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カリオペーの文学倉庫コミュのsniper's life

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短編です。主に軍事物の。まぁ、兵器の名前は気にしないでくださいww

コメント(5)


 頭上を数多の直径7.62mmの弾丸が飛び交い、その鉄の暴風を受け仲間が倒れていく中、そこに黒儀蒼夜は居た。
「全くひでぇ戦場だ。女もいなければタバコもろくに吸えやしねぇ。お前もどうだ?」
 そう、塹壕の壁にもたれながら真島秀雄は言うとポケットから出したセブンスターに火を点け、隣で八九式小銃を構えて応戦していた、河内善隆にも勧めた。
「俺、未成年っす」
 河内は迷うことなく断る。
 その間も彼は射撃を止めない。その眼には次の目標を捉え、引き金を引き、その目標をヒトから肉塊へと変える。
「魔学士殿はまだなんっすかね?」
「まだだろ、ヘリでもここまで来るのに多分十分はかかる。自力で空飛んできたならもっとかかるだろ」
 そう言って蒼夜は構えていたM40で敵の頭部を的確に狙撃した。脳という命令器官を失った体は力なく倒れる。
「まぁ、狙撃手がこんなとこに居ても良いのかって疑問が残るけどねっ……!」
 さらに一人撃ち抜く。勿論頭だ。
「そりゃあ、仕方ねぇだろ。この小隊はこんな戦場に送られるはずじゃあ無かったんだからよ。兵科なんて考えちゃいねぇ」
「そうっすよね。この部隊は後方待機要員の中でもさらに後方を任された”いらない子小隊”だったんすから……っと!」
 蒼夜と河内は揃って射撃を止め、伏せる。瞬間塹壕の近くで手榴弾が爆発した。爆風で巻き上げられた土埃によって視界が狭まる。
「ところで河内、大石はどうした?」
 伏せながら蒼夜は尋ねる。
「あ〜、連絡は着てるっす。ただ案の定増援は見込めないとのことっすね」
「なら戻って来いということと、弾薬持って来いと伝えとけ」
「了解っす」
 そして蒼夜は視界が元に戻ったのを確認し、塹壕から顔を出してまたスコープを覗き込み始める。河内は背中に背負った無線機をいじり始める。真島といえば、タバコを一服ふかし始めた。
 と、突然無線機が吼えた。
「第一波来ます! 味方は塹壕内へと避難を!」 
「来たか」
「来たっすね」
「来たな」
 三人同時に呟く
 
