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地球環境を真剣に考え行動する!コミュの長編小説(その1)***美人画報連載

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コメント(9)

25歳の冬に僕は初めて恋をした。
厚く積もった雪に光が射した。あの光景は今でも僕の胸の奥に大事にとってある。時間は人の気持ちさへも変えてしまうというが、それはどうやら間違えのようだ。僕の気持ちは、あれから少しも変化をみせていない。古い教訓にも例外はある。 薔薇には刺があるいうが彼女には奇麗な花びらしかなかった。彼女はその花びらや香りをひけらかすでもなく、そっと本のページをめくるようにいつも微笑んでいた。
あの頃の僕はまだ幼なかった。


渋谷の道玄坂は、まるで昼と夜とではまったく異なった街に変る。夜は知っての通り、若者とカップルや援助交際の溜まり場。きらびやかな装飾を施してあるホテルの迷路。女の子を商品とした店の客引き。タキシード。外からでもそのガラスパイプの美しさが見えるヘッドショップ。asiaやO-EASTの周りにはクラブ好きのキッズ達が毎晩集まり騒いでいる。
彼らの頭の中には基本的な欲求のみが大半を占め、時間や努力や少しやっかいな問題を『メンドクサイ』の一言で片付けてしまう傾向がある。これはもう『習性』と言っても過言ではない。あいつらは年中明るいとこを飛び回る虫だ。馬鹿のくせに繁殖力だけは旺盛だ。
この間仕事で少し遅くまで会社に残っていて、asiaの隣のamapmで夜食のおでんを買って店を出たら、いつもあそこに溜まってる虫に刺された。近くの雑居ビルの裏まで引っ張られ、さんざん殴られた挙げ句、財布に入っていた2万3千円とアイポッドを盗られた。終いには、手を出さないで壁に寄りかかってた金髪の男が、僕がさっき買ったおでんを奪って、僕に見せびらかすようにはんぺんを齧った。僕ははんぺんが大好きだ。白くてスカスカでおでんらしくない見た目も名前も。2万3千円もアイポッドも盗られたのはしょうがないけど、あのはんぺんだけは許せなかった。

昼間はそんな臭気も朝日に一掃されて、平和な路地裏街に変る。
ランチタイムなんて近くで働いてるOLやサラリーマンが、道玄坂内の店中で財布片手に列をなしてるのをよく見る。 僕は別に食べ物にそこまでこだわらないたちなので、コンビニで軽くサンドイッチとか(あ最近はブリトーっていうが好きだなぁ)マックまで歩いて会社で食べるかで充分満足できる。
仕事は広告代理店の制作部。格好良く言えばデザイナー。名刺なんかにも「デザイナー」なんて横文字で書いてあるから、あまり業界を知らない人なんかにあげたら結構ウケが良い。
実際そんないいもんじゃない。自分のアイデンティティーを仕事に持ち込むなんて出来やしない。クライアントが提示してきたデザイン案を、それなりに見えるようにレイアウトするのが僕の仕事。まるで工場で働いてるのと同じだ。ベルトコンベアーで流れてきたネジにボルトを差し込んでゆく作業とまるで変らない。村上春樹は「雪かき」って言ってたな。
この会社は大学をでてタイで一年間暮らしてた後に入った職場だから、もうすぐで1年目になる。社内の雰囲気はそこまで悪くはない。いきり立った上司も陰険なお局さんもいない。
全体で15人の小さな代理店だけど、社長がなかなか顔が広いらしく、仕事には困ってはいない。強いて言うなら、向かいの坂井という男の物を食べる音が気になるくらいだ。

僕はだいたい仕事を九時までには終わらせ中央線で荻窪もまで帰る。
普段僕はあんまり料理はしない。荻窪駅周辺にはオリンピックとか松屋とかオーケーストアとか色々あって、できあいの物を買うのに特に不便はないからだ。オリジン弁当なんて24時間ずっと明るい光で僕を迎えてくれる。

