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四月馬鹿。コミュの▲【二次創作BL】涼宮ハルヒの憂鬱シリーズ、古泉×キョン。

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 2007.夏 涼宮ハルヒシリーズ
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This closed world is filled with despair.
And what is forced to living in this world surely this world as for the toy of God is because is it.


足音が聴こえる。
…あぁ、この音は、あの世界だ。


【ある少年の閉鎖的日常】


「……っつ」
七夕も終わり、梅雨明けが発表された翌日の朝。なぜこういう日に限って雨が降るのか。

まだ残っている梅雨特有の湿気の多さと生温い空気が、重い体を更に重くした。
やっとの思いで学校へ着く。大した坂でもないのに、こんなにも息があがることを辟易した。
外履きから上履きに履き替える。前のめりになった瞬間、右脇腹に激痛を催して倒れそうになる。だが、少しよろけただけ、という演技をして一階の男子トイレに入った。
渇いた咳が数回漏れる。それを抑える様にカバンから薬とペットボトルを取り出す。
痛み止めを3錠一気に流し込んだ。

僕は完璧でなくてはならない。
何故なら、涼宮ハルヒが僕に仮面を被せたからだ。
僕は組織の一部の人間以外に生身の僕を見られてはならない。
何故なら、涼宮ハルヒは僕が生身であることを望まないからだ。
僕は〈僕〉を演じ続けなければならない。
何故なら、僕以外の人間から見た僕の演技は〈僕〉そのものだからだ。
だから、僕は例え誰が見ていなくてもこの世界に存在する限り〈僕〉でなくてはならない。
…そしてそんな芸当が可能なのは組織の能力者の中では僕だけだ。


だから。


階段を登る足からの振動で肋骨が軋む。内蔵を吐きそうな程の痛みに、思わず顔を歪めた。
喉の奥で塞き止めた吐瀉物は少し鉄の匂いがする。それにまた、吐き気が込み上げる。

「…っ…情けない……」
〈僕〉がこんな状態でいい筈がない。僕は装置なのだから、世界の中で役目を果たさなければ。
やり場のない苛立ちに、作った拳を壁に叩く。あまりの弱々しさを自覚して歯噛みする。

踊り場で掲示板を見る振りをして休む。階段の昇降すら困難な自分に腹がたった。



放課後、彼の少し後に〈部室〉に入る。このいつもの状態にすら、意味がある。
僕はドアの蝶番に、普通に掃除をしたりよく見たりする程度ではまず気付かないように発信器を着けている。長門有希はこれに気が付いているようだ。しかし、なにせ彼女は人間ではない。
だから、僕はそれを頼りに部室に入らなければならない。携帯のバイブが信号の受信を告げる。

大丈夫だ、今朝から教室では誰にも気付かれなかった。僕はやれる。

「やあ、皆さん、お揃いで」
笑顔はもう僕の仮面ではなく、本体になっているようなものだ。内心でこの表情を自嘲した。
長門有希は読書を続けており、彼がよォ、とあまり気のない挨拶。朝比奈みくるは笑顔と、すぐお茶を入れます、というはにかんだ声。
大丈夫、異常はない。
「涼宮さんはまだですか?」
もう聞かずとも、僕は彼女が掃除当番だと知っていた。だが、聞かないという選択肢は僕のシナリオにはない。
彼がそれを異常だと意識下で認識してしまうことに気付いているからだ。

通過儀礼のような彼との言葉遊びのあと、やはりこれも儀礼的に朝比奈みくるの入れた茶を飲む。
毎日これを気付かれぬよう採取して研究所に送るのは至難の技だが、慣れていればまず大丈夫だ。ヘマはしない。ある種の手品のようなものなのだから。
これは、朝比奈みくるを懸念してのことではほぼない。現在の彼女以外の未来人を警戒してのことだ。
彼と涼宮ハルヒの食物や衣服など、彼らに触れるもの全ては組織の担当者が3年前から毎日検査している。

そうこうしている内に彼女が入ってきた。予定誤差範囲内の時間で。
僕は本日の報告書に記載する内容を頭で纏めながら如才ない微笑みを絶やさない。

今日は金曜日だ。
だから涼宮ハルヒは明日の町内パトロールについて語る筈だ。
それは組織が通じている長門有希以外のTFEI端末の報告で知らされている。
大丈夫。なんの狂いもない。
今日はあと、この場を一時間少々過ごせば帰宅できる。帰宅先に医者がいることにもなっている。
なんの問題もない。
そして明日、今日よりもう少しマシな体で町を徘徊できれば、それでいい。
それをやり過ごせば日曜日は一日寝ていられる。

