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俺と伝説のニーランチャーコミュの190

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190

卒業式が近付くと、樋口は学校を休むようになった。

「樋口、おまえ最近どこにいるの?」
「アメリカ。」

俺は久しぶりに出てきた樋口を捕まえて聞いてみた。

「何作ってるんだよ。」
「パルス発生装置。」

樋口は一通り説明してくれたが、俺にはレーザー光線みたいなものを発射する物だという事しかわからなかった。

「石井いおんを止めなきゃいけないだろ。そのために、真剣に科学の力を使おうと思ってな。」

樋口はそう言って、大きく息を吐いた。
家に帰ると、忙しくてつかまらない樋口のかわりにケットシーを捕まえて話を聞いてみた。

「石井いおんの力は強大すぎます。だから、前回話し合ったあと、マイアーと私と樋口で石井いおんを打破する方法を模索する事にしたんです。」
「倒せるの?」

ケットシーが渋い顔をした。

「分かりません。ただ、無策であるより良いかと思いまして。」

ケットシーはそれ以上は教えてくれなかった。
次はロビに勉強を教えていたマイアーを捕まえる。

「私は、いおんの力の源である3つの器具を破壊する方法を考えています。」
「あるの?」

マイアーは詳しく教えてくれた。

「恐らくあの3つはそれぞれ役割が違っていると思います。まず、ハンマーは電気をコントロールするコイルかマグネトロンの類が入っているのだと思います。そして、腰帯は充電装置。手袋は腰帯からハンマーへ電力を供給する為の導線の役割ではないかと思っています。ただ・・・」
「ただ?」

マイアーは一旦俺との話を止めると、ロビの間違えた問題を丁寧に正した。

「飲み込みは早いんですが・・・ああ、そう。雷神の3つの道具のうち二つは簡単に作れてしまいそうな気配なんですよ。」
「そうなの?」

マイアーは自分でも半信半疑らしく、多少うやむやにしながら話した。

「いおん自身の能力がどれほどかは分かりませんが、ハンマーは私の思っているとおりのものであれば、結構近いものが造れると思えますし、手袋にいたっては、多分ホームセンターでも材料が揃います。ですから、破壊するなら・・・」
「ベルトですか?」

マイアーは慎重に答えた。

「私の推論が正しければです。」

俺は何か出来る事はないかと思ったけれど、特になさそうなので、今度ロビに走り方を教えると約束してマイアーに別れを告げた。

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191

春が近付いて幾つか変わった事があった。
ロビは割り算の通分が出来るようになった。
クレオは俺たちの家よりもさらに高台に家を立てた。
カラバ王国のビルが完成して、同時に塩の精製工場が稼動し始めた。
地元の部族と契約して岩塩を買い、精製して都市部で売って外貨を獲得しつつ、経済的なつながりを深めるのが目的だそうだ。
そして、俺は高校を卒業した。

「おめでとう。よく頑張ったな。」

父が褒めてくれた。
俺は良い機会だと思って怪我した事を謝った。
卒業祝いに志村家と瀬田家全員で近所に天ぷらを食べに行った。

「和食って、やっぱりいいよね。」

俺は天ぷらは確かオランダの料理だった気がしたが、南米に流れている川をナイル川だと勘違いしていた一件以来、自分のうろ覚えの知識に何かを期待しないようにしていた。
七美のお父さんと、俺の親父が二人で仲良く食事している姿を見ていると、自分にもいつかそんな日が来るのか心配になった。
家族と志村家に帰り、部屋の扉をくぐって我が家へ戻ると、七美にそう打ち明けた。

