■ジクロルボス (資料として準備中のもの) EFSA ジクロルボスの農薬リスクアセスメントピアレビューに関する結論 Conclusion regarding the peer review of the pesticide risk assessment of the active substance dichlorvos 19 June 2006 http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178620764142.htm 要約 http://www.efsa.europa.eu/EFSA/PRAPER_Conclusion/praper_concl_sr77_dichlorvos_summary_en1.pdf ジクロルボスはEC No 451/2000でカバーされる再評価計画の第二段階52物質のうちの一つである。リスク評価報告書案(DAR)はイタリアが作成し、2003年10月20日にEFSAに提出された。質のチェック後に2004年6月21日からEU加盟国によるピアレビューが始められた。2005年2月9日の評価会合で寄せられた意見に基づき追加データが必要ということで合意された。以下の結論は2006年5月4日の議論の結果である。 花の球根をアザミウマから守るために噴霧蒸発装置を使って室温で殺虫剤として使用することを前提に結論に達した。散布量は100 m3あたり2.2gのジクロルボスを最大3回で、最大総量として6.6g/100m3となる。ジクロルボスはダニ駆除剤や殺虫剤として使用できる。申請者はEUの評価計画では殺虫剤としての使用のみを考えている。 評価対象としたのは一部のEU加盟国で登録されている乳剤(EC)"Dichlorvos 550 g/L EC"である。 土壌や水や空気の残留指標となる物質のモニター方法はない。農薬としての最低限の品質管理のための物理的・化学的・技術的データや測定方法はある。
ジクロルボスは急性経口又は経皮暴露で毒性があり、急性吸入暴露で有害性が高い。皮膚や目に僅かに刺激性がある。ジクロルボスは皮膚感作性がある。分類としては以下が提案されている: R25 飲み込むと有害 R24 皮膚に接触すると有害 R26 吸入で極めて有害 R43 皮膚と接触すると感作の可能性がある ジクロルボスは生殖・発生毒性に関する懸念はない。入手できるデータに基づくと遅発性神経傷害は観察されていない。変異原性と発がん性については、提出されたデータが貧弱で発がん性について結論できないためEFSAのPPRパネルに諮問された。従ってPPRパネルの結論が出るまでは使用者の参照値の設定については検討されなかった。PPRパネルの2006年4月1日に採択された意見を考慮し、 2006年4月の会合では遺伝毒性と発がん性に関するデータの不確実性、及び申請書の全体的質の低さからリスクアセスメントの結論は出せないことで合意した。 植物や動物中残留や消費者の食事からの暴露によるリスク評価は申請された使用方法では必要ない。 申請された使用方法では、事故や誤用がなければ土壌や自然の地表水中でのジクロルボスの環境運命の評価は必要ない。適切な園芸上の使用方法が守られれば、球根は処理する前に洗浄される。従って他の収穫後の貯蔵用農薬の場合と違って、洗浄水による地表水のジクロルボス汚染はおこらないだろう。蒸気圧からみてこの液体は揮発性で、無次元ヘンリーの法則空気水分配係数 (1.06x10-5 at 20°C)から水系では中程度に揮発性がある。従って申請された室内使用では、処理後に貯蔵庫が開けられた場合に空気からの暴露がおこるであろう。しかしながら地面や地表水への湿及び乾燥再沈着は無視できるであろう。ジクロルボスは上空でのヒドロキシルラジカルとの光化学反応で半減期が13-20時間と推定されるので長距離運ばれることはないだろう。 球根への室内使用では暴露量が少ないと考えられるので、鳥類やほ乳類、水棲生物、ミツバチ、その他の非標的節足動物、ミミズ、その他の非標的生物、土壌中非標的微生物へのリスクは低いと考えられる。下水の生物学的処理へのリスクは低いと考えられる。 