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ショート小説〜ホッと一息編〜コミュのPC

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自身のブログhttp://aipower.blog-fps.com/monogatari/20130821から1作品抜粋したものです。




それはある日突然起こった。

一人、パソコンで調べ物をしていた時のこと。

カタカタカタカタカタカタカタ・・・。

パソコンのキーボードを叩く音だけが、狭い部屋にむなしく響いている。

その音とは別に、自分一人しかいないはずの部屋で、俺は確かに何者かの「声」を聞いた。


『いたいいたいいたいいたいいたいいたい・・・。』




俺はキーボードを叩く手を止めた。

・・・今の声はなんだ?聞き違いだろうか。あまりにも小さな声だったのでうまく聞き取れなかった。



まぁ・・・いいか・・・。


俺は作業を再開した。

カタカタカタカタカタカタカタカタ・・・。


『イダダダダダダダダダダダダダ!!』




今度ははっきり聞こえた。しかも目の前のパソコンからだ。先ほどもそうだったが、どうやらパソコンのキーボードをタイピングするたびに「声」が聞こえてくるようだ。


『俺のパソコンにこんな面白い機能付いてたか?』

と俺はパソコンの画面をみながら呟いた。

『んなわけあるかぁぁぁ!!どんだけ平和ボケした思考回路しとるんじゃおのれはぁぁぁ!!』



・・・。


まさかパソコンにツッコまれる日が来ようとはな・・・。

いやしかし・・・これは夢だな。たちの悪い夢だ。だがたとえ夢だとしても、俺はその時間を無駄にしたりはしない。目の前にパソコンがあれば、それを有効活用するまでだ。


『おい!何を固まって考えているんダダダイダダダダダダダ!!』

カタカタカタカタカタカタカタカタ!!!


俺はパソコンから聞こえる声を掻き消すかのように、いつもより力強くキーボードを叩いた。

いや・・・俺にはそんな声、聞こえない聞こえない聞こえない。

これは夢だこれは夢だこれは夢だ。

カタカタカタカタカタカタカタカタ!!!



『だからイタイイタイイタイイタイ!止まれっての!』

言われて俺はタイピングを止めた。それから画面に向かって問いかけた。

『ふぅ・・・。めんどくさい夢だ・・・。それで・・・あんた誰?』

『・・・なんかリアクション薄いなぁ。てか夢じゃないし・・・。』

俺は今、全く動かない「喋るパソコン」をみているわけだが、そのパソコンがなんとなくため息をついているように感じた。

『私は見ての通りのパソコンだ。そして私はその魂・・・というか意思
・・・というか、まぁそんな感じの解釈をしてくれ。』

『魂・・・ね。それで魂さんが俺になんのようで?』

『うむ。私のようなパソコンやテレビやテーブルなどの「物」には、みな一様に「意思」があるんだ。「意思」というか「心」だな。』

魂なのか意思なのか心なのかはっきりして欲しいなと俺は思った。
パソコンは話を続ける。

『「物」の持ち主が、その物に対して雑な使い方を続けると、私達の「意志」、あるいは「心」の怒りの許容量を越える。そしてこのように持ち主と会話することが出来るようになるのだ。』

『えっと・・・つまり俺がパソコンを雑に使ってたからあんたが現れたってことか?』

『ほう。能天気な奴かと思っていたら飲み込みは早いようだな。まぁ、つまりはそういうことだ。お前がキーボードを叩く力が強すぎて、こっちは痛い思いをしてるんだよ。』

そんな力強く打ってたかなぁ・・・?でも訴えかけてくるぐらいだからそうなんだろうけど・・・。

俺が考え事をしている様子を見て?いるのかは分からないが、続けてパソコンが無いだろう口を開く。

『お前・・・なんか悩みがあってイライラしてたんだろ?だからつい手に力がはいっちゃうんだろ?よかったら私がその悩みをきいてやるぞ?』

『機械に悩みの相談なんかするか!てゆうかイライラしていたのはパソコンの起動が遅いとかページの移動が遅いとかで、極論をいえばあんたのせいなんだよ!』

『んな!私のせいだと!3年も私を使っておいて、今更それはないだろ!
そんなこといったらお前のプライバシーを全てネットに晒すぞ!お前の個人情報やお前が最近どんなエロ動画をみていたということまで全てだ!』

俺は露骨にパソコンの前で慌てふためいてしまった。

『え!?ちょ・・・ちょっと待て!あんたそんなこと出来るの!?いや、その・・・マジでごめんなさい。それだけはやめてください。これからは気をつけますのでそれだけはやめてください!』

パソコンに頭を下げる俺。とてもシュールな絵図らだった。

『ふん。それでいいんだ。全くこれだから最近の若者はすぐイライラするから困るのだよ。お前、もっとカルシウム取れ!今後、私を使う時はもっとソフトタッチでたのむイダダダダダダダダダダ!』





カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ!!!




『あぁぁぁぁぁやっぱり納得できねぇぇぇぇ!!なんで人間様が機械の言うことなんて聞かなきゃならんのだぁぁぁぁぁ!ちょうどいい!もう3年も使ったからな!あんたとはお別れだ!買い換えてやる!』

『い、いや今度はこっちがちょっと待て!逆に3年も使ったらなんかこう・・・愛情とか・・・こみ上げてくるものはないのかよ!』




『あんたに対してこみ上げてくるものは「怒り」だけだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・』











気づいたら俺は、机の上で両手を枕代わりにして眠っていた。それから目を覚ますと目の前には愛用のパソコン。あれはやっぱり「夢」だったのか・・・。


それにしても愛用・・・か。


俺は買い換えるのを止めて、とりあえずはまだこのパソコンを使い続けることを誓った。

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