そして、そう考えつつも僕は微笑みを絶やさず、相槌をうち、時には涼宮ハルヒの機嫌を取り、時には彼に冗談をとばした。

会話が一段落し、長門有希はいつものように、ゼンマイ仕掛けのような正確な足取りで僕の後ろの本棚に本を取り替えにくる。
涼宮ハルヒはパソコンでとネットサーフィンをしている様子で、朝比奈みくると彼は、茶葉と茶器について語っていた。
なにも問題はない。
「古泉一樹、早急な身体メンテナンスを推奨する。あなたは人間。現状を維持し続けることは推奨しない」
小声で早口な、氷点下の声が背後からした。少し後ろに視線を飛ばし、ふっと笑って冷めた茶を啜る。
そうですね、長門さん。心内で返す。
「今日も、中々美味しいお茶でしたね」
彼らの会話に混ざった。

そうしているうちに、彼がこちらをじっと見ているのに気が付く。

「どうしました?」
「……」
無言の彼に少し焦る。
「僕の顔に、なにかついてますか」
それでも僕はシナリオ通りに振る舞い、様子の違う彼にも動じることなく接する。
「別に?」
彼は目を逸らした。不安が一瞬過る。
唐突に、彼はパソコンに向かう涼宮ハルヒに言った。
「なあハルヒ、忘れてたんだが明日な、俺、妹連れて田舎に帰らなくちゃならねぇんだった」
涼宮ハルヒはパソコンの前から椅子で移動、そして眉を吊り上げる。
「なによ、キョンのバカ!今更忘れてたなんて。許されると思ってんの!?」
彼は苦笑しながら両手をあげ、降参、のポーズ。
「だから謝ってんだろう?」
涼宮ハルヒの顔が曇る。しかし、何かを納得したようだ。

「むぅ……仕方ないわね…。じゃぁ、次は誰が最後に来てもキョンのオゴリなんだからね!!」
彼が最後に来るしかない状況を作っているのは、彼女と彼以外の全員なのだが、彼と彼女、涼宮ハルヒはそれを知らない。
「はいはい、わーったよ。どうせいつも俺のオゴリだろうが」
「違うわよ!次は心に余裕を持って来れるじゃない」
涼宮ハルヒはため息を一つ吐き、仕切り直して宣った。
「…みんな、聞いてー!明日のパトロールだけど、このアホキョンのせいでやめにすることになったわ!その代わり、次はなんでもキョンのオゴリだから!」
…なんでも、というのは間違いなんじゃないだろうか、と一瞬考え、意識を戻す。
なぜ、彼はそんなことをいきなり言い出したんだろう。

まさかさっきの長門有希の言葉が聞こえていた訳はない。
彼女は僕にしか聞こえないよう、不可視音声遮断防壁を完璧に展開していた。
しかし、TFEI端末の言ったことに誤差が生じるなんて。
組織が通じているTFEI端末は一個体だけではない。その全ての総意の情報に誤差が生じた。
ということは彼が書き換えたのだ。これでまた一つ、世界の時系列が変化した。
不吉な予感がする。〈鍵〉である彼は涼宮ハルヒのシナリオを変えられる。世界を動かす存在。
それがなぜ、ほんの些細なこととはいえ、彼女の機嫌を損ねかねないことを発するのか。

…これが、閉鎖空間の発生に繋がってしまったら?
一瞬口許から笑みが消えそうになる。只の偶然ではなかろう、この事態に。



帰り道、涼宮ハルヒと朝比奈みくるはいつものように先頭を、少し離れて長門有希が、最後尾に僕と彼が歩く。
彼とはいつも、取るに足りない話から、割合重要な涼宮ハルヒについての話までするが、今日はなんとなしに話辛い空気だった。
とはいえ、彼が話をしなくとも、僕にはここでは喋り続ける必要がある。何故なら〈僕〉はそういう男だからだ。
僕は夏休みの予定という学生の夏前の話の代名詞的内容に照準を合わせる。

