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学は光コミュの「SGIの日」記念提言 3

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「命のための水」世界基金の設置を

 次に、国連が取り組む「ミレニアム開発目標」に関して述べておきたい。
 この目標は、2015年までに貧困や飢餓に苦しむ人々を半減させるなど、人間の尊厳を保つ上で不可欠となる生活基盤や社会基盤の確保を目指したものです。昨年はその折り返し地点にあたり、国連がこれまでの進捗状況を調査し、明らかにしました。
 それによると、開発途上国で初等学校への就学率が上昇したほか、貧困に苦しむ人々の割合や子どもの死亡率などの点で改善傾向がみられる一方で、このままのペースではミレニアム開発目標のすべての目標を達成することは困難と言われています。
 こうした中、昨年7月、イギリスのブラウン首相が中心になってとりまとめ、アメリカやカナダ、日本やインド、ブラジルやガーナなど各国の首脳が署名した「ミレニアム開発目標に関する宣言」が発表されました。
 そこでは、先進国と途上国がともに政治的な意思をもって、「正しい政策と正しい改革が十分な財源と一体となる体制」を早期に確立することの重要性が確認されています。
 そこで私は、国連が2005年から2015年までを「『命のための水』国際行動の10年」とし、今年を「国際衛生年」と定めていることに鑑み、安全な水の確保と衛生環境の整備を軸に、「正しい政策と正しい改革が十分な財源と一体となる体制」の確立を目指していってはどうかと考えるものです。
 現在、10億人を超える人々が安全な水を得る権利を否定され、26億人が十分な衛生設備を利用できない状況に置かれています。その結果、毎年およそ180万人の子どもが下痢やその他の疫病で命を落とし、多くの女性や少女が毎日の水汲みを余儀なくされ、雇用や教育のジェンダー不平等(性別による格差)を拡大する状況を招いています。
 また、安全な水と衛生設備の不足により引き起こされる日常的な体調不良などが加わり、経済的な不平等が固定化され、人々を“貧困の連鎖”に閉じ込めてしまうことが懸念されています。
 国連開発計画も、「水と衛生に関する危機の克服は、21世紀前半の重要な人間開発課題の1つ」と位置付け、その対策が成功すれば、「ミレニアム開発目標(MDGs)に間違いなく弾みがつくことになろう」と強調しています。
 また、水と衛生設備に関する目標を達成するには、世界の軍事支出の約8日分にあたる100億ドルの追加資金が毎年必要となると試算し、「国家安全保障というより狭義の概念は除外して、人間の安全保障の向上という点からみると、少額であっても軍事支出を水と衛生設備への投資に回せば、大きな利益がもたらされる」と呼びかけています(以上、『人間開発報告書2006』古今書院から)。
 すでに、ミレニアム開発目標に関する資金的な枠組みが成果を収めてきた例として、2002年に設立された「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」があります。
 その最大の特徴は、地域や疾病ごとに事前に予算を割り当てず、各国のニーズに応じた計画を立て、審査を経て財政的な支援を行うという「途上国のオーナーシップ」が重視されていることです。また運営にあたる理事会には、各国の代表以外に、民間セクター、先進国と途上国のNGO、感染者団体の代表が加わり、同等の票と発言権を持つことで、より広範な人々の声を意思決定に反映するシステムがとられています。
 これらの特色を引き継ぐ同様の資金的な枠組みとして、「『命のための水』世界基金」を創設し、人間の尊厳が脅かされている多くの人々の状況を改善するための対策を集中的に進めるべきではないかと、私は考えるのです。