でもどうしても手料理が食べたくなった時は「かなこ」にメールをする。
とりあえず彼女のポトフは最強なのだ。
かなことは友達が週末にplayしてる青山の曼陀羅ってゆうクラブで出逢ったんだけど、いつアドレスを交換したのかいつの間にか彼女からメールが頻繁にくるようになった。
たまに家に来て料理を作ってくれて、その後決まってsexをする。
僕はずっとgive and takeの関係だと思っていた。 
僕は手料理が食べたいし、彼女は僕とsexがしたい。
でもこないだ風邪をひいた時に洗濯から掃除まで色々やってくれ、お礼を言うと「彼女なんだから当たり前でしょ」って言われたから、あー付き合ってたんだって思ったんだ。

別に遊びでとか暇つぶしで一緒にいるつもりはない。もちろん彼女の事はそれなりに好きだったし、かわいかった。
ただ彼女の話はつまらない。
海外セレブのゴシップ話、最近買ったなんとかってゆうブランドの服の話、クリスマスに行きたいレストランの話、友達の彼氏がすっごい優しい話、あとはなんだっけ?よく覚えていない。
そんな話よりおととい見た映画の話、こないだけんすけがやらかした会社でのミス(あれは笑ったなぁ)、今日の昼に発見したブリトーの新しい味のこと、今読んでる本の話、最近やっと買った「犬式」のalbumについて、最近日に日に冬の匂いが増してきたということ、どうして人は髪の毛を触られると安心するのか、なぜタコは足が8本でイカは10本なのか、宇宙はどこからが始まりでどこまでが終わりなのか、そんな話を永延としていたいんだ。
give and takeの関係ならさほど気にならない。だって、僕が相手から料理やら掃除やらなにやらを求める代わりに僕は何かを与えなきゃいけない訳で、それにはもちろんsexだとか興味のない相手の話を相手が気持ちよく話せるように聞く事も入っている。ただ彼女となると話は別だ。そこそこかわいい女と都合がいい時間にあって、お互いあまり深く干渉せず「はい、さよなら またこんど」とはいかないのだ。

そんな訳で一応形式的に「恋人同士」だった僕達は形式的に「破局」を迎えた訳で、かなこもその後新しい彼氏を見つけたらしいけどあいかわらず彼女からのメールは途絶えず、1ヶ月に1回くらいこうしてポトフを作りにやって来てくるというわけだ。

僕は恋愛というものがよくわからない。恋愛に決まった形はないのだけれど、今まで付き合ってきた彼女たちは僕にとってなぜかどれも正解でないような気がするのだ。
かなこのような女(もっともかなこより話のできる女はいたが)は今まで何人かいたし、今だって別に不自由はしていない。
ただそれは僕が想像するいわゆる「恋愛」と呼ばれるものにはほど遠いもので(といってもそれがよく分かっていないのだが)、僕が思っている「恋愛」はほかならぬ現実離れしたファンタジーであって、もしこれが世間で言われている「恋愛」というものであるとするならば僕は世間の恋人達に対して幻滅的な悲観的な、むしろ哀れみ的な感情を抱かざるをえない。
巷ではカップルで行く冬のディズニーシーは格別だとか、彼が入れてくれるcoffeeは最高だとか、冬こそが恋人達のシーズンだとか、これは元彼との想い出の曲とか言うけれど、僕にとってはそれはただの遊園地であり、ただのcoffeeであり、単なる寒い冬であり、Sadeの"By Your Side"はいつ誰と聞いてもやっぱりいい曲であり、それはたとえ朝起きて隣に女が寝ていようが寝ていまいが関係ないのだ。

そんな訳で荻窪駅に着くとかなこからメールがきた。昼間会社から久しぶりにメールを打ったら彼氏との約束をすっぽかしてどうやら僕にポトフを作りにやってくるらしい。何度かかなこからの誘いを断っていたからやたら嬉しそうだった。今買い物が終わったのでこれから家へ来るとの事。なんだかメールの最後にハートマークがついているが気にしない。
なぜならそれは僕にとって単なる友達からのメールであり、単なるポトフであり、単なる仕事帰りの寒い夜なのだから。
テレビをつけると、三輪明弘と江原とかいう男がオーラの泉という番組をやっている。
スピリチュアルカウセリング番組。 この笑顔が嘘くさい。
かなこは毎週見ているらしい。
僕は、大皿にたっぷりとのせたポトフとビールを持って、テレビ前のソファーへとダイニングから移動した。ポトフは相変わらず美味しい。
『そんなにおもしろいのかこの番組?』僕は食べ終わった食器を台所で洗いながら、かなこに聞いた。
『夕日知らないのこの番組?信じられないんだけど!今これみんな見てるよ!江原さんマジすごいんだからぁ!今日は小島よしお〜♪』
自分の分の洗物が終わってビールを飲みながらダイニングテーブルに座って、その番組をかなこ越しに少し見ていたが、眠くなったので先に寝室に行ってベッドに倒れた。
もう冬か…口に出してみる。なんとなく部屋の温度がほんの少しだけ下がった気がした。

