ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

子供も大人も読みたい絵本&物語コミュのテイルズ・オブ・ワールド 〜第6章・参〜

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
「ようし…、なんとか手形は三人分、手に入れたな。
後は、この手配されてる身でどう国境の門を潜るかだな。」



シェル・オロゴン・サフィアの三人は、イーストランドの国境から数百メートルほど離れた林の中から、国境の青い光のカーテンを見つめていた。

その傍らには、サフィアの魔法によりクシャミの止まらなくなった旅人が三人。

ヤマの村をこっそり抜け出したシェル一味は、カズヤ一行を追って国境近くまで来たのだが、お尋ね者の身分で城から通行手形を配布される訳もなく、道行く旅人から強奪したのだった。



「ねぇ〜ん、兄貴ぃ。
どうやって門番ちゃん達の検査をクリアするのぉ〜ん?」

「お、オレ…戦うのは勘弁して欲しいんだな。」

「んな事は、分かってらぁ!
サウスランドに行ってまでお尋ね者なんてのは、こっちも真っ平御免だからな。」



シェルは、何か良い案でもないかと、辺りを見回す。

すると、木の上に【ある物】がぶら下がっているのに気が付いた。



「おい…オロゴン、サフィア。
あの木にぶら下がってる物を見ろ。」

「なぁ〜にぃ〜ん?」

「ん? ど、どれかな?」



シェルが指差した箇所を眼で追う二人。

その視線の先にあったのは、大きな【蜂の巣】。

巣の周りには「ブンブン」と羽音をたてて、蜜蜂達が元気に飛び回っている。



「え…、ちょ、ちょっと待ってぇ〜んアニキぃ。」

「ま、まさかなんだな。」



オロゴンもサフィアも、シェルがこれからやろうとしている事を察し、顔から血の気が瞬時に引いていく。



「うるせぇ!
他に方法なんて無ぇだろうが!」



シェルは近くに落ちていた木の枝を拾うと、蜂の巣へと近付いていく。



「あ、アニキぃ〜。
考え直してくれないかしらぁ〜ん?」

「おおお…オレもそう思うんだな!」



しかし、無情にも二人の声はシェルの耳には届かず、ついに禁断の一振りが蜂の巣へと振り下ろされた。





ギャアアアアアァァァ〜〜〜………ッッ!!!!





のどかな草原に、三つの悲痛な悲鳴が兒玉した。





「失敗したなぁ。
昨日、カズヤさん達が通ったときに、サイン貰っとけばよかったな。」

「そうだな。
オレんトコの坊主、ドラゴンを倒した話をしてから、大ファンでさ。 サイン貰い忘れたなんて言ったら、どやされちまうよ。 ハハハ…」



国境の守衛がそんな話をしていると、そこへヨタヨタと近付く怪しい三人組の影が。



「な、なぁ…あの三人、なんかフラフラしてないか?」

「あ…あぁ。 明らかに怪しいな。」



普通ではない三人の様子を警戒し、身構える守衛達。

しかし、その三人を間近で見た途端、緊張の顔はある意味、恐怖のものへと変わる。

三人の顔面は、真っ赤に染まり、形もボコボコ。

およそ今の顔から元の形を判別できない程に腫れ上がっていた。



「お…おい君達。
どうしたんだ、その顔は? 大丈夫かね…?」



守衛がそう話し掛けると、銀髪のボコボコ顔の男が、やはりボコボコの手でOKサインを作りながら答える。



「た゛…た゛い゛し゛ょう゛ふ゛い゛…。
そ゛れ゛よ゛り゛、こ゛っき゛ょう゛を゛わ゛た゛り゛た゛い゛……。」

「そ…そうか。
それでは手形を拝見。」



銀ボコは、三人分の手形を差し出す。



「う…うむ、確かに。
君達、本当に大丈夫なのか? 医者を呼ぼうか?」



しかし三人は守衛の言葉に答えることなく、ヨロヨロとした足取りで国境の門を潜った。



「さ゛あ゛、や゛つ゛ら゛を゛お゛い゛か゛け゛る゛そ゛…!」

「わ゛…わ゛か゛っ゛た゛ん゛た゛な゛。」

「い゛や゛ぁ゛〜 ん゛。 わ゛た゛し゛の゛か゛お゛か゛ぁ゛〜…」










―――その頃、先にサウスランドでの旅を始めているカズヤ達は―――





ガキイィィ……ッッ!!



