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カリオペーの文学倉庫コミュのSSその1 『乱雑論理』

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さて、公開する前に一つ、注意書きが題名みてわかる人もいるかもしれませんが、ほとんど『空の境界』のスピンオフです。
定義や概念だけを拝借、参考にさせていただいたようなものです。

それを踏まえたうえでお読みください。

三日で完成させるつもりですので、よろしく。では始まり始まり

追伸、三日で完成させるつもりが話を一転二転させてるうちに伸びました。
この間に青本、白本、黒本を読んで定義を完璧にしようとしたんですけどね。
なんかgdgdになっちゃいました。
直書きなのでミス多し、意味不明な箇所多しですがストーリー的には悪くないきはしてます。“気”はですがね(笑)
明日、明後日で全てを終わらせるつもりです。もうちょっとですが堪えてください。

コメント(7)

――――人はモノを壊せない。
例えば花瓶を割ってしまう。すると花瓶は壊れたかのように見える。

しかし、花瓶は壊れてはいない。花瓶というモノの外側を覆っていた殻が砕けたにすぎない。
そう。本質では壊れていないのだ。花瓶の定義が壊されていない以上、そのものは壊れたことにはならないのだ。

では、人は壊れないのだろうか。

この定義に当てはめるなら、人の肉体は花瓶のカタチにたとえられるのではないだろうか。

―――では人の定義とはなんだ。

これは言うなれば生物の根源。
根源とは何か。それは起源よりも前。
世界の真理に値するもの。

さぁ、大変だ。定義が滅びなければモノは壊れない。
人の定義を失うことが出来ないから人は壊れることはない。

――――では人の死とは何か。

死ねば人は終わる。それは壊れた事を意味するのではないのだろうか。

そう。この矛盾の中を探求するのがボクの生き甲斐だ。
そして、この探求を終える時にはボクが死んでいることもわかっている。
だけど、ボクは探し続けなくちゃいけない。
ボクはそれしかないから。


―――乱雑論理―――


視界が上下にゆれる。
少し視線を下げれば白い泡を立てて踊り狂う波がみえる。
ボクは遥か昔の記憶を思い出していた。


ボクが彼女を見たのは16の時だった。

ボクは昔、魔術師でもなんでもない家庭に生まれ、普通に暮らしていた。
ボクが9歳の頃、両親が死んだ。
原因は簡単。何処にでもある偶然の産物。
買い物帰りにバスと衝突したらしい。
別に悲しいとも思わなかったのがせめてもの救いだろうか。

そして、次の日からボクは魔術師を継ぐことになった。
師は両親をなくしたボクを引き取ってくれた遠縁の老人だった。
日々、世界の真理や魔術について教えられ、ボクに全てを引き継いでその老人は満足げに息を引き取った。
その後、ウェールズの工房でケルト魔術の研究をしていたボクは若くしてケルト魔術のほとんどを極めた珍しい魔術師だと評価され、ボクは興味がてらボクをスカウトしに来た人たちについていった。

時計塔というロンドンにある魔術師たちの集まりの場に初めて参加したとき、まだ少年の心を捨てきっていなかったボクはわくわくしながら自分以外の魔術師たちを見回った。
このときはここがこんなに恐ろしい所だと考えもしなかったのだ。

時計塔から少し離れてロンドン中を歩き回っていた時、ふと立ち寄った川辺に彼女はいた。
ただ居たのではない。
本質的にそう、世界に自分がここに居る事を定義づけているような感じがした。
纏っている空気が只者ではなかった。
その空気は触れるものを焼焦がし、近づくものを排除するかのようなモノだった。
彼女の赤い髪は全てを燃やし尽くす炎の色だった。

そのとき、突然彼女がボクのほうを向いた。
紅い紅い瞳と目が合ったボクはそこから動けなくなってしまったのだ。
目をそらすことが出来ない。
じっとりとした汗が頬をつたっていく。

ようやく彼女が目線をそらしてくれた時にはボクはもう汗だくだった。
彼女はつまらないものを見たような目で川辺から立ち去っていった。
ボクの心にはつまらなさそうな目と紅い目だけが残っていた。

時計塔に帰って、知り合いに話をしてみると、その子はアオザキ トウコというらしい。ものすごい若さで高レベルの魔術師にまで昇華した逸材だそうだ。
その日、ボクは彼女のことでいっぱいで眠れなかった。
ただ、ボクはこの後ずっと彼女を再び見ることはなかった。