現在、僕の属する組織の大まかな検討だが、涼宮ハルヒが引き起こす閉鎖空間なるこの場所とは異なる次元の破壊的、破滅的な場所の発生には、2つの理由があるのではないかと仮定されている。
一つは彼女が意識できる苛立ちや、不自由、気にくわないことが起こった場合。これは彼にも話を通している。それにこちらは比較的防ぎやすく、対処法もある。
しかしもう一つは彼女のバイオリズムに沿った形で起こる場合だ。こちらはほぼ月に1・2回なのだが、女性特有の身体現象とシンクロしてその前後に起こる。これが本気で性質が悪いのだ。防ぎようがない上、対処も明確ではない。しかも、本当に彼女の意識下で起きるため、時と場合により神人の動きも異なる。
…そして、昨日の晩、それは爆発的破壊力を持っていた。仲間の7割が負傷。無傷の者も精神消耗が激しく、負傷している者の半数は一週間以内の能力使用が不可能だ。

「―――やはりそうまとめると、僕としましては計画をたてることは必然なのですがね。貴方はなにか予定や計画がおありですか?」
いつの間にか話の内容が、いかに長期休暇を有意義に過ごすか、という方向に転じていた。
彼は僕の話をいつものように詰まらなさそうに聞いていた。
これでいいのだ。現状が正しい。
だがしかし、この状況は正しいものとはならなくなる。

彼は僕の振った話に答えなかった。
それも、いつものような空気ではなく、自分は機嫌が悪いのだ、というのを肌で感じさせる態度で。
背中を冷や汗が伝う。これを涼宮ハルヒが感じ取ってしまったらどうする、どうなるという、恐怖。
「古泉、ちょっとこの後空き、あるか」
唐突に彼から発せられた言葉は掠めるように風に乗って、辛うじて僕の耳に届いた。
逡巡する。どういう意味なのか。
「それはどういった意味合いなのでしょうか。お話なら今お聞きしますよ」
僕は〈僕〉だ。
彼の機嫌が急降下する。それでも、僕は…、僕にはどうすることも叶わない。



それからまた一方的に僕が喋り続けた。
彼は一言も発さなかった。
学校から麓の駐輪場まで下りてきた。僕等はいつもここで別れる。
長門有希は中腹のマンションで帰宅。彼はここから自転車、僕・朝比奈みくる・涼宮ハルヒは方向は違うが、電車だ。
『では、また来週』、そう言おうとした瞬間。
「ハルヒ、俺ちょっとコイツと話あるから先帰れ」
彼が、また彼女の機嫌を損ねかねない台詞を吐く。
僕は動揺している。しかし、表層的には打ち合わせでもしていたように話を合わせる。

「すみませんね、夏期休暇について、ですよ」
涼宮ハルヒはそれを聞いて急に上機嫌顔になる。それは、もう既に夏の旅行について彼女に話を打診していたからだった。朝比奈みくるはキョトンとしているだけだが、彼女はそれが正しい。
「わかったわ!古泉君、しっかり話してやってよね!!」
鼻歌交じりで朝比奈みくるを抱きくるむようにして歩く。
自分の機嫌が急降下していくのがわかる。でも、それでも、僕は〈僕〉だ。取り乱してはいけない。
「…ちょっと来い」
そういって彼に連れられたのは彼の自宅だった。
その間も、何を話しかけても彼は無言しか返さない。僕も次第に喋らなくなる。

二人で歩いた為、家に着いた時間は19時をまわった頃だ。僕は家族が居ると思い、挨拶の手順を考えた。
彼が僕を一人で家に呼ぶなんてことは今までありえなかった。
…僕を警戒していないのだろうか。
鍵を開ける彼。…気付く。家族がだれも、居ない。



家に上げてからも、彼は僕を居間のソファーに座るように言ったきり、自室に向かってしまった。
僕は携帯を取り出す。僕のマンションに着いているはずの医者に連絡を入れた。
「おい」
後ろから声がする。如才なく微笑む僕は、笑顔の下で焦りを感じていた。

もうそろそろ痛み止めの効果が落ちてきている。
効果があっても、辛うじて隠せる程度だというのに。
「なんでしょう。夕飯でもご馳走して頂けるんですか」
冗談めかす。彼は眉間に皺を寄せる。
「お前、具合悪いだろ」
…やはり、彼は見破っていた。
「なんのことでしょう?僕はこの後も“組織”の仕事があるので、出来れば早めに帰宅したいのですが」
彼は組織について知っている。だからこれを言いさえすれば切り抜けられると思った。

