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「日本人の歴史教科書」自由社

以前話題になった扶桑社版「新しい歴史教科書」を基に、ビジュアル的にも文章内容でも、より洗練され磨きをかけた書物となっています。本当に美しい出来栄え。

特に今回の目玉は寛仁親王の「天皇と日本人」という特別寄稿文。

もう日本人必読の書かと思います。

他にも「日本を読み解く15の視座」は読み応えがあり、櫻井よしこ、加地伸行、加瀬英明、村松英子、石平、田久保忠衛、宮崎正弘、高山正之、黄文雄、宮脇淳子、川口マーン恵美、西尾幹二、堤堯、井尻千男、中西輝政と、私などは名前を聞いただけで即「買い!」となるような豪華な執筆陣で、実際の内容も期待を裏切らない重量級のものでした。

また、一番最後に「歴史とつながる今」という項でエルトゥールル号事件(※)と台湾統治で現地では“神”として扱われている八田與一を扱っている点等、他の自虐教科書にはない「日本人としての視座」が随所に見られる点も素晴らしかったです。

以前の扶桑社版をお持ちの方が購入しても絶対に損はない内容。価格の倍以上の価値はあります。

記述について、個人的には若干の不満もあります。(原爆投下についてのアメリカの加害性を薄めるような記述や、維新後の日本の対アジア政策に関しての周辺国への配慮がみられる内容)

しかし、その他の教科書の目も当てられないような酷さを考えると、比べ物にならない程優れた教科書と言えましょう。

「日本を読み解く15の視座」から、特に中西氏の“視座”は素晴らしく、紹介に値する内容と思われますので以下にその一文を貼らせて頂きます。

※日本とトルコ
  http://pya.cc/pyaimg/pimg.php?imgid=17584



【「現代史」は本当の歴史ではない】   中西輝政


<重要史料の出現は半世紀後>

私は、かつて留学していた西欧の大学で、指導教官から「“現代史”というような学問は本当はあり得ないのですよ。最低五〇〜六〇年経たないと大切な史料は出てこないからです。つまりそれは、本当の歴史ではないのです」と言われたことがありました。とくに、このことは二〇世紀の世界大戦や冷戦といった世界史的な出来事についてあてはまると思います。

よく「近現代史の書き換え」ということが言われますが、第二次大戦や冷戦については、そもそも、まだ本当の意味で「書かれた歴史」というものはないのです。従って、「書き換え」ということもあり得ないわけです。少なくとも、二〇世紀の戦争とくに第二次大戦をめぐる歴史は、本当は今ようやく初めて書かれる時期を迎えているのです。

たとえば、近年やっとわかったことですが、戦間期(一九二〇〜三〇年代)のフランスの外交や軍事、情報活動などの歴史を勉強しようと思えば、モスクワに行って研究する必要があるとされてるようになりました。一見、奇異に感じるかも知れませんが、このことの中に近現代史の本質が現れているのです。周知のように第二次大戦中の一九四〇年、フランスはドイツ軍によって占領されましたが、パリに突入したドイツ軍の先遣部隊は、まっ先にフランス政府の機密文書館に殺到し、フランスの重要文書を押収しベルリンに持ち帰りました。

しかしその後一九四五年、今度はソ連軍がベルリンを占領し、ナチス・ドイツの重要文書と共に、それらフランスの機密文書もモスクワに持ち去ったのです。そして冷戦が終わってソ連が崩壊するまで、それらは「行方不明」扱いになっていました。プーチン以後のロシアの文書公開の行方にもよりますが、これによって今後、戦間期のフランスの歴史は大きく「書き換え」られるはずです。



<自国に不利な公文書は秘匿>

歴史は史料によって書かれるものです。そして、「近現代史」と言われるものについては、その重要な史料は各国の政府が作成した公文書ということになります。

しかしどの交戦国の政府も、戦争では皆、当事者ですから、自国に不利になるような文書の公開は可能な限り先に延ばそうとします。先の戦間期のフランスや第二次大戦後の日本やドイツのように外国の軍隊によって占領され押収されない限り、容易なことで(つまり三〇年や五〇年位の短期間に)自国の国益に大きなマイナスとなる史料の公開はしないものなのです。

