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イデアの森の秘密コミュの(7)イナリコード

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イデアの森の秘密/エピソード.1
「眠れる森」―(7)

              著者/「イデアの森の庭師」の弟子にあたる‶森の郵便配達人″


「青の球体」・・<亜美彦の独り言>

人間が宇宙と呼んでいる空間、実はそこは霊域そのものであることを知る人は少ない。
そしてそこには数え切れないほどの次元が存在している。
またその各次元の扉を一つ間違えると、とんでもない世界に迷い込んでしまうことがある。
そう、人類の遥かな祖先とされているマスヒトらもそうだった。
かつてそのマスヒトらは銀河系の霊域に誕生した。
そしてその霊域の中には様々な生命圏があった。
彼らはその様々な生命圏の中で、最高に優れた理知的生命群だったときがあり、
宇宙のあらゆる次元に高度な文明を開花させる霊的教師となっていた時代があった。

さて、そのマスヒトらの中に理知的な秩序には囚われない生命の一群が現れた。
その名はアオヒト。好奇心旺盛で冒険を好む一族だ。
あるときアオヒトらは、ある次元領域に対して一つの実験を試みようと言うことになった。
その実験とは、彼らによって創造された理念界の中に彼ら自身の意識を流入し、
拘束的感覚や物理的衝撃を体験すると言うものだった。
そこで彼らは、広大な宇宙の霊域の中のある一つの次元に目標を定めた。
その次元は時間と空間と位置の関係によって生命が存在する世界だった。
そして彼らはそれを実行に移し、その目論みは大いなる成功を得た。
理念界をリアルに体感できる次元の存在を実証したのだ。
ところが・・・かなりの時を経て、そこは意図したはずの次元でないことに彼らは気づいた。
ひょっとして次元座標の設定を間違えてしまったのか?彼らはそう思った。

その次元のマトリックスコードは<反射>。
そこは複数の鏡に像が反射するように、侵入した生命の意識が増幅反映される次元だった。
創造的自我が生み出す<呪縛と矛盾の迷宮の世界>。
いつしかアオヒトらは、彼ら自身の利己的な意思が因となって創造される、
エゴパラダイムな世界をそこに形成して行くことになる。

ところが宇宙と言うのは実に玄妙にできていて、
宇宙自らを監視する<透徹の目>なる仕組みが、生命創生の頃より用意されていた。
あるときその<透徹の目>は、突如その次元の天空に亀裂を入れ、
大地に向けて無数のプラズマを走らせた。
その光の衝撃は自身の思考の矛盾に気づく機会を彼らに与えた。
そして彼らの中の一人のアオヒトが自らの同胞に向かって叫んだ。
「始原の生命の光だ!」
生命のプラズマ。実はこれこそがイナリの語源なのだそうだ。
アオヒトらはその彼をサヲトミと呼ぶようになった。神聖を得た者と言う意味だ。
その者によって気づきの連鎖反応が起こり始め、その気づきは彼らの生命体全体に及んだ。
すると彼らはいつの間にかその次元から解脱し、気がつくと亜空間に浮かんでいた。
やがてアオヒトらは<透徹の目>に自らの意識の純化を願った。
そこで<透徹の目>はその願いを聞き入れることにした。
そのようなことからアオヒトは魂の長い眠りにつくことになる。そう、長い長い眠りに・・・。

どれほどの宇宙の歳層サイクルを経たことだろう・・・。
その長き眠りから醒めたアオヒトはある悟りを得ていた。
その悟りは、彼らのその後の創造活動に理想的な生命ポジションを与えることになった。

・・・あるとき、宇宙の深遠で精妙なる霊の海に<青の球体>が浮かんでいた。
アオヒトらの意識はそこにあった。彼らの新たな試みがそこで始まった。
そこには緑の生命体を守護し奉仕する役目を担ったエーテルスピリッツ(精霊)、
ガデアノが遣わされた。そしてアオヒトらはその<青の球体>をイドムと呼んだ。
これがいわゆる今日の楽園伝説の始まりとなる。

<透徹の目>は前もってアオヒトらのその理想を理解していた。
<透徹の目>は彼らのその試みを受け、自らが万命の光となることを定めた。
それは後に生まれることになる緑の生命体を育むための生命エネルギーの源となるためだ。
これがアオヒトらがアメンヒラと呼ぶことになるバイオプラズマの放射体、
霊界太陽の誕生である。

