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麻生花児に学ぶコミュの麻生氏の訃報記事

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朝日新聞(2006年5月8日夕刊)
「画家・ボストン名誉市民 麻生花児さん 多才な冒険家、最期も笑顔」

 あそう・かじ 3月11日死去(食道がん)69歳

 3月29日ボストン市で葬儀

 67年から米国ボストン市に移住し、画家、ボストン美術館付属美術大教授の本業以外でも広範囲に活躍した。昨年まではボストン・マラソンに36年連続完走。ナイル、ボルガ、セーヌなど世界の7大河下りにも成功した。

 またテノール歌手として舞台に立ち、学生らに俳句や書、茶、禅などを教えた。

 ボストン・グローブ紙は3月28日の死亡記事でその偉大さをたたえるとともに「ルネサンスマン」の見出しで異彩ぶりを紹介した。

 茨城県取手市出身。3浪して東京芸大に進学、油画科、版画研究室で学んだ。

学生時代に利根川下りに挑戦し、スタート直後に急流にのまれ転覆。インドネシアでは旅行中にクーデターに遭遇し、仲間が射殺された。

 二つの体験に影響を受けて冒険魂が芽生え、「ぬるま湯のような日本」を離れるきっかけになった。

 ボストン・マラソンに熱中したのは「最後の走者がゴールするまで見届ける沿道の声援がすごい」から。5時間15分で完走した3年前は「夕日を背に走る、たそがれのランナーの気分は最高。足の動く限り続けたい」と意欲的に話していた。

 昨年夏、がんが見つかり、体力は落ちたが、入院はしなかった。死の前日も主宰する芸術総合学校「麻生花児スタジオ」で、書と哲学の講義をした。「心配しなくていいよ。ありがとう」。病床では最後まで笑顔を浮かべていたという。

 葬儀には350人余が参列。同スタジオの東京ステーション代表松本博子さん(61)は「23年前に初めて見た先生の作品は当時の画家の先を行く表現だった。ユーモアがあり、豊かな人間性は大切な存在だった」と惜しむ。

 おいの工藤伸さん(55)は「『さくら』『荒城の月』などの合唱や独唱、俳句の朗読などが続き、叔父が歌うアリアがCDで流れた。2時間が短く感じられた」と語る。

 4月17日、ボストン・マラソンの大会当日、教え子ら10人は故人の遺影を掲げ、全コースを9時間かけて歩いた。

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読売新聞(2006年6月19日夕刊)

「天才の死」


 「生き方自体が芸術であり、冒険だった」

 先月18日、都内の画廊で開かれた麻生花児(かじ)さん(享年69歳)=写真右、2004年1月撮影=をしのぶ会で、弟子の一人が語った。

 絵が本業だったが、テノール歌手や、世界の大河をカヌーで下る冒険家としても活躍。米ボストンに総合芸術学校「花児麻生スタジオ」を作り、絵画、俳句、書道、茶道、陶芸、哲学を教えた。

 「ルネサンスマン」(万能の天才)――。海を渡ってやってきた一人の日本人は、いつしかそう称(たた)えられるようになった。

 茨城県出身。13歳の春、ふと目にした木の芽の生命力に感動し、それをキャンバスに表現したいと、画家を志した。

 東京芸大で学び、女子美大の講師になったが、1965年、インドネシアを旅行中にクーデター未遂事件後の騒乱に遭遇したことが転機となった。

 「ぬるま湯のような日本にいては精神が腐る」と、職の当てもないまま67年に渡米。美大で教べんを執る傍ら、73年にスタジオを開いた。

 多彩な活動を支えたのは、鉄の意志と無尽蔵の体力だった。独身を通し、睡眠は1日4時間。70年からボストンマラソンに参加、36年連続で完走を果たした。

 2002年のボストンマラソンで初めて麻生さんを取材した。その時の言葉は忘れられない。「自然の中で限界に挑戦することで感覚が研ぎ澄まされる。命を高めるという意味では芸術と同じ」。これがマラソンや冒険に挑む理由だった。

 記者が学生時代の海外自転車旅行で同じことを感じたと話すと、「日本人は自然から学ぶことを忘れてしまった。そうは思いませんか」と同意を求められた。

 意気投合し、大会までの1週間、スタジオに通い詰めた。日、米、韓、ポルトガル。国籍の異なる4人の芸術家と一緒に哲学のクラスにも参加させてもらった。

 別れの前日、アトリエに招かれた。青や黄を基調にした銀河のような抽象画を前に、麻生さんは一輪のバラをかざし、こう言った。「分かりますか。よく見て下さい。これですよ」。それだけの言葉だったが、宇宙も自然も芸術も、それを見ている私も、すべてが一体の存在なのだと感じた。

 最後に会ったのは、04年に都内で開いたオペラのコンサート。「歌はまだ上達してますよ」。元気いっぱいだったが、この3月11日、食道がんで息を引き取った。
 
 死の前日もスタジオで講義を行ったという。異能の人は、最後まで求道者であり続けた。

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