視界が上下にゆれる。前方には小さな漁港が見えてきた。
幾つかの漁船もちらほらと見える。
この街は多賀崎町というらしい。知り合いの貿易船に乗せてもらってここまで送ってもらうことになっている。
魔術師でも貧乏なモノは貧乏なのだ。

多賀崎の隣町の冬木市には遠坂の跡継ぎの女の子が居たはずだ。
ボクも遠坂の大師であるゼルレッチさんには何度か会ったことがある。
ついでなので挨拶でもしに行こうか。
そう思うとボクは港の船着場から駅を探しに歩を進めていった。
遠坂の家をでてレンガ造りの坂道を歩く。
たいそうな家に住んでいるのだろうかと思っていたが、案外、普通の家で安心した。
ただ、人払いの結界は張ってあったが・・・

坂の途中でふと振り返る。住宅地の中にひっそりとたたずむ遠坂の家を見ながら、ボクは遠坂の女の子の話を思い出す。

『新都から少し行ったところにある喫茶店を訪ねてみたらどうでしょう。ちょっと前に、不思議な体験をしましたから、普段会えない人に逢えるかもしれません。』と彼女は微笑みながら言った。
彼女の話によると、その喫茶店・・・アーネンエルベで彼女は真祖の吸血鬼や、直死の魔眼を持つ子などと出会ったらしい。

ボクの本来の目的を達成するのには遠回りかと思ったのだが、やはりボクもまだまだ子供なのか、体は自然と新都の方へと向かっていた。

高くそびえ立つビル群を足早に抜け、人気のない公園を通り過ぎ、幾度も道を曲がり、ようやくボクは目指していたものを見つけた。
白いこじんまりとしたその建物は、魔術の影響を受けても居ないのにひとりでに結界を創っていた。

なるほど、これなら不思議な人が集まるのもうなずける。
周りを見てみると、人はまるでその空間に建物なんかないかのように通り過ぎていく。
気に留めるのはそういったモノが理解できる奴だけだからだ。
ボクは窓から中を覗いてみた。
何人かの人が居る。それなりに繁盛しているということだ。

なぜか学生服の子が多く居るように思えるのはボクだけだろうか?
そんな疑問を心の奥底で思いながら、ボクは白く塗られた木製のドアをあけた。

カランカランッと小気味よく響く鐘の音に幾人かの客は反応したようだが、すぐに自らの世界へと戻っていった。
適当に席へつくと、バンダナを巻いたいかにも居酒屋の店員のような風貌の人がボクにメニューと水を持ってきてくれた。
ボクはすぐにコーヒーを頼むと、その店員へと質問を投げかけてみた。

『此処に赤い髪で紅い目をした、普通とは違った空気を纏った人を見ませんでしたか?』
店員は少し頭に手をあてて考えるとこう言った
『数日前にうちの店長の助っ人みたいな子が来たことがあってな。その子のお付の女の子なら覚えてるよ。確かに普通ではなかったね。なんたってメイド服着てお店に入って来るんだもん。店長なんか固まってたよ。だけど、その子は姉妹で来てたからね。一人で来ている赤い髪の人は覚えがないなぁ。力になれなくてすまないね。』
ボクは少しがっかりしながらもお礼を言った。
『だけど、このお店は不思議な人がよく来るからね。待っていれば来るかもしれないし、急ぐなら他の常連さんにでも聞いてみるといいよ。』
店員はそういい残すと店の奥へと消えていった。

ボクはコーヒーが来るのを待ちながら、周囲の客を見渡してみた。

・・・確かに普通じゃない。
ボクの2つ隣のテーブルでは大食い選手かと思うような食べっぷりでカレーを食べている人が居た。
すごいのは食べっぷりだけじゃない。
テーブルに積み上げられた皿の数を数えてみる。
いち・・・に・・・さん・・・

・・・・・・17枚
しかも、食べてる本人は平気そうな顔で平然と食べているのだ、しかも体格は昔テレビで見たスモウのような体格ではない。
スマートでほっそりとしている。
ボクは彼女の胃の中が多次元領域に繋がっているのだと決め付けて別の方向へと目を向けた。
これ以上、カレーを見ていると口が辛くなってきそうだったからだ。
反対のテーブルを見る。
そこには黒縁のメガネを掛けた青年と赤い革ジャンを着ている女の子が座っていた。
二人は楽しそうに話しているが、ボクにはその女の子の赤い革ジャンが彼女の髪の色や眼の色を思い出させた。
じっと眺めるのはマナー違反だがボクはどうしてもその女の子の革ジャンから目が離せなかった。
そして、その女の子が纏う空気も昔の彼女を思い起こさせた。