やがて<青の球体>を構成している緑の要素は意識を持つようになった。
アオヒトらの意識が降下流入したためだ。
このアオヒトらの意識の流入は、後世の人間の言葉でワクムスビと呼ばれるようになる。
続いてアオヒトらは、<青の球体>の表面に物理的生命として活動することを始めた。
まず上と下の方向性を定めることにした。続いて彼らの意識は上に向かった。
その意識の流れが幹や枝と言う形になり、下に伸びた意識は根となった。
そこには天と地が現われ、いつしかその<青の球体>は緑の深い樹木に覆われていた。
その次元はアオヒトらが始めて体験する世界、三次元の始まりだった。
そう、<青の球体>に降り立ったアオヒトらの霊は、緑の生命体としての道を選択したんだ。
人間と対極にある生命体として・・・。


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――イナリコード――

黒潮の流れる太平洋沿岸部に広大な青い樹林を抱く国があった。その名は<熊野>。
ここはまさしく太古の神々が息づく神秘の国。
樹林は風を呼び、風は叢雲(むらくも)を引き連れ、叢雲は雷電を放つ。そこは龍神の原郷。

その光景を見ていると、まるで宗達の屏風絵がそのままそこに現れたような錯覚に陥る。
誰でもこの地の深奥部に触れると、それまでの生活に戻ることを好まなくなる。
なぜなら、この森に鎮まる地霊が人間の生命の本質に気づかせてくれるからだ。
そしてここは大峯の山々と共に霊的結界を張り巡らせた修験の根本道場でもある。

龍隠もこの<生命の蘇りの地>に魅せられた一人だった。
そしてこの地には熊野三山と言う日本屈指の聖域があり、
さらにその奥には熊野三山の奥の院とも称される深遠なる玉置山が存在している。
龍隠はその山を守る修験の老僧、宝冠坊の薦めで、
初めてその山に足を踏み入れたことから修験の道に入った。

ところで以前亜美彦は、空海が稲荷の神と出会ったとされる元稲荷の地を求めて、
紀伊田辺にやって来たとき、その地で立ち寄った寺の住職から、
さらにこの元となる稲荷の社と言うのが玉置山にあると聞き、
そこで玉置山に足を伸ばすことになった。
亜美彦が龍隠と出会ったのはそこでのことだった。
玉置山の頂近くには古代の神々の息づく厳かなる古社があった。
その古社を玉置神社と言い、蔵王権現と熊野大神が祭られている。
さらにその境内の奥には三柱神社と言う稲荷の社があった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――前回に続く―――


「熊野・・・生命の蘇りの地ね。まるでキリストの復活みたいな感じね。」

瑠璃子のつぶやきに亜美彦は答えた。

「おいおい、それは頂けませんな。熊野は列記とした修験の道場の地でありますがな。」

龍隠は瑠璃子に訂正を求めた。

「あら、それは失礼しました。」

瑠璃子は即返事を返した。ところが今度は亜美彦が水を差した。

「熊野大神のクマノはユヤとも読むのって知ってる?ユヤだよユヤ。何か感じない?」

「ん?そう言うたらまさにそれですな。確かに何やらありそうな。
玉置山の玉置神社の境内には稲荷の神を祭る三柱神社があるし、
これが稲荷の本家ともある筋の方から聞いてましたしな、
この三柱が御柱やなく、三柱としてるのが臭う。」

「その玉置山だけどね、丹後の磯砂山(イサナゴヤマ)と繋がってることは知らないでしょ?
こちらも臭うよ。」

「ほおー、玉置山とイサナゴ山が繋がっていると?それでどない臭うんですかいな?」

「この山には天の真名井(アメノマナイ)と呼ばれる池があって、
そこは羽衣天女伝説の発祥の地とされてるね。」

「天女の降りた?」

瑠璃子が言った。

「そう、羽衣天女伝説。天上から降りて来た八人の天女が真名井の池で水浴びしていたら、
そこに現れた翁が一人の天女の美しい姿を見て、心が惹かれてしまい羽衣を隠してしまう。
天上に帰れなくなった天女を翁は家に連れ帰り、その後、その翁の家は大いに富み栄える。
どんな訳があったか知らないけど、やがて翁は天女が邪魔になり家から追い出してしまう。
途方に暮れた天女は嘆き悲しみ、丹後北端の地で亡くなると言う悲劇の物語でね。」