「俺、早死にしたらごめんな。」

七美は学生服をしまう手を止めて、俺に微笑みかけた。

「なに・・・笑うような話か?」

七美は嬉しそうに言った。

「あのね、牧人が死んだとして世界で一番悲しいのって、誰だと思う?」

俺は真意が掴めずに、深く考えないようにして答えた。

「おまえ。」

七美は満足そうに頷くと答えた。

「そう。だから、それが嬉しいの。」
「・・・そういうこと?」

七美は俺の座ってるソファの前に来て、かがみこんだ。

「だってね、牧人が死んで一番悲しい事って凄いじゃない?牧人に会わなかったら、私そんな人生を歩まなかったでしょ?」
「死ぬ事はいいの?」

七美は「よくなーい」と言いながら、また衣装だんすのほうへ歩いていった。

「でも、いつかは死ぬじゃない。もし私が先に死んだら、世界で一番悲しんでね。」
「・・・おん。」

よく分からなかったので、なんだか変な返事になってしまった。

「分かってないなぁ・・・私は牧人を好きでいる人生を選んだの。だから、牧人が生きていることを喜ぶのも、牧人が死んだのを悲しむのも、全部、全部!」

七美はそこまで言うと、息を整えた。

「・・・全部、私のモノなの。牧人の人生を丸ごと!」
「丸ごと?」
「そう、丸ごと。」

俺はまだ何か分かったような分からないような感じだった。

「牧人・・・卒業おめでとう。」
「・・・ありがとう。」

結局、七美が何を考えているのか理解する事は出来なかったけれど、俺は自分が幸せなんだという事をよく理解した。
192

カラバ城の円卓で樋口がうな垂れていた。

「すまない・・・みんな・・・」

開口一番謝罪から始まった。

「なんだ、どうした?」
「研究を攫われた。もってかれちまった。」
「詳しく話すでござる。」

樋口はうな垂れたまま経緯を話し始めた。

「俺が研究していたのは、パルスを使って狙った座標の大気をプラズマ化して、空気中に見えない導線を作って、雷の軌道を曲げる装置だった。でも、狙った空間上の点から点をプラズマ化した大気でつないで導線を作るためには、恐ろしい演算処理が必要になる。二本以上のパルスを干渉させてその点をプラズマ化するような仕組みでないと、装置そのものが落雷の標的になっちまうからだ。」
「なるほど、確かにそうでござるな。」

マイアーは納得しているようだ。

「そのために俺は多次元計算を一瞬で行なえる、光学コンピューターの発展理論を研究し、設計してたんだ・・・ところが!」
「ところが?」

俺は合いの手だけは入れようと心に決めていた。

「そのコンピューターの製作には越えなくてはいけない壁がいくつもあったのに、俺の理論を横から見ただけの奴に、いとも簡単に作られてしまった!」
「そんなことが可能なのでござるか?3次元光学演算のことでござろう?技術的に不可能だと思っていたでござる。」

マイアーは頼もしい奴だ。

「・・・技術的には今だって完全に不可能なんだ。俺は、そのハードルを超えれる瞬間の為に、パルス制御にまつわるあらゆる演算を3次元に変換して高速処理する理論を準備していたんだ。それを見られたんだよ。」

マイアーはちょっぴり拍子抜けした顔で乗り出していた上半身を椅子に収めて、ため息をついた。

「実害はないでござる。まさか、賞金がかかっていたのでござるか?」

樋口は立ち上がり机を拳で殴りつけた。

「マイアー、話は最後まで聞け!」

珍しく、樋口が激昂している。

「な!・・・分かったでござる。続けるでござる。」

樋口はどっかりと腰をおろし、神経質そうに両手を組んで、五本の指を交差させた。

「アハド・ゴールドバーグは俺の理論を完全に理解した。そして、4次元に拡大した。それを暗算できるんだよ、あの男は!」

俺は話の詳細は分からなかったが、樋口の口ぶりからひとつの答えを導き出していた。

「・・・もしかして、そいつは樋口よりも?」
「当然、計算能力が高い。4次式、4乗根までは難なく暗算で解く。しかも、空間演算は厳密にはデジタルではないから、有理数、無理数を限りなく同列に扱えるんだ。」

マイアーは眉間にしわを寄せている。

「という事は・・・4次方程式を?」
「直接解く。そして、無為な端数を切り捨てて即座に近似値に辿り着く。当然、その中には虚数も含まれる。現実には必要のない4次元空間制御まで奴の範疇だ。しかも、それを全て、暗算でやってくる。」