突然、女の子が立ち上がった。
それを青年は手で押しとどめようとするが無理だったようだ。
女の子はツカツカとこちらへと向かってくる。
さっきは後姿しか見えなかったが、前から見るととても美しく、精錬された人形のような顔立ちをしていた。
彼女はどうやらボクの向こうに居る店員にようがあるみたいだ。
ボクは何も考えずに彼女を見続けていた。

『おい、なにか用でもあるのか?そんなハンパない殺気を放っていたらいくらオレでも我慢の限界だ。切り刻まれたくないのなら用件を言え。』
彼女はボクの前で立ち止まるとそういった。
ボクはあっけにとられてポカンとしてしまった。
彼女にはボクの態度が癪に障ったらしい。
『なんとか言ったらどうだなんだ魔術師!ここが喫茶店であろうがなかろうが切り捨てるぞ』
とかいって彼女はポケットに手を入れた。

『ダメだよ、シキ。もう殺さないって約束しただろ。まずは落ち着いて話を聞いてみようよ。勘違いかもしれないだろ。』
『でも、ミキヤ。それでは、なにかあったらどうするんだ。』
『それは何かあってから考えればいいんじゃないかな。疑わしきは罰せずだよ。』

ボクはどうにか青年のおかげで命拾いしたようだ。
『ここ、よろしいですか?』
と言ってボクがうなずくと
彼はボクのテーブル席に移動した。
女の子はボクのほうをにらみながらもしぶしぶ席についてくれた。

とりあえず、ボクは勘違いさせてしまった事を謝ることにした。
『ホントにすまない。君の赤い革ジャンが探し人の髪の色にそっくりでね。つい、思い出してじっと見つめてしまった。』
『じゃあ、その思い出す動作の中に殺気が含まれるんだ?』
『まぁまぁ落ち着いてシキ。ゆっくりと話を聞こうよ。』
青年の言葉を聞き、ボクはまた落ち着いて話し出す。
『ボクは彼女が好きだったんだ。一度、見かけて目を合わせただけだけれど、ボクは彼女が好きだった。ただ、彼女はどこかに突然消えてしまった。もう一度会いたいと思ったときには彼女は既に行方不明だったんだ。探しにいきたいのに、会いたいのにボクはその場所に縛り付けられて動けなかったんだ。』

『それで貴方はようやくその思い人を探しに来たということですか。』
ボクは青年の質問にうなずき返し、また話を続ける
『世界は移り往くのにボクのいた世界は不変だった。変わることのない日々の生活がボクにとって何の利益も生み出さない事を本当に理解したのは、彼女が行方不明になってから2年ほどたった後だったんだ。
ボクの生きていたの世界の真理を知ったとたん、ボクはその生活が退屈に思えて、ボクはその世界から離れることにしたんだ。彼女がかつてそうしたようにね。これがボクが彼女を探しているいきさつだよ。
一応、弁解しておくけど殺人感情はボクにはないんだ。人は自然に生き、自然に死に生命は循環していく。これがボクの中の真理の一端だからね。死の真理をボクは追究し続けているんだよ。それは人を殺すことじゃない。人の死が世界に何の影響を及ぼすかなんだよ。』

ボクは話の途中で店員が持ってきたコーヒーを飲みながら彼らに話した。
ボクが人に自分の事を話すなんて、滅多にないことなんだけれど、その時のボクには彼らに話を聞いて欲しいと心から思ったのかもしれない。
それが本当によかったかどうかなんていうのは考えられない。
ボクは衝動的に話をしてしまったのだから。
『すいません、その、呼びにくいので名前を教えてもらえませんか?あ、ちなみに僕の名前は黒桐幹也です。』
青年にそう聞かれボクは自分の真名を思い出す。
また、衝動的に真名を答えそうになったが、何とかこらえて名前を紡ぎだす。
『青緑のフィンという名でよく呼ばれる。フィンと呼んでくれないか』
『わかりました、フィンさん。あなたの探し人を探すのを手伝います。情報だけになるかもしれませんが、僕はこういうのは得意なほうなので。』
青年の予期せぬ返答にボクは驚いて固まってしまった。
彼の隣に座る女の子も唖然としている。
『おい、幹也、なんだってお前がこんな奴のためにそんなどうでもいいこと調べるんだよ。』
『あのね、シキ。僕はね、なんとなくだけれどこの人の気持ちが分かるんだ。いろんなことに縛られてもね好きな人を思うことは一緒だしね。いいかい、シキ?』
女の子は顔を赤らめながら何もいわずそっぽを向いた。
彼はそれを了承と受け取ったのか、ボクのほうを向いて話を続けてきた。