 瞬間、塹壕の周辺が焼き払われた。
 塹壕に接近していた敵兵はなすすべも無く焼き払われ消し炭となっていく。
 第二波が来る。次は敵の本陣へと
 第三波は最前線と本陣の間に残された兵士たちへとまた襲い掛かる
 そして最後には焼けた地面と肉の焼けた臭いが戦場に残されていた……
 その日は、雨だった。
「ん、それロンっす」
「「「何!?」」」
 驚く声が基地内の喫茶に響いた。
「少佐、もう四回目ですよね」
「あぁ、また誰かが振り込んだらしいな」
 喋りかけてきた曹長にそう言いながら、蒼夜は冷えた珈琲を口に運んだ。
 隣の席では真島、河内、大石と若い下士官がテーブルを囲んで麻雀をしている。
 どうやら今回も河内が一人勝ちしているようだ。全くこういうゲームはホントに強いな、あいつは。
 そんなことを思いながら、蒼夜は横に座っている曹長に話しかける。
「なぁ、今回は魔学士どれだけ投入したんだ? あの大規模攻撃だ、第一級魔術師数十人は導入されてるだろう」
「その通りです少佐、今回は二四名の魔学士が導入されたそうですよ。おかげでこっちは結果的に大勝利です。まぁ、それまでにかなりの数を失いましたが……」
「全くだ、それまでの被害が大きすぎるだろ」
 今回の戦闘で失われたのは戦車六両、装甲車五両、人命損失七八名だ。この数字はかなりの被害率である。
「しかし、少佐の部隊まで動かされることになるとは私も思っていませんでしたよ。少佐の部隊は後方支援が主たる任務でしょう?」
「ん、まぁそうだが、うちの小隊は一応兵科は揃ってるからな、それで今回は穴埋めで選ばれたんだろ」
「はぁ、そうですか……」
「しかし、俺もうすぐ一七なのになんでこんなとこに居るんだろ。もうちょい青春謳歌すべきだったかな」
「そうですね、自分もそういう青春を謳歌しましたけど、いいものですよ」
「はぁ、いいねぇ。実は俺、一二歳で戦場に立ってたんだぜ」
「はい? 一二歳からですか? 信じられません。大体そんな歳で戦場に行けるんですか?」
「あぁ、行けるさ、俺は魔学士だからな」
「!」
 驚いた表情をする曹長、しかしすぐに表情を戻し
「専攻は何ですか?」
 と尋ねる。
 彼が言う専攻とは魔学士の属性の専攻で、治療のエキスパートや、炎系統を操る者、雷を操る者、物体を練成する者、等々がある。そしてその中でも優秀な者が選ばれ、政府の直属の魔学士となるのだ。
 だが、それに蒼夜は首を横に振ると、
「特に専攻したものは無いんだ。俺ができたのは壊すことばかりだったからな」
 と言った。
「壊す、ですか?」
「あぁ、壊すことだ、それしか能が無かった。だからこそ軍に必要とされたのかもしれない」
「そうですか……つかぬ事をお聞きしました。すいません」
 少しくらい表情になった蒼夜の様子を見て、そう謝り、曹長は自分のビールを一口、口に含んだ。
 そして今度は曹長のほうが暗い顔になり
「しかしこの戦争、何時終わるんでしょうか?」
 と尋ね、蒼夜は
「さぁな、敵に魔学士が居る限り永遠に続くだろうな」
 と答えた。
 実は魔学士は味方だけではないのだ。確かに数は少ないが敵にも魔学士は居る。そして彼らは強力で、そうそう討つことができない。
 そのため、政府は彼らを最優先抹消目標として示している。
「あいつらは何時も後ろの方で戦況を見ていやがる。そうそう表には出てこないさ」
 そう言うと蒼夜は冷えた珈琲を一気に飲み干した。
「さて、そろそろ出撃だ、行くとしよう」
 蒼夜は河内達が麻雀を行なっているテーブルまで行くと、そのテーブルの上に手に持った鉄帽を置いて、出撃を告げた。
「では、今回の作戦の説明を行なう」
 作戦指揮所に重く威厳のある男の声では無く、いかにも厳しそうな少女の声が響いた。
 少女の名前は霧島真弓、この基地で作戦の立案を行なっている第二級魔学士で階級は少佐。その能力は高く、情報解析では他の追随を許しておらず、今回の作戦も彼女が解析し、立案したという事である。
「今回の作戦は簡潔に述べると、ある魔学士を救い出す作戦だ。」
 そのポニーテールをゆらゆらと揺らしながら真弓は言う。
「今回、我が軍の情報網から、貨物船ミネルバ号に我が軍に所属していた魔学士が捕らえられている事が発覚した。尚、貨物船には多数の武装要員が乗船しているのも判っている」
「その魔学士の容姿は?」
 ある隊員が聞く。
 その上腕には、軍の特殊部隊を表す火を吹くドラゴンが描かれた、エンブレムが付けられていた。
「ん、あいつら(特殊作戦部隊)と参加するのか?」
 横に居た河内に蒼夜は尋ねる。
「そうみたいっすね、俺達以外は全員ALF(assalt landing force)、アルフみたいっす。しかし霧島少佐はやっぱ綺麗っすね」
「……おまえ、聞かれれたら殺されるぞ」 
 そんな話をしている間に、どうやら作戦の具体説明に入ったようだ。
「今回、ALFと黒儀少佐の部隊はヘリでこの船、ミネルバへと接近してもらう。そして共同で武装要員を制圧、そしてALFにはおそらく船倉に捕らえられている魔学士を確保してほしい」
「俺達はどうすれば良いんっすか?」
 河内が尋ねる。
「貴様、口を慎め、舐めてるのか!」
「ひぃっ、すいませんでしたっす!」
 その言葉で河内をへこますと、真弓は蒼夜のほうを向いて
「君達には周りの監視をしてもらう。まぁ制圧後に誰も生きているものが居ないか確認するだけでいい」
 そう言って、最後に辺りを見回し、質問が他にないのを確認してから、解散、と言い残し作指揮所を去っていった。

