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[dir]アラビア語コミュの護符(ḥirz)のマカーマ (日本語翻訳)

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All the waters of a sea cannot sink a ship,
unless it gets inside of the ship.
Similarly all the negativity of the world cannot bring you down
if you don't let it.

海の全ての海水がどんなに頑張っても、
一艘の船の中に入らない限り、
その船を沈めることはできません。
憂鬱も同じく、あなたの中に入らない限り、
あなたが滅入ることはありません。

كُلُّ مِيَاهِ الْبَحْرِ لا تَقْدِرُ عَلَى إِغْرَاقِ السَّفِينَةِ
،إِلّا إِذَا تَسَلَّلَ الْمَاءُ دَاخِلَهَا
،كَذَلِكَ الْفَشَلُ لا يَسْتَطِيعُ أَنْ يُسَيْطِرَ عَلَيْكَ
.إِلّا إِذَا تَسَلَّلَ التَّشَاؤُمُ إِلَى نَفْسِكَ

•●●•❀•✿•❀•●●•

護符(ḥirz)のマカーマ 
護符にすがってカスピ海の暴風を乗り切る

 ヒシャームの息子イーサーは我々に語り伝えて、以下のような話をした:

 流浪を重ねた果てにとうとう私は、バーブ・ル・アブワーブ(1)(門の中の門、最果ての門)まで来てしまった。(ここまで来ての)この骨折りを収穫として帰路に着くことに満足するのみであった。帰路は(カスピ海を船での)海路、呑みこまんばかりの高波が迎えた。この暴君は荒れに荒れ(2)、舟を乗客もろとも翻弄し航路を大きく外した。それでも私はアッラーに無事の帰還の吉兆を乞い求めた。それも船の中でもあろうことか、最も危険な場所に座って祈ったのである。海は我々を支配し、為すがままであって、夜の闇は我々を包み込んで紛れさせた。そんな折一陣の黒雲が我々を襲い、雨粒を篠突く如く叩きつけて来た(3)。さらにこの黒雲ときたら、霧を送って来ては山となし、風を送って来てはその吹きつけによって大波が二つずつ対になって押し寄せて来るは、土砂降りを一群一群と群れをなして襲って来るは(4)……。我々は破滅の手中にあった、二つの海(上の海=大雨、下の海=大波)のただ中にいる状態であったのである。出来る手だてといったら、ただひたすらアッラーに無事安全の祈りを捧げるのみであった。救済策とて無くただただ泣き叫ぶのみであった。守護る術はただ希望を持つことに縋るだけであった(5)。

我々は全くあのナービガの一夜(6)を過ごすことになってしまったのである。乗客は誰もお互いに涙を流し、身の不幸をお互いに嘆きあって朝を迎えることになった。だが、こうした渦中にあって、瞼を湿らすこともなく、また眼を濡らすこともない一人物がいた。胸を緩めて(=心を狭めて苦痛を顕すわけでなく)、くつろいでいる様子であった。心を快活にして気楽の風であった。この人物の様子を見て、我々はアッラーにかけてすべての驚きを驚いた(=全く仰天するほど驚いた)。そこで彼に尋ねたものである、「こんな難儀の中、何であなたは平然としておられるのですか?」。この人物が答えるには、「わしには(威力ある)護符があっての、それが持ち主を溺れさせるようなことが無く救ってくれることになっておるんでな。もしそなたたちの誰もがそれをお望みならば、分けてやっても好いがの」。こんな際であるから誰もが彼に願い出た、我も我もと彼から護符の入手を求めた。彼が言い渡すには、「じゃがそうする前にしてもらわないとな、先ず皆さんの一人一人から即金で金貨一ディナール支払って下され、次に目的地に無事着いたらもう一ディナール手渡すことを約束して頂きたい。どうじゃな」(7)。

ヒシャームの息子イーサーは語りを続けた:我々は彼の求めた通りの額を支払った、また彼の言いなりのことを約束した。(そう確認した後で)この御人はおもむろに手を懐に差し入れると、絹製の袱紗を取り出した。(包まれていたのは)象牙製の小箱であって、その中にはお札が収まっていた。彼は我々一人一人に、そのお札一つ一つを手渡していった。(するとそれかあらぬか海も鎮まり)船は無事目的地に安着したのである。港町が我々を迎え入れてくれたのだ。すると彼は乗船者一同に約束したことを果たすよう求めてきた。一同も約束通りの金貨を支払った。順番で私が最後の支払人になった。(こうして二人きりになったわけであるが)この御仁は、「彼からは取らないことにしよう!」というではないか。私が「いや、これはあなたの取り分ですからお受け下さい。その前にあなたの正体を明らかにして頂けませんか?」と尋ねた。この御仁は「わしはアレクサンドリア出の者だがな」と答えてきた。(矢張りそうであったかと合点した)わたしはそこで「どうしてその忍耐強さがあなたを助け、我々一同を救うことが出来たのですか?」と問いかけると、彼は答えるに詩を吟じたのである(8);

