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映画を診る「シネマ特診外来」コミュの小林正樹監督「この広い空のどこかに」

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先日『ちゃちゃちゃ〜ある洋服職人の物語〜』というリリパット・アーミー?の公演を見た。

昨年5年ぶりの再演となった『一郎ちゃんが行く。』という芝居もそうだったが、作者のわかぎゑふさんは明治日本のしゃにむに突っ走った人物像に深い興味を感じているようだ。

まず最初にスクリーンが下りてきて、十分くらいのショート・フィルムが映写される。ギャグたっぷりの「携帯の電源を切れ」という呼びかけから始まり、幕末の黒船来航から、ジョン万次郎がアメリカからミシンを持ち帰り、日本人に売ったことをニュース風に伝える。これがわが国最初の米国製品の輸入だったのだと。そのジョン万次郎からミシンを買った日本人が、わが国最初の洋服工場を作った人物。これは日本最初の洋服工場を巡る職人たちを描いた芝居であった。

それにしても映画をうまく取り入れた構成にまず驚かされた。
 
ところで、未見の映画はすべて新作である。

こう考えて、どんなに製作年度が古くとも、興味を覚えた映画なら見てみる。その意味で昨年、僕が見た映画のベストワンは小林正樹監督の松竹映画『この広い空のどこかに』(1954年)だった。

川崎駅前にある小さな酒屋。佐田啓二と久我美子の若夫婦が一家を切り盛りする。戦争という絶対的な災厄を経た、本当にただの庶民が貧しさのなかで、いかに生活を前進させようとするかを正攻法・直球勝負で描ききったさわやかな小品だ。

「商人ってのはね、利は薄いけれど日銭が入るからなんとかやっていけるんだ」醤油1升売って160円の利がある商売。2級酒5合260円の売価である時代。

貧しい日常だが、働く人々のなんと清潔なことだろう。

昔からもっともスペクタクルなものは、実は、日常生活のちょっとした襞(ひだ)をきちんと描写し、誰もがみんな知っているのに忘れてしまっているものを表現したときのことをいうのではないか。

人が生業としている仕事をきちんと描いた邦画の新作がいかに少ないことか。

わかぎゑふさんの芝居は二十一世紀の松竹新喜劇の再現であるように感じたが、いまや乱立するコンビニをきちんと描いた作品すら、日本映画にはまだない。

巨大なセットは不要だ。

丹念に生活の機微を過不足なく描く、そういった姿勢こそ、温故知新であろう。

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