次の日起きると隣でかなこが寝ていた。化粧を落としたかなこの顔をまじまじと見てみた。
昼間の強い印象を持つアイラインは無く、冬のポプラ並木の枝のような睫毛が奇麗に下に伸びている。朝の光に当たった薄い唇もどこか、可愛らしく見える。
「この娘と付き合いたい男なんて、山程いるんだろうな」って少し彼らより自分は恵まれてるなんて良い気分になった。
それから僕は準備をして家を出て会社に行った。雪かきも最近は違和感も感じなくなってきた。夕方頃かなこからメールが入ってきた。
「明日なにしてるの夕日?暇なら曼荼羅行こ!!みんなくるって〜」
最近行ってなかったから久しぶりに騒ぎたい気分だ。「了解」僕はメールはいかに早く短く送る事がスマートだと考えている。
その後、金曜日だからと同僚の佐々木とジンキスカンを食べに行き帰ってきた。一週間の疲れも溜まっていたし飲んできたので、風呂も入らずそのまま寝てしまった。


変な夢を見た。引き擦られたジーンズの裾のような夢だ。
しかもストーリーは何度も見た通り同じやつ。夢の中で『またか…』って呟く。でもよく考えると面白い。だって夢の中でデジャヴを感じられるって。なんの意味も無い断片のパッチワーク。そもそも夢に意味なんかあるのだろうか。
夢占いだの六星占術だの、いかにも女性が好きそうなネタが蔓延してるけど、確かに夢には現実世界にリンクしたイメージを見ることがあるが、それを何故占いとして逆輸入する必要がある。信憑性の三文字を知らないのだろうか?
僕は時々わからなくなる。偶然として存在するものに無理矢理『意味』つけようとする世間のロマンティシズムが。冷めているのかは分からないが、僕は受け入れられないといことだ。
目に見えた物だけがリアルで、自分が感じたものが唯一無二の真実だと信じている。
   
 
時計は昼の1時を指していた。 休みの日は何時でも寝ていられるから、本当に幸せだ。窓を見ると暖かい光が部屋に降り注いでいる。どこか近くの公園の子供達の声がする。子供の声は、虫の羽音と同じような催眠効果があるような気がする。目を閉じると、自分が小さかった頃の情景が瞼の裏に映し出され、意識の揺りかごに沈んでゆく。
その時けたたましいほどの音でハっと目を開ける。床に落ちている携帯がせわしなく蝉のように鳴いている。手を伸ばして取ると、ディスプレイには「翔吾」と出ている。
『ハイ翔吾?』
『ハイブロウ!今起きたの?』
朝から翔吾のハイテンションは少しキツイ。
『ウンそう』
『お前今日くるでしょ?俺も今日まわすからこいよ!』
翔吾は家の底が抜けるほどLPを持っていて、よくDJもやっている。
『かなこからもメールがきたよ。もち行くよ。今日どんな感じでいくの?』
『うんとねぇ 最初はUK DUBから入ってドラムンベース、シカゴハウス、ガラージって流れにしよっかなぁって考えてんだけど』
『おぉ良い感じじゃん。あ こないだ言った、Zion trainの新譜持ってきてよ』
『わかった。それじゃ後でな』
電話を切った後、もう一回寝ようとしたが腹が減っていたのでベッドを出た。
冷蔵庫にはこないだかなこが作ってくれたポトフがまだあった。いつも多めに作ってくれるかなこには、彼女と一緒にいる時より、こうやって一人でいる時にあの娘の心遣いを感じた時に、いつも罪悪感が胸の奥で黒い雨雲を立ち籠める感じがして少し気分が落ちる。

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