マイアーが口をあけている。

「なあ、樋口、俺たちに分かるように説明してくれよ。」

樋口は唸った。

「何ていえば分かるかな・・・大学ノート一冊分の計算を暗算でとくんだよ。」
「おまえだって出来るだろ?」
「俺が出来るのは『大学ノート一冊分の計算問題を暗算で解く』事であって、一問解くのに『大学ノート一冊かかる問題』じゃない。そして、重要なのは奴がいれば、俺の光学コンピューターは必要なくなる。そして、その成果に喜んだ研究室は、奴を演算の中心に据えて装置の製作に取り掛かったんだ。」

黙っていたケットシーが口を開いた。

「何を作っていたんでしたっけ?」

樋口が答える。

「4元パルスレーザー発生砲『テトラパルス』っていう計画だった。その研究過程で出来る副産物やデータを大学に提供するって口約束で、巨額の開発費を捻出してもらったんだ。」
「それが、どうなったんですか?」

樋口は多少落ち着きを取り戻した。

「8元パルスレーザー発生砲『オクトパルス』に生まれ変わった。当然、俺は蚊帳の外だ。このままだと安保理の手に渡るのも時間の問題だ・・・あんな研究しなきゃ良かった・・・」

樋口はそう言って、力なくうな垂れた。
193

俺たちにとっては退屈な時期が続いた。
何もすることがなく、ただ、城であーでもないこうでもないと話をするだけの日々だった。
ロビはいつしか人間に対する恐怖を克服し、勉強も進んできた。
学校に通わせる日もそう遠くなさそうだ。
俺たちはスペイン語しか話せないロビを、どこの学校に通わせるか話し合うようになった。
結局、俺は学校を卒業して、表向きは何も仕事をしていないような状態だった。
そして、それはあながち間違っていなかった。
七美にせがまれて、買い物をするために二人で街を歩いていると、携帯電話が鳴った。

「ケットシー?どうしたの?」
「テレビ見れますか?日本だったらNHKとか!」

俺は急いで近所の家電量販店に飛び込むと、普段だったら大相撲がやっているであろうテレビの前に陣取った。

「あ・・・赤月!!」

テレビに映っていたのは紛れもなく赤月だった。
その後ろには見知らぬ女性が4人と、男性が3人映っている。

「デビョルワンだよな?これ!?」

電話の向こうのケットシーにそう言うと、ケットシーが「そうです」と答えた。

「いま、樋口がここにいるんですが、アハド・ゴールドバーグはこの少年だそうです。」

デビョルワンと豚みたいな男に挟まれて少年が立っている。

「RSSSの皆さん、安保理の皆さん、そして地球人類の皆様、お久しぶりです。私は今日この瞬間から、クリムゾンムーの建国を宣言します。国土は太平洋のどこかに今から作ります。国民はこちらのノエミ・ローゼン、許小潔、大別王、カラヴェラ・カパアケアとその妻ペナフローラ・カパアケアとカードロ・カパアケア、そして私、赤月です。統治者は私。法律も私。国権は私。認めない国家には武力行使を行ないます。また、カラバ王国と、その同盟国とは以前から不可侵条約を締結しております。ただし、我が国を国家と認めない限りは国家間の条約は当然無効です。お分かりになります?では、せっかく報道関係者の皆様にお集まりいただきましたので開国記念にデモンストレーションなどいたします。あちらをごらん下さい。」

テレビカメラは広場を映した。
真ん中には結構な人数がおしくら饅頭のような状態で固まって立っている。

「これ、日本か!?」
「そうです。日本語でしょう?」
「そ・・・そうだな!」

テレビを見ていると、ノエミ・ローゼンと呼ばれた女性が左手首のリストバンドに手をかけた。

「あちらに、このあたりでいけないお薬を売りさばいていた方々を集めておきました。ノエミ。」

ノエミがリストバンドを取ると、手首には生々しい切り傷が開いている。
そして、ノエミがカメラに背を向けて、広場の一団に向かって手を突き出すと、画面を覆い尽くすばかりの赤い液体が広場に向かって噴出した。
見えないガラスの水槽があるかのように、赤い液体は広場の真ん中に溜まり、水位を上げていく。
広場に集まった連中はなぜか身動きとれずに、口々に許しを請いながら、水位を上げる赤い液体に恐れおののいている。