EFSA ジクロルボスの評価に関するPPRパネルの意見 Opinion of the Scientific Panel on Plant protection products and their residues (PPR) related to the evaluation of dichlorvos in the context of Council Directive 91/414/EEC. Last updated: 24/04/2006 http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178620773395.htm ジクロルボスはアセチルコリンエステラーゼを阻害して神経の信号伝達を抑制し多くの昆虫で急速な呼吸困難を誘発する有機リン系殺虫剤である。同じメカニズムでほ乳類の急性毒性がおこる。ジクロルボスの適用は保存中の球根害虫用のみである。 PPRパネルはi) ラットとマウスにおける各種臓器でのジクロルボスによる腫瘍発生の増加は作用メカニズムが同定できるか、もしできたとしてその作用には閾値があるか ii) ジクロルボスの発ガンメカニズムはヒトに外挿できるかについて諮問された。 ジクロルボスの発がん性についてはマウスで5つの、ラットで6つの長期試験がある。 投与経路は混餌・飲水・強制経口・吸入で、ほとんどの試験では発がん性は認められていないがF344/Nラットを使った試験とB6C3F1マウスの試験の二つの強制経口投与試験で新生物の増加があったとされている。これらの試験では雄ラットの単核球白血病、雌ラットの乳腺線維腺腫と腺腫の合計、雄ラットの膵腺傍腺腫、雌雄マウスの前胃腫瘍の増加が報告されている。入手できる全てのデータを考慮した結果、PPRパネルはマウスの前胃腫瘍以外については、腫瘍発生頻度の増加が投与物質によるという説得力のある根拠はないと結論した。マウスの前胃腫瘍は全身暴露によるものではなく局所暴露による結果である(強制経口で胃内投与しているので)。 入手できるデータからはジクロルボスはin vitro変異原性物質であり、接触部位ではin vivo変異原性も示唆されるがこの作用のメカニズムは不明である。 In vivoでのDNAアルキル化の根拠は極めて薄弱である。 ジクロルボスによるマウスの前胃腫瘍誘発メカニズムを同定するには根拠が不十分であるが、作用メカニズムに関わりなくこの反応は局所での高濃度が持続したためのものでこの部位に限定されると結論した。さらにこの反応には閾値が存在すると考える。根拠の重み付けを行った結果、この物質の申請された使用状況ではこのような事態はおこらない。さらに発がん性をもたらすほどの濃度が前胃以外に到達するまえに重大な全身毒性が見られるであろう。前胃は腺胃や食道より長期に物質を留める独特の構造をしているからである。 (注:前胃はヒトにはない)
ENVIRONMENTAL HEALTH CRITERIA 79 (1988) DICHLORVOS SUMMARY AND RECOMMENDATIONS http://www.inchem.org/documents/ehc/ehc/ehc79.htm#PartNumber:1 1.1 一般的性質 ジクロルボスは直接作用性コリンエステラーゼ(ChE)阻害作用のある有機リン化合物である。1961年から商業用に製造され世界中で接触性及び食性殺虫剤として使用されている。貯蔵している製品や作物を守るため(主に温室で)や家畜の体内及び体外寄生虫コントロール用(含浸樹脂顆粒として)、家庭やビル、航空機、室外用殺虫剤(エアロゾルや液体スプレー、含浸セルロースやセラミックや樹脂のストリップとして)として使用されている。現在の世界の産生量は年に約400万キログラムである。 工業用製品の純度は少なくとも97%で、不純物のタイプは製造工程による。湿気があるとジクロルボスは酸性物質に分解し最終的に無機化する。工業用ジクロルボスは貯蔵性を向上させるため安定化されることもあるが通常高純度製品は安定化を必要としない。過去には2-4%のエピクロロヒドリンが安定化目的で使用された。ジクロルボスは水に溶け、ほとんどの有機溶媒やエアロゾル推進剤に混和する。蒸気圧は比較的高い(1.6 Pa at 20 °C)。 食品や飼料や環境中ジクロルボスの検体採取と分析方法及び血中、赤血球、血漿、脳ChE活性阻害作用測定法はある。