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コンテンツ翻訳研究会コミュの映画字幕翻訳、ダメチェック(1)

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 『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』


 テレビ放映を観ていたら、またまた、珍訳を発見。
 気になって調べてみたら、やっぱり戸田奈津子女史でした。
 
 それにしても、戸田さんとこのお弟子さんは翻訳能力低すぎると思う。
 もうかなりのお年なので御本人は翻訳されずお弟子さんに任せているようなんですが、アルタビスタで機械翻訳したレベルのものしか仕上げてない。

 そのせいで、映画字幕の評論界では「ナッチー語」とか揶揄されてしまう有様です。

 この字幕翻訳界の女王についてはあまりにも有名なんですが、お弟子さんがダメなもんで、各方面から失笑を買っています。


 映画に限らず「翻訳」とは「外国語の読解力」だけでなく、描かれている世界や歴史、技術や政治、軍事、経済などの知識を元にした「付加説明力」や、今の観客層に分かりやすいように伝える「ダイアローグ作文力」が要求されます。

 本作『パイレーツ〜2』は、プレジャー場面山盛りのアクション映画なので、翻訳不足による魅力減は、それほどではありません。それでも翻訳の力不足の感は否めません。

 チーム戸田の最大のミスは、歴史に詳しくなかったこと。調べていないこと。

 映画の舞台となった中世〜近世の新大陸交易事情や海賊の出現経緯について、歴史に詳しければ誰でも知っている用語が使われていないこと。

 例えば劇中にマルクという国王の海賊行為の許可状が登場します。
 
 これはあまり一般的な言葉じゃないけど、私掠船許可状とかは高校生の世界史にも登場する言葉なんですけどね。

 私掠船については、個人HPですが、この方の説明が分かりやすいです。
 http://www31.ocn.ne.jp/~ysino/hansen/page007.html

 このマルクを国王から授かった船長や船は、プライベーターとかコルセアと呼ばれてライバルの国の船から略奪しても母国から叱られない私的な略奪事業者となりました。

 (a privateer; corsair)
 
 プライベーターだから、あくまでも個人事業主ですね。

 映画のタイトルにあるパイレーツも海賊ですが、プライベーターはさらに略奪を民間事業で行っている感じです。
 
 こういう歴史背景を調べておけば、マルクを「敵国拿捕許可状」なんて翻訳は出てこない。拿捕には、どちらかというと公的アクションの意味が強いし、敵国とか言われると戦争っぽくって個人の海賊な感じがしない。
 
 かつての歴史家は、その翻訳に知恵を絞った結果、「私掠船」という言葉を創った訳です。「私的な略奪船」の意味ですね。まあ、一般的に馴染みが薄い言葉なんですが、だからといって使わなければ、過去、その言葉を創った先達の知恵を無視してしまうことになる訳です。

 なんでもかんでも昔に倣う必要はありませんが、勉強した上で選択しないと。

 
 では、問題の翻訳を観てみましょう。


 ………………………………………………………………………………………………………


 ペケット卿がターナーに私掠船許可状を示すシーン


 【ナッチー字幕翻訳版】


 ペケット卿 「敵国船拿捕許可状だ」

       「大英帝国の合法的海賊になれるわけだ」


 【シナリオ原文】 音声合致確認済み


 LORD CUTLER BECKETT

   Letters of Marque. You will offer what amounts to a full pardon.

   Jack will be free, a privateer in the employ of England.


【こっちの方がいいんじゃない?】


 ベケット卿 「私掠許可状だ。恩赦つきでな」

       「晴れて大英帝国公認の海賊屋ということだな」     


 「私掠船許可状」は一般にはなじみがないのでMarque は「海賊許可状」でもいいかも。

 「敵国拿捕許可状」って、そんな、固い翻訳があるかいな? 喋り言葉なのに。


  ナッチー版では「合法的海賊」と訳が分からない造語が使ってあります。

  おそらく privateer の意味が分からなかったんでしょう。

  字幕の文字表示限度を気にしたらしく「これまでの海賊行為が恩赦される」という原文を、翻訳カットしています。改めて時間数を計測すると、十分、入ります。

 せめて「恩赦つき」位は、入れましょう。

 ジャックが自由の身となってという翻訳は長いので「晴れて〜」で意訳。

 ホントは公認ではなく黙認なんですけど、合法よりは、史実に近いはず。

 
 ……………………………………………………………………………………………………

 エリザベスがペケット卿に私掠船許可状へのサインを求めるシーン


 【ナッチー字幕翻訳版】

 エリザベス 「国王が署名しているわ」

 ベケット卿 「私の署名と捺印がなければ効力は発生しない」

 
 【シナリオ原文】 音声合致確認済み

 
 ELIZABETH SWANN

  These Letters of Marque, they are signed by the King?

 
 LORD CUTLER BECKETT

  Yes, and they're not valid until they bear my signature and my seal.


 【こっちの方がいいんじゃない?】


 エリザベス 「国王の私掠船許可状ね」

 ベケット卿 「私の署名と印がなければ、使い物にはならんよ」

       
 not valid は、直訳すれば、効力がない、なんだけどね。あまりに直訳しすぎだろ。

 they bear は、それは無力だ、とか、白紙だ、みたいな感じ。法的に有効無効というよりも、署名という重要パーツがないから機能していない…という感じ。

 ベアは、ベアボーン(パソコンの組み立てキット)とか、ベアナックル(はだかこぶし)と同じ。

 法律用語とかの堅苦しい言い回しじゃない。

 「私が署名と印を押さなければ、認められないがね」とか言わないかなあ…。

 「通用しないがね…」「認められんがね…」位、なぜ、翻訳できないのか不思議。

 
 このあたりになると、歴史の知識以前の問題。

 ちなみに、この私掠許可状(海賊赦免状)の日本とアジアでの交易版が、朱印状:朱印船ですな。
 
 
 コンテンツ翻訳とは、こういう作業なんですね。

 ………………………………………………………………………………………………………

 【参考】


 私掠船 wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%81%E6%8E%A0%E8%88%B9


 帆船の社会史
 http://www31.ocn.ne.jp/~ysino/hansen/

 
 海洋総合辞典 和英西仏語
 http://www.oceandictionary.net/index.html


 IMSDB
 http://www.imsdb.com/


   

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