「テレビの中での事なので、合成映像か何かだと思って大目に見てくださいね。・・・ノエミ、終わらせて。」

赤い液体はおもむろに鋭い棘に姿を変えて、その集団を全方向から串刺しにした。
悲鳴もあげずに、全員絶命したようだ。
デビョルワンがそこへ手をかざすと、連中は綺麗さっぱり地面に飲み込まれた。

「楽しい手品は終わりです。住所が決まったらお知らせしますからね、ごきげんよう。」

赤月はそう言うと、カメラの前から姿を消した。

その数時間後、南太平洋上の何もない海だったはずの場所に、広大なジャングルが出現し、赤月はクリムゾンムーの建国を強行した。
194

俺たちはテレビでRSSSの名前を公開された事に焦りを感じていた。

「そのうち、『あのRSSSって言うのは、なんだったんだ』って話になるぞ。」

RSSSは本来、秘密の組織でもなんでもない。
ただ、秘密にしなければいけないことが多々あるというだけだ。

「しかも、赤月はご丁寧にデモンストレーションまでしやがった。」

テレビを見た人々の声を、報道番組が追っている。
そして、建国されたクリムゾンムーの映像は異様だった。
海面から伸びた巨木が直接、ジャングルを作り、国土を形成しているのだ。
しかも、テレビカメラが映している間にも、ジャングルは見る見る面積を広げていく。
国連安全保障理事会は「知らない」と公式声明を出した。

「この中で顔バレしていい人は挙手!」

レンツォ以外の全員が手を挙げない。

「私は兜をかぶってしまえば、問題ないんです。」

クレオがそう言うと俺たちは妙に納得した。

「顔だけ隠すのはアリだな。」

俺たちはつくづくアメリカンヒーローっぽくなってきていることに抵抗を覚えながら、背に腹は替えられないと考えて、仮面をかぶる事で決定した。
カラバ王国建国の時に多少顔が世界に放送された事もあるので、カラバ王国に必要以上に迷惑をかけるのも忍びなかった。
俺は無理を承知で宮元さんにお願いすると、宮元さんは城へ飛んで来て、俺たちを採寸し、一揃い服を縫製してくれた。
ハンはすでにドレスを持っていたので、仮面だけで充分だったが、宮元さんはハンのドレスもキッチリサイズを直してくれた。

「太ったわけじゃないの、成長したのよ!」
「誰も、太っただなんて言ってねーよ。」

クレオの兜と翼の色、ハンのドレスの色を考えると、黒で統一するのが得策だと宮元さんは進言した。
全てオーダーメイドにすれば、宮元さんが黙っている限り、着ている衣服で個人を特定されない利点は大きい。
宮元さんはカラバ城に仕事場を持ち込み、寸暇を惜しんで服を作った。
裏地には、羊皮紙に染め出したカラバの紋章が縫いこまれている。
この護符が俺たちの言語の壁を取り払っているので、ここは外せない。

「僕には?」
「ロビ、おまえはまだダメだ。おまえは俺のばあちゃんの家から学校へ通って、勉強して、立派な大人になるんだ。」

レンツォがそう言い聞かせた。

「いつか、『夫はテロリスト』っていう本でも書こうかな。」
「やめてよ、なんとか正義の味方になれるように頑張るからさ・・・」

七美は縫いあがった服を眺めて物騒な事を言う。
ケットシーが宮元さんを見上げて言った。

「もし宜しかったら、このままカラバ城にいらっしゃいませんか?」
「城付きの仕立て屋ですか・・・夢みたいですね。」

俺たちの服はアメリカンコミックヒーローとは一線を画していた。
そこに並んでいたのは伝統的な紳士服の数々だった。

「決して、動きにくい服は作りませんでした。マイアー様の服とクレオ様の服が一番苦労しましたが・・・」
「忍び装束・・・それも戦忍(いくさしのび)のモノでござるな。」