『それで、フィンさんの探している人の名前とかわかります?あと出来れば知っていることも教えてください。』
真剣な表情で聞いてくる彼にボクは戸惑いながら彼女の名を口にした。

『彼女の名前はね。アオザキ トウコっていう人で、赤い髪に紅い目をしているんだ。あと、たしか専門が人形師だったと思う。この近辺に居るならすぐに伝わってくるような相当腕の確かな魔術師だよ。』
思い出しながら彼女の事を話し、彼らのほうを向くと
二人ともとても面白い顔をしてボクのほうを見つめていた。
ボクはその視線にうろたえ、
『あれ、ボクなにかおかしな事を言いましたか?君たちならたぶん魔術師っていっても通じると思ったんだけれど。通じなかったのならわすれ・・・』

『い、いや。違うんです。』
ボクの発言は彼の動揺した声にかき消された。
『それなら、すぐに会えますよ。もうすぐにでも。でも、よくあんな人のことが好きになれましたね。』
『あぁ、こればかりはオレも同情するね。なんでったってあのおかしな奴の事を』
『失礼しました。では、フィルさん。今からでも彼女に会えますけどどうします?』

今度はボクのほうが間抜けな顔をする番だった。
『偶然は必然か・・・
わかった案内してくれますか黒桐くん。まさか到着したその日に見つけることが出来るとは思っても見ませんでした。』
ボクがそう答えるまでにきっと一分は固まっていたに違いない。
それほどボクには驚くべきことだったのだ。
協会にも見つけられなかった彼女を彼女の所縁のある日本に来て早速見つけられるなんて思ってもみなかったからだ。
ボクはここで初めて遠坂のお嬢さんに心から感謝をした。

ボクらはたわいもない話をしばらくしてから席を立った。
ボクは彼らの分も勘定を払い、夕方の町並みを彼らに連れられて歩き始めた。
黒桐と名乗った青年はアーネンエルベをでて数十分歩いた廃屋に近い外装のビルの前で立ち止まった。
ここが彼女の工房なのだろう。ちゃんと結界も張られているし、地脈も悪くはない。
『フィンさん、ここで少し待っててもらえますか。橙子さんに話をしてきます。』

そうして、青年はビルへと入っていき、それに続くような形でシキと呼ばれていた少女もビルへと吸い込まれていった。



『――――――駄目だ。絶対あいつを中に入れるんじゃない。』
『でも、わざわざ橙子さんに会いにきたって言うのに、それはあんまりじゃないですか?』

『わかってる。奴とは場所を変えて話をしよう。式、悪いが念のためついてきてくれ。それと式、これは忠告だ。その魔眼で奴を見るんじゃないぞ、お前が壊れてしまうからな。』
『オレはまだ行くとはいってないだろ。』
『行かないのならいいが万が一の時、幹也が大変なことになるぞ。』
『あれ?橙子さん。なんでボクなんですか?』
『わかったよ。行けばいいんだろ行けば。いくぞ幹也。』



しばらくすると、青年や少女がビルから出てきた。
彼らの後ろには、フードをかぶった人が居る。
きっと彼女こそがボクの探していたアオザキ トウコなのだろう。
『フィンさん。すいませんがトウコさんは広い公園あたりで話したいそうなんで付き合ってもらえますか?』
ボクはなぜ工房に入れてもらえないのか疑問だったが、よく考えれば他の魔術師が工房に入るのは良くないことだったなと思い出して納得した。

ビルから更に歩いて公園に着いた頃にはもう外は暗くなり始めていた。
誰もいない公園で彼女はボクから4、5歩の距離を置いて立っていた。
彼女がフードをはずす・・・

赤い髪、紅い目、何もかもが昔見たときのままだった。
彼女はあの時ボクを見つめたあの“つまらないモノを見る目”でボクを見ていた。
唐突に彼女が口を開いた。
『青緑のフィンか。お前はまだ気付かないのだな。自分の全てが偽りである事をこれだけの時間が経ち、根源へ近づいてもいまだに信じ続けているのか。もしかするとお前は偽りの中身さえ気付いていないのかもしれないな。お前はある意味で素直だったからな。』
ボクは彼女が何を言っているかがわからなかった。
ボクはただ彼女を愛しているだけなのに。
ただそばでずっとずっと一緒にいたいだけなのに。
たとえ彼女が肉片となっても愛し続けていたいだけなのに!!

