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北京波の新世紀映画水路コミュの『間宮兄弟』評

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ベストセラー作家・江國香織の同名小説を「家族ゲーム」「阿修羅のごとく」の森田芳光監督が映画化したほのぼの人情コメディ。
いい歳して仲良く一緒に暮らしている兄弟の平凡だけどささやかな幸せに満ちた日常が温かな眼差しで淡々と綴られてゆく。主演はTVドラマ「離婚弁護士」の佐々木蔵之介とお笑いコンビ“ドランクドラゴン”の塚地武雅。
東京の下町のとあるマンション。
30代の現在も仲良く同居を続ける間宮兄弟。
兄・明信はビール会社の商品開発研究員。
弟・徹信は小学校の校務員。
そんな2人は、大好きなベイスターズの試合をスコアをつけながら熱心にテレビ観戦したり、山盛りのポップコーン片手にビデオ鑑賞したり、あるいは紙飛行機を飛ばしたりと、しょっちゅう一緒に行動しては楽しく何不自由ない毎日を送っていた。それでもやはり恋人は欲しいもの。
そこで2人はカレーパーティを企画、弟は同じ小学校の葛原依子先生を、兄は行きつけのビデオ店でバイトする女子大生・本間直美をそれぞれ招待することに成功するのだが…。(HPより)


まぁ〜なんにもない映画だよぅ。しかし好きだよ。

何かがないといけないって誰が決めたのすか?(ここは『忍ぶ川』の岩崎加根子姉さん風に)。

な〜んにもないんだけど、人生の命題とは無関係なものはなんでもウンスケあるから、なんにもない現代ニッポンそのものじゃないですか!

兄弟がラストで、自転車であることをしながら東京の街をいかにもたのしそうに通過していくとき、昔東急名画座で1000円出すと大入り袋にご縁(五円)入れて返してくれる995円ロードショーで観た森田の『の・ようなもの』を思い出した。

あのなかで伊藤克信が落語を喋りながら東京横断していくシーンが甦った!あれは、じんとくるシーンだったなぁ。

「いいじゃないの幸せならば」…ですよ。

この映画はキャスティングで80%決まった、ってぇところですね。こういう作品を撮れる森田芳光まだまだ楽しみです。

【 ヲタクの変貌 】
 
時代は変わり、ヲタクはいまや普通の存在になった。この映画が爽やかなのは、怨念や妬みがないことだ。いまや、この程度をヲタクと言われては、ボクのような「ヲタパパ」には立つ瀬がなくなる…。

『アメリ』から数年、ここに「奇妙な個性」といったうがった見方などせずとも、同時代人という温かな視線を前提にした映画が生まれるに到ったわけだ。

ペーソスはあっても糾弾はない。

成熟とは無縁の人間像だが、なあに日本では何十年も成熟なんぞ消え去っているんだもの、構わないっしょ。

好きな映画ですよ。『ダヴィンチ・コード』は1回でたくさんだけど、カルト映画じゃなくて、この映画の底にある突き抜けた潔さは妙にあとを引く。

【 かもめ食堂との比較 】

共に、見終わったときに幸福感で満たされるという点で出色のミニ・シアター作品である。だが、やはり別個の作品であるから人間としての登場人物には驚くべき差異がある。

かもめ食堂では、登場する三人の女性は本来の日本の女性として、語られはしないが多くのしがらみや奉仕、忍従などに十分時間を捧げてきた女性たちであると思われる。

だが日本で生きていくには、これから先も社会や国民という名のもとにずっと続いていくであろう“納得し難い恭順”に敢然と行動を起こしてフィンランドに出て行った。

日本では常識や世間体など、みんなで穏やかで一緒に行かねばならない〈平等という名の不平等〉がまかり通っている。

これは競争原理からしても、理不尽なことであると言わねばならない。

ニッポンの1000万は人生の蓄えとしては甚だ心もとないものだが、かの地にいけば贅沢さえしなければ3倍にもなるだろう…。

かもめ食堂では彼女たちは“迷いや煩悶を捨去ればゆったりと安住できる日本”を捨てた代わりに、努力するなら自分のためだけに努力できる…納得できる日常を得たのだ。

研鑽はそれほど必要とされず、毅然として包容力を示すだけでよい日常…、それはやはり長年にわたって男や家庭や仕事や介護に縛られて「従」の生活に時間だけが経過した割には、こころも身体もまったく豊かな実感が薄い女性が自ら獲得した自由時間である。

そんな誰もが夢みてはいても少しの勇気やきっかけを見出だせない女性にとって共感を呼ぶのは当然ではないか。当たり前だと露ほども疑わない男の呑気さを問われている気もしたものだ。

【 公よりも私・・・ 】

間宮兄弟は結婚や育児や出世など、彼らの蜜月とも言うべき日常が発展的解消される機会があるようでない。

それは彼ら兄弟が価値観や趣味などに(意識しているかはわからないが)涙ぐましい歩み寄りをもって成立させている生活空間であるからだ。

「一日の最後におやすみと言える相手がいるっていいなぁ」
という、これ以上慎ましい至福感があるだろうか!

捨て去ることの出来ない「ふたりの兄弟が埋め合って初めて埋めることのできる間隙」のいじらしいこと。

アパアパの妹でなくとも、間宮兄弟を抱き締めてやりたくなる。
実に今年の日本映画は豊かな実りを呉れている。
(★★★☆☆)

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