次代担う青年を育成支援し「アフリカの世紀」の旗手に

 私の創立した戸田記念国際平和研究所では、2年前から「人間開発、地域紛争、グローバル・ガバナンス」と題する新プロジェクトに取り組んでいます。
 この「人間開発」の概念とともに、「人間の安全保障」の概念を先駆的に提唱したことで知られるマブーブル・ハク博士は、戸田平和研究所の活動に創立時から期待を寄せてくださっていた一人でありました。かつて博士は、戸田平和研究所が主催した国際会議での基調講演(97年6月)で、「悲劇的結果がもたらされた下流で対峙するよりも、発生源の上流で人間の安全保障の新たな課題に取り組むほうが、容易であり、人間的である」と強調されたことがあります。
 また博士は、人間の安全保障を「人間の尊厳に関わる概念」と位置付け、「死亡しなかった子ども」や「蔓延しなかった病気」のように具体的な姿をもって人々の生活に反映される安全保障でなければならないと訴えていました(植村和子他訳『人間開発戦略 共生への挑戦』日本評論社)。その意味からも、ミレニアム開発目標に関する取り組みは、目標の達成はもとより、悲劇に苦しむ一人一人が笑顔を取り戻すことを最優先の課題とすることを忘れてはなりません。
 地球上から悲惨の二字をなくしたい――これは、私の師である戸田城聖第2代会長の熱願でもありました。その師の平和思想を淵源とする戸田平和研究所では今後、ミレニアム開発目標や持続可能な開発をはじめ、「人間開発」に関する取り組みを地球的規模で促進するための国際会議の開催や研究に、さらに力を入れていきたいと思います。

悲劇の流転を転換する新たな潮流

 ここで、「人間の尊厳」の輝く地球社会を築くために、特にアフリカに光を当てて提案を述べておきたい。
 21世紀に入り、アフリカの恒久的な平和と持続可能な成長を目指して、アフリカの国々による新たな挑戦が始まっております。
 その核となる存在が、AU(アフリカ連合)です。旧来のOAU(アフリカ統一機構)を改組する形で2002年7月に発足したAUは、53カ国・地域が加盟する世界最大の地域機関です。最高機関である総会(首脳会議)や各加盟国の代表からなる全アフリカ議会に加えて、平和・安全保障理事会、経済・社会・文化理事会、アフリカ人権裁判所などが、これまで相次いで設置されてきました。
 「21世紀はアフリカの世紀」との信念で、各国の首脳や識者と対話を重ね、民衆レベルでの文化交流や教育交流の拡大に取り組んできた私にとって、AUの挑戦が着実に成功し、アフリカの人々に大きな実りがもたらされることを願ってやみません。
 「アフリカの再生」こそ「世界の再生」であり、「人類の再生」につながる道であるというのが私の変わらぬ確信であります。
 事実、20世紀末から21世紀にかけ、人類の悲劇の流転史を転換する新しき潮流は、アフリカの大地から生まれてきました。南アフリカのマンデラ元大統領らによるアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃と真実和解委員会の取り組みしかり、先に触れたマータイ博士らによる環境運動と女性のエンパワーメントの活動しかりであります。これらの潮流は、今や世界各地に広がって、時代変革の波を広げているのです。
 またアフリカでは近年、多くの国々で内戦や紛争が終結し、民政移管へのプロセスが進むとともに、経済成長率が好調となっているように、明るい兆しがみられます。
 もちろん、ダルフール地域やソマリアにおける紛争をはじめ、貧困や難民の問題など、アフリカを取り巻く状況は、依然として厳しいものがあることは事実です。ミレニアム開発目標の達成度も、サハラ砂漠以南の地域の進捗状況が、最も深刻であるといわれています。
 しかし今、積年の負の遺産に屈することなく、アフリカの国々が互いの協力で持てる力を倍増させる方向を目指し、直面する課題に連帯して臨む基盤づくりが進みつつあることの意義は計り知れないといえましょう。

2006年6月から、新たに活動を開始した国連人権理事会。第6会期では、「人権教育および訓練に関する国連宣言」の採択準備を始めることが決定された(昨年9月、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で)

国連の「人権教育のための世界プログラム」を支援するため、学会青年部が制作した「21世紀 希望の人権展」。国連諸機関の後援を受け、各地を巡回し、反響を広げてきた(2005年12月、東京・渋谷区の国連大学ビルで)

