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NausicaaコミュのNausicaa : valley of the wind

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ナウシカ・試論
ver.1.0
まに2000.11.9

1 『風の谷のナウシカ』の構造分析
● 通時的構造
先験的反復・・・エフタル大海嘯−土鬼大海嘯、「青き衣の者」、墓所の地球浄化計画
|ナウシカの自死と復活
|巨神兵を名付けること
生成的反復・・・土鬼神聖帝国−新生クルバルカ王国、トルメキア−後トルメキア(王の
不在)、「青き衣の者」−<青き衣の者>、地球浄化計画の否定。
● 共時的構造
腐海・トルメキア・土鬼の三つの世界の結節点としてのナウシカ−蟲使い。(7.56)
二項の近さと遠さについて。(反復の二つの形式)
セルム「青き衣の者」− ナウシカ(風使い)<青き衣の物>
青き清浄の地(青=生) − 墓所(黒=死)
王蟲− オーマ
瘴気− 風
オーマ=チククの象徴的等価性。(7.33)ナウシカの「子供」としての正義=権力。
● 超越論的時空構造
腐海の「否定神学」的存在様態。外部を同化しつつ自己抹消。青き清浄の地と、影として
の虚無。
人界の「存在−神学」的存在様態。(否定的現前としての)墓所→浄化後の世界(過去=
未来という超越論的時間)。超越論的時間の射影としての「牧人の庭」。僧会−土着信仰
の存在−神学性。僧正と上人が「めしい」であるということ。
地球浄化=二つの自己抹消する超越論的構造の融合←ナウシカが内在的突破(脱構築)。
● まとめ
権力としての先験的反復と、それを脱構築する生命としての生成的反復。
死−生、二つの関係。

2 憎しみよりも友愛を、王蟲の心を。
●主題としての「憎悪と恐怖」・・・粘菌。または不老不死の技術(ヒドラ)。
王族内での近親憎悪=生の中の死。
王位=不死への欲望。
←シュワの墓所・トルメキア戦役。
●恐怖と憎悪
恐怖・・・<外部>・死に対する恐怖。

憎悪・・・<他者>という<外部>の排除。死としての<他者>。
恐怖と憎悪の自己増殖的性質。
- 2 -
●「救世主」としてのナウシカ
「業が業を作り出す輪」を断ち切ること。
<外部>とナウシカ・・・「恐がることを知らぬ人」(3.14)。<他者>との驚異的な交感
能力。
恐怖と憎悪を友愛へと転換すること。テトとの出会い。蟲との関係。「憎しみよりも友愛
を、王蟲の心を」。(6.136)死を生へと変換すること=<他者>との交感という生の様相。
コミュニケーション・世界の結節点としてのナウシカ。

3 決して癒されない悲しみ
●迫害者としてのナウシカ
冒頭のトルメキア兵の殺害。(1.83)「何もしてあげられない」加害者としてのナウシカ。
(2.49)カイの死・<他者>の死によって与えられる生。(3.154)
●死とともにある生
10人の兄姉の死と、ナウシカ/母の「決して癒されない悲しみ」。<他者>の死という
無限の罪を背負って生きるということ。
●王蟲の心
王蟲の心の深淵・王蟲の憎しみと涙。(1.44)たった一つの生命のために、種の全てを賭
ける「ワガ一族ハ個ニシテ全全ニシテ個」(1.127)
自らの死によって憎しみと恐怖を癒すこと。「めしい」になりながら森になるということ
=浄化すること・「青き清浄の地」へ赴くこと。
●呪われた種族の罪
人間がつくった粘菌の暴走。恐怖と憎しみしか知らない生命。(5.65)「大地を傷つけ奪い
取り汚し焼き尽くすだけの最も醜いいきもの」としての人類、迫害者としての全ての罪を
背負い、ナウシカは森になろうとする。(5.137-145)

4 死を癒す森
●ナウシカの回帰
森=王蟲に守られるナウシカ。森を旅し、青き清浄の地へ赴くこと、虚無と苦悩が癒され
るということ。生ける<他者>への責任。(6.72)
●皇弟の成仏
皇弟は、青き清浄の地へ帰る。「青き清浄の地」への希求が、憎悪と恐怖へと逆説的に至
るということ。皇弟=帝国の罪と苦悩すら、森によって癒される〜粘菌を森が癒すこと。
●再生する森
死によって与えられる生・・・森の再生。クイの子供の誕生。(6.100)神聖帝国の滅亡と、
王=チクク・クルバルカの誕生。(6.132)ナウシカが谷に戻ってこないことと、風の和子
の誕生。(6.115)そして、ナウシカの新しい生。
●森としてのナウシカ
腐海=ナウシカの「心の森」。ナウシカが森になろうとし、森に癒され再生すること=人
類の失われた大地との絆を結ぶこと。森=王蟲に癒され、人類の苦悩と悲しみを癒し続け
る、森=王蟲の精神の体現者としての、ナウシカの新しい生。
●<他者>の死を引き受ける生
ナウシカが青き清浄の地を離れる・・・「青き清浄の地」を求めた皇弟との差異。人類=
- 3 -
土鬼の罪を引き受けて生きること。
「森の人」として生きることの拒否。「でも、あなたは生命の流れの中に身をおいておら
れます。私は一つ一つの生命とかかわってしまう・・・」(6.97)清浄な生き方ではなく、
独在者としての<他者>の死への悲しみと罪、いたわりとともに、生き続けること(7.172)
→「森の人」が到達しえなかった知へ。