  愚かな問いなどすな もし忍耐の無かりせば
  way-ka law la ṣ-ṣabru mā
         などて巾着に金貨など貯まることあろうぞ
         kuntu mala’tu l-kiysa tibrā
  降りかかる厄難に胸狭くする者などに
  lan yanāla l-majda man ḍāqa
         などて栄光の極みなど勝ち得ること可能ぞ
         bi-mā yaghshā-hu ṣadrā
  されば現に今我に与えられた物に 
  thumma mā aʻqaba-ni
         何の害悪を自身被ってはいまい
         s-sāʻata mā uʻṭītu ḍarrā
  むしろ逆なり それに拠りて我が足腰
  bal bi-hi ashtaddu azrā
         強められ また綻びも補強されん
         wa-bi-hi ajburu kasrā
  もしもこの日溺れ死んでいたならば
  wa-law inni l-yawma fi l-gharqā
        かくなる言い訳の労取ることも無かりしものを
         la-mā kulliftu ʻudhrā

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(1)バーブ・ル・アブワーブ bāb al-abwāb;カスピ海西岸、現在はロシア領となっているダゲスタンのダルバンド。
コーカサス山脈は古代から境界とされており、南北世界を分けていた。中世世界では、イスラム領域の最北端であった。バーブ・ル・アブワーブbāb al-abwāb とは「諸門の門、主門」の意味で、この山脈を越えたさらに先にあるデルバンドは、いわば前線基地であって、この町までは50 マイルに亘る峡谷と周囲には砦を構えた城壁や鉄門、物見の塔も含めた多くの鉄と天然利用の門が存在し、アレクサンダー壁あるいはアレクサンダー門としても知られる。728 年イスラム化されてArrān 州とされるに至った。

(2)この暴君は荒れに荒れ waththābun bi-ghāribi-hi;実際カスピ海は北風、北東風が強く吹き、波が高く荒れることで知られる。著者は海に接したことも、乗船経験も無いと思われる。このカスピ海も、その西岸は訪れてはいないが、東岸は訪れてカスピ海を実際見ている可能性がある。

(3)「雨粒を篠突く如く叩きつけて来た」tamuddu mina l-amṭāri ḥibālan;直訳は「雨々(< maṭar)から綱ゞ(< ḥibl)を捲き散らした」。降雨の激しい様を「雨がその綱を伸ばす」と表現する。ここのサジュウ語は「篠」に当ててあるが、本注のごとく「綱ゞ」ḥibāl である。
(4) 大波が二つずつ対になって(azwājan)押し寄せて来るは、土砂降りを一群一群と群れをなして(afwājan)襲って来るは;『クルアーン』110 章2 節からの言い回しを借用。

(5) ここまでの冒頭部の段落のサジュウ(押韻単語)は下線順に;abwābi / iyābi、ghāribi-hi / rākibi-hi、fulki /hulki、(baḥru / laylu ?)、ḥibālan / jibālan、azwājan / afwājan、ḥayni / baḥrayni、duʻāʼu / bukā’u / rajā’u。

(6)「ナービガの一夜」layla nābighiyya:プレイスラム期の大詩人ナービガ Nābigha al-Dhubyānī の有名な以下の詩行に基づく;

   我眠りもやらず一夜過ごしたり、
     そは恰も斑入りの毒蛇に襲われ、
       その牙にある毒が身中に浸み込むが如し
   fa-bittu ka-annī sāwarat-nī ḍa’iylatun
     mina r-raqshi fī anyābi-ha s-sammu nāqiʻu

 ナービガに関して、またこの詩行に関しては、拙訳のハリーリー作『マカーマート』( 平凡社・東洋文庫) 第2巻第27 話の訳注9 を参照されたい。

(7) ここまでの段落のサジュウの語は下線順に;natabākā / atashākā、jafnu-hu / ʻaynu-hu、munshariḥu-hu / fariḥu-hu、ʻajabi / ʻaṭabi、ilay-hi / ʻalay-hi。

(8)ここまでの段落のサジュウの語は下線順に;ṭalaba / khaṭaba、dībājin / ʻājin、safīnatu / madīnatu、waʻadū-hu /daʻū-hu、dhālika / ḥāli-ka。

アル・ハマザーニー著
『マカーマート』
訳注 堀内 勝

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