巨大なゾウリ虫の顎を、カズヤは黄金色の剣で受け止める。

しかし、体重で圧倒的に勝るゾウリ虫は、その体勢のままカズヤに覆いかぶさろうとしてくる。



『くッ…! おおぉ……ッッ!!』



カズヤは剣だけではなく足も使い、押し潰されぬよう、懸命に踏ん張る。

そこへ、ゾウリ虫の背後に回り込んだドランが飛び掛かっていった。



(おらあああぁぁ……ッッ!!!!)



ザシュッッ!!



ドランのオーラを込めた爪を受けたゾウリ虫は、その巨体を短冊切りにされ、体液を辺りに撒き散らしながら息絶えた。



『はぁ! はぁ!
これで何回目だ、甲殻虫に襲われるのは!?』

(知るか! いちいち、数なんて数えてねぇよ!)



カズヤ達が国境を出発して半日。

その間、幾度となく甲殻虫の襲撃を受けては戦闘し、撃退していた。

本来ならばカズヤ達の乗っているラークヨが甲殻虫の気配を察知し、襲撃される前に逃げてくれる筈なのだが…。



(あのラークヨ、ふざけやがって!
俺様達が甲殻虫と戦う力があると解った途端、ヤツ等が来ても逃げなくなりやがった!)



ドランが苛立ちの表情で、少し離れた場所で寝ているラークヨを睨みつける。



『たぶん僕達が戦うから、自分は無理して走ることもない…とか思ってるんだろな。』

(アイツも爪で引っ掻いてやろうか!?)

『待てよ、ドラン。
なんだかんだで、コイツが探知してくれるから、僕達も構えて戦えるんじゃないか。』

(馬鹿か、お前は!
アイツがちゃんと自分の役目を果たして走って逃げりゃあ、わざわざ戦う必要も無えんだよ!)

『う…、それもそうか。
ま…まぁ、とりあえず甲殻虫も今は襲ってこないみたいだし、ラークヨに乗って先に進もう。』



なんとかドランを宥めつかせたカズヤは、再びラークヨに跨がると、地図に記載された最初の町【オアシスの町オーシス】へと向かった。



(なんか、おっかしいんだよな。)



ラークヨのコブの上で寝そべっているドランが、ボソリと呟いた。



『…何がだ?』

(昔、先生とサウスランドを横断した時は、ここまで頻繁に甲殻虫に襲われなかったんだよなぁ…。
この馬鹿ラークヨが仕事しねえっていっても、やっぱりおかしい。)



ドランの「馬鹿」という言葉に怒ったラークヨが、「ブフンッ!」と激しく鼻息と鼻水を飛ばす。



『そうなのか。
でも昔って、いつくらいの話なんだ?』

(んー…
50年くらい前だったかな?)

『50年…って、昔すぎだろ! 半世紀前の話をするなよ!
……てか、ドランお前いったい何歳なんだよ!?』

(あ? 120歳だ。
ちなみに先生は300歳。)

『120歳!?
お前、ヨボヨボのお爺さんだったのか!!』

(誰がヨボヨボだ!
この世界じゃあ、精神の年齢が肉体に現れるんだよ!
見た通り、まだピチピチのヤング・ヤンガー・ヤンゲストだろがッッ!!)



確かに中身は若いが、このブヨブヨメタボの身体を見ていると、カズヤからは苦笑いしか浮かんではこなかった。

じゃあ、ひよっとしたらマーサも自分よりもずっと年上だったのかもしれない…などと考えながら、カズヤは複雑な気持ちでラークヨの手綱を引く。

ちなみに、マーサは見た目も実年齢も10歳のマジカル美少女(?)だ。

読者の皆さんも、そこは安心して欲しい。



『それにしたって、オーシスに着くまでにあと何回、戦わなきゃならないんだろうな。
買ってきた水も、そろそろ無くなってしまう。』

(オーシスはオアシスの周りに人々が集まった小さな町だ。
着いたら、たらふく水を飲んでやるぜ!!)