「まあ、お気の毒な天女さま。」

「いやー、まるで現代の人間社会の様子を描いているようですな。
まったく感謝がないなーちゅうか!」

瑠璃子の声に龍隠の言葉が被さった。

「普通はそのように思えるよね。」

「え!違うんですか?」

「その話をする前に、どうしても知ってもらわなければならない話があるんだな。
その天女の名前はトヨウカメ(豊宇賀売)と言って、実は伏見稲荷の主祭神なんだ。
トヨウケヒメ(豊宇気比売)ともウカノミタマ(宇迦之御魂)とも呼ばれている。
ところがね、驚くのはここからだよ。この女神は古代日本の成立の根幹に関わっていて、
何と日本の精神の原点とも言われている伊勢神宮の外宮に祭られる神さまでもあるんだ。」

「と言うことは、伊勢の外宮って稲荷の神さまを祭っていると言うことになりますのね!
このような話、龍隠さん知ってられました?」」

「う〜ん、まあ。そう言えば小生の先生である宝冠老師に何とのう聞いたような・・・。」

「でも何で悲劇のトヨウケヒメが伊勢神宮に祭られることになったのですか?」

瑠璃子にはそれが不思議でならなかった。

「まさにそうなんだ。理由はアマテラスがトヨウケヒメに食事を望んだからと、
そう言うことになっているけど、もちろん真の理由はそんなことではない。
丹後から外宮に遷座したのは果たしてトヨウケヒメの神霊なんだろうか?
そこにはトヨウケヒメの神霊に仮託された何かがある。古代日本の大いなる秘密。」

「トヨウケヒメは悲劇のヒロインやないんやよ。むしろ使命を果たしたんと違うの。
翁のことは父のように思うて慕ってましたしね。翁も大事にしてたんです。」

突然と言うか、やっと茜が口を開いた。それもまるでその時代にいたかのように。

「羽衣天女って契約の聖櫃の蓋に乗ってるケルビムのような感じがするんだけど・・・。」

「困るんだな、それを言われると・・。」

「あら、そうなんですか?」

「なぜ翁は羽衣を隠す必要があったんだろう?羽衣を隠したと言うところがミソな訳さ。」

瑠璃子と亜美彦のやり取りを無視するように茜は話を続けた。

「翁の名はアワキベ(阿波岐部)ワナサ(和名佐)と言うて、四国徳島の出身なんです。
あたしはこの翁をオオアマサル(凡海佐留)のことやないかと思うてます。
それに大昔からの言い伝えで、四国の剣山に金の神輿が隠された話と、
丹後の磯砂山に羽衣が隠された話とは対になってるみたいに思うんです。」

「あれれ、とうとう茜さん言ってしまった。」

「ほう〜、対ねえ。小生それは初耳ですわな。面白い!」

亜美彦の思わせぶりな言葉を聞いて龍隠は胸が躍った。
一方亜美彦は、なぜ彼女がそのことを知っているのか、
ひょっとして彼女は稲荷秘教とも関係あるのかと思ったのだった。

「そもそも稲荷神道の奥義は愛法にあるんです。愛法と言うんは、
自らの身を捨てて他の生命を生かしめる投身愛施の法を指すんです。
記紀にもそのことがちゃんと書いたぁりますし、
オオゲツヒメ(大食津比売)やウケモチ(保食)の神さまが、
自らの命を犠牲にしてその身に五穀を生らしめたとあるのもその原理を示したもんです。」

「それって、愛と献身の原理ね。キリスト教に言う自己犠牲の原理に似てるけど?」

瑠璃子はそれがあまりにキリスト教の教えに似ているのでちょっと驚いた様子だった。

「それなら、マグダラのマリアに似た日本の女神もいるよ。」

さらに亜美彦がその話に輪をかけた。

「その女神って誰なんですか?」

「アメノウズメ。」

「アメノウズメって?え〜!天の岩戸開きの?岩戸の前で神楽を舞った?
舞踊の祖神とされている女神さまのこと?
でもなぜアメノウズメがマグダラのマリアになりますの?」

