一瞬。その背に羽鳥の大量の風の刃が飛んだ。
 風の刃が敵に届く直前に敵が上空に飛んだ。刃の前にはコウが居た。目を見開き、動けないコウを無数の刃が切り裂く。
 コウと羽鳥と敵、一直線に並んだ一瞬に、敵はわざと羽鳥にスキを見せたのだ。

 空中にとどまる銀の矢の上に立ち、切り裂かれたコウと驚く羽鳥をうっすらと笑いながら敵は見ていた。
 キラキラときらめき消えていくコウを、最後まで見る事無く、羽鳥は敵を振り返り見上げた。
 羽鳥を真正面から見つめる敵の笑顔が驚愕のそれに変わる。
 コウの無数の赤い髪が敵の体を貫いていた。

「ぼくは幻を見せるのが得意なんだ」

 ピンク色の空気の円盤の上からコウが言った。きらめき消えたコウは幻だったのだ。

「それにその円盤は俺が作っていたんだ。
 コウがどこに居るかなんて、目を閉じていてもわかる」

 羽鳥がつけ加える。

「くっ」

 数本の銀の矢が生まれ、コウに向かい飛ぶ。コウの髪が軽々と矢を切り裂き、矢はきらめいて消えた。

「自分の能力を隠すなんて、戦いの基本だよ」

 コウがつぶやく。

 コウの髪に無数に刺し貫かれながら、それでも男は消えなかった。
 コウの髪と男の間で、火花のようなきらめきが走っている。消し去ろうとするコウと、男の力が、まだ戦い続けている。
 しかし、羽鳥が残っている。羽鳥とも戦う余力は無いだろう。
 羽鳥が手を出さないのは、この戦いもまたコウの成長の糧にするためだ。

「降参だ…。最後に美しいきみが見たい…」

 そう言って男は羽鳥を見た。
 一瞬の迷いの後、羽鳥は女に戻った。黒いドレス。黒いチョーカー。白いのど元の真っ赤なルビーのしずく。
 細いハイヒールで男に近づいた。
 その羽鳥のすぐ直前にいくつもの銀の矢があらわれ、飛んだ。羽鳥も応じたが全てを避ける事は不可能なほど近い。
 羽鳥の白いほほと左腕に赤い血がにじんだ。

「ぼくの矢に痛みは無い。だが一瞬の…死を…きみ…に…」

 羽鳥がその場に崩れ落ちた。

 羽鳥を攻撃するために振り向けた力は男にとってはささいなものだったろう。
 が、コウの髪が男を切り裂くには充分だった。男がきらめいて消えたあと、倒れていた羽鳥の姿も消えた。

「だから言っただろう? ぼくは幻を見せるのが得意なんだ」

 コウのつぶやきがきらめき消える男を追った。女の羽鳥が消えた位置から何メートルも後ろに男の羽鳥が立っていた。
 羽鳥が女に変わった事も、女の羽鳥が男に近づいた事も、コウが見せた幻だった。

 敵が強ければ強いなりに、コウは戦いを楽しんでしまう。
 羽鳥が教えてきた戦いのノウハウを、ひとつひとつ確かめながら戦う。
 一度痛い目に会わなければ、あるいは経験を積んでいかなければ、戦いが命のやり取りだと実感できないだろう。

『一瞬でいい。敵がスキを見せたら、その一瞬で切り刻め』

 羽鳥は何度も言い聞かせた。死に行く者の頼みとは言え、女の羽鳥を見せてやる必要は無かった。
 そう思いながら、羽鳥はコウにどうなって欲しいのか、自分の気持ちを量れないでいる。


 風の音が戻り、都会の雑踏が戻ってくる。切り取られていた空間が元の場所に戻ったのだ。

 男の消えた後にクリスタルは無かった。

「これだけの力を持つ奴だ。自分で穴を開けたのなら、俺たちは気がついたはずだ」

「だね。はあちゃん。
 テツ爺はなんて言ってたの?」

「今日のパーティーにお前を連れて行き、敵をあぶり出し、二人でつぶせ。…それだけだ。
 それよりコウ。羽鳥と呼べ」

『別ルートで奴の存在をかぎつけ、コウにぶつけた。
 多分、コウのスキルを測ったのだろう。もしくは、実地訓練。
 俺は単なる付き添いの保護者だろうよ。クソジジィ』

 心の中で羽鳥は毒づく。コウに関心を持っているジジィの事だ。今もどこかで見ているはずだ。

「気配は無いね。はあちゃん」

「コウ。羽鳥だ」

 テツ爺ではない。
 こいつが使ったクリスタルを持った奴がいたはずだが…。仲間がやられるのを見て逃げ帰ったのか、元々こちらには居なかったのか。二人の感覚では敵の存在は感じ取れない。

「まあ、いい。仕事は終わった。帰るぞ」

 羽鳥が鳥に変身した。顔と胸は人間の女。さっきまでの髪型が気に入ったのか、髪はドレスアップした時のままだった。黒いチョーカーとルビーの赤い光が首元で揺れ、むき出しの白い乳房をきわだてている。

「はあちゃん…、疲れた。眠い…」

 羽鳥が女になった瞬間、コウは羽鳥の首にしがみつき甘えてみせる。
 羽鳥の右の翼が手となる。長い赤い爪で羽鳥はコウのほほをつまむ。

「イタタタ…」

「ちゃんとおうちにつくまでは起きていてくださいね。ぼっちゃま。
 どこに敵が居るかわからないんですよ?」

 春は三寒四温。そのはざまに雨が降る。
 人見知りな春はおずおずと歩を進め近づいてくる。
 一雨ごとに花は開き、草木は萌える。その花と若い芽の香りをふくんで春の風はなまめかしい。

 湿り気をふくんだ夜の気配の中、羽鳥とその両足にぶらさがったコウは、春風を感じながら家に戻った。

 …終わり

               えんぴつ

 椿山荘については公式HPを中心に調べました。明治時代、歴史の裏舞台になったと椿山荘のHPにもありました。
 でも、今現在もそうなのか、は私の妄想です。
 ただ、一度ランチに出かけた時には、ランチの値段よりも高そうな食器が使われ、大量の生花があちこちにゆったりと生けられていました。
 そして、ケーキの並んだガラスケースをながめていた小学生低学年らしいお嬢様が、しずしずと親たちのテーブルに戻り
「おかあ様。わたくし、今日は○○がいいわ」
 と、おっしゃいました。
 わたくし、のけぞりましてよ。
 うちのガキどもとえらい違いだわ。あせあせ(飛び散る汗)

コメント(4)

久しぶりのコメント失礼します!^^

シリーズの6話までしか読んでいなかったので、
7話目は初見になるのですが相変わらずかっこよくて面白かったです。

コウと羽鳥とはあちゃんのキャラがちゃんと確立していてブレることなく二人(三人?)のやり取りもパワーアップしていますね。

毎回戦いの舞台設定を考えるのは大変なのに、そのアイディアの豊富さにレイラさんの凄さを感じます。

これからもレイラさんの作品を楽しみにしていますね。^^
阿波木氏さん
 いつもありがとうございます。こちらこそ、です。

 舞台設定は、一度行ったところを選んでいます。
 で、ネットをめぐって、あれこれネタ探し…。
 出不精なので、そのうち尽きてしまいますね…。

 8話は長い話ですが一度にUPしました〜。
 全3話。1話はこちらからです。 ↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?comment_count=1&comm_id=3656165&_from=subscribed_bbs_feed&id=74371206

 アドレスが変更になったのでコメント2と3を削除して書き直しました。

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