「核兵器の非合法化」を人類の規範に
北極の非核地帯化が急務
 その具体的な取り組みとして採択されたのが「アフリカ開発のための新パートナーシップ」です。“アフリカ開発の鍵はアフリカ自身が握っている”との信念に立脚した各国の指導者による誓約をまとめたもので、平和と安定、民主主義、安定した経済運営、人間中心の開発の促進などが目指されています。大切なのは、こうしたアフリカの人々による意欲的な挑戦を、国際社会が全力で支えていくことではないでしょうか。
 今年5月には、第4回アフリカ開発会議(TICAD4)が横浜で開催されます。この会議は日本が主導し、国連などとの共催で93年以来、5年ごとに行われてきたもので、アフリカをはじめ各国の首脳や国際機関の代表らが参加し、アフリカが抱える問題に対する認識を共有し、解決の方途をともに話し合う場となってきました。
 今回の会議にあたって、私が特に留意を促したいのは、「アフリカの青年に対するエンパワーメント」の視点をすべての対策の基礎に据えることです。貧困や悪環境の下での生活が世代を超えて受け継がれる悪循環を断ち切り、「青年層の置かれた状況の改善」を通じて、「すべての世代にわたる状況の改善」を段階的に図っていく――そのプラスのサイクルへの転換を目指すべきだと訴えたい。
 これまでTICADでは、基礎教育の普及、人づくり拠点への支援、職業訓練などの面から人材育成が進められてきました。その実績をベースに、新たな柱として「アフリカ青年パートナーシップ計画」を設け、青年に対するエンパワーメントを前面に押し出し、アフリカが直面する諸課題の克服に挑戦する担い手を育成する環境整備を進めるべきであると提案したい。
 そして、日本をはじめ世界の青年との交流を深めながら、アフリカの問題にとどまらず、地球的問題群の解決にともに立ち向かう“青年の青年による青年のためのネットワーク”の形成を目指していってはどうでしょうか。
 今年は「日本アフリカ交流年」でもあり、さまざまな交流行事が予定されています。その取り組みを一つの起点として、今後、日本とアフリカ諸国の青年や学生たちが、毎年、定期的に交流する制度を確立することも、あわせて提案したいと思います。

