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黒澤明監督「赤ひげ」コミュの赤ひげをより理解するための瑣末な事項[2]

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レトロスペクティヴ・レポート その2 です。


■2 民間からの提案・目安箱  


 小石川療養所の実現には麹町に長屋住まいしていた医師・小川笙船が目安箱に入れた「施薬院」の設置を求める意見が反映されたことになっている。

意見としても、希望だけを述べるものが大半であっただろう目安箱から実現に至ったのは、笙船がその運営費、建設費に言及していたからであった。

当時の江戸は町数1600余、町人人口50万人以上。その大都市江戸の行政を担当していたのは南北2人の江戸町奉行だった。

そして町奉行の下には与力各25人と同心各100〜120人しかいないため、個々の町の行政事務処理は、各町に置かれた名主(町役人)に委任され、奉行所はその監督・指導をするスタンスを取っていた。(つまり150人で50万人都市を運営しているようなもので、民活の協力態勢なしには到底不可能なのである)

つまりは江戸の都市機能は名主を頂点とした地主・家主・地借、店借、店子という町内の支配組織が機能して初めて成立していたわけで、この名主に対して支払われる行政事務委託運営費はその不動産的広さによって地主・家主から徴収されており、事務費が高騰すれば、そのまま地主・家主への苛烈な請求に直結していた・・・。

そのために、あまりにも繁多な仕事に名主自身の目が行き届かず、その下の事務職にまかせきりになってしまい、不明朗な使途不明金が生じていたであろうことも想像に難くない。

笙船はかねてよりこういった実情を苦々しく思っていたようである。というのも、彼自身が店借の身分であって、理不尽な値上げに苛まれていたからだ。

笙船は町の経理責任者であった名主役を廃止して、その役料を施薬院の運営費に充てることを提案した。結局名主役を廃止することには至らなかったのであるが、それでも名主らに組合を結成させ、その内容を互いに監査する機能を持たせる対応がなされることになった。

 この笙船の上申書のなかの施薬院設置を希望する意見は将軍・吉宗の心を動かした。それは吉宗自身が医療・薬学に対する造詣が深く、急騰する医療費問題を幕政の上からも無視できないレベルに達していたからである。

病気から人々の生命や生活を守るのも将軍の仁政であるという思想のもと、施薬院設置の気運が享保期のいま高まっていったわけである。その基盤にあるのは「養生」という健康への概念だった。

さし当たって開設準備に入った頃、役人は笙船に意見を聞いている。彼は「施薬院には縁者もいない患者を収容し、幕医に治療させる。看病人はおなじく縁者のいない老人を充てる」と述べた。

この提案の内容を聞いて初めて、映画『赤ひげ』の中では、まったく看護する人間の姿が見えないことへの疑問が少し解けたような気がするのはボクだけではあるまい。

■3 「養生」という概念 につづく。

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