やはり僕は冷静ではない。今、切り抜けられると思ったのがいい証拠だ。
「そんなに“涼宮ハルヒ”が大切か」
彼の怒気のこもった視線が痛い。
噛み合わない会話に苛立つ。どうして僕にそんな事を投げかけるのか。
溜息をついた。言いたいことを全部吐き出しそうになる。
それが怖い。彼は関係ないのだ、僕の組織の守るべき人物なのだから…。

だから、一定以上近づく事は禁止されている。
「…確かに僕は怪我をしています。ですが、それがあなたになんの関係があると?」
彼が顔を顰める。
「ああ、ないさ。俺には。お前の組織がどうだろうと、閉鎖空間がどうだろうと。でもな、お前個人についてはダチだと思ってる」
「友人、ですか」
駄目なのだ。僕は彼と〈友人〉にはなれない。
涼宮ハルヒの鍵、それが彼なのだから。僕はいかなる個人的感情も排斥しなければならない。
「ではお聞きしますが、本当に僕とあなたが“友人”だと思いますか。僕にとってはあなたは涼宮ハルヒの鍵です。そして観察対象でもあります。確かに友人だとも思いますが、それ以上に前提条件としてあなたは僕にとって世界に対する鍵、でしかない」
「…っ」
言い返せない、顔を顰める彼に追い討ちをかける。
「あなたに出来るのは閉鎖空間で神人と戦うことでも宇宙的・未来的な能力を操ることでもない。あなたには涼宮ハルヒとさっさと恋仲にでもなって、世界を少しでも揺らがせないこと、そのぐらいですよ。まぁ、その相手に僕は選ばれなかった。だからあなたに土下座してでもやって欲しい役どころなのですがね」
彼は俯いている。

判っている、僕等が興味で一度だけ持っていた関係に悩んでいる彼を、判っていながら僕は。
「じゃぁ…なんであんなことをした…?」

掠れた声で呟く彼に。
「あの時、閉鎖空間に引きずり込んだのは確かに僕です。そしてあなたに口づけたのも、僕だ。それでもその後したこと、あれは興味だったと、納得し合いましたよね。僕は〈鍵〉に触れたことで始末書ものでしたし、あなたもいい気はしていなかった筈です」
「それでも、俺は…」
まずい。痛みが増してきている。自覚できる程に。
「とにかくあなたも僕も冷静じゃない。今日はそろそろ止めにしましょう」
「……」
では、と言いかけて、腹部の痛みを感じ、詰まる。
取り繕うために言葉を繋げる。
「あと、今日のように不用意に涼宮さんの気分を損ねかねない事を言うのは止めてください。もし僕を気遣ったのなら、尚更迷惑です」

玄関に向かう。彼はそのまま同じ場所に立ち続けていた。
互いに興味本位とは言え、彼を抱いたのは僕だ。彼は女性ともそういう経験を持っていなかった。
僕も男は初めてだった。
初めて見た時から彼はとても綺麗に見えた。無欲・無頓着。そのように見せながらも人間らしい部分が多く、そしてそのバランスが美しかった。
もう3年も僕は人間的である自分を排斥していたのに、それでも彼と言葉を交わすうち、自分に情が戻るのが判った。
恐ろしかった。今の自分はようやく世界に必要とされ始めたのにそれを邪魔しようとする感情が、自分でコントロールできないことを恐れた。
『無理をするな』、そう彼は僕に言った。
僕の弱さを否定しない彼に、精神的に甘えが出た。
それでも彼は涼宮ハルヒと異空間から戻ってくる時に、口づけをして。

判っていたのだ、そうなる未来も、彼が選ばれた事でそうなる運命だということも。
僕は彼に魅かれている。彼も僕を好きでいてくれる。
それでも、僕等に、それは許されない事だった。
<愛している、なんて>



翌日、医者に診断を受ける。
自分で思ったより酷い状態だったらしい。
僕は熱を出した。
ただ寝ていることしか出来ない時間で、彼に何度電話をしようとしただろう。
それでも、僕は。



足音が聴こえる。
…あぁ、この音は、あの世界だ。
それが自分や仲間のものであって、彼のものではないことを知っている。
それでも、痛みに蹲る僕に手を差し伸べてくれる先に彼がいる事を、こんなにも望んでいる。


絶望的に閉鎖されたこの世界で、キミを思い続けなければならないのは。
きっとカミサマの悪戯なのだろう。


This closed world is filled with despair.
And what is forced to living in this world surely this world as for the toy of God is because is it.





---言い訳---
古泉の設定に肉薄してみました。
英語がおかしいのは翻訳サイトそのままだからです。

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