木々が揺れる。
己に素直になれと語りかけてくる。そうさ、彼女も言ったじゃないか。素直だって。
だからボクは素直になろう。
彼女を殺したいという衝動に素直になろう。
自分の事を嫌いだなんて言われたくない。何処にも行ってほしくない。
なら簡単なこと、殺してしまえばいいんだ。
ボクはあるがままに素直に命令する。
彼女を殺してしまえと。

『チッ。やはり既に飲まれていたか。さすがに二十七祖の手に堕ちただけの事はあるな。おい、式!あいつの体を見ずに公園の樹だけ殺せるか?』
『ホントに役に立たない魔術師だな。やるしかないんだろ。ならやってやるよ。』

ボクが狙ったとおりに木々は彼女へと尖った枝を伸ばしていく。
その時、彼女の前に黒い影が出来た。彼女に向かっていったはずの枝はみんな影とぶつかって霧散していった。
もう、語りかけてくる木々の声はない。
ボクは唖然とする。幾百の枝が一瞬で無に還されてしまった。

『これでお前の武装は払った。話の続きでもしようか。フィン。』
『な、なんで、どうして、ボ、ボクの木々はまだ・・・』
『いい事を教えてやろうフィン。こいつはな直死の魔眼を持ってるんだよ。そう、君に生命の根源を説いたフォアブロ・ロワイン・・・いや、ネロ・カオスと呼んだほうがいいのかな。彼を殺した魔眼だよ。』
『そ、そんな奴は知らない。ボクは親戚の魔術師に教えてもらって時計台に来たんだ。ボクはそんな奴に教えてもらった事なんてない。』

そう、ボクは遠縁の魔術師に拾われて、魔術師になったんだ。
時計塔に入ってからはほとんど一人だったんだ。そんな、奴のことは知らないはずなのに、
ミエテシマウ・・・
男ノ人ガ・・・外套ヲ身ニ付ケタ

シラナイ男ノ人ガ!!!!!

『ホントにわかってなさそうだなフィン。特別に全部教えてやろう。お前の偽りで隠された過去をな。それがせめてもの手向けだ。お前はもうすぐ死ぬのだからな。』
ボクは彼女が何を言っているのか理解できなかった。
フォアブロ・ロワインなど聞いたことのない名前のはずだった。

だが、どうしてだろうか、ボクが今まで重ねてきた人生の記憶の中にあるはずのない映像が混ざってくる。
暗い暗い森の奥で誰かがボクに話しかけてくる。
それは、やはり外套を纏った男とボクがいる森自身だった。

・・・いや、そんなはずはない。
これも彼女の魔術なのだ。あるはずのない記憶を植え付け混乱させる気なんだ。

『まだ、これだけヒントをあげても思い出せないか。まぁ、それもそうか。なんたってソロモン自身が自ら記憶に封印指定を入れるようなものだったしな。いいことを教えてやろう、フィン。お前は教会と時計塔に飼われた実験台だったんだ。教会で扱いきれなくなったお前はソロモンの手によって時計塔に運ばれたんだ。時計塔では君の事は一部にしか知られてなかったよ。』
彼女は冷め切った赤い瞳でボクを見つめて言葉を続ける。

『私自身、荒耶から聞くまではお前の存在自体を知らなかったんだ。その後、色々な話を聞いてお前のことがよくわかったよ。根源にたどり着いた理由もな。
はっきりいって私が知りたかったのは根源の至り方だった。が、お前は至ったのではない根源を記憶として取り込んだんだ。正直そんなこと誰にも出来るわけないと思ったから、お前のことは相当調べたよ。

――――――お前はな、吸血鬼なんだ。しかも、恐ろしいほど真祖よりのな。』

ボクは突然めまいがした。
体の体温が下がってくる。
そうして、頭にはとてもとてもたくさんの映像が飛び交っている。
全部、知らない映像だった。
だけど、ボクはその全ての映像を見てしまった。
まるで、箱の中に何かがはまったような感覚。