5 <他者>の死と、生きてあることの真実と
●死のない世界と、<他者>の死
ナウシカは、牧人の庭ですべての記憶を失い、平安を得る。死のない世界。死んだテトと
いう「裂け目」から全てを思い出し、脱出しようとする→生と世界の真実を得る。<他者
>の死と、真実の関係とは?
●<他者>の死と、生きてあることの真実と
墓所との対決。
<他者>の死=世界の裂け目。
<他者>が、この世界の彼方の<もう一つの世界>であること。「生命はどんなに小さく
とも外なる宇宙を内なる宇宙に持つのです」(7.133)
<私>の死としての<他者>。死にゆく<他者>という徹底的な外部性と関わること=<
私>の世界に裂け目を入れられること。<私>の生=世界の有限性を告知する。自らの死
を恐れないナウシカの強さ。
<他者>の死の、身代わりの不可能性。「ごめんね、何もしてあげられない・・・」。「私
達の身体が人工で作り替えられていても、私達の生命は私達の者だ。生命は生命の力で生
きている」(7.198)
死によって与えられる生。<他者>という死と、<他者>の死によって生=世界が全面的
に与えられているという生の奇蹟。「私達は毒なしではいきられない」(7.128)「清浄と汚
濁こそ生命」「苦しみや悲劇や愚かさは、清浄な世界でもなくなりはしない」(7.200)恐
怖と憎悪を乗り越え<他者>と交感し、、死と苦悩を癒して生きること=生成する生。
(7.198)外傷を享受し、癒すということ=享受という生。死によって、死を癒しつつ反
復する生へ。

6 存在論と権力、そして<倫理>
●権力と<倫理>の間
ナウシカがたどろうとした道と、神聖皇帝ら「権力者」との道との距離は何か?いかにし
て、愛が権力へと転化するという運命を、断ち切ることができるか?「そなたたち人間は、
飽きることなく同じ道を歩み続ける。何度も繰り返された道を・・・」(7.121)
●皇弟とナウシカの間
皇弟・・・「青き清浄の地」から到来し、「青き清浄の地」へと帰る。死への恐怖。→墓
所という生=権力へ従属
ナウシカ・・・死とともにある生を選択。墓所への従属を拒否。
●牧人−権力とナウシカの愛
「この山羊たちはまるでこの人の召使いみたい。テトやカイたちと全然ちがう。」
牧人=不死の番犬。他の生命の自らへの従属と引き替えに、死や苦悩のない平安を与える。
(7.118)
- 4 -
ナウシカとテト・カイの関係。自らの全ての生命を賭けて、<他者>の生と死を引き受け
ること。死という深淵を越えて繋がる、真の意味での「友愛」。
牧人の庭=旧世界と浄化後の世界を繋ぐタイムカプセル。超越論的な(先験的な)過去=
未来の現在への投影という非−場所(外からは見えない)。超越論的な死のない世界とし
ての牧人の庭と、そこに論理的・時間的に従属する墓所という死の影。牧人の「死の臭い」。
(7.118)牧人にナウシカは問う。「なぜ墓所には伝えるに値しない技が残され、死の影を
吐き出しているのですか?」牧人の沈黙。(7.134)
●墓所という「超越者」
「浄化」という「存在−神学」と、「神=超越者」としての墓所。「やがて腐海の尽きる
日が来るであろう。青き清浄の地がよみがえるのだ。浄化のための大いなる苦しみを罪へ
の償いとして、やがて再建への輝かしい朝が来よう。」「子等よ・・・力を貸しておくれ。
この光を消さないために・・・」(7.195)
●先験的反復と死を否定する生
墓所の主=春分と秋分に1行ずつあらわれる文章。知=時計としての神。世界と生命を操
作=支配し、死を排除し、浄化計画を「予定通り」遂行する。青き清浄の地の「背面」に
して「体現者」。
<外部>を飼い慣らす確率。ナウシカの墓所の拒否に対して、「多少の問題の発生は予測
のうちにある」。(7.200)「超越者」としての態度・ディスコミュニケーション。
「お前は危険な闇だ。生命は光だ!!」死の否定としての生。
●ヒドラとしての神
ナウシカは、「超越者」として自らを提示する主を拒否し、内在性へと引きずりおろす。
「お前は千年の昔、たくさん造られた神の中の一つなんだ。そして千年の間に肉腫と汚物
だらけになってしまった」「あわれなヒドラ。お前だっていきものなのに、浄化の神とし
てつくられたために、生きるとは何か知ることもなく、最もみにくい者になってしまった。」
(7.200)
●憎悪へと転化する浄化
生=権力・・・死という<外部>の排除。世界を内側と外側に分離する。→死によって与
えられる生という、生の様相を全面的に否定。
皇弟=内なる<他者>の恐怖による抑圧と、外なる<他者>の憎悪・排除。(4.22)
民衆=苦悩とともにある生を逃れ、「青き清浄の地」へと至るために、「超越者」に従属。
●存在論と権力、そして<倫理>
存在論の生成・・・<他者>の排除・憎悪による「世界」の単一化。認識者=知者として
の超越的審級と、客体としての「生」に分離。<他者>の生命を操作するという幻想。
<他者>の死と<倫理>・・・裂け目が開いた生、存在論−権力の限界。唯一のかけがえ
がない<世界>の複数性。死を越えて、死によって交感しあう生の様態。