軍事利用の再燃と開発競争への懸念

 最後に、第3の柱として「不戦の制度化」の観点から提案をしておきたい。
 私は、冷戦対立が激化していた時代から、軍拡の流れを阻止し、緊張緩和を図るために、米ソ首脳会談の開催を呼びかけるとともに、自らも対話と交流による民間外交に努めてきました。米ソ関係に加えて中ソ関係が悪化した時(1974年〜75年)には3カ国を相次いで訪れ、周恩来総理やコスイギン首相、キッシンジャー国務長官らと会談し、関係改善のための橋渡しも行ってきました。
 人類を破滅に導く核兵器による全面戦争や、世界を分断し民衆を苦しめる戦争を何としても食い止めなければならないとの決意からでした。冷戦の終結で、そうした危機は遠のいたものの、近年は核兵器の拡散に伴う脅威が強まってきております。
 昨年の提言で私は、「核兵器に依存しない安全保障」への移行を図るために、核軍縮の誠実な履行を確保する「国際核軍縮機構」の創設を呼びかけました。この軍縮の履行と同時に、核廃絶を実現させる上では、「核兵器の非合法化」を国際社会のコンセンサス(合意)として確立することが欠かせません。
 その一環として今回、注意を喚起したいのが、「北極の非核地帯化」であります。これは昨夏からカナダ・パグウォッシュ・グループが呼びかけているもので、戸田第2代会長の「原水爆禁止宣言」を胸に“核兵器のない世界”の実現を目指す私どもSGIも、趣旨に賛同し、支援を表明したいと思います。
 北極海は、かつて冷戦時代において弾道ミサイルを搭載する東西両陣営の原子力潜水艦の航路として、軍事戦略上の重要な地理的位置を占めておりました。しかし先に触れたように地球温暖化に伴い、夏季に北極域の海氷が減少し、一層の軍事利用が可能となる状況が生まれることが懸念されています。また、これまで厚い氷に閉ざされていた北極では、海上航路の利用は困難で海底資源の開発は容易ではありませんでしたが、温暖化で状況が一変すれば、その利用と開発をめぐって、各国の利害が大きく衝突する恐れもあります。ゆえに今、北極における軍事利用の禁止や、人類の共有財産としての保護体制の確立とともに、非核地帯化が喫緊の課題となっているのであります。
 南極では、1959年に採択された「南極条約」に基づき、軍事利用の禁止のほか、南緯60度以南地域におけるすべての核爆発と放射性廃棄物の処分が禁止されています。
 その後、非核地帯を設置する動きは、ラテンアメリカおよびカリブ地域、南太平洋、東南アジア、アフリカ、中央アジアにまで広がり、域内での核兵器の開発・製造・実験・保有・使用とともに、輸送や持ち込みを禁じる条約が五つの地域で成立するにいたりました。今や南半球の陸地の大半をカバーし、アジアにも広がった非核地帯は、それぞれの地域における核拡散の歯止めとなっているだけでなく、「核兵器の非合法化」に向けての足がかりとなるものともいえましょう。
 これらの非核地帯条約に署名した国に、一国で非核地位を宣言しているモンゴルを合わせると、100カ国を優に超えます。つまり、世界の半数以上の国々が、核兵器の開発や使用を条約の形で違法化する意思を示しているのであり、他の地域でも非核地帯の設置に向けて協議を重ねる中で、「核兵器の非合法化」を人類共通の規範としていく流れを確実にし、最終的には核兵器の開発・取得・保有・使用禁止などを定めた「核兵器禁止条約」=注6=を実現する道筋を開いていくことが求められます。
 その取り組みの一環として、まずは国連が中心となって、北極の軍事利用の禁止と非核化を定める「北極非核地帯条約」の制定を目指すべきであると訴えたい。とくに被爆国で非核3原則を国是としている日本は、「核兵器のない世界」を求める他の国々や市民社会と協力しながら、北極の非核地帯化に向けてのイニシアチブを発揮していくよう、強く望むものです。
 またこのアプローチは、北東アジアにおける核拡散防止を考えるにあたっても有益であると思われます。
 日本は「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核3原則について、今後も一切の例外なく堅持することをあらためて誓約した上で、6カ国協議を通じて「北朝鮮の核開発の完全放棄」を目指すとともに、「北東アジアにおける非核地帯の設置」という、より包括的な目標とビジョンに向けた関係国との対話と外交努力に、全力を注ぐべきであると思います。
 核軍縮にせよ、核兵器の非合法化にせよ、国際社会の世論の強い後押しなくして、現実の重い壁を突き崩すことは容易ではありません。その突破口を開くための草の根レベルの枠組みとして、私は2年前に発表した国連提言の中で「核廃絶へ向けての世界の民衆の行動の10年」の制定を呼びかけました。
 そして私どもSGIでは、戸田第2代会長の「原水爆禁止宣言」50周年の意義をとどめて、昨年から「核兵器廃絶への挑戦と人間精神の変革」展の国際巡回をスタートさせました。これは、1980年代に行った「核兵器――現代世界の脅威」展や、冷戦終結後に内容を一新した「核兵器――人類への脅威」展に引き続く形で、国連が呼びかける「軍縮・不拡散教育」を民衆自身の手で進める具体的行動の一つとして新たにスタートしたものです。
 今後もSGIは、この意識啓発の活動とともに、パグウォッシュ会議をはじめ、志を同じくする団体や組織と手を取り合いながら、「核兵器の非合法化」の実現を求める国際世論の喚起に努めていきたいと思います。核廃絶への道を開いていくことこそが、生命尊厳の思想を掲げる仏法者としての社会的使命であると確信するものです。