カズヤとドランがそんな話をしていると、急にラークヨの足元が覚束なくなった。



『こ…今度はなんだ!?』



ラークヨの様子を伺うと、甲殻虫のセンサーである眉毛がワサワサと動き、反応している。



ズズズ……ズ…



すると、カズヤ達の立つ一帯の砂が、まるで下に穴でも空いているかのように沈み始めた。



『え…!?
な、なんだよ! 甲殻虫の仕業なのか!?
こんな近くに来るまで、ラークヨが気付かないなんて!!』

(…こりゃあ、アイツだな。)



ドランが一筋の冷や汗を垂らし、辺りを見回しながら呟いた。

話している間にも、段々とゆっくりではあるが、カズヤ達は窪みの円の中心へと吸い寄せられていく。

ラークヨもパニックになりもがくが、足元を砂にとられ、身動きをとれなくなっていた。



『アイツって何だ!?』

(アイツは、自分の巣の中でジィッと獲物が通るのを気配を殺して待ってんだ。 これだけは、いくら敏感なセンサーを持っているラークヨでも、罠に掛かるまでは気付けねぇッッ!!)

『だから、アイツって何なんだよ!?』



パニックになるカズヤに、ドランは円の中心を顎で指し、叫んだ。



(見ろッッ!!)



円の中心の辺りからは、いつの間に現れたのか、人間の一人や二人くらいは有に食べてしまいそうな大きな虫が顔を出し、顎を動かして餌が流れ込んでくるのを待っていた。



『アリジゴク…ッッ!?』

(やべぇぞ!
何とか脱出しねぇと、俺様達全員、明日にはヤツの糞になっちまう!)



ラークヨの足は、既に砂へと埋まりきり、自慢の逃げ足は完全に封じられた。

とはいえ、ラークヨを見捨てて逃げるのは可能だが、その状態でこの先の旅を続けるのは不可能。



『……くそっ!』



カズヤはそう叫ぶとラークヨから下馬し、自ら砂の中へと飛び込んだ。


(カズヤ、何をする気だ!?)

『全滅を逃れるには、この方法しかない!!』



そう言うとカズヤは、ラークヨの腹の下へと両手を滑り込ませ、全身からオーラを放ち始めた。



『お…おおおぉぉぉ……ッッ!!!!』



カズヤが力を込めると、300キロはあろうかというラークヨの巨体が、僅かに上へと持ち上がる。



(おい! 弱いくせに、無茶するんじゃねぇッッ!!)

『言っただろ! これしか、方法はないん……だッッ!!』



一層大きなオーラを放ったカズヤは、ラークヨの巨体を持ち上げると、円の外まで放り投げた。

カズヤの咄嗟のファインプレーで罠から脱出したドランとラークヨは、すぐさま円の淵から中を覗き込む。



(やるじゃねえかよ、カズヤ!
ホレ、お前も早く脱出しろよ!)

ぶふふふーーん!



しかし、カズヤの身体は既に首辺りまで砂へ埋没し、一切の身動きがとれなくなっていた。



(おい! 何やってんだ!!
さっきみたいに馬鹿力を出して、脱出しろよ!!)

『言っただろ、ドラン。
【全滅】しないには、あの方法しかないって。
ここまでの戦闘と、今の無理で、これを脱出する程のオーラが残ってないんだ。』

(な…ッッ!? バッカヤロウ!!
カズヤ…カズヤーーーッッ!!!!)

ぶふふーーんッッ!?



ドランとラークヨの叫び声が響く中、カズヤの意識は重い砂と共に、深い闇へと落ちていった…。










『テイルズ・オブ・ワールド』〜第6章・参〜 完

コメント(8)

〜作者の独り言〜


60本目。

ちなみに私の足跡リストも、もう少しで6000です。

カズヤ、どうなっちゃうんでしょう。

このまま物語は最終回を迎えてしまうのかッッ!?

例によって次回分は下書き完了しているが、来週まで待て!!
> たぁさん


寿命は基本的に無いですね。

本人が死を自覚した時、すなわち魂や心の死が、この世界での死です。

スーリプ&ゲタップの件で、アンジュを想うロイとユキノが【想】として存在していたのも、そんな感じですね。

死んでる場合じゃねー!

と、思っていたんでしょう。
この砂漠辛すぎませんか!?

しかもラークヨ仕事しろ!!笑

でも本当にワクワクドキドキしますね!!
カズヤどうなっちゃうの!!
> ガチュ(。・ω・。)ノさん


カズヤに、ほんの少しでいい。

元気を分けてくれ!
次回、第6章・四は

明日、3/24(火)

更新予定!!

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

子供も大人も読みたい絵本&物語 更新情報

子供も大人も読みたい絵本&物語のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング