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masayumeコミュのまさゆめ連載小説 第二話「雨と噴水」

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彼女は駅前広場の噴水あたり。ちょうど僕と噴水の対角線上にいた。

蒼いワンピースを着て傘もささず彼女は雨の中にたたずんでいた。

彼女はただそこに立っているだけだったのに僕は目を離すことができなかった。
彼女から感じる違和感の正体が僕はなぜだかわからなかった。
ただこの駅前広場で彼女だけ夢の中にいるような、
彼女の周りだけが世界のどこともつながってないよいような気がして見入ってしまっていた。

ここからでは遠くて表情は見えなかったが。悲しい顔をしてるのだろうと勝手に思った。
きっと何か悲しいことでもあったのだろう。
彼氏に振られたとか。飼っていた犬が死んでしまったとか。
まあ、僕の知らないところで彼女の物語があったのだろう。
その物語に僕は出てこない。僕には関係ないことだ。

僕みたいな平凡なやつにはわからない事情があるのだ。



僕は止まない雨に飽きた目線を彼女に向けて時間を潰していた。潰しているはずだった。


そのはずだったのに。


今考えても何でそうしたのかわからない。


僕は彼女に話しかけていた。


「何してるんですか?」
「何か探しものですか?あー、えっと、雨ぬれちゃいますよ。」

「・・・君も・・・ぬれちゃってるよ。」

雨音にかき消されないように大声で話しかけた僕とは対照的に、彼女は静かな声でそう言った。
しかし、僕よりも数段小さなその声は雨音の中ハッキリと僕の耳に入ってきた。


「とにかくどこか屋根の中はいりませんか?風邪引いちゃいますよ。」

「だめ・・・」

「えっ?」

「ゾンビ・・・」

「えっ?ゾンビ?ゾンビがどうしたんですか?」

「ゾンビと戦ってるの。」




やばい。


この人はやばい人だ。



「お疲れちゃんです!!!デュクシ!!!」

僕はとっさに機転をきかし謎の掛け声とともに彼女の元から離脱した。



僕が駅前の3番バス乗り場で夕立が止むのを待ってる間も彼女とゾンビとの戦い(?)は続き
雨が止むのと同時に彼女はどこかへ帰っていた。


僕は落ち着いて今の出来事を整理してみた。僕には驚いたことが三つあった。
知らない女の子に話しかけるという、らしくない行動をしてしまったことが一つ。
彼女の突拍子もない発言が一つ。

そして最後の一つは、振り向いた彼女の顔が全然悲しい顔ではなかったこと。
それどころか、僕が今まで見たこともないような優しい笑顔だったこと。

雨粒が地面をたたく音が消えた後も、鼓動が胸をたたく音がずっと消えなかった。




つづく

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