実体の復活コミュの実体の屹立

久しく放置してましたが、管理人です。
下のリンク先の実話話に、私は非常な感銘を受けました。
うーん、これは自爆テロならぬ自殺テロですね。
よかったら、読んでみて下さい。

■ 『実録閉鎖病棟−毎日PKO−』
■ 第1回/「劇場公開自殺　被害者は俺だよ」
http://www.ohtabooks.com/view/rensai_show.cgi?parent=6&index=0

「これは断じてショーなんかじゃないんだ。リアルな現実なんだ。」
「劇場は人気のあるSM大会ということでほぼ満席。出し物も女王様の針プレイや切腹ショーなどの血の出る内容も多かったので、卯月が倒れてから、私とカメラマンが舞台に駆け上がり、「救急車あー」と必死で叫んだのも全て芝居の一部だと思っていた人も多かった。その証拠に、救急隊員がやってきて担架に乗せたときでさえ、随分と手のこんだ芝居だなあなんて本気で見ていたというお客が多くいたらしい。」

SMショーの舞台上で自殺騒動とは、なんかもうその度胸に感心してしまう。「ここで、滅多にお見せすることのできないショーをやります」だなんて台詞と共に、虚構の世界である筈の舞台上で、本物のリアルな自殺行為を、やってみせてしまうとは。
自傷ショーとか多少の血がリアルに流されるのは珍しくないけど、自殺ショーはリアルにやっちゃったら、それはもうショーではないもんね。
だけどそれを舞台上でやったのだから、或る意味やっぱりショーなわけで、ここで彼女は「ショーとリアルの分割自体の破壊」「虚と実の境界の破壊」をやっている。
これは或る意味どんな物理的破壊よりも、破壊的だと私は思う。「既製の実存」の破壊だと思う。つまり、存在の根底を揺るがすような破壊だと。

そして私が最も、この途轍もない事件に心動かされ、不思議な共鳴を感じてしまうところは、そこなのです。なぜなら私は、既製の実存における「虚」も「実」も、今やどちらも本物の実体を覆い隠す「虚」に堕していると、常々思っているからです。
本物の実体は、そんな「虚」も「実」も貫き通してその区別自体を破壊したところに現れる、幻想も現実も超えた「超現実」の次元にこそ、屹立する。バーチャルもリアルも超えた真次元にこそ現れる。そしてそのような超現実的実体を開示することこそが、本物の革命なのだと思う。

「いや、カッターで切った瞬間、血が客席目がけてビューッ！と飛び散るもんだと思ったら、そうじゃなかったんで焦っちゃって、もう一回ザックリと、そうこうしている内に意識が遠くなってきて、何か、海の底に沈んでいくように気持ちよくなっちゃって」

あっはは、こりゃ大した確信犯だね。いやまったく、自爆テロもびっくりの自殺テロだ。

それにしても彼女の自殺した夫ってのが、また呆れるほどスッキリとわかりやすくも本質的な、実存的問題を抱えた人物だったらしい。

「自分の回りものが全て汚物に見えるらしく、他人が何かに触れば、それが汚物と化してしまう。衣類はたちどころに洗濯をしなければならないらしく、それがボールペンでも家具であっても、捨てて買い替えねばならない。外出時も空からはウンコが降って来るという妄想があるために傘をさして歩かなければならない」

その夫との結婚生活のために彼女は、ウンコやゲロやミミズを食べるビデオに出演して、金を稼いでいたらしい。ここでも彼女はカレーや練り羊羹などをそれらしくしたものではなく、本物を食べていたそうで、またまた「リアル」だ。

それにしたって、全ての物が汚物に見える夫と、汚物を食べる妻って、なんかあまりにも出来すぎてるよね。おまけに二人の間には、子供すらいる。なんか負の聖家族って感じだ。
しかも自殺未遂で植物状態になった夫を彼女は、「その看病の一年半、卯月は旦那の痰を吸引し、摘便を行い、腐って行く皮膚を口にしたという。これは卯月の愛情表現であったことは間違いのないところだろう。」というのだから、凄まじい絆の深さを感じる。
実存的問題に関わる運命の輪が、二人を引き合わせたのじゃないかと疑いたくなる。なんか私とウチの彼との関係を、わかりやすくグロくしたような感じだし。

どうも彼女は私と同じような、実存的破壊欲を抱え込んでいるようだし、私もかつてSMショーに出ていた事があり、切腹ショーをしているお姉さんから、私も切腹ショーをしないかと、もちかけられた事もある。
とにかくいろんな意味で私は彼女に、何か同じ実存的問題を共有している者としての共振みたいな物を、感じたのでした。