7 結論
●王蟲の血と、墓所の血
ナウシカが墓所の体液を浴びて<青き衣の物>として大地に降り立つ。「王蟲の体液と墓
のそれとが同じだった」(7.222)ということの意味・・・ナウシカは墓所を攻撃したので
はない?
- 5 -
●青き清浄の地と、墓所
「青き清浄の地」=墓所のネガ。同じ起源を持つ。
しかし、ナウシカは墓所を「破壊」したように見えるが、「青き清浄の地」によって癒さ
れ、腐海の<体現者>であり、大地との絆を結ぶものとして生きている。青き清浄の地を
総体として否定していない!「世界はよみがえろうとしていました」(7.171)それはなぜ
か?
●生命の自律性と、権力の不在
ナウシカにとって、生命の自律性は根源的なもので、否定することなどできない。「たと
えどんなきっかけで生まれようと、生命は同じです。おそらくヒドラでさえ。」(7.133)(ヒ
ドラ=牧人・浄化の神!)とするならば、<他者>を支配することが可能な「権力」は、
そもそも存在すらしていない!ナウシカは、予定された浄化の計画(という不可能な存在)、
死のない生ではなく、死と苦悩を癒し続ける個々の王蟲や生命というプロセスを愛してい
たのだ。「苦しみや悲劇や愚かさは、清浄な世界でもなくなりはしない。それは人間の一
部だから・・・だからこそ苦界にあっても喜びやかがやきもまたあるのに。」(7.200)
●憎しみを癒す生
粘菌(最もみじめな生き物)と、それをつくった人間ですら、攻撃するのではなく癒す腐
海=ナウシカ。墓所(最も醜い生き物)ですら、ナウシカは癒そうとしていたはず。
●愛しえないものを愛すること
旧世界の申し子、墓所が育てた巨神兵を名付け、子供として引き受けること。「いまこの
子を見捨てたら、粘菌と同じにしてしまう。」(7.32)憎しみと恐怖すら引き受け、「調停
者」と正義の者、すなわち迫害者として生きること。
愛しえないもの=ナウシカ自身。平安な世界への希求へ。ナウシカが、愛することができ
ない巨神兵すらあえて愛することは、迫害者であるがゆえに愛しえないものとしての自ら
の生を、苦悩と悲しみとともに、それでも引き受け愛するということ。「オーマに名を与
えたときから、私は心を閉ざしました」(7.118)
●墓所を癒すナウシカ
ナウシカは腐海の<体現者>として、帝国=皇弟の罪を背負い、巨神兵を引き受け、そし
てトルメキアのヴ王によって守られて、墓所の「計画」と対決する。「私達はお前を必要
としない」(7.198)三つの世界の全ての結節点としてのナウシカ。しかし、それらの世界
は墓所の浄化計画によってすでに作り替えられ、先験的に与えられていたのではなかった
か?とするなら、ナウシカが世界を引き受け癒そうとするとき、それはある意味で墓所を
癒していることになるはず。
だが、ナウシカは、そのような「計画」の内側から、全ての<他者>と死を越えてつなが
り、<宇宙>の代表者として、<宇宙>と生命との自律性の名において、墓所の超越論的
計画を脱構築する!=生命の生成的反復
●<権力>の裂け目−「決して癒されることのない悲しみ」再び−
なぜナウシカは、人々に真実を語らなかったか?それが人々の生の希望を奪うという最大
の暴力・権力へと転化することを避けるための、ぎりぎりの選択。それに彼女は「権力」
が「存在しない」ことを知っている。たとえ「超越者」に従属していると本人達が思いこ
んでいても、人々は「生命それ自体の力」で生きているから。
- 6 -
真実を語ること・・・他者に従属せざるを得ない人間の弱さを、全面的に否定すること。
だからナウシカは、<権力者>としての自らの生を、苦悩と悲しみとともに引き受ける。
新たな王、チクク(=オーマ)の後見人、トルメキアの本来の<王>としてのナウシカ。
存在論と<権力>を<正義>として引き受けるということ。
しかし、最終的な審級としてのナウシカにおいては、その<権力>性に<他者>の死・「決
して癒されない悲しみ」という裂け目が開いている。それこそが、総体としての<倫理>
的地平を示している。

Paper work from Naoki Okada

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