クラスター爆弾の使用を条約で禁止

 二つ目に呼びかけたいのは、「クラスター爆弾禁止条約」の早期締結です。
 クラスター爆弾は、内蔵した多数の子爆弾を広範囲にまき散らす兵器で、目標対象となった一帯にいる人々を無差別に殺傷するだけでなく、一部が不発弾のまま残るために、紛争終結後もなお深刻な被害をもたらし、復興を妨げる要因となっているものです。
 これまで24カ国・地域で約4億4000万個の子爆弾が使われ、推定で10万人が死傷したといわれており、今なお73カ国が備蓄を続けている状況にあります。
 その使用や製造と備蓄の禁止などを求めるNGOの連合体「クラスター爆弾連合」が2003年に発足し、運動が広がる中、昨年2月にクラスター爆弾の禁止を目指す国際会議がオスロで開催されました。以来、対人地雷全面禁止条約を締結した際と同じ方式で、クラスター爆弾の禁止に積極的な国々とNGOを中心に「オスロ・プロセス」と呼ばれる条約づくりの作業がスタートしました。
 クラスター爆弾をめぐっては、これとは別に、「特定通常兵器使用禁止制限条約」の枠組みでの討議が行われていますが、いまだ大きな進展は見られません。
 最終的には、より多くの国が加わることが望ましいとしても、オスロ・プロセスが目指しているように年内の条約締結を実現させることが先決ではないでしょうか。対人地雷全面禁止条約が成立から10年を経て、加盟国だけでなく非加盟国に対しても地雷の使用を思いとどまらせる人道的・国際法的な規範となったように、クラスター爆弾に関しても同様の規範を国際社会の中でつくりあげていくべきではないかと思うのです。
 対人地雷に続いて、市民社会の強い後押しで、クラスター爆弾の禁止条約が成立すれば、他の分野における軍縮を前進させる大きな原動力となるに違いありません。

東アジアに不戦の潮流を!
日中平和友好条約締結から30周年

 最後に、日中関係の未来を展望しつつ、東アジアにおける「不戦の制度化」について論じておきたい。
 今年で、日本と中国との間で平和友好条約が締結されて30周年になります。
 振り返れば、日中平和友好条約の締結は、74年12月に周恩来総理とお会いした折、周総理が強く希望しておられたものでした。私もまったく同感であり、その会見の翌月にアメリカのキッシンジャー国務長官と会見した際には、日中友好にかける私の信念と周総理の思いを伝え、賛意を得ることができました。
 75年4月に再訪中し、トウ<登におおざと>小平副総理と条約の早期締結について語り合い、三木武夫首相への伝言を託されました。日本政府にそれを伝えた後、政府間交渉が再開されました。そして78年8月、条約が調印され、日中関係の新たな歴史が始まったのです。
 以来、さまざまな分野で交流が進み、経済面での相互依存が深まる中で、今や1年で473万人が往来し、貿易総額も日米間の総額を超える規模に発展するほどの関係が築かれるまでにいたりました。
 また最近は首脳間対話が定期的に行われるようになり、政治面でも協調関係の構築に向けた動きが活発化しつつあります。昨年4月には温家宝総理が来日し、首脳会談が行われ、成果である日中共同プレス発表の中で「協調と協力を強化し、地域及び地球規模の課題に共に対応する」との方針が盛り込まれました。来日の折、私も温総理とお会いしましたが、席上、温総理が「中日友好は、大勢の赴くところであり、人心の向かうところです」と語られた言葉が深く胸に残っております。
 また先月には福田首相が訪中し、胡錦濤国家主席らと会談を行い、環境・エネルギー分野での協力や青少年交流などに関する共同文書が合意されました。
 かつて私が両国の国交正常化を訴えてから40星霜――。日本と中国が、アジアと世界の平和と安定と発展のためのパートナーシップの構築に向けて大きく踏み出したことに感慨を覚えます。
 日中関係の好転とあわせ、日韓関係の改善も進みつつあり、この3カ国の良好な関係が一つのベースとなって、「東アジアサミット」での議論も、地道な地域協力を模索する場として定着してきたと言われています。
 一方、ASEAN(東南アジア諸国連合)も、昨年11月の首脳会議で、地域の平和と安定の維持、非核武装、貧困削減などの目標を掲げる「ASEAN憲章」と、2015年の経済共同体実現に向けた宣言を採択し、地域統合に向けた前進を開始しました。
 私は、日中韓の3国と、ASEANという二つの輪が、平和と共生の方向に向かって粘り強く歩みを続けていくならば、やがて東アジアに「不戦の制度化」を実現することは、決して不可能ではないと確信しています。
 日本では、昨年から「21世紀東アジア青少年大交流計画」を立ち上げ、中国や韓国やASEAN加盟国を中心に、5年にわたって毎年6000人の青少年を日本に招く計画をスタートさせました。
 長らく東アジアにおける青年交流や教育交流を民衆レベルで進めながら、より一層の拡大を呼びかけてきた一人として、計画の大成功を心より願うものです。
 と同時に、この取り組みを単なる交流の機会だけに終わらせることなく、例えば、国連諸機関で働く人々を招いてともに話を聞く場を設けたり、国連が進めている環境教育や軍縮教育に関して一緒に学ぶ機会を持つなどして、青年たちが国境を超えて次代を担う共通意識を育む場にしていってはどうかと、提案したいと思います。
 人類の未来はすべて青年たちの双肩にかかっている――これは、私が対話を重ねてきた世界の識者の意見の一致するところでもあります。
 私どもSGIは、「新しき世紀を創るものは、青年の熱と力である」との戸田第2代会長の遺訓を胸に、今後も青年に一切の光を当てつつ、地球的問題群の解決のために行動する民衆の連帯を築いていきたいと思います。