マイアーの服はとても短期間で作った物とは思えない。

「なにしろ資料が少なくて・・・」

クレオの服は翼を出すために大きく背中が開いている。
それまでありあわせのビキニのような物しか切れなかったクレオにとっては驚きだったようだ。

「翼の生える方の服を作ったのは私も初めてですから・・・ご不満な点がありましたらいつでも直します。」
「ううん・・・ありがとう!!」

そう言って宮元氏に抱きついた。
ヨーエルはどうしても耳を自在に隠せるニットキャップをかぶる事になるが、ほとんど全員が目だしの仮面なのに対して、ヨーエルは口元まで覆えるハイネックが用意されていた。

「なるほど、ニットキャップと一緒に使えば、顔は見えないわけか。」

レンツォにはキッチリ左右非対称の弓術用のプロテクターまで用意されている。
宮元さんの細かい仕事は細部まで行き渡っていた。
ブルーには軍服。
樋口には黒いクルターパジャマとターバンが用意されていた。

「そして、俺の服は・・・」

それは黒い半袖のつなぎだった。
そして、服自体が、義足を固定できる構造になっている。

「上下を分けると、どうしても下が重みで落ちちゃうじゃないですか。ならいっそのことと思って。」

服全体に長さが調節できるバンドと金具が作られ、全体でしめて、義足がずれない構造になっている。

「これで、世界の皆さんに挨拶する準備が出来たわね。」

ハンがそう言うと、俺たちは頷いた。

195

樋口が運転する車がテレビ局の前に到着する。
警備員をマイアーが黙らせると車を正面につけ、ケットシーを先頭にしてテレビ局の建物に入っていった。
ケットシーは長靴と服は変えずに、黒いマントと、黒い羽飾りの帽子をかぶっている。
ハン、レンツォ、マイアー、樋口、クレオ、ヨーエル、そして俺。
全身黒尽くめの集団がテレビ局のロビーに陣取る。
後ろから送れて虍達がやってきた。
ブルーを先頭に7名だが、やはり全員黒づくめだった。

「そんなに少なかったっけ?」
「結局、皆、カラバ王国に異動していったんです。」

樋口とブルーがそう話している。
警備員がバタバタと集まってくる。

「クレオ」

ケットシーが声をかけると、クレオが仮面の上から兜をかぶった。
真っ黒い翼が広がる。
目の前の光景に警備員たちの足がすくむ。

「お初にお目にかかります。私はRSSS総帥ケットシーと申します。以後お見知りおきを。」

それまで、そこにいた俺たち以外の全員が、何かの曲芸か精巧なオモチャだと思っていただろうケットシーが日本語で喋った。

「RSSS総勢、15人と1匹!こうして出向いたのよ!責任者を呼びなさい!」

ハンが声を張り上げる。

「知ってるか?RSSS。赤月の野郎に呼ばれたからこうして挨拶する為に呼ばれて飛び出たってわけだ。ジャジャジャジャーンってな。」

樋口がそう言うと、受付の女性が内線で誰かを呼んでいる。

「あの・・・お名前頂いて宜しいでしょうか・・・」

恐々、女性が尋ねてきた。

「聞こえませんでしたか?ケットシーです。」

女性は今にも泣き出しそうだった。

「・・・ぜ・・・全員の」

ハンがフンと鼻を鳴らしながら答えた。
本名は出さないということで話はまとまっていた。
口々に名前を言っていく。

「ハン・ヘレチ。」
「エル・コンドル。」
「氷の魔術師。」
「人間計算機。」
「弓使い。」
「ニンジャ。」
「ブルー。」

俺は少し迷っていた。
神行太保はマズイ気がする。

「・・・そ、そちらの方は?」

迷った末にこう名乗った。

「俺は神行太保、それで・・・こっちがニーランチャー。」
「分かりにくいわ!」

それが俺と伝説のニーランチャーと呼ばれる義足のことの始まりである。

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