一八七〇年の普仏戦争の原因となった、いわゆる「ホーエンツォレルン王位継承問題」についてのドイツ外務省の重要文書が公開されたのは、一九五七年のことでした。実に八十七も経って初めて、あの戦争の真の原因が戦勝国ドイツにあったことが明らかになり、十九世紀のヨーロッパの歴史は書き換えられたのでした。

興味深いことに、その間、この文書をなぜ公開してはならないかについて、ドイツの政治家や官僚が各時代にわたって、その理由を克明に書き残した文書も一緒に世に出てきました。そこから戦勝国といのは、自国に有利な戦後の国際秩序---その中には当然、歴史観も含まれます---を、どれほど必死になって守ろうとするか、そのためには、いかに手の込んだ工作やトリックを使うものであるか、ということが如実にわかるのです。


<進まない戦勝国の史料公開>

戦争は相手があって起こるものです。ですから一方の側の史料だけを見て、その本当の意味がわかるはずはないのです。第二次大戦については戦勝国側の重要史料が、未だに十分に公開されているとは言えません。ソ連崩壊によってこの十数年、大戦期のソ連に関する公文書史料がほんの少しですが、公開されました。その中からいくつもの驚くべき新事実が明らかになりました。

たとえば一九三八(昭和十三)年の日ソ間で起こった「張鼓峰事件」については明らかにソ連側が仕掛けた戦いで、日本は純然たる被害者だったことが新たにわかったのです。しかし、東京裁判では、これも「日本の侵略」として断罪されており“関係者”の処罰も行われました。

つまり、少なくともこの点に限り東京裁判はデッチ上げたことが裁判からおよそ六〇年後に証明されたわけです。

その他、数年前に公開された旧ソ連軍の史料からは、戦後ずっと「日本側の一方的敗北」とされてきたノモンハン事件では、実はソ連側の方がはるかに大きな損害を蒙っており、司馬遼太郎氏や半藤一利氏らの見方は間違っていたことも明らかになりました。第二次大戦をめぐる旧ソ連関係の史料は、まだまだ非公開とされているものが圧倒的に多いと言ってよいでしょう。

そして言うまでもありませんが、現在の中国は殆ど全くと言ってよいほど史料公開をしておりません。もし旧ソ連のように中国共産党体制が崩壊したときは、第二次大戦についてどれほどの新事実が出てくるか。日中戦争の真実は、まだまだ「全くの闇の中」と言わねばなりません。



<「対日戦に触れるな」>

情報公開には熱心なはずのアメリカやイギリスについても、ドイツの場合と比べ、なぜか日本が関わる第二次大戦あるいは「昭和の戦争」についての史料を、不可解なほど長く秘匿しています。たとえば、一九二八年の張作霖爆殺事件について、当時のイギリスの情報史料の中に、ソ連の関与の可能性について触れたものがあるのですが、それは実に「二〇〇七年まで非公開」とされていました。

また一九七九年から九〇年まで足かけ一二年をかけてイギリス政府の特別許可を得て、ぼう大な非公開文書に依拠して書かれた『第二次大戦におけるイギリスの情報活動』(全五巻)は、ドイツと米英の戦いについては、きわめて多くの新事実を明らかにしていますが、日本が関わるものについては殆ど触れていません。同書の編集代表だったケンブリッジ大学のヒンズリー教授は生前、何度も私に対して次のように語っていました。

「対日戦については触れてはならない、とアメリカ政府が強く申し入れて来ている。その為にこの本が大変不完全なものになってしまい残念だ。アメリカはどうして日本をもっと信用しないのか、私にはわからない。」

最後の言葉の意味をどう考えればよいのか。おそらく真珠湾関係の秘密やその他、多くの対日諜報活動が明らかになるのを恐れたのでしょう。しかしなぜ日本に対してだけ、それほど恐れるのか不可解というしかありません。

またアメリカ政府は対日占領政策についても未だに大量の文書を「非公開」扱いにしていると言われています。

いずれにしても、今後、日本の近現代史について語るとき、戦勝国側の史料公開について日本人はもっともっと強い関心を向けるようにしなければなりません。なぜなら今、初めて、本来の歴史が書かれる時を迎えており、しかもこの機会を逃すと、永遠に闇に葬られるようなことがずい分と多いと思われるからです。

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