「全くおっかねぇっす。でもそこがいいんすよ」
「お前マゾだったのか?」
「いや、そんなことないっす。俺はれっきとしたサドっすよ」
「……まぁ、いい」
 暫く歩くと、ふと気付いたように蒼夜が尋ねた
「それはそうと、お前は八九式にこだわるんだ? 他にもM4やM16、G36があるだろうに」
「ん、それはっすね愛っすよ、愛」
「どこぞの漫画の主人公の様に言うな」
 少し呆れ顔で蒼夜が言うと河内は
「まぁ、ホントに愛を感じてるからしょうがないっす」
 そう言って、むっとした顔をした。
「すまない、黒儀少佐、少し来てくれ」
 と、突然後ろから声をかけられ蒼夜と河内は振り向いた。
「……あぁ、わかった。すぐ行く」
 蒼夜は僅かに考えた後そう返して歩いていく。
 その後ろに河内はついて行こうとしたが、真弓に睨まれてすごすごと退散して行った。
「で、何なんだ?霧島少佐」
 暫く歩き、誰も居ないヘリ格納庫まで案内された後、蒼夜は尋ねた。
「先輩、あなたのような方がこんな後方支援に徹してるとは考え難いです」
 先程の作戦指揮所の強気な口調から一変、少し弱気な口調で話す真弓。
 その表情は本来の少女らしくなっていた。
「だってあなたはかつて『魔学士殺し』として活躍されたんでしょう? なのに何故こんなところで止まってるんですか」
 そう尋ねた後、きっと真弓は蒼夜を睨んだ。
「仕方ないだろう、俺はもう魔学士は引退したんだ、これ以上殺っても仕方ないしな」
 少し間を置き
「それに、殺すのには飽きた」
 言った。
「!」
 ぐっと唾を飲み込む真弓
「そうです、あなたは出会った時からそうだった、まるでやる気が無い。すること全てに意欲を感じない。何故です?」
「そりゃあな、あれだけの数殺してくりゃあまるで何もする気が起きなくなるぜ」
 言いながら笑う蒼夜。
 その笑いの質は暗い。
 それを見て真弓は悲しそうな表情をする。そして思う、彼が心の底から笑える時が来るのか、と。
「っと、そろそろ行かなくちゃな、あいつらを待たせてる。んじゃ、基地でパーティー開く準備しといてくれ」
 蒼夜はタタタっと走って格納庫を出て行った。
 そして後には、自分の無力さを悔いる一八歳の少女が残された。
「やっと見えてきたか」
 暗い機内で、今回の作戦のリーダー、尾道権助大尉が呟く。
 それに蒼夜は
「案外早いな」
 と正反対のことを呟いた。
 所要時間は一時間と少し、ブラックホークではギリギリの半径内だ。
 ヘリは、海上近くをホバリングしながら徐々に貨物船へと近づいていく。そして船上に着くと、降下が開始された。
「GO!GO!GO!」
 次々と降下していくALFの隊員達、その動きは洗練されていて無駄が無い。そしてALFの隊員たちが降下し終わっ後、蒼夜達の降下が始まった。
 機から吊るされたロープを伝い蒼夜は着地し、即座に周囲を確認する。異常は無いようだ。
「まぁ異常っちゃあ異常だけどな」
「まぁ、ここは戦場っすからね」
 横に降りてきた河内が呟く。
 そして大谷、真島の順に降りてきた。
 大谷は相変わらず防毒マスクを付けており表情はわからない。しかしやる気はかなりあるようだ。何時も手に持つスパナをぐるぐると回転させていた。真島はというと何を思ったのか、PZF3(パンツァーファウスト3、ロケット砲)を担いで、MINIMI(機関銃)を背中に背負っていた。
「真島、お前は何と戦うつもりなんだ?」
 呆れたように言う蒼夜、それに自信満々に真島は答える。
「そりゃ、対人戦だろ、ならこいつの威力に頼ったっていいじゃねぇか」
 ぽんぽんとロケット弾の方を叩く。
 それを見てひっ、と河内が声をあげた。
「こ、怖いじゃないっすか。爆発したらどうするんっす」
「バーロ、このくらいで爆発なんぞしねぇよ」
 そう言ってもう一度ぽんぽんとロケット弾を叩く。
 その度に河内はぶるっと体を震わせていた。
 そんなやり取りをしている内にどうやら船内の掃討も始まったようだ。艦橋部分へはブラックホークの容赦無いM134(ガトリング砲)のから弾丸の雨が降らされる。
”マーシー1よりミシガン1、我々は燃料補給のため帰還する。後続にチヌークが控えている。彼らに乗せてもらえ”
”了解ミシガン1、掃討を続行する”
 そんなやり取りが無線から聞こえ、蒼夜は全くヒマだ、と呟いた。
「しかしこの船大きいっすね〜」
 暢気に河内が言う。
 それに対し大谷が篭もった声で
「でも海から比べるとホント小さいデスヨ」
 と言った。
「だが、ホントにヒマだな、おい」
 真島が照準を覗きながらゆっくりと艦橋から船首へと眼をやる。
 と、その瞬間艦尾のから火柱が上がった。
「な、なんっすか! 真島さん! 撃ったんじゃないっすよね」
「あ、あたりめぇだ、一発しか無いんだ、そう簡単に撃てるか!」
「でも、真島さんなら有り得そうデスネ」
 そんな風に盛り上がる河内達を無視して、蒼夜は眼を凝らしていた。そして
「おい、中に突撃するぞ」
 そう言うと歩き始めた。
 それに合わせた様に
”黒儀少佐!至急救援を頼みます!う、―――うわー!”
 と無線が吼えた。
 