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語句の解説
 注1 文明の同盟フォーラム
 スペインとトルコの両首相の共同提案を受けて、2005年9月に国連のアナン事務総長が「文明の同盟に関するハイレベルパネル」を設置。2006年11月にまとめられた最終報告の成果を踏まえ、第1回のフォーラムが今月開催され、「異文化間対話に対する若者の取り組み」などをめぐって討議が行われた。
 注2 「僣主制」への衰退
 プラトンは『国家』の中で、政治制度のあり方を、(1)王制(2)名誉制(3)寡頭制(4)民主制(5)僣主制、の五つに分類。その上で、民主制という「最も高度な自由」が、それがはらんでいる宿命的な内部矛盾によって、僣主制という「最も野蛮な隷属」へと衰退してしまうという“自由の背理”の問題を提起した。
 注3 スペイン内戦
 1936年から39年にかけてスペインで起こった内戦。人民戦線をソ連が支援し、フランコ将軍らによる反乱軍をファシズム陣営のドイツとイタリアが支持した。これに介入する形で、反ファシズムの旗を掲げる「国際旅団」が組織され、ヘミングウェーやアンドレ・マルローをはじめ各国の知識人や労働者が義勇兵として身を投じた。
 注4 IPCC
 国連環境計画と世界気象機関によって1988年に設立。科学的見地に基づいた地球温暖化に関する報告書を定期的に発表し、第4次評価報告書の作成には130カ国以上から約4000人の専門家が参加した。昨年、温暖化に関する共通認識をつくったとして、ゴア前米副大統領とともにノーベル平和賞に選ばれた。
 注5 「バリ・ロードマップ」
 交渉が難航し、日程を延長する形で採択された行程表では、すべての国が参加する特別作業部会を設け、来年の第15回締約国会議までに、数値目標も視野に入れた新たな削減枠組みをつくることで合意。具体的な検討項目として、途上国への被害防止支援や技術移転、新たな資金策の検討、森林減少対策などが盛り込まれた。
 注6 核兵器禁止条約
 この条約の基礎となるものの一つとして、法律家、科学者、軍縮専門家らによって作成された「モデル核兵器禁止条約」がある。97年にコスタリカが国連に提出し、討議文書として配布された。昨年のNPT(核拡散防止条約)再検討会議の準備委員会において、コスタリカにより再び改訂版が提出され、公式の文書となった。

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