――――――ボクはようやく全ての記憶を取り戻した。


『ハハハハハハッ。そうだ、そうだったね。全部思い出したさ。あぁ、何でこんなに面白い記憶を忘れていたんだろうか。ありがとう、君には感謝するよアオザキ。だけどねアオザキ間違ってるよ。ボクは吸血鬼じゃないんだ。ただ、不死身なだけだよ。君は“森”を知っているかい?
これじゃわからないか。言い方を変えよう。
君は二十七祖の内の腑海林アインナッシュを知っているかな?
もう彼此120年になるかな。ボクが今の見た目の時だから、丁度15ぐらいの時だっただろうか。ボクはとある田舎の村の薬屋の一人息子だったんだ。

ある日の夜、ボクは突然、夜に目が覚めてベットから起き出した。街灯もほとんどないような寂れた村だったからね。月しか明るいものがなかったんだよ。
自分の部屋から出て、キッチンへと向かうときに初めて気付いたんだ。
いつも、聞こえる父親のいびきが聞こえない。それどころか何の音もしないんだ。
何か不吉な予感がしたボクは父親の部屋に行ってみたんだ。
あれは、あの光景はよく覚えているよ。
ベットに横たわる父親の胸から枝が生えているんだ。
だけど、よくみたら生えてるんじゃない。ベットの下から突き上げるように刺さっていたんだ。
正直、驚くことも出来なかったよ。
しばらくして、正気に戻ったボクは外へ出て助けを乞おうとした。
けれど、外は全部森だったよ。
アインナッシュに村ごと飲まれたんだ。』

『ほう、なるほどな。アインナッシュかそれならソロモンがじきじきに手を下す意味がわかった。それでお前はどうしたんだ。』
彼女はいつの間にかタバコを咥えながらボクの話を聞いていた。

ボクはあの楽しい日々を思い返しながらまた話を続ける。

『家から出て森の中をひた走ると、目の前に人が立っていたんだ。そう、ネロさ。だけど、そんな事を知らないボクは必死で彼に助けをもとめた。
すると、ネロは森に向かってしゃべりだしたんだ。「ほう、一人生かすとはまた変わった酔狂な行為だな。アインナッシュよ。これをどうするのだ?」
ってね。すると、森がしゃべるようにざわめき始めて、森の奥の奥から枝が伸びてきたんだ。ボクは殺されると思ったんだけれど違った。
目を開けたら、目の前には突き出された枝と紅い紅い実が一つなっていたんだ。
それは、ホントに血の色でだけど透き通って美しかった。
ネロはその実をボクに食べるように言った。ボクは逆らいもしなかったさ。だって、その実は本当に美味しそうだったから。

味は特に感じなかったけどボクは突然、樹の声が聞こえるようになった。
アインナッシュはボクにネロについていくように言われた。
ボクはどうしてだかそれに逆らうことはできなかったし、村の父親のことでさえ興味を失っていたんだ。
そうしてボクはネロから知識を学び、アインナッシュの記憶の根源、紀元種の根源を覗き見、魔術師となったんだ。
そうして、実験のために村を焼き、人を裂き、生き血をすすり、色々な事をしたさ。
教会から逃げたこともあったし、教会のやつらを殺したこともあったな。
中でも、教会のセブンスはやっかいだった、あっちも不死身だったんじゃないかな。お互い腕が飛んだり足が飛んだりで大変だったよ。
それから、ソロモンにつかまって、記憶を飛ばされてこの通りさ。』

ボクは笑いながら彼女に語りかける。
彼女は覚めた目でボクを見続けていた。

彼女が唐突に口を開く
『式、不死身の奴を殺すことは可能か?』
『さぁ、でもこいつ、話を聞いてる限り、殺人衝動に関してはオレに近いものがあるような気がして仕方ないんだが。こいつを殺したくて体が我慢できそうにないかもしれないな。』
『私も手伝おう、黒桐はそのまま下がって帰ってしまってもかまわん。いや、この場にいるべきではないな。帰れ。』
『橙子、これはオレの獲物だ。手を出すな。それと、幹也。アレは人間ではないから殺人にはならないだろう。危ないから帰っていてくれ』
『なんで二人とも帰れっていうんだ。式に何かあったらどうするんだ。オレはのこるぞ。』
『『いいから帰れ!』』
『わかったよ。先に事務所に帰ってるから、終わったら戻ってきてくださいよ。式、気をつけて。』
青年は仕方なさそうな顔をしながら公園から出て行った。
『さぁ、狂宴の始まりだな』
式と呼ばれるその影は不敵に笑っていた。

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