 船内には、肉の焼けた臭いと、血の臭い、そして硝煙の臭いが蔓延していた。
「手際いいっすね。さすがALF」
 そう言いながら死体を乗り越える河内、ここに来るまでの殆どの死体は見事に脳天を撃ち抜かれて死んでいた。
 船倉まではあと少しだ。そして、蒼夜は船倉へと入るドアを開ける。
 そこは、地獄だった。バラバラになった隊員の死体。腕を切られ呻く隊員。上半身と下半身を切られてまだ生きていて絶叫を上げる隊員。
「こりゃひどいっすね」
 軽く河内が言う。
 その言葉はホントに自然に出ている。何の嫌悪感も感じさせない。
「同意デス」
「あぁそうだな」
 大谷も真島も同じ感じである。
 まるでそんなもの見飽きたというような、つまらないものを見たような感じである。
「全員武器を構えろ、死角に注意しとけ」
 そう言って蒼夜はMk23(ハンドガン)を構える。それに合わせて河内達も各々の銃火器を構えた。
 船倉内はコンテナが積まれており、非常に死角が多い。LFAの様な多少人数の多い部隊なら楽なのだが、蒼夜の部隊は四名である。そのため警戒をする所が増えてしまい、一人一人の負担が大きくなる。だが、それをしなくては前には進めない。蒼夜達は警戒を厳にしたまま船首へと向かった。
 そして船倉の奥の辺りで尾道大尉は、コンテナにもたれかかるようにして倒れていた。
「いよう、少佐殿……」
 喋る言葉にも行きの様な威勢が無い。
「すまねぇ、ホントはこんなはずじゃあぁ無かったんだ。俺達で何とかできると思ったんだ」
「止めろ、喋ると死期を早める」
 蒼夜が言う。
 しかし尾道は喋るのを止めない
「敵は魔学士でした。なぁに、一人ぐらいならいけると思ったんです。でも、その結果がこれですわ。不甲斐ねぇ」
 本当に悔いるように尾道は言った。
「魔学士か……」
「魔学士相手に良く持ったと思うっすよ」
「デスネ」
「生きてる奴全員を簡単な処置をして運んでやれ、魔学士が出たからにはここから先は俺の領分だ」
 そう言って蒼夜は懐からあまりにも巨大な拳銃を取り出す。
「全くこいつ「魔学士殺し」の出番が来るとはね……」
 それを見て河内が言う。
「戻るんすか? あの頃に」
「あぁ、戻るしかないだろ? あいつらを殺したぶんの借りを返して生きて還るにはな」
 その言葉に河内達は頷く。
「了解したっす」
「御武運をデス」
「まぁ、頑張れや」
 仲間達の言葉を背中に受け、一人の男が今ここに復活した。眼は紅に染まり手には巨大な拳銃。背中には装甲車をも貫通する威力を秘めた対物ライフルM82。
 対魔学士のために開発された装備を身につけ、進む、その先に居るだろう魔学士を殺すために……

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