「イエスの復活とマグダラのマリアの存在、
アマテラスの復活とアメノウズメの存在とは酷似してるんだ。
それに何よりウズメはサルタヒコ(猿田彦)の奥さんだったからね。」

「ええ〜!じゃあ、サルタヒコがイエスキリストになってしまうじゃないですか。」

「・・・。」

「いや、サルタヒコはクナトノ神とも言って北斗の神さまですわな。つまり北極老人。
髪の毛は真っ白で、顔中髭モジャの姿をしている。
それでまたの名を白髭の神とも言うんでしたな亜美彦はん。」

−−−<龍隠、いつの間にそんなことまで・・・。>−−−

「亜美彦はん?そうでっしゃろ。」

「あ、そうそう、そうです。」

「なんだかサルタヒコってサンタクロースのようね。」

「サルタ苦労す・・つう〜て、ハハ。」

瑠璃子の閃きを打ち消すような龍隠のダジャレが飛び出た。

「アハハ、それはおも・・・」

「・・・。」

「・・・。」

「・・しろくないか。」

「でもウズメがマリアなら、サルタヒコはキリストにならないと話の辻褄が合わないでしょう?」

瑠璃子はしつこくその部分を詰めた。

「そうだよね、確かに合わない。ところで、サンタクロースがやって来る日はいつだっけ?」

「また思わせぶりなことを言うんですから、クリスマスイヴに決まってますわ。」

「じゃあ、その日は誰が生まれた日?」

「イエスキリスト・・! あっ、な〜んだ、そう言うカラクリになってたんですね。
やっぱりサルタヒコってイエスキリストになるんじゃありませんかあ。」

「遠回りさせましたね。このように韻を踏んで行かないと、
稲荷に隠されている複雑な暗号は解けないんだ。」

「まさにヘブライ人は言葉や文字の中に二重三重の暗示を含ませる独特な頭の構造ですな。
理知的呪術の賜物と言うか。
しかし、さっきの説明ではウズメがマリアだと言う証拠にはならんやおませんか?」

「そうそう、ならんやおませ・・ん? いや、そもそも稲荷が示すシンボル類には、
一つの表現の中に幾つもの意味を持たせるのが約束事のようでもあるんだ。」

「サルタヒコさんにはツキヨミ(月夜見)さんの影もスサノオ(須佐之男)さんの影も見えます。
何でかと言うと、四国阿波にいたオオゲツヒメ(大食津比売)さんが亡くなりはったんは、
古事記ではスサノオさんのせいやと書いてますし、
丹後磯砂山のウケモチガミ(保食神)が亡くなりはったんは、
日本書紀ではツキヨミさんのせいやと言うことが書いたぁりますから。
古文ではオオゲツヒメもウケモチガミも共に稲荷の神さんやとありますしね。
<わが身の死をもってわが身に五穀を御生(みあ)れし、後の人々の命の糧とする。>
まさにそれこそが稲荷愛法の完成なんです。」

茜は稲荷の愛法がキリストの自己犠牲と何ら違わないことを説明した。

「だったらサルタヒコがトヨウケヒメを死に追いやったことになってしまうじゃない?」

瑠璃子は少々不機嫌な声で言った。どうもサルタヒコのことがお気に入りのようだ。

「それに浦島太郎の先祖はツキヨミのミコトだと浦島神社の由緒に書かれてあるしねえ。
ますます話がややこしい。
ところで、羽衣を隠して天女を家から追い出したのは誰だったっけ?」

「山の翁でしょ。えっ?さっき茜は翁の名前をオオアマサル(凡海佐留)と言ったから、
サルってサルタヒコ?だったとしたら、山の翁ってサルタヒコのこと?」

亜美彦の話を割って、代わりに龍隠が説明することになった。

「オオアマ(凡海)と言うんは海洋の民であるワダツミ(綿津見)、アマベ(海部)やね。
アメノホアカリのミコト(天火明命)が治めた太陽と龍蛇をトーテムとする古代の海洋族で、
その国の一つがタニワ(丹庭)、その都が丹後の与謝にあったんですわ。」

「ふ〜ん。古代の海洋族?・・・。」

茜は首を捻った。

「まあ、海を渡って来て、海岸を根城にして栄えた民族は一括りで海洋族としときましょ。
大昔、タニワの国と言うんは丹後・丹波・若狭・但馬・因幡まで含めた大きな国でしてな、
沢山の海産物や玉石などが採れる豊かな国やったんです。
それで丹後の地は、朝鮮半島や渤海などとの交流によって、
高度な技術や様々な文化が流入するタニワの要所でもあった訳や。
トヨウケヒメがタニワの国に迎え入れられたのも案外その辺かも知れん。
そしてタニワの国はトヨウケ族と同盟を結んだことで大いに富み栄えることになった。」

「タニワの国はトヨウケヒメのお陰で繁栄したと言うんですの?」

今度は瑠璃子が質問した。

「そうや。その同盟の印がアメノホアカリとトヨウケヒメの婚姻やと小生は思っとります。
アメノホアカリは丹後の一宮、籠神社の祭神で、
その神体山にあたる裏山に鎮座するのが真名井神社。
その神社にはトヨウケヒメが祭られている。裏山の社の方が古いんやな。」

「私もその神社へは行ったことがあります。神気漂うとてもいい神社でしたわ。
その真名井神社とイサナゴ山の天の真名井とは関係ありますの?」

瑠璃子の問いに、龍隠に代わって亜美彦が答えた。

「大いにあるよ。イサナゴ山の天の真名井は、
籠神社の奥宮の真名井神社のさらに奥宮になる関係なんだ。
イサナゴ山には触れてはならない古代の秘密が隠されていてね、
終戦まで立ち入り禁止のところだったんだ。
そうそう、アメノウズメ。
面白いことに、この神も伏見稲荷ではオオミヤメ(大宮売)の神として祭られている。
それに驚かないでね。この女神の娘にあたるのが何と!羽衣天女のトヨウケヒメなんだ。
と言っても養女になる訳だけど。」

「じゃあ、トヨウケヒメはマグダラのマリアの子になると言うこと?そうなんですか!」

瑠璃子は少々驚いた様子だった。

「そう言うことになるね。でもまあ、これはイナリコードを解くシミュレーションだから、
あくまで仮説の域は出ない空想みたいなものさ。
アメノウズメのことでもう一つ面白い話があるよ。」

「なになに?」

瑠璃子はその話の先を急いだ。

「役の小角が大峯(奥吉野の弥仙)で悟りを開いたとき、一番に駆けつけたのが弁財天でね、
その感得にあたって小角は弥仙の頂きに弁財天を祭り、
後に、麓に流れる天河の川辺にも弁財天を祭ることになった。
そこで遥々タニワを訪ね、イサナゴ(伊佐奈子/磯砂)山の天の真名井の水を汲み取り、
大峯に戻って天河にその真清水を注いだのが天河弁財天社の始まりとされているんだよ。
遥々と言っても小角のことだから、空中を飛行して行ったに違いないし、
楽だったと思うけどね。」

「スーパーマンみたいですね。」

「それも言うなら天狗と言ってくれない?それで天河のその弁財天と言うのも、
もちろんサラスバティーと言うインドの川の女神なんだけど、
それが日本ではアメノウズメ(天之宇豆売)と言う女神と習合してしまうんだなあ。
そして小角が丹後の地に来たその証拠に、
アメノウズメは京丹後の峰山の大宮売神社に祭られてある。
そこではアメノウズメをオオミヤメ(大宮売)として、
トヨウケヒメはワカミヤメ(若宮売)として祭っている。」

「亜美彦さん言うたら稲荷のルーツのこと、よう知ってはるんですね。」

茜は意味ありげな顔をして亜美彦の目を覗き込んだ。

「いえ、これは全部、稲荷山におられる某御方の受け売りなんですよ。」

「え?さっき確かシミュレーションなんて言ってませんでしたあ?」

「いや、その、まあ、色々と複雑な事情があるんでね。」

瑠璃子に突っ込まれた亜美彦の顔を見て、茜は思わず噴出しそうになった。

「ホンマホンマ、よう知ってる。そやけど、今までそんな話一度もしてくれんかったなあー、
亜美彦はん。」

「そおお?こんなこと話すような前フリも、今までなかったような気もするけどね。」

「イナリコードって本当にありますの?そんな面白い話、出来過ぎのようにも思いますけど。」

「そうそう茜さん、それで荷田氏は今どうなってるんですか?」

亜美彦は瑠璃子の追求を逸らそうと、茜の素性の方に話を戻した。

「えっ!あたし?ええまあ、明治の始めまでは伏見稲荷の境内の端にある
東丸(あずままろ)神社の宮司をしてました。」

「ああ、そうなんですか。」

「それでね、藤てどう言う意味か分からはります?藤は蛇を表わすんですよ。」

今度は茜が話を切り換えた。その話のフリに龍隠はすかさず答えた。

「蔓科の植物ですからな。それに龍は海や川の生命力、蛇は大地の生命力を表わしますな。
これはウロボロスと同じで世界に共通する象徴<循環する生命>を現わしておるんやね。」

「そうです。永遠の生命。そやから藤の森て、不死の森やないかと思うてます。」

と茜は鋭く答えた。すると亜美彦がそれに答えを返した。

「古代で森は杜のことでもあったし、杜は山を指してもいたしね。また杜は守でもあったから、
藤の森は不死の杜でもあり不死の秘密を守る森でもあったはずだよね。」

すると茜は、続いて稲荷山の古い謂われについて話し始めた。

「そうやなあ。昔、稲荷の山で芝を刈って生業としていた柴守長者と言う聖(ひじり)がいて、
毎夜山頂では燈火が焚かれ、琵琶湖と淀川の間の伏見川を航行する
船の灯台の役目をしたと伝えられてます。
その燈火に照らされた聖の顔は龍のようだったとか・・・。
それが理由かは別として、その燈火を龍灯と呼び、
その聖がその後、稲荷山に龍頭太(りゅうとうだ)伝説を生む素地ともなったと言われてます。
その聖が一応、荷田氏の祖と言うことになってます。」

「なるほどなるほど。やはり龍の影が出てきましたな!」

話の流れが龍に及んだので次に出てくる話を龍隠は期待していたが、
突然それを遮るように瑠璃子が言った。

「ところで、茜。何か忘れてることがあるんじゃない?」

「え?・・あっそうそう。夕べ瑠璃子から聞いたんですけど、
龍隠さんて修験のお坊さんですのんね?」

「はあ、そうですが、正しくは修験僧ですわ。昔は聖護院にお世話になってましたけど、
今は風来坊みたいなもんですわ。でも何でそんなことを聞きはるんです?」

「いえ、ちょっとご相談したいことがありましたんで・・・。」

「そうなんです。夕べその話を茜に聞かされて、それで勝手なんですけどここに・・・。」

瑠璃子は茜をこのカフェに招いた訳を説明した。

「にゃるほど。それでよう分かりましたわ。ええですよ。小生にできることなら何なりと。
そやけど今の話がこれでおしまいやなんてチト淋しいですな。」

「ごめんなさい。でも茜や亜美彦さんにはいつでも会えますでしょ?
私はしばらくすると東京に帰りますけど、皆さんはこちらなんですから、
また次の機会にでも・・。」

瑠璃子は龍隠をなだめた。

「そうですな。お互いに関西におるんですからな。
その続きは後日また再開するとして、それで?」

「ええ、実は・・霊障のことなんです。えーと、モノが憑くと言うアレです、憑依!」

「分かりますがな憑依だけで。うむ、憑依ねえ・・。」

「憑依なんて本当にあるんですか?」

瑠璃子は疑いの目で龍隠に質問した。

「そらあ・・ある。」

そのことについて龍隠が説明しようとすると突然振動音が鳴った。茜のケイタイだった。

「はい。ああ巴。どうしたん?えっ!なに?聞こえへんわ、なに?もしもし−−もし――。」


―――続く―――

コメント(3)

トヨウケヒメや(特に)ウカノミタマ、最近、日本の神カードを手に入れ、興味深いメッセージをいただきました手(パー)

そして、このお話しの流れ…なんだか本当に、ご縁の深いモノばかりですほっとした顔ほっとした顔ほっとした顔

ありがとうございますハート

感謝します富士山
ちなみに、俺のお地主さんの『大宮神社』には、稲荷社や行者社(役小角)もあり、なんだか不思議ですぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)ぴかぴか(新しい)

家も、淀川沿いですし、龍王も多いですわーい(嬉しい顔)
マナイで伎号を授けていただいたこと。 イサナゴ山で